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第一章
謎の男
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素人釣り人兵士は視線を逸して「散歩だ」と言った。
(いや、歩いてないし。釣りしてたし。てゆーか仕事中でしょーが。仕事しろし)
「お前…名前は?」
(え?なまえ?)
これは大変まずいことになった。名前を聞かれるなんて思ってもみなかった。いや、想定できたはすだが考えていなかった。
(どうしよう。まさか名乗るわけにもいかないし)
万が一ウェントゥスの姫だとバレてしまえば国に一報が入るとも考えられる。そうなっては困るのだ。
逡巡していると男から思いもよらぬ言葉が降ってきた。
「ミア?」
「え?」
顔を上げると男はミルディリアの腰元を見ていた。その視線を追うと剣の柄に昔書いた『ミルディリア』の文字が掠れて一部しか読めなくなっている。
「ええ、ええ!そうよ!」
(愛称!そう!愛称だと思えばミアって変じゃないよね?わざわざフルネームを名乗る必要もないし!
これ以上掘り下げないで!!チェンジ!!話題チェンジ!!)
「あなたは…っイグニスの兵士なの?」
(あっ危ない!危ない!名前聞くとこだったよ!
話題チェンジチャンスを振り出しに戻すとこだったよ!兵士って見れば分かるけども!分かるけども聞いちゃったけども!!)
内心慌てふためくミルディリアに男は違和感を感じてはいないようだ。寧ろ少し楽しそうにも見える。
「まぁ、そんなもんだ。で?ミアはここで何をしているんだ?」
「入国料が高すぎて払えなくて立ち往生してるの!!」
ほぼ八つ当たり状態のキレ気味で返すと男は驚いたように少し目を見開いた。それはそうだろう。兵士ともなればそこそこの給金を貰っているはずだから入国料程度払えない訳がない。
(あんな安い入国料も払えねーのか。とか思ってるんでしょ?でも高いもんは高いし。払えないもんは払えないんです!高い入国料ふんだくってカイル王は入国料で生活してるの?!そんなに貧乏なの?!それともセコいの?!わざと入国料高くして街に誰も寄せ付けないようにしてるとか?!悪の大王とか言ってただの人見知りの引きこもりなんじゃないの?!
でもいいの。良いこと思いついたんだから!売れば入国料以上になるモンスターの欠片を集めて交渉するの!それでも駄目ならもう諦めて北へ向かうつもりだから。イグニスへはまた後で来ればいいし!!
…って……あれ?」
(もしかして、もしかしなくても…思ってたはずの事が口から出ていた気がしないでもない)
さっと男の顔色を窺うと男は掌で口元を隠し俯いている。
肩を震わせながら。
(うわーーーやっぱりめっちゃ口に出して言ってたみたい)
「はははっ…!」
男は堪えきれなくなったのか声を出して笑った。
「ミア、イグニスの兵士になれよ。明日兵士採用の試験がある。お前なら受かる」
若干笑いを引きずったままサラリととんでもない事を言われた。
(でも良かった。自国の王をめっちゃ批判してたのに笑い飛ばしてくれて。飛ぶのが首だったかもしれないのに。もしかしてアンチカイル派?)
「っくくっ…ミアまた心の声がだだ洩れてるぞ」
はっとして口元を押さえたが後の祭りだ。
取り敢えずこの変な兵士は笑ってるから大丈夫だろう。
「兵士試験は明日の朝から始まる。簡単な試験だ」
「いやいやいや、だーかーらー!入国料が払えないんだってば!!」
「あぁ、そうか」
変な兵士はポケットをまさぐり、ほら、とミルディリアに紙の束を差し出した。
「…え?」
何度瞬きしても変わらない。それは札束だ。2、3回入国できる程の。
(いやいやいや、入国するの1回でいいし!って、そーゆーことじゃなくて!
怖い!怖いんですけど!!赤の他人に、しかも釣った魚を食われた他人に金を差しだすってどーゆう心境?!)
「ど、どういう意味ですか?」
「出世払いで返してくれればいい。受け取れ」
(いやいやいや、出世どころか兵士になれるかも分からないし、そもそも兵士になるなんて言ってないんですけどー?
これは、あれか?私を売り飛ばしてもっと高い額を手に入れようと?でもそれなら入国させずにここで縛って連れてくだろうし。多少抵抗しても…うん。勝てる気全然しないし。新手の詐欺か?後から多額の利子請求とか?)
ぐるぐると考えを巡らせていると、ほら、と言わんばかりに大金を目の前につきだしてくる変な兵士。
「あの、お気持ちだけは受け取っておきます」
(気持ちすらもいらねーけどなっ!てゆーか、怖いし。めちゃ怖いし)
何とも感情の読めなくなった顔をした変な兵士に立て続けに言ってみる
「それよりも釣竿を売ってくれませんか?」
ミルディリアは釣りが得意だ。釣竿があれば川魚を釣って食いっぱぐれる心配もない。川をつたって北に向かうこともできる。ここから北に行けば大きな街があるのだか、その街ならば入国料は不要だ。
男は眉間に皺を寄せて黙っている。
(なに?なに?その大金で新しい釣竿買いなよ!買い換え時かもよ!)
とにかく交渉したからには微々たる現金を見せなければ、とポケットをまさぐると
「釣竿はやらん。お前は兵士になれ。今日は入国料半額セール中だ」
「は?」(はんがくせーる?)
