復讐と約束

アギト

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第4章 七魔将軍 レンカ編〜生徒か主か〜

第十八話 私が最強魔道士レンカです。

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 萬獄山を下山する前、ショウ達はこれからの目的地を決めておいた。
「七魔将軍の皆が何処におるかは、ある程度は把握している。しかし、ナントとソレイユは儂にも分からん。」
「ナントはともかく、なぜソレイユも分からないんだ?」
「ソレイユは、我々の誇るマジッククリエーターだからだ。」
「はぁ?意味がわからん。」
「マジッククリエーターの希少価値は知ってるだろ?」
「それは知ってるよ。」
マジッククリエーターになれる者は、魔道士の中で0.17%のものしかなれない。現在マジッククリエーターについてる者は、たったの13しかいない。
「その中でもソレイユは、『神をも凌駕する』魔法を作ったのだ。」
「ど、どんな魔法だ。」
と皆がドキドキしながら聞いていた。アルキは、少し間を空けて、
「その魔法の名は『バキラクト』、その効果は『銀河系そのものを変える』魔法だ。」
と言った。周りの奴らは、
「な…な…なに!」
「あり得ん!そんな事出来るわけない!」
「そもそも、そんな魔力量有るわけない!」
とそれは不可能だと言った。アルキは、
「悪いがそれを可能にしたのさ。」
「は?」
「ソレイユの閃きとブレイの頭脳を合わせてな。」
「どうやるんですか?」
「それにこの魔法は、戦闘中に使うんじゃなくて、何十年とかけて使うからな。」
「確かにそれなら、少なくとも魔力量の問題はないでしょう。」
「あぁ、それに魔石とブレイの発明品『魔力備蓄装置』を使い、51年かければ出来るらしい。」
「なるほど、でもそんな魔法があったなんてな。」
「驚き隠せねぇぜ」
と驚いていた。アルキは、
「そんな魔法を作る天才だから、色んな場所に引っ張りだこなんだ。だから分からん。」
と言い切った。ショウは、
「では、誰から合流しますか?」
とアルキに質問をした。アルキは少し考え、
「そうじゃな…まずは、レンカからじゃな。」
と言った。ザギルは、アルキに質問をした。
「その理由は?」
「まずこのメンツは、近距離は強くても、遠距離には弱い。それに、なにかに特化したパーティはできることが限られる。じゃが…」
「色んな役職を入れることで、できる幅が広がると。」
「そういう事じゃ。」
と言いアルキは、
「レンカは、『イマージ』と言う魔法都市で教師をしている。」
「教師ですか?」
「あぁ、昔からやりたいと言っていたからな。サタン様のはからいでさせてもらっているんだ。」
と言った。ショウは、
「取り敢えず、ここの復旧作業が落ち着いたら出ましょう。」
と言い、部屋を出ていった。

 ショウ達は萬獄山を下山し、道すがら話していた。
「レンカって、一体どんな魔物なんですか?」
「奴は、『リボーン』と言う不死の魔物じゃ。」
「不死?リボーン?聞いたことないぞ、そんな種族」
とザギルは話に割はいった。アルキは、ザギルの方を向き説明し始めた。
「リボーンは、サタン様の保護下に置かれている種族だ。保護下に置いていた理由は、リボーンはある一定数しか生まれてこないからな。だからサタン様のメイドという名目で保護しておった。」
「なるほどな。だが、それなのにどうして、レンカを七魔将軍にしたんだよ。」
「レンカは、リボーンの中でかなり特殊な奴でな。」
「特殊?」
「リボーンは普通、そこいらの人間とほとんど変わらん。じゃが、レンカは魔力を持ち、スキルを習得していたんだ。スキルはスキルでも、一握りの者にしか手に入れられないスキル『ゴッドスキル』というのを持っている。」
「「「なっ!なに!」」」
と一斉に驚いた。

ゴッドスキル・・・その名の通り神と同等の力を持っているスキルである。このスキルが発現する確率は、わずか5兆分の1と言われている。発現しただけで奇跡と言っても過言ではない。

