上 下
41 / 52
第5章 学園騒乱

第35話A 放課後の激闘と告白~勇者の語らい

しおりを挟む
 草も木も無い荒野、辺りに生物の気配もないこの地で今、異変が起こっていた。

 ヒュン、ヒュンと風を切る音がしたかと思えば、金属同士がぶつかる音にあちらこちらで散る火花、轟音が鳴り響けば地は抉れ、枯れた土地にクレーターが出現する。

「やれば出来るじゃないか!ヒノシン!」
「カズヤんは随分、余裕そうだな!でもな・・・オレもまだまだ行けるぜ!」

 原因はこの二人、カズヤとシンが全ての元凶となる。こうしている今も鍔迫り合いをしながら、剣と言葉で語り合っている。実に元気だ。
もちろん、そんな二人に置いてかれヘタリと座り込む者もいる。

「私はもう・・・ついていけな~い」

 ユキハは「もう無理」と言わんばかりに頭上で腕を交差し「×」の字を作って休憩中だ。観客のサヤカとヒカリ、そしてナオヒトは感心半分呆れ半分だ。
 その中にリアとアリスの姿はない。

 どうしてこのような状況になっているのか?
 話は少し前まで遡る。

☆★☆

 授業も終わり放課後を迎えた俺達は全員集まると探索エリアへと向かった。「何で私に声をかけないの!兄さんヒドイ!」とヒカリにお叱りを受けた後の出発となった。
 向かうエリアはC級エリア、B級のナオヒトさんだけではなくS級クラス以上のアリスさんや母さんも今回は同行するので問題は何一つない。

 一応、マジックショップで行う同行サービスの試験も兼ねているので現地までの道中はデータ取りとなる。

 それまでの道程で俺は・・・

「あそこに何かいるよ!」
 ヒカリの指さす方へ向けて皆が一斉に目を向ける。
 確かにいる。

 灰の毛に鋭い牙と爪、集団で群れて行動し、見つけた獲物は逃さない。「グルルゥゥゥ!」といつ仕掛けてきてもおかしくないプレッシャー・・・
 間違いないあいつは!

「“ばっちいワンコ”だな!」
「「「「「グレーウルフ!」」」」」

 フッ、とドヤ顔で決める俺に対して周りからダメだしと訂正が向けられる。

 その後も・・・

 家畜のような臭いを漂わせるソイツは皮の鎧や槍などの武器に身を包み、五体で集団行動をとっている。豚によく似た二足歩行のあの魔物、今度こそ間違いない・・・あれは!

「“臭うおっさん”とその“おやぶん”だな!」

 ブブー!

 (誤)臭うおっさん → (正)オーク
 (誤)臭うおっさんのおやぶん → (正)オークキング

 ”臭うおっさんのおやぶん”改め”オークキング”はC級までの道のりで出ないはずの魔物ということもあり、討伐後に協会へと報告することになる。

 まだ続く・・・

 悪鬼の如き形相に装備は皮の腰巻にこん棒、俺の倍以上の身長に筋肉なのか脂肪なのか判断つかない、あの体・・・三度目の正直!あいつは・・・

「“はだかの大食い王”だ!」

 ブッブッブー!

 (誤)はだかの大食い王 → (正)トロル

 ちなみに俺が『はだかの大食いチャンプ』と認識していたのは『トロルキング』とのことだ。遭遇した時、女性陣を食べ物を見るような目で見て、リアを狙ったので切り刻んでやった。

 ・・・。
「カズヤ君、授業・・・頑張ろう」
「兄さん、こんなにヒドかったっけ」
「カズヤん、いくらなんでもそれはない」
「トキノ君!リアちゃん泣かせたらダメって言ったでしょ!」 
「カズヤ・・・ファイトだ、よ?」
「カズヤ君・・・赤点ね」
「学園卒業、大丈夫かしら・・・」