「待ってる」
微笑んで変な兵士は去っていった。
(いや、歩いてないし。釣りしてたし。てゆーか仕事中でしょーが。仕事しろし)
「お前…名前は?」
(え?なまえ?)
これは大変まずいことになった。名前を聞かれるなんて思ってもみなかった。いや、想定できたはすだが考えていなかった。
(どうしよう。まさか名乗るわけにもいかないし)
万が一ウェントゥスの姫だとバレてしまえば国に一報が入るとも考えられる。そうなっては困るのだ。
逡巡していると男から思いもよらぬ言葉が降ってきた。
「ミア?」
「え?」
顔を上げると男はミルディリアの腰元を見ていた。その視線を追うと剣の柄に昔書いた『ミルディリア』の文字が掠れて一部しか読めなくなっている。
「ええ、ええ!そうよ!」
(愛称!そう!愛称だと思えばミアって変じゃないよね?わざわざフルネームを名乗る必要もないし!
これ以上掘り下げないで!!チェンジ!!話題チェンジ!!)
「あなたは…っイグニスの兵士なの?」
(あっ危ない!危ない!名前聞くとこだったよ!
話題チェンジチャンスを振り出しに戻すとこだったよ!兵士って見れば分かるけども!分かるけども聞いちゃったけども!!)
内心慌てふためくミルディリアに男は違和感を感じてはいないようだ。寧ろ少し楽しそうにも見える。
「まぁ、そんなもんだ。で?ミアはここで何をしているんだ?」
「入国料が高すぎて払えなくて立ち往生してるの!!」
ほぼ八つ当たり状態のキレ気味で返すと男は驚いたように少し目を見開いた。それはそうだろう。兵士ともなればそこそこの給金を貰っているはずだから入国料程度払えない訳がない。
(あんな安い入国料も払えねーのか。とか思ってるんでしょ?でも高いもんは高いし。払えないもんは払えないんです!高い入国料ふんだくってカイル王は入国料で生活してるの?!そんなに貧乏なの?!それともセコいの?!わざと入国料高くして街に誰も寄せ付けないようにしてるとか?!悪の大王とか言ってただの人見知りの引きこもりなんじゃないの?!
でもいいの。良いこと思いついたんだから!売れば入国料以上になるモンスターの欠片を集めて交渉するの!それでも駄目ならもう諦めて北へ向かうつもりだから。イグニスへはまた後で来ればいいし!!
…って……あれ?」
(もしかして、もしかしなくても…思ってたはずの事が口から出ていた気がしないでもない)
さっと男の顔色を窺うと男は掌で口元を隠し俯いている。
肩を震わせながら。
(うわーーーやっぱりめっちゃ口に出して言ってたみたい)
「はははっ…!」
男は堪えきれなくなったのか声を出して笑った。
「ミア、イグニスの兵士になれよ。明日兵士採用の試験がある。お前なら受かる」
若干笑いを引きずったままサラリととんでもない事を言われた。
(でも良かった。自国の王をめっちゃ批判してたのに笑い飛ばしてくれて。飛ぶのが首だったかもしれないのに。もしかしてアンチカイル派?)
「っくくっ…ミアまた心の声がだだ洩れてるぞ」
はっとして口元を押さえたが後の祭りだ。
取り敢えずこの変な兵士は笑ってるから大丈夫だろう。
「兵士試験は明日の朝から始まる。簡単な試験だ」
「いやいやいや、だーかーらー!入国料が払えないんだってば!!」
「あぁ、そうか」
変な兵士はポケットをまさぐり、ほら、とミルディリアに紙の束を差し出した。
「…え?」
何度瞬きしても変わらない。それは札束だ。2、3回入国できる程の。
(いやいやいや、入国するの1回でいいし!って、そーゆーことじゃなくて!
怖い!怖いんですけど!!赤の他人に、しかも釣った魚を食われた他人に金を差しだすってどーゆう心境?!)
「ど、どういう意味ですか?」
「出世払いで返してくれればいい。受け取れ」
(いやいやいや、出世どころか兵士になれるかも分からないし、そもそも兵士になるなんて言ってないんですけどー?
これは、あれか?私を売り飛ばしてもっと高い額を手に入れようと?でもそれなら入国させずにここで縛って連れてくだろうし。多少抵抗しても…うん。勝てる気全然しないし。新手の詐欺か?後から多額の利子請求とか?)
ぐるぐると考えを巡らせていると、ほら、と言わんばかりに大金を目の前につきだしてくる変な兵士。
「あの、お気持ちだけは受け取っておきます」
(気持ちすらもいらねーけどなっ!てゆーか、怖いし。めちゃ怖いし)
何とも感情の読めなくなった顔をした変な兵士に立て続けに言ってみる
「それよりも釣竿を売ってくれませんか?」
ミルディリアは釣りが得意だ。釣竿があれば川魚を釣って食いっぱぐれる心配もない。川をつたって北に向かうこともできる。ここから北に行けば大きな街があるのだか、その街ならば入国料は不要だ。
男は眉間に皺を寄せて黙っている。
(なに?なに?その大金で新しい釣竿買いなよ!買い換え時かもよ!)
とにかく交渉したからには微々たる現金を見せなければ、とポケットをまさぐると
「釣竿はやらん。お前は兵士になれ。今日は入国料半額セール中だ」
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微笑んで変な兵士は去っていった。
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