オーツは、目を輝かせながら、
「因みにどんなスキルなんだ?」
と聞いた。アルキは、真剣な表情で、
「奴のゴッドスキル名は『天秤』だ。」
と言った。
「『天秤』?そんなんがゴッドスキルなのか?」
「甘く見るなよ。『天秤』とは、自身の対価を払うことで『どんな事でも可能にする』スキルだぞ。」
「だから何だよ。」
「種族において、最も重い対価は『寿命』や『命』だとされている。だが…」
「そうか!レンカには寿命や命という概念がない。」
「そう云う事じゃ。」
そんな話をしていると、オーツがなにか見つけて、
「『イマージ』ってあれじゃないのか?」
と書かれてある表示を指さした。アルキは、
「まっ、やつの強さは見てみたら分かる。」
と言い、ショウ達は門の前まで来た。
 ショウ達が門に近づくと、
「ここからは、身分証明書をご提示ください。」
「身分証明書?」
「イウトでは、そんなの無かったのにな。」
「あそこは、警備したところで無意味じゃしな。それに、あんな猛者ばかりのところで犯罪なんざ起こせはせんからな。」
「確かに、起こしたら逆に返り討ちできそうだしな。」
「そうじゃろ。それ、4人分身分証じゃ。」
と言いながら、アルキが全員の身分証を提示した。そして門番は、
「確認が取れました。どうぞお入りください。」
と言い、門を開けてくれた。そこから中に入った。
 門の中は、人形が歩いたり、人間が空を飛んでいたりしていた。
「すげぇな~」
「偶に来るが、何度来ても驚かされるのぉ~」
「魔法は興味なかったが、確かに目の当たりにすると面白そうだ。」
「それで、レンカはどこにいるんですか?」
とショウはアルキに聞いた。アルキは、
「まぁ、焦るでない。真ん前にでかい建物があるじゃろ。」
と言い、とても広い5階建ての建物を指した。
「はい」
「あれがレンカの勤めておる学園『ジックフリー学園』じゃ!」
「ジックフリー学園って言うとよ、確か魔王サタンも通っていたと聴くが事実か?」
「あぁ、サタン様は自身の魔法を高めるため、学園を作り自身で学んでいた。」
「勤勉家なんだな。ショウの親父って」
「あぁ、できない事があることが気に入らない魔物だったよ。」
「さぁ、行くぞ」
とアルキを先頭に歩いていった。
 アルキは、「ジックフリー学園」の校門の前で止まり、呼び鈴を鳴らした。
「はい、どちら様でしょうか。」
「アルキというものじゃ、レンカに会いに来た。」
「アルキ様ですね。少々お待ちを、今から門を開きますね。」
そう言うと、校門が開いた。そこには、スーツ姿のエルフがいた。
「お久しぶりでございます。アルキ様」
「あぁ久方ぶりじゃな。実践訓練で呼ばれて以来じゃからな。」
「それでそちらの方々は?」
「あぁ、儂の連れじゃ。レンカに会いとうて来たんじゃ。」
「そうですか。レンカは、地下の訓練所で生徒達と訓練をしております。ご案内いたしますね。」
とエルフはアルキ達を先導した。
 エルフに先導され、地下に行くと地響きがした。
「何だ、この地響きは?」
「心配ありませんよ。これは、レンカと生徒達の訓練をしている証拠です。」
「こんなにも激しいのか?」
「まぁ、見てればわかりますよ。」
と笑顔で言うと、階段を1つ踏む度にどんどん地響きが激しくなってきた。そして、階段を上り切ると、
「ファイヤーブレス!」
「ウォーター」
「ワンダーボックス:ライトニングバード」
とそこには、獣人とアンデッドが眼鏡をかけた三つ編みツインの女に魔法で攻撃していた。魔法展開が尋常な速さじゃなかった。しかし女は、
「ジャッジメント・ディスティニー」
と3つの魔法を相殺し、光が訓練場すべてを包み込んだ。
 その光が消えると、獣人2体とアンデッドがボロボロになっており、女は拍手しながら近づいた。そして、
「皆さん素晴らしい連携ですよ。これなら、次の段階にいっても問題なさそうですね。」
と笑顔で3体を褒めた。その3体は立ち上がり、
「「「ありがとうございました!」」」
と一礼した。すると人間はこちらに気付くと、
「アルキ、久しぶり~」
と笑顔で声を掛けてきた。アルキは、
「相変わらず、規格外な魔法じゃな。レンカ」
と言った。レンカと言われた女は、頬をかきながら、
「大したことじゃないよ。サタン様は、私の倍の量を出してたんだから。」
と照れながら言った。
「貴方がレンカさんですか?」
「はい…まさか、ショウ様ですか?」
「そうですけど…」
「立派に成長されましたね。」
と涙ぐみながら言った。ショウ達は何が何やら分からなかった。レンカは涙を拭き、
「これは失礼いたしました。改めて、私が最強魔道士のレンカです。」
「自分で最強っていうんですね。」
「あぁいえ、皆からそう言われているのでつい…すみません。」
と頭を下げた。ショウは、
「いえ、いいと思いますよ。面白いです。」
と言った。レンカは顔を赤らめた。ザギルは、
「うっうん」
と咳払いをしてから、
「ショウ、そろそろ本題に入れ。」
「そうだな。レンカさん」
「はい!」
「貴方に僕の旅に付いてきてほしいんです。」
「え?」
「実は…」
とサタンとソフィアが死んだこと、勇者一行に復讐をしたい事などこれまで起こった事を話した。レンカの目に生気が無くなっていた。
「そ…そんな…ソフィア様が…」
「儂も聴いた時は驚いた。」
「アルキさん」
レンカは迷っていた。復讐したい自分と生徒達の訓練を付き合いたい自分がいた。それを察したアルキは、
「気持ちは理解できる。じゃが、今は一刻を争う。返答してくれ。」
「私は……」
とショウ達に返答した。

