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蛇の恩返し
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その後、迫り上がる吐き気と戦いながらもなんとか鍵を探し出し小屋から男たちを救いだすことができた。
泣いて喜ぶ彼らに何度も感謝を述べられ、かわりに町まで案内してもらえることになった。
「……ん?」
やはりあの卵は幸運の卵だったのではと思っていると、シャー、シャーと何かの鳴き声らしきものが聞こえてきた。
方角から言って先程まで縁がいた、大蛇がいる方である。
また何かあったのではと足早に広場に戻れば、何故か蛇は先程までいた場所から動いておらず、縁を呼ぶように鳴いている。
「どうしました?」
何かあったのかと聞いてみるが、蛇はシャーシャーと鳴きながら縁の方に卵を押しやってくる。
「卵がどうしました?どこか割れていましたか?」
ある程度は意思疎通はできていたが、言葉がないぶん蛇が何を伝えたいのか分からない。
触って確かめてみたが傷らしい傷は見当たらない。
見落としてるだけかと思い、鞄から水をだし卵を綺麗に洗うと確認する。
だが、傷はない。
「?」
「お前にその子を託したいそうだ」
「!?」
突如聞こえた背後からの声に驚き、前のめり倒れそうになったのを誰かに腰を掴まれた。
恐る恐る振り返れば、腰を掴まれているせいか至近距離に見知らぬ男の顔があった。
「…ど、どちら、様、です、か?」
まだドクドクいう心臓を抑えながら聞けば、男は「アレン」と短く答える。
いや、誰ですか!?
名前だけ言われても縁にどうしろというのか。
それと出来れば早く腰にある手を退けていただきたいのだが。
心なしか腰周りを撫でられている気がするのは縁の気のせいだろうが。気のせいであってほしい。
「そいつが自分の子どもをお前に託したいんだと」
なぜあなたはそう平気な顔して話せるんだと言ってやりたい。
なぜ蛇の言葉が分かるんだと言ってやりたい。
だかそれをすれば話しが逸れていく気がし、男から身体を逸らしながろもどういうことかと聞く。
男の素性は後回しでいいだろう。
「そいつはもうすぐ死ぬ。だからあんたに自分の代わりに卵を育ててほしいんだ」
「……えっ…死ぬ?」
男が指差した方を見れば、蛇の背中側首辺りに槍のようなものが刺さっていた。
「!?」
いまだ流れ続ける血にどうにかしようと近寄ろうとするが、腰を掴まれたままだったため動けない。
「手遅れだ。もう助からない」
「そんな!」
いくら暴れても男の腕は弛まず、逆に顎を掴まれ顔を上げさせられる。
無理やり合わせられた目線に、しかしどこか悲しみのようなものが感じられた。
「可哀想か?何も出来ず辛いか?ならコイツの最期の願いをきいてやってくれ」
もっと早く気づいてやれていれば、もっと早く手当て出来ていれば。
そんな縁の気持ちが分かっているかのようにそう言われ、頷けばやっと手を離された。
「本当に私でいいんですか?」
答えが分かっていても問わずにはいられなかった。
ただ子どもを取り返そうとしただけだ。
攫われた我が子を身を呈して守ろうとしただけだ。
これだけの大虐殺。なにも知らなければ…いや、訳を知ったとしても人間ならこれだけのことをした蛇を恐れ、殺そうとしてくるだろう。
悪いのは全て子どもを盗んだ盗賊たちなのに。
そんな盗賊たちと同じ人間である縁で本当にいいのか。
「あんたがいいって」
肯定するように頷いた蛇から卵を受け取る。
大切に優しく撫でてやれば、それを見た蛇は安心したように首を下ろした。
「お疲れ様でした。…疲れたでしよう?ゆっくり休んで下さい。この子は私が責任持って大切に育てますから安心して下さい」
ゆっくり褒めるように頭を撫でてやれば、蛇はそっと目を閉じた。
時として親の愛情というものはなにものにも変えがたいほどの大きな力がある。
必死に我が子を守ろうとする姿は人だろうが、動物だろうが関係ないだろう。
しばらくそうして撫でていれば、ポトリッと何かが目の前に落ちてきた。
「…えっ」
なんだろうと拾おうと手を離した途端、蛇の身体が砂のように崩れ風に飛ばされていく。
止めることなどできるわけもなく、風に舞い流れていく亡骸を見送ることしかできない。
何かを感じたのか腕の中の卵が一瞬震えたような気がし、大丈夫だと抱きしめてやる。
残されたのは手の平サイズの紅い丸い石と蛇から託された卵。
それは蛇の置き土産のようだった。
泣いて喜ぶ彼らに何度も感謝を述べられ、かわりに町まで案内してもらえることになった。
「……ん?」
やはりあの卵は幸運の卵だったのではと思っていると、シャー、シャーと何かの鳴き声らしきものが聞こえてきた。
方角から言って先程まで縁がいた、大蛇がいる方である。
また何かあったのではと足早に広場に戻れば、何故か蛇は先程までいた場所から動いておらず、縁を呼ぶように鳴いている。
「どうしました?」
何かあったのかと聞いてみるが、蛇はシャーシャーと鳴きながら縁の方に卵を押しやってくる。
「卵がどうしました?どこか割れていましたか?」
ある程度は意思疎通はできていたが、言葉がないぶん蛇が何を伝えたいのか分からない。
触って確かめてみたが傷らしい傷は見当たらない。
見落としてるだけかと思い、鞄から水をだし卵を綺麗に洗うと確認する。
だが、傷はない。
「?」
「お前にその子を託したいそうだ」
「!?」
突如聞こえた背後からの声に驚き、前のめり倒れそうになったのを誰かに腰を掴まれた。
恐る恐る振り返れば、腰を掴まれているせいか至近距離に見知らぬ男の顔があった。
「…ど、どちら、様、です、か?」
まだドクドクいう心臓を抑えながら聞けば、男は「アレン」と短く答える。
いや、誰ですか!?
名前だけ言われても縁にどうしろというのか。
それと出来れば早く腰にある手を退けていただきたいのだが。
心なしか腰周りを撫でられている気がするのは縁の気のせいだろうが。気のせいであってほしい。
「そいつが自分の子どもをお前に託したいんだと」
なぜあなたはそう平気な顔して話せるんだと言ってやりたい。
なぜ蛇の言葉が分かるんだと言ってやりたい。
だかそれをすれば話しが逸れていく気がし、男から身体を逸らしながろもどういうことかと聞く。
男の素性は後回しでいいだろう。
「そいつはもうすぐ死ぬ。だからあんたに自分の代わりに卵を育ててほしいんだ」
「……えっ…死ぬ?」
男が指差した方を見れば、蛇の背中側首辺りに槍のようなものが刺さっていた。
「!?」
いまだ流れ続ける血にどうにかしようと近寄ろうとするが、腰を掴まれたままだったため動けない。
「手遅れだ。もう助からない」
「そんな!」
いくら暴れても