吹き抜けるは真紅の風

もちぷに

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第一章

一人結果報告会

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───カサコソ…

「な、なに!割れているだと!!」

国王様から貰ったクッキーはいつの間にか床に置かれていて
(多分私が落としたんだけどな!)
少し割れてしまった。

(だって…あんな事するなんてずるい。
沢山恋人いるくせに!いや、恋人にはもっとちゃんとキスとかするんだよね……きっと。手紙のやり取りとかもさ…)
胸の奥が急に苛っとした。
(スカーレットって誰だろう……王女じゃないしなぁ…)

ミルディリアだって一応姫。よっぽど小さな国じゃなければその国を治める者の事位は情報として知っている。ほとんどの人と会った事は無いのだが。

(クロード様が手紙を受け取ったって事はメディウムの人かな?メディウムにも恋人がいるんだ…)
その時ふと思い出した。
メディウムでぶつかってしまった女性のことを…
────『カイルは来てるの?』

(あのメディウムの女性兵士…武器を持ってなかったって事は魔法だけで戦えるのかも)

緋色の髪、緋色の瞳、それだけで国王様とお似合いだ。そして何より国王様の好みのタイプ。

(呼び捨てにしてるって事は…あの人も恋人?………美人ばっかり!)
苛立たし気にクッキーにかぶりついた。

────サクッ

「!!!」
(なんじゃこりゃ!お、美味しい!!)

繁々とクッキーを眺める。色々なフレーバーのクッキーの中でもナッツがキャラメルでコーティングされたものがのっているクッキーは抜群に美味しかった。

(どこのクッキーなんだろう)
箱にはお店の名前が書かれていない。
(今度聞いてみよーっと)


夜の屋上で一人。クッキーを頬張りながら
悪魔退治の事を考える。

違和感だらけの悪魔退治だった。

先ずはフレドリックの事。
優しかったフレッドが嘘だったとはどうしても思えない。でもあの時見たフレッドも現実だ。

(もしかしたら…そっくりさん?双子だったりして……いや、無いな。
いつだったか国王様も凄く怖くなった時があったな。マリウスと二人で恐怖に震えた事が………あれは何でだっけ?)
そう考えると男の人にはそういった二面性があるのかもしれないと思った。
(背負うものの違いとか…?そりゃそうだよね。二人とも国王だもん。私とは違うわ。一先ずフレッドの事はおいておこう。今考えた所で何も分からないし)


一番の違和感は…
赤い目が魔法に反応しなかった事。
最初の見解が検討違いだったのかとも思った。だけどあの赤い目も『魔法に反応した』のではないかと。
今までの赤い目は『魔法を使う者に攻撃をする』
巨大モンスターはその逆。
『魔法を使う者がいたら退却する』

(防御壁は見えてないはずだけど…モンスターは感じ取れるのかもしれない)

ガオルを探しながら思わぬ所で情報が得られた。
片付けをしているメディウムの兵士達の会話に「今回モンスターの撃退は今までに無い早さで終わった」と。いつもはもっと弱ってからなのにと言っていた。
ミルディリアが防御壁を張った直後、モンスターの様子が変わった。明らかに迷っている様子だった。

(あのモンスターは意思をもっている)

そう思わずにはいられなかった。
もしも人の手で操っているとしたら、やはりメディウム兵士の力を国民に誇示する為と考えるのが普通だ。

(魔法を使う者が現れたら撤退するって命令を出していたとしたら…メディウム国王と、もしかしたら王妃も加担している?
…指揮を取っていたフレッドは?
…生きて帰って来れたカイル国王様は?

……違うよね。そんなはずないよね?)

眉間に皺を寄せ、自分の考えを否定するように首を横に振った。ウィルバーフォース家は全員が高い魔力を持っている。今回悪魔退治に全く関わっていないもう一人の家族も。

(…ヴィエラは?)

ヴィエラの治める国、アルボルは悪魔退治に参加を許されていない。
(それは自分の手を汚したくないから?)

ミルディリアはぶんぶんと首を横に振った。
(そんなわけないっ!!きっとヴィエラは女の子だし、大事に思われているから!クラーク国王と王妃が参加を許さないだけだ!)

先入観を持ってはいけない。
分かっている。
だけど…

「信じたいんだーーーー!!!!」

そんな事言い出したらフレッドだってあの二人の子供だ。それなのに嫌な事を先陣切ってやらされている。

(赤い目を各国に送り込んでいるのはクラーク国王?…そこが繋がらない。
ウェントゥスへの領土拡大の為だとしたらまだ分かる。でもイグニスは息子の治める国。しかももっと言えば今は亡き元王妃の故郷。何の為に?…………う~煮詰まった)

ウォラーレをお父様の元へ飛ばす。メディウムに行った事は話せないので『何も進展なし』と手紙をつけた。ウォラーレが夜の闇に消えて行くのを見届ける。

「今日はもう寝よう…」

ミルディリアはクッキーを抱えて階段を降りた。そこでばったり国王様に会った。

「こ、こんばんは」
(さっきまで一緒にいたのに何故挨拶した!私!)

国王様も同じ事を思ったのだろうか。ミルディリアを見て微笑んでいる。

「クッキーすごく美味しかったです!ありがとうございます!これはどこで買ったんですか?」

「あぁ…」
国王様は言い淀む。

(ん?誰かに買いに行かせたんじゃないの?ま、まさか国王様の手作り!?)
「国王様…ま、まさか!!」

「俺は作れない」

「っ!!!また心の声が!」

「やっぱりそう思ってたか」

「ひどい!今のは誘導尋問ですよ!」

「はははっ!」
国王様は声を出して笑った。

(なんかさっきからすんごく機嫌良くない?ずーっとにこにこしてるし。もしかして…また四階に行くのかな。今さっき見てた国王様の色っぽい姿。あれを…誰か他の人に向けるんだ…)

そう思うと心が地面にのめり込みそうになる。そんな気持ちが分かるはずもなく国王様は変わらず微笑んでる。

「ところで、屋上で何を叫んでたんだ」

(…そか)

ミルディリアの居た場所は国王様の私室の真上だ。窓が開いてたら聞こえてもおかしくない。

「騒がしくてすみません。あ、お先にどうぞ」

階段への道を譲ると国王様が不思議そうな顔をした。

「……?」

「…あれ?四階に行くんじゃないんですか?」

「はぁ?」

国王様は一気に不愉快そうな顔に変わった。溜め息をついて一度視線を逸らすと怒ったような顔でミルディリアを見た。

「行かねぇよ。もう二度とあの部屋は使わない」

ミルディリアを真っ直ぐに見てそう告げる。

「………そうですか」
(さっきの『スカーレット』って人は…?
もう行かないって事は私が相手にされる事も無いってこと。
…いやいや、何を考えてるんだ!私は!!)

「俺は時間がかかっても法律を変える」
国王様はミルディリアを真っ直ぐに捉えたまま真剣な眼差しで言った。

「………ーーーー!!!!!」
(それって!それって!!!)

ミルディリアは複雑な心境を宥めどうにか言葉を吐き出した。

「…頑張ってください」

それしか言えなかった。

「あ、ああ」

何故か国王様も複雑そうな顔をしていた。

(国王様…とうとうクロード様との結婚を視野に………!!!まだ女の人を相手にしてた方が望みはあった…いや、だから!私は恋なんてしないんだっ!!)

ミルディリアはモヤモヤする心を押し込め自室まで全力で走った。








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