 皆からお叱りと励ましと同情を寄せられる道中となった。


☆★☆

「それじゃ、私とリアはここから別行動するから・・・また後でね!」
 そう言い残してアリスさんはリアの手を引き違う方向へと姿を消した。ウインク交じりに微笑む姿はいたずらっ子のように思える。何か企んでいるのだろう。悪いことではない様子だったので心配は不要だろう。
 別れてから少し歩くと目的の場所についた。

 広い上に見晴らしがよく魔物が現れてもすぐに気付くことができる。人影も生物らしき姿も俺達を除いてどこにもない。ただ一面に荒野だけが広がっていた。
これなら暴れ回っても問題なさそうだ。

「それでは早速始めようか。ヒノシンとナナクサさんの二人対俺一人でこれから打ち合う!特訓の内容は以上だ」

 俺は皆の前に出て腕を組み考えを伝えると、横からヒカリが抗議を上げる。

「兄さん、私は~!」
「ヒカリは今回、見学な」

 頬を膨らませ舌打ちをする我が妹、つまらなそうにそっぽを向く。「埋め合わせは別の形でする」ということで納得してもらったが、小悪魔な表情を浮かべたので覚悟はした方が良いだろう。そんなやり取りをしていると・・・

 ビシッ、と挙手する女子一名、
 ナナクサさんだ。

「個人的にトキノ君と剣を交えたい気もするけど・・・」
「けど?」

 勢いよく挙手した割りにどこか遠慮気味なナナクサさん、目を泳がせて言おうか言うまいか少し迷った後に口を開いた。

「トキノ君、女の人相手でも容赦ない、ってリアちゃんが・・・。顔も平気で殴ったり、蹴ったりするのを見た、って・・・」

「うわっ!兄さん、最低・・・」
 同調したヒカリが非難の声を向け他のみんなも同じ視線を俺に向ける。あれ?おかしいな。

「誤解があるようだから言っておくが、これまでリアの前で俺は一度も女の人・・・と戦ったことはないはずなんだがな」

 最初のクモコウモリは兵器だったし、その後は色違いのトカゲにマンモスとコブラだ。女の人はいなかったはずだ。
 真顔で言う俺に皆が皆静まり出して考え込む。口を開いたのはナオヒトさんだ。

「カズヤ君、念のためだけど、妹さんやナナクサさんは“女の子”に見えるかい」

 うん?何を言っているんだナオヒトさんは・・・、そんなの決まっているじゃないか。

「見えますよ。二人とも“美少女”じゃないですか。当たり前ですよ」
 目を見開き驚く様子のナオヒトさん。失礼な!ほっとしながらもモジモジと照れ出すナナクサさんとヒカリ。対照的だが俺は間違えてはいない、ということだ。
 本当のことを言ったのだから当然だろう。

「そっ、それじゃぁ聞くけど・・・カズヤ君のお母さんや店長はどう見える?ぼくには見た目では十代後半から二十代前半に見えるけど・・・」

 ナオヒトさんは本当に何がしたいんだ?これ当たり前だろう。

「俺も同じですよ。二人とも美人ですよね!」

 おれの言葉に母さんは「今晩の夕食、好きなものを作ってあげる」と上機嫌になった。他のみんなも全員納得して安心した表情を浮かばせる。
 本当に何がしたかったんだ。

「あの・・・もう始めていいかな?」

 俺の言葉で特訓が開始となった。

 今回の狙いは俺の称号技能『導き手』にある。以前、この効果?とリアの『ラーニング』が重なり、成長を促進させた実績がある。
これは一種の賭けだが『導き手』の効果の発動に期待して剣を交えようということだ。
 上手くいけばヒノシンの『眠れる勇者』が目を覚ますかもしれない。

 そして一時間程打ち合って今に至るというわけだ。

 最初はヒノシンとナナクサさんの同時攻撃も難なく受け止めることができた。少しずつ動きが良くなったことを察し、徐々に速度を釣り上げたが問題なくついて来れた。
 途中でナナクサさんは息切れし離脱することとなったがヒノシンは見事に喰らい付いてきた。一対一になってから更に動きが増しているが・・・何か足りない。

