二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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後悔

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 「ちょっと待って!なんでそっちに行っちゃうの!逆でしょ、逆!!」

 思っていた方向とは逆に進む縁に、少年は肩まである美しく流れる金髪を乱れるのも気にせず振りまわし大声を上げる。

 「あぁ...そっちは街とは逆です縁さん」

 隣では膝をついた、これまた綺麗な銀髪の少年が森の奥へ奥へと入り込んでいく縁の後ろ姿に、見てられないとばかりに両手で顔を覆う。
 その後が心配で下の世界を覗いていたのだが、ある意味確認できて良かった。

 「ダメ!そっちはダメ!危ない、危ないからっ!お願いたがら戻ってぇー!!」

 聞こえないと分かっていても、口が止まらない。

 「なぜ…なぜ自ら危険な目に合いにいくんですか。私は…私たちはそんなこと教えてませんよ!」

 もはや銀髪少年は泣きだす一歩手前である。気分は母親である。
 お願いだから戻って来て下さい。
 頑張って念じてみたが全くもって思い人には伝わらない。

 「マップ!マップの出しかた教えたじゃん!なんで?なんで使わないの!」

 「そう!ステータスって言って下さい。言えば、ステータスって言いさえすれば表示されるから!頭の中で念じるだけでもいいですから!お願い!」

 「お願いだから気づいて!あっ、違う、違うから!気づいてほしいのはそれじゃなくて~」

 いつのまにか木の実集めを始めてしまった縁に金髪少年は地団駄を踏む。
 今までとは違う世界に興味津々なのは分かるが、こちらは胃がキリキリしっぱなしである。
 胃薬を至急求む。

「あー、それはダメです色がヤバイ。あっ、それはOKです。そっちの木の実はおいし…ってその色は見るからにアウトでしょ!ポイして、ポイっ!」

 あまりに疲れて様子を伺っていれば、縁は目に付いた端から楽しそうにキノコや木の実など珍しいものを次々と鞄に放り込んでいく。
 気分はハイキングのようだ。
 見守る方からすれば地獄のハイキングだが。

「あぁ、そこ段差あるから気をつけ…って言ったそばから転んでる!ちゃんと足元見て。木の実の心配なんかいいから。そもそもマジックバックだから壊れないし、そんなことより自分の心配して!」

 まるで初めてのおつかいを陰から見守る親のようだった。
 あながち間違いでもないが。

 「こんなことなら誰か縁さんに付けておくんだった」

 今更気付いても遅いのだが。後悔先に立たず…まさに真理である。

 「えぇ、護衛兼お目付役兼世話係が必要でした。最初の印象でしっかりした方だと思っ…あー今度は頭ぶつけてるし、お願いだからもっと周りをよく見て!」

 今度は足元のキノコに夢中になるあまり木に激突していた。
 頭をぶつけるは、転んで膝を擦りむくはまるで子どものようだが、当人は怪我などそっちのけで初めて見るものばかりで楽しそうである。
 ……保護者たちにとってはまったく楽しくも、面白くもないのだが。

 「そうなんだよね~元警官っていうのもあるけど元々の人柄だよねアレは。まぁもちろん年齢が年齢だから落ち着いてるのもあるけど」

 「そうですね。あなたのせいでいきなりこちらに来た時も落ちついてましたし、あなたのせいで元の世界には帰れないと分かっても怒らず、あなたが無様に泣いて謝っていた時も優しく宥めてくれましたしね……(こんなバカ放っておけばいいものを)」

 最後なにか聞こえた気がするが気のせいだろう。きっと気のせいだ。むしろ突っ込んだらまたそれは長い長い説教が始まる気がするから何も言わない。
 神様だって怖いものは怖いんです!
 
 今だに楽しそうに収穫しながら森の奥へ奥へと突き進んで行く縁の姿に、こちらに来た時のことを思い出しお互い苦笑いをこぼしたのだった。
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