 ショウ達は、校門までレンカとスーツ姿のエルフに見送られた。
「レンカさん、お仕事頑張ってください。」
「ショウ様、わざわざ来て頂きありがとうございました。」
「行こう、皆」
とショウ達は、ザギル達を従えて行った。
 スーツ姿のエルフは、
「本当に宜しかったのですか?」
とエルフはレンカに聞いた。
「はい、私は今教師ですから。」
とエルフに笑顔で言った。

       数時間前
「私は、付いていけません。」
「な、何!どういう…」
とザギルが何か言おうとしたのをショウは止めた。ショウは、
「それだけ聞ければ十分です。ありがとうございました。」
と一礼した。そしてショウは、
「それで、もう一つ頼みたいことがあるんですが、いいですか?」
「何でしょうか?」
「僕に魔法を教えてください。」
とレンカに頭を下げた。
「構いませんよ。私はここにいつも居ますから。いらして戴ければ、私が教えますよ。」
「ありがとうございます。」
「では早速ですが、私にショウ様の今の実力を見せてください。」
「はい」
と言い、レンカとショウはさっき生徒達が訓練していた所まで歩いた。レンカとショウは対峙し、
「クラーンさん、合図をお願いします。」
「はい」
とスーツ姿のエルフークラーンーは、
「それでは、始め!」
それを聞いた瞬間、二人が魔法を展開した。
「バランカ」
「ライトニングドラゴン」
ショウがドラゴン型の雷を放った。それと同時に、レンカがショウの魔法を消滅させた。そこから、ショウはレンカに近づこうとしたが、
「魔法陣:エンドレス」
を展開した。そしてそれに踏み込むと、ショウは先程いた場所に戻っていた。そしてもう一度踏み込んでも、同じ場所に戻っていた。
「成る程、そう云うことですか。」
「ショウ様、勝負ありですよ。」
「え?」
とショウは、辺りを見渡した。そこには、光の球がショウの周りを囲っていた。更には、それの球を囲うように高レベルのテリトリーが張られていた。ショウは、
「本当に勝負ありか、確かめてください。」
そう言うと魔眼を開放した。そして、
「な、何じゃこの魔力量は!」
「さすが、サタンの息子ってところだな。」
と辺りを覆うほどの魔力を見せつけた。そこから火、水、風、土のすべてを融合させ、
「オリジン・ディール・テラー」
と八方に解き放った。
 しばらく土埃が晴れる待っていると、そこにはショウが膝を付き、息を切らしていた。レンカは、魔法陣を展開し、自身を守っていた。
「マジック・ディセーブル、魔法無効化の魔法陣です。ショウ様の敗因は、魔法展開の遅さと無駄な魔力出力です。魔法は、魔力をいかにコントロール出来るかが重要なんです。例えば」
と言いながら、そこの岩に火の魔法「ファイヤー」を二つ放った。一つは、黒焦げてはいるが崩れる様子はなかった。だがもう一方は、消し炭と化していた。
「ショウ様は、最初に私が放った方です。同じ魔法でも、魔力をコントロール出来てるかどうかで差が出るんです。」
「成る程…」
『ものは違うけど、キモンさんと同じこと言われてしまった。』
「それでは、大体実力はわかりましたので、本格的な訓練は明日にしましょう。」
とショウに手を差し伸べた。ショウはレンカの手を取り、
「はい、よろしくお願いします。」
と立ち上がって言った。