「カズヤん!これでどうだ!」
「甘い!」

 ヒノシンの大剣が俺に向けて横薙ぎに振り払われる。俺は片手持ちの“連月”で易々と受け止めはじき返し、体勢を崩した隙に鳩尾に蹴りを入れて地に叩き伏せる。

「ぐはっ!」

 まだまだ、と言いたげに大剣を杖にして起き上がるヒノシン、根性は認める。力を引き出している感はある。
 けど・・・決定的な何かが足りない。

「ヒノシン!お前の勇者の力の源は何だ!それを思い出せ!」
「そっ、そんなこと言われても・・・」

 連月の切っ先をヒノシンに向ける。剣は心を映す鏡・・・、何度か打ち合ってわかったがヒノシンの剣はどこか曇っているような気がした。最初は三年前に敗北し、好きな子を失った喪失から来ているようにも思ったが・・・違う。違うんだ。
 俺の中の勇者の力がヒノシンの中で眠るそれに反応し『違う』と言っている。
 俺は一度剣を鞘に納めかろうじて立ち上がる友と向かい合った。
どこか悲しそうな目をしている。

「お前はどうやって、その力を手にした?もしかして一度死んで乗り越えた時か?」
「どっ、どうしてそのことを知って・・・」

 どうやら図星のようだな。アナライズ・アイで鑑定した時に称号以外で気になることがあったからな。『種族:転生人』、転生回数は一回。
 俺もリアも転生した時に大きな力を得ている。ヒノシンもその可能性が高い。

「話してくれないか?」
「ああ、わかった」

 ヒノシンの話の内容は壮絶だった。何というか信じられない方向に話が飛んで行った。内容はこうだ。

 今から四年程前、この星を襲った異星からの侵略者がいた。
 たまたま、異星人が人を襲っているところを目撃し、襲われていた人を救出しようとし深手を負って死に瀕した。
 その時、ヒノシンの命を救ってくれたのが異星の勇者なのだという。彼はヒノシンと融合し勇者の力を共有することで生き返らせたのだそうだ。
 ちなみにその時襲われていた人というのが“ルカ・シオウ”でその後の一年間、ヒノシンは異星の勇者とルカとで協力し合い侵略者の手からこの星を守った、ということだ。

 これ、本当か?
 けど、ヒノシンの目は真剣だ嘘を言っているようには見えない。この手の話は正直、好物だが現実で起こっていた、と言われても反応に困る。
 せめて俺にこの世界の記憶があれば判断つくかもしれないが・・・

「カズヤ・・・、彼の言っていることは多分本当よ。私達も当時、戦っていたから何となくわかるの。もっとも敵の正体を知る頃には全てが終わっていたのだけど・・・」

 母さんからの告白で、信じられないような話が真実であると語られる。嘘・・・だよね?

「えっ、そうしたら、あの時の赤いロボットに乗っていたのヒノモト君だったの」
「そりゃあ凄いね。当時、操縦者は子供じゃないかって報道されていからね。辻褄は合っているよ」

 ナナクサさんとナオヒトさんが驚きと納得の言葉を肯定し更に真実であることを裏付ける。皆で口裏合わせて俺を騙そうとしているわけではないらしい。

「そういえば、その頃ね。ルカちゃんが急に強くなったのは」
「ああ!確かにそう。それまで私と同じくらいだったのに急に強くなったの。今のリアちゃんとならわからないけど、シオウ四姉妹の中で最強と言われるようになったの」

 母さんもヒカリも思う所や色々な心当たりがあるらしい。何だか俺だけが取り残されている。俺はそんなに非常識なのだろうか。
 まっ、まあいい。話を進めよう。

「ヒノシン・・・、続きがあるんだろ?」
「ああ、それで最後の戦いの時・・・、一緒に戦ってくれた勇者は傷つき瀕死の重傷を負ってしまってな・・・その状態で俺とルカを救うために命を燃やして力尽きたんだ。俺に生きていけるだけの力を託して・・・」

