2 / 475
後悔
しおりを挟む
「ちょっと待って!なんでそっちに行っちゃうの!逆でしょ、逆!!」
思っていた方向とは逆に進む縁に、少年は肩まである美しく流れる金髪を乱れるのも気にせず振りまわし大声を上げる。
「あぁ...そっちは街とは逆です縁さん」
隣では膝をついた、これまた綺麗な銀髪の少年が森の奥へ奥へと入り込んでいく縁の後ろ姿に、見てられないとばかりに両手で顔を覆う。
その後が心配で上から下の世界を覗いていたのだが、ある意味確認できて良かった。
「ダメ!そっちはダメ!危ない、危ないからっ!お願いたがら戻ってぇー!!」
聞こえないと分かっていても、口が止まらない。
「なぜ…なぜ自ら危険な目に合いにいくんですか。私は…私たちはそんなこと教えてませんよ!」
もはや銀髪少年は泣きだす一歩手前である。気分は母親である。
お願いだから戻って来て下さい。
頑張って念じてみたが全くもって思い人には伝わらない。
「マップ!マップの出しかた教えたじゃん!なんで?なんで使わないの!」
「そう!ステータスって言って下さい。言えば、ステータスって言いさえすれば表示されるから!頭の中で念じるだけでもいいですから!お願い!」
「お願いだから気づいて!あっ、違う、違うから!気づいてほしいのはそれじゃなくて~」
いつのまにか木の実集めを始めてしまった縁に金髪少年は地団駄を踏む。
今までとは違う世界に興味津々なのは分かるが、こちらは胃がキリキリしっぱなしである。
胃薬を至急求む。
「あー、それはダメです色がヤバイ。あっ、それはOKです。そっちの木の実はおいし…ってその色は見るからにアウトでしょ!ポイして、ポイっ!」
あまりに疲れて様子を伺っていれば、縁は目に付いた端から楽しそうにキノコや木の実など珍しいものを次々と鞄に放り込んでいく。
気分はハイキングのようだ。
見守る方からすれば地獄のハイキングだが。
「あぁ、そこ段差あるから気をつけ…って言ったそばから転んでる!ちゃんと足元見て。木の実の心配なんかいいから。そもそもマジックバックだから壊れないし、そんなことより自分の心配して!」
まるで初めてのおつかいを陰から見守る親のようだった。
あながち間違いでもないが。
「こんなことなら誰か縁さんに付けておくんだった」
今更気付いても遅いのだが。後悔先に立たず…まさに真理である。
「えぇ、護衛兼お目付役兼世話係が必要でした。最初の印象でしっかりした方だと思っ…あー今度は頭ぶつけてるし、お願いだからもっと周りをよく見て!」
今度は足元のキノコに夢中になるあまり木に激突していた。
頭をぶつけるは、転んで膝を擦りむくはまるで子どものようだが、当人は怪我などそっちのけで初めて見るものばかりで楽しそうである。
……保護者たちにとってはまったく楽しくも、面白くもないのだが。
「そうなんだよね~元警官っていうのもあるけど元々の人柄だよねアレは。まぁもちろん年齢が年齢だから落ち着いてるのもあるけど」
「そうですね。あなたのせいでいきなりこちらに来た時も落ちついてましたし、あなたのせいで元の世界には帰れないと分かっても怒らず、あなたが無様に泣いて謝っていた時も優しく宥めてくれましたしね……(こんなバカ放っておけばいいものを)」
最後なにか聞こえた気がするが気のせいだろう。きっと気のせいだ。むしろ突っ込んだらまたそれは長い長い説教が始まる気がするから何も言わない。
神様だって怖いものは怖いんです!
今だに楽しそうに収穫しながら森の奥へ奥へと突き進んで行く縁の姿に、こちらに来た時のことを思い出しお互い苦笑いをこぼしたのだった。
思っていた方向とは逆に進む縁に、少年は肩まである美しく流れる金髪を乱れるのも気にせず振りまわし大声を上げる。
「あぁ...そっちは街とは逆です縁さん」
隣では膝をついた、これまた綺麗な銀髪の少年が森の奥へ奥へと入り込んでいく縁の後ろ姿に、見てられないとばかりに両手で顔を覆う。
その後が心配で上から下の世界を覗いていたのだが、ある意味確認できて良かった。
「ダメ!そっちはダメ!危ない、危ないからっ!お願いたがら戻ってぇー!!」
聞こえないと分かっていても、口が止まらない。
「なぜ…なぜ自ら危険な目に合いにいくんですか。私は…私たちはそんなこと教えてませんよ!」
もはや銀髪少年は泣きだす一歩手前である。気分は母親である。
お願いだから戻って来て下さい。
頑張って念じてみたが全くもって思い人には伝わらない。
「マップ!マップの出しかた教えたじゃん!なんで?なんで使わないの!」
「そう!ステータスって言って下さい。言えば、ステータスって言いさえすれば表示されるから!頭の中で念じるだけでもいいですから!お願い!」
「お願いだから気づいて!あっ、違う、違うから!気づいてほしいのはそれじゃなくて~」
いつのまにか木の実集めを始めてしまった縁に金髪少年は地団駄を踏む。
今までとは違う世界に興味津々なのは分かるが、こちらは胃がキリキリしっぱなしである。
胃薬を至急求む。
「あー、それはダメです色がヤバイ。あっ、それはOKです。そっちの木の実はおいし…ってその色は見るからにアウトでしょ!ポイして、ポイっ!」
あまりに疲れて様子を伺っていれば、縁は目に付いた端から楽しそうにキノコや木の実など珍しいものを次々と鞄に放り込んでいく。
気分はハイキングのようだ。
見守る方からすれば地獄のハイキングだが。
「あぁ、そこ段差あるから気をつけ…って言ったそばから転んでる!ちゃんと足元見て。木の実の心配なんかいいから。そもそもマジックバックだから壊れないし、そんなことより自分の心配して!」
まるで初めてのおつかいを陰から見守る親のようだった。
あながち間違いでもないが。
「こんなことなら誰か縁さんに付けておくんだった」
今更気付いても遅いのだが。後悔先に立たず…まさに真理である。
「えぇ、護衛兼お目付役兼世話係が必要でした。最初の印象でしっかりした方だと思っ…あー今度は頭ぶつけてるし、お願いだからもっと周りをよく見て!」
今度は足元のキノコに夢中になるあまり木に激突していた。
頭をぶつけるは、転んで膝を擦りむくはまるで子どものようだが、当人は怪我などそっちのけで初めて見るものばかりで楽しそうである。
……保護者たちにとってはまったく楽しくも、面白くもないのだが。
「そうなんだよね~元警官っていうのもあるけど元々の人柄だよねアレは。まぁもちろん年齢が年齢だから落ち着いてるのもあるけど」
「そうですね。あなたのせいでいきなりこちらに来た時も落ちついてましたし、あなたのせいで元の世界には帰れないと分かっても怒らず、あなたが無様に泣いて謝っていた時も優しく宥めてくれましたしね……(こんなバカ放っておけばいいものを)」
最後なにか聞こえた気がするが気のせいだろう。きっと気のせいだ。むしろ突っ込んだらまたそれは長い長い説教が始まる気がするから何も言わない。
神様だって怖いものは怖いんです!
今だに楽しそうに収穫しながら森の奥へ奥へと突き進んで行く縁の姿に、こちらに来た時のことを思い出しお互い苦笑いをこぼしたのだった。
154
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる