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小鳥のさえずり、ぶどうのつる
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庶民であることを悲観したり、自虐していたのをカレルに指摘されるまで深く意識したことはなかったように思う。
ひょっとすると、貴族ばかりの大学という場所で学ぶ事に思った以上のストレスを感じていたのかもしれない。ジェーンやエスキルのように親しげな顔をして近付いてくる貴族は、本当に稀だ。無意識のうちに彼らの蔑むような視線の圧力に耐えかねて、自分はそのような人間で当然だと思い込んでいたのかもしれない。
どうにもならない出自について恥じるな、胸を張れとよりによって本来ならば、ルドヴィカの身分でこんな容易く会話するのも許されぬ相手に言われてしまうとは。
(無罪を証明する為の証拠と言ったが)
「あ、はい」
少しばかり、物思いに沈んでいたのかもしれない。
ルドヴィカが無言に思ったのを不審に思ったのか、それとも特に考えなどはないのかカレルの方から話を戻すべく話しかけてきた為、ルドヴィカは慌てて頭の中にあった考えを整理する。
「証拠、なんて明確なものを見付けるのは不可能に近いのはわかっています。だって、誰もカレル様が自ら公爵家から出て行った時の現場を、直接見ていないのですから」
林でカレルと話しているのを見ていた学生がいたのはふらちな学生どもの証言からもわかっている。
しかし彼らにはカレルがルドヴィカに呪いを解くように依頼した時も、ルドヴィカの家に付いていくと発言した時もその声は聞こえておらず、これは証言としては頼りにならないどころかルドヴィカの立場を更に追い詰めるだけであろうことは明らかだ。彼らには、水晶玉の正体を知った上で彼を誰にも告げず連れ帰った、それこそ不届き者にしか見えまい。
カレルの方が付いてきたとルドヴィカが幾ら主張したところで信用されない、故に
信じていると言ってくれているジェーンには悪いが、ルドヴィカは無条件に他人の言葉をその儘信じる気にはなれない。エスキルに裏切られた気持ちを引きずっているから、それだけじゃない。例え真実彼女が心の底からルドヴィカの無実を信じてくれていても、彼女の周囲の人間はそんな事もないのが先程の執事の言動ではっきりと伝わったからだ。
「先程の話に戻るんですが、カレルを誘拐したという嫌疑を晴らす証拠を提出するのは限りなく不可能に近い。そうなると、お慈悲に縋るしかなくなりますがそんな受け身でいるのもわたしには耐えかねます」
(そうなると、どうするんだ)
「カレル様。カレル様は、ご自身にかかった呪いに心当たりがあるそうですね」
先程のことだ。確かにかれはルドヴィカにしか己の声が聞こえないからと、独り言のようにそう言った。呪いをかけた犯人に心当たりがあると。
「素直に考えるならば、カレル様に呪いをかけた輩と、カレル様を誘拐した、人間は同じだと考える筈です。水晶玉という目立ちにくい姿にして、屋敷から運び出そうするのが自然ですからね。それなら呪いをかけた人間を捕まえてしまえば、わたしに対する公爵家の風あたりも和らぐんじゃないかと」
(待ってくれ)
「なんですか?」
(呪いをかけた人間に、罪を被せようというのか?)