 そういうことか・・・最後はどういう状況かは分からないが、勇者の力を共有していた戦友が二人を救うために力を使いはたして命を落としたと・・・ヒノシンが死んでしまわないようにする最低限の力だけ残して消えた、と思ってしまっている・・・・・・・・・わけだ。

「ヒノシン・・・いや、“シン”!剣をとれ!」

 俺は連月をしまうと、月輪を取り出し光の剣を両の手に持ち正眼に構える。瞬間、精霊闘衣“月”が纏われる。その姿にシンは驚きを隠せないでいるが、俺から発せられる気を感じ同様に構えをとる。

「シン!お前は戦友ともが死んだと思っているようだが、それは違う!彼は今もお前の中で生きている!」
「そんな綺麗ご・・・」
「嘘じゃない!お前の中にある心に語りかけろ!生きているはずだ。そいつの友達なんだろ!『死んだ』と思えば本当に死んでしまう。お前が彼を殺すことになるんだ!」

 そうだ、確かに感じる。俺には分かる。俺も同じ・・だからな。

「くっ、本当なのか?だったら・・・」

 そうだ思い出すんだ。友を・・・もう一人の自分と言ってもいい半身を・・・

「だったら応えてくれ!そして、また俺と共に戦ってくれ・・・」

「今だ!月風つきかぜ! “月光鏡”」

「ブレイブ・ファイヤー・Vッーー!」

 神秘魔法の月光鏡が輝き出すと同時にシンは剣を天に高々と掲げ魂の叫びをとどろかせた。月光鏡の輝きが剣を照らし天に向かってシンの勇者の光が解き放たれ赤き炎の如き閃光が辺りを駆け巡った。眩い輝きに目を開けていられる者などおらず皆が自身の腕か何かで目元を覆う。
 やがて視界を取り戻すと、それまでの奇跡が嘘のように辺りは静まり返った。

「ヒノモト君・・・、それって・・・!」

 ナナクサさんの声に皆が視線を指さす方へと振り向ける。

「これは昔、皆を守って戦っていた・・・赤いロボット?」
「でも、小さい・・・かな?」

 ナオヒトさんが顎に手をやり唸りながら正体を明かすと、ヒカリがそれに続いて感想を漏らした。

 今、シンの側に浮かぶその存在は二頭身姿をした手の平サイズなロボットである。つまり、シンが語っていた昔一緒に戦った戦友ということだろう。
 名前は確か“ブレイブ・ファイヤー・ヴイ”、だったか・・・なんか凄く格好いいな!

「その格好いいの、精霊・・・とは違うかな?でも、似たような存在みたいだな・・・」
「カズヤんがそう言うなら、きっとそうなんだろうな。だけど、なんか心の中のモヤモヤが凄く晴れたみたいだ。」
「なら・・・試してみたくはないか?」
「だな!」

 俺とシンは互いに構える。

「出でよ!ファイヤー・キャリバーッーーー!」

 シンの叫びとともに紅の大剣が握られる。炎の形をイメージした柄の中心には緑の宝珠を宿し、紅の刀身には黄金のラインが魔力・・を走らせる。
 剣から発せられる炎の如きオーラはシンの体を包み勇者の鎧へと変化を遂げる。

「ブレイブ・フォース!全・開!」

 俺も負けてはいられない。“ソウル・フェニックス”を解放し渾身の力で迎え撃つ。

「シャイニング・フェニックス!」

 互いに正面を向かい合い紅蓮と白銀のオーラが互いにぶつかり光の渦を巻き上げる。巻き起こる衝撃と突風が辺りを襲い全てを震えさせるかのようだ。

「行くぞ!カズヤ! 爆火ばっか紅雷斬こうらいざん!!」
「受けて立つ!シン! 閃凰天翔斬せんおうてんしょうざん!!」

 紅のいかずちを纏いし炎の化身と白銀の光の神鳥かみどりが飛翔しぶつかり合う。

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!」」

 どちらも譲らず膠着状態が続くに見られたが、二人の叫び声とともに爆発し赤と銀の閃光が飛び散った。耳を塞がずにはいられぬ程の轟音が鳴り響き、爆煙の彼方に二人の姿は沈んでいく・・・やがて静寂へと移り変わった。

