ホリデイ・ヒーローズ

コードリコーダー

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一話

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「お前ら 始めるぞ。」

 低く響く声が狭い個室の中で発せられる。

 男2人、女1人の入ったエレベーターはレールに従ってゆっくりと大地に向かう。

 扉の上のいくつかの横に並んだ小さなライトが「地上ゲート」を照らし、チーンと重みのない金属音が到着した事を告げる。

 扉がゆっくりと開くと同時に男の1人が小さな球を投げ、その球が壁に当たると煙を吐き出し、深い深い煙が空間を支配した。

男は黒いローブのフードを被り、顔はお面で隠れているが、逆三角の目とギザギザの笑った口が煌々と黄色く光り、なんとも言えない恐怖を纏っていた。背には顔より大きな渦巻きキャンディ、腰には紫色のキャンディが弧を描くようにいくつもぶら下がっている。

 ローブの間から覗く茶ばんだYシャツ、足には黒い先の尖ったブーツを履いている。

 3人は扉から飛び出して走る。煙は3人を優しく飲み込んだ。

 煙を抜けた向こうには大きな鉄の扉がある。そこに向かって3人は駆ける。

扉の護衛6人が駆ける我ら3人に襲いかかる。

 護衛が放つ銃声、煌めく刃、それを制するは鈍く輝く鉄パイプ。
 護衛の足元に転がるキャンディ、唸る爆音。
 迫る死を叩き折る、鈍い光とは対照に、光り輝く金属バット。

 それらが踊るように、深い煙を切り裂くように。
護衛達の武装を解いていく。

 1人で3人の護衛を相手する髪の長い女は
 紫色の浴衣を着こなし、青い袴を翻す。3つ繋げた鉄パイプを操っている。パイプのつなぎ目はボコっと膨らんでいた。
 音を聞く気が無いのか両耳にイヤホン、極め付けに目を閉じている。
 現在外部からの刺激は触覚だけ。だが、まるで見えているかのように、見えている以上に華麗な動きで鉄パイプを振り回す。

 血の匂いが辺りに充満すると思われたが、護衛達に怪我は一つも無い。

 3人は誰1人傷をつけることなく地に組み伏せた。

 黒いローブの男は背中に背負っていた渦巻きキャンディを扉に貼り付け、棒を引き抜いた。それを合図に3人は扉の護衛を引きずり再び鉄の箱に姿を消す。

 扉が閉まると同時に耳はおろか、心臓をも貫くような爆音が鉄の箱に木霊する。

 先程の渦巻きキャンディは時限式爆弾だった。

爆風で扉が「く」の字に凹んだ。

?「伏せとけぃ」

 爆発で歪んだ扉を金属バットのフルスイングでぶっとばす。

とてつもなく大きな音に3人の耳はキンキンと耳鳴りがした。

目の前には黒煙、その中でいびつな四角形をした出口が光でかたどられていた。 

「夜明けだ」

?低い声が一段と響く。

 その声の主は白いスーツに身を包み、胸には真紅のバラ、黒い肌、光を反射し、輝くスキンヘッドの男。左手には金属バット

?「さぁ、立てよ人類。我々の目覚めだ。」
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