「……」
確かにそうだ。しかし、話の肝はそこだっただろうか。
「大丈夫じゃないですか? 確かに濡れ衣を着せるというか……お偉方は、呪いをかけた犯人に疑いの目を向けるでしょうけど。我々が呪いをかけた犯人を捕まえる事が出来たなら、少なくとも誘拐犯の疑いは晴らせます。どっちかというとそちらが目的ですし」
(……あまりそういった誘導は好まないんだが。呪いをかけたとはいえ、異なる罪を着せるのはいただけない)
「確かにそう、ですけども」
なんだろう、違和感があった。
今日一日行動をともにしていてわかったのは、カレルは貴族らしい気位の高さはあるものの、妙に純朴な人間だというところだった。
融通が効かない。自分の意見を言わねば気が済まないところは、ルドヴィカにも通じる気もしたが、ルドヴィカが口が減らないのに対して、カレルは素直だった。知らないこと、知ったこと、全てに自分の意思を示したがる子どものようだ……十五歳と聞いたので、確かにルドヴィカよりは年下だったが。
カレルの反応は、顔は見えないが素直さ故に呪いをかけた大罪人とはいえ、無実の罪をなすりつける行為に対する不満ゆえの発言とは、ルドヴィカにはどうしても思えなかった。
ひょっとすると、貴族ばかりの大学という場所で学ぶ事に思った以上のストレスを感じていたのかもしれない。ジェーンやエスキルのように親しげな顔をして近付いてくる貴族は、本当に稀だ。無意識のうちに彼らの蔑むような視線の圧力に耐えかねて、自分はそのような人間で当然だと思い込んでいたのかもしれない。
どうにもならない出自について恥じるな、胸を張れとよりによって本来ならば、ルドヴィカの身分でこんな容易く会話するのも許されぬ相手に言われてしまうとは。
(無罪を証明する為の証拠と言ったが)
「あ、はい」
少しばかり、物思いに沈んでいたのかもしれない。
ルドヴィカが無言に思ったのを不審に思ったのか、それとも特に考えなどはないのかカレルの方から話を戻すべく話しかけてきた為、ルドヴィカは慌てて頭の中にあった考えを整理する。
「証拠、なんて明確なものを見付けるのは不可能に近いのはわかっています。だって、誰もカレル様が自ら公爵家から出て行った時の現場を、直接見ていないのですから」
林でカレルと話しているのを見ていた学生がいたのはふらちな学生どもの証言からもわかっている。
しかし彼らにはカレルがルドヴィカに呪いを解くように依頼した時も、ルドヴィカの家に付いていくと発言した時もその声は聞こえておらず、これは証言としては頼りにならないどころかルドヴィカの立場を更に追い詰めるだけであろうことは明らかだ。彼らには、水晶玉の正体を知った上で彼を誰にも告げず連れ帰った、それこそ不届き者にしか見えまい。
カレルの方が付いてきたとルドヴィカが幾ら主張したところで信用されない、故に
信じていると言ってくれているジェーンには悪いが、ルドヴィカは無条件に他人の言葉をその儘信じる気にはなれない。エスキルに裏切られた気持ちを引きずっているから、それだけじゃない。例え真実彼女が心の底からルドヴィカの無実を信じてくれていても、彼女の周囲の人間はそんな事もないのが先程の執事の言動ではっきりと伝わったからだ。
「先程の話に戻るんですが、カレルを誘拐したという嫌疑を晴らす証拠を提出するのは限りなく不可能に近い。そうなると、お慈悲に縋るしかなくなりますがそんな受け身でいるのもわたしには耐えかねます」
(そうなると、どうするんだ)
「カレル様。カレル様は、ご自身にかかった呪いに心当たりがあるそうですね」
先程のことだ。確かにかれはルドヴィカにしか己の声が聞こえないからと、独り言のようにそう言った。呪いをかけた犯人に心当たりがあると。
「素直に考えるならば、カレル様に呪いをかけた輩と、カレル様を誘拐した、人間は同じだと考える筈です。水晶玉という目立ちにくい姿にして、屋敷から運び出そうするのが自然ですからね。それなら呪いをかけた人間を捕まえてしまえば、わたしに対する公爵家の風あたりも和らぐんじゃないかと」
(待ってくれ)
「なんですか?」
(呪いをかけた人間に、罪を被せようというのか?)
「……」
確かにそうだ。しかし、話の肝はそこだっただろうか。
「大丈夫じゃないですか? 確かに濡れ衣を着せるというか……お偉方は、呪いをかけた犯人に疑いの目を向けるでしょうけど。我々が呪いをかけた犯人を捕まえる事が出来たなら、少なくとも誘拐犯の疑いは晴らせます。どっちかというとそちらが目的ですし」
(……あまりそういった誘導は好まないんだが。呪いをかけたとはいえ、異なる罪を着せるのはいただけない)
「確かにそう、ですけども」
なんだろう、違和感があった。
今日一日行動をともにしていてわかったのは、カレルは貴族らしい気位の高さはあるものの、妙に純朴な人間だというところだった。
融通が効かない。自分の意見を言わねば気が済まないところは、ルドヴィカにも通じる気もしたが、ルドヴィカが口が減らないのに対して、カレルは素直だった。知らないこと、知ったこと、全てに自分の意思を示したがる子どものようだ……十五歳と聞いたので、確かにルドヴィカよりは年下だったが。
カレルの反応は、顔は見えないが素直さ故に呪いをかけた大罪人とはいえ、無実の罪をなすりつける行為に対する不満ゆえの発言とは、ルドヴィカにはどうしても思えなかった。
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