「兄さん・・・」
「いや、あそこ!」

 ナオヒトが指し示す方向に二人の姿があった。両者とも大地背をつけ文字通り大の字になって天を仰いでいた。二人とも笑っている。

「やるな・・・、ヒノシン」
「やっぱり、カズヤんには敵わないな。まだ隠してるよな・・・」
「どうだかな」

 満足そうな顔をし互いに支え合って立ち上がるのだった。

☆★☆

「二人ともホントに凄かったわね。最後の一撃、あれが特にね」
「本当、だね。わたしも負けられないな、って思ったもの」

「アリスさん!それにリア・・・は何かその、大丈夫か?」

 いつの間にか合流していたアリスさんに拍手を貰い、後ろから現れたリアは何かボロボロだった。服は所々がほつれ、泥や埃が目立つ。一体何があったんだろう?

「大丈夫、だよ」
 そういう彼女は「てへっ」と言わんばかりに舌を出し可愛く微笑んでいる。

「あのね。わたし達だけじゃないんだよ。もう一人いるの。ほら、ヒノモト君!」

 そうして奥から一人の女の子が現れた。リアとそっくりの顔に長い茶髪を結わえ尻尾のように下げている。顔は瓜二つで年齢も同じに感じるのだけど、リアより少し成長している、という印象がある。身長もわずかばかり高いようだ。多分、この子が・・・

「ルカ・・・ルカなのか?」
「よっ・・・久しぶり」

 やはりそうらしい。ヒノシンは嬉しいと驚きに緊張と戸惑いが複雑に混ざり合った表情を浮かべる。対してルカの方は言葉はぶっきらぼうであるものの頬は赤く、俯き加減だ。

「髪、染めたのか?前は黒かったのに・・・」
「うん。色々あって・・・シンは黒い方が良かった?」
「あっ、うん・・・いや、その色もいいと思う。うん、ルカ、凄く綺麗になった」
「アリガト・・・、髪、元の色に戻そうかな」

 周りの目など気にせず、すっかり二人きりの世界に入っている、なんて考えたら周りからは『君達もね!』という風に睨まれてしまった。俺とリアもいつもこういう風に見えている、ということだろう。

「ぷっ、くくく・・・ゴメン。オレ達、何を話しているんだろうな。もっと言いたいことがあったはずなのに・・・」
「クスッ、そうだね。でもあたし達はそれでいいのかもしれないね」
「そうだな」
「そうだね」

 二人で笑い合い、より一層二人だけの世界へ埋没していく。俺も少し気をつけよう。多分無理だけど・・・

「会えて嬉しい。絶対に強くなって、認めてもらうから!そうしたらその時、伝えたいことがあるんだ。それまで待っていて欲しい」
「その不意打ち卑怯・・・でも、三年待った。もう少し待ってもいいから早く来なさいよね・・・バカ」


「うっうう。ああ、これでようやくルカを貰ってくれそうな人が見つかって、お母さん嬉しいわ・・・。この子、魔法を除けば“顔と体”だけだったから心配していたのよ。お料理、洗濯、裁縫、掃除に片づけ全部ダメ、おまけにちょっと反抗期の男嫌い。ヒノモト君、お願いね。ホント頑張って!」

 アリスさんの発言によりあっさりと二人だけの世界は崩れ去った。ガラガラと音を立てて崩れる音がその場にいた全員に聞こえていただろう。

 それにしてもアリスさん実の娘に“顔と体だけ”は無いのではないだろうか。更には「この子の部屋、ヒドイのよ!脱いだ服や下着もそのまま散らかって・・・」と追い打ちをかける始末。ヒノシンよ、取りあえず鼻血は拭いておけ!

 ともあれ、ヒノシンは勇者の力の解放に成功した。勇者の力を魔力へ変換していたのも確認した。手にした力を使いこなせるようになればまだ伸びることは間違いない。確かな手ごたえを俺は感じていた。






































































































しおりを挟む

処理中です...