 レンカとクラーンは、先程使っていた訓練場に来た。
「私はさ、ずっと怯えながら生きなきゃいけないのかなって思ってたんだ~」
「急にどうしたんですか?」
「でもね、そんなある日にサタン様に出会って、またその後にソフィア様に出会ったの。」
「はあ…」
「あれはもう100年以上昔の話ね~」

        100年以上前
 レンカは、ソフィアと共に書庫にいた。
「私、いつまで怯えながら生きなきゃいけないんだろう~」
とレンカは下を向いて呟いた。レンカは、昔から戦闘が好きなわけではなかった。戦争には参加するものの、敵を殺したのはたった一度だけだった。
「レンカ」
と名前を言って、頭を撫でた。レンカは、
「ソ、ソフィア!」
と顔を赤くして、振りほどいた。しかし、ソフィアは手を振りほどかれたのと同時に、レンカを抱きしめた。
「ソ、ソフィア!いい加減に…」
「大丈夫」
「へ?」
「もう少しだけ、あと少しだけの我慢だよ。」
「何でわかるの?」
と涙を流しながら、ソフィアに聞いた。ソフィアは、
「だって、そんな気がするから。」
と何の証拠もなく言った。
「何それ…バッカみたい」
「そうかもね。でも私、かんは鋭いよ。」
とレンカの涙が止まるまで、ソフィアは優しく抱きしめて撫でてあげた。
 それを見ていたサタンは、
「本当に、戦争なんて下らないよな。」
とその場を立ち去り、レンカを除く七魔将軍にテレパシーを送った。
「七魔将軍に告ぐ、勇者共の戦争に終止符を打つぞ!」
「「「「「「は!」」」」」」
と全員が返答した。
 そこから数年間の激戦を制したのは勇者側であった。しかし、勇者ウルはサタンを殺さず、魔物と人間の共存という選択をとった。その為、死人が最小限度で終わらせることができた。

         現在
 レンカは、
「その時は、ソフィア様が預言者か何かと思っちゃったよ。」
とクラーンに言った。クラーンは、
「そんな方のご子息の力にはなれないと?」
とレンカの胸に刺さる言葉をはなった。
「私みたいな戦闘が嫌いな奴がいても、足手まといになるだけだからね。だから…」
「はぁ…まぁいいですよ。取り敢えず、この訓練場をちゃんと直しておいてください。」
「は~い」
と言って、訓練場を魔法で片付け始めた。
『明日からショウ様に、魔法を教えれるなんて光栄だな~』
とウキウキしながら、楽しそうに片付けていた。そして、
「本当は『こんな形で教えたくはなかったけど』…」
と少し悲しげな表情で呟いた。
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