バカなあいつが可愛くて

うんとこどっこいしょ

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7.バカ

「自分で歩け」
「んー、おーさわさんはぁ?」
「あ?誰だそいつ」

 ぼやけた視界のなかで路肩に止めた黒塗りのセダンを見つけた謙也。深司の不機嫌な声色にも気付かず「はやくー」と、体格の良い彼に全体重をかける。
 まさに引っ付き虫となった彼を、深司は何でもないかのようにひょいと持ち上げると「お前軽すぎ」と言いながら後部座席に謙也を乗せ、その隣に自分も乗り込んだ。

「出せ」

 運転席には待ちくたびれた近藤がいて、深司のその一言で「くあぁ」と大きな欠伸をしてから車を発進させた。

「ぁぅ……ぐわんぐわんする……」
「どんだけ飲んだんだ」
「ん~……」

 謙也は綿の弱った人形のようにくったりしながら、ぼんやりとした視線を隣へ向ける。そして幼馴染みと目が合うとピースをしてヘラリと笑った。

「にぃ」
「二杯か」
「ん……」
「何を飲んだか覚えてるか」

 たったの二杯でどうしてここまで……と深司は怪訝な表情をする。そんな彼の横で「ぅ……へへ」と何か思い出したように謙也は笑い始めた。

「なんかぁ、きいろいおうむっていうへんなやつのんだぁ……うまかったなぁ、へへへ」
「黄色いオウム?……ハァ、お前は正真正銘の馬鹿だな」
「うん……?」

 謙也は何が?と言いたそうに唇を尖らせる。いつもなら「どうせ馬鹿だもん」と開き直るのだが、今日はひどい眠気のせいでそれも難しい。

「んっ」

 謙也の火照った頬に手を伸ばした深司。鼻にかかった声は艶っぽく、とろんとした目は男を誘うように潤んでいる。

「お前が飲んだのはレディーキラーカクテルだ」
「れでぃ……?おれおんなじゃにゃいもん……うぉッ!?」

 深司は謙也を自分の膝の上に乗せると、彼を後から抱き締めて首筋に唇を寄せた。

「はぁぅ♡」

 両手で胸を揉むようにまさぐると謙也から甘い声が漏れる。

「……俺以外の奴にこうされるところだったんだぞ、お前はそれでいいのか」
「ぁ、ぁ……ッ♡」

 布越しに乳首をきゅっと摘まれて謙也は突然やってきた快感に腰をくねらせた。

「答えろ」

 体に響くようなバリトンボイス。謙也はぞくぞくしながら潤んだ瞳からポロリと涙をこぼした。

「ぁ、ぁぇっ……や、やだ……!深司じゃないとぉ……ッ♡」
「……こっち向け」
「ん……っ」

 言われた通り顔を横に向けると噛みつかれるようなキスが始まる。

「ふぁ……っんん♡」
「ん……謙也」

 アルコールでボーっとしていた頭を更に溶かすような濃厚な口付け。その間にも弄られ続けていた乳首は服の下でジンジンと甘く疼いていた。

「ん、むぁ……っ♡」
「もういっそ首輪でもつけておくか」

 呟くように言った深司の言葉に今まで黙っていた近藤が口を開く。

「お取り込み中のところ申し訳ないんですが……」とバックミラー越しにチラと後部座席を見た。酒に酔い、自分の上司である若頭にイイようにされている青年が目に入る。近藤は一瞬だけ自分と謙也の良からぬところを想像してしまい、いかんいかんと振り払うように首を振った。

「どうした?」
「……あの男、あのまま帰しちゃって良かったんですか?」
「ああ、いい。どうせすぐ見つかる」
「どうしてそう言い切れるんです?」
「あのバーの従業員とグルのようだからな」
「なるほど、あの店をつつけばいいってことですね」
「ああ」

 二人の会話に置いてけぼりだった謙也はいつの間にか眠ってしまったようだった。深司の上に乗ったままくぅくぅと小さな寝息を立てていた。

「本当馬鹿だなこいつは」

 幼馴染みの危機感の無さに深司は呆れて笑うしか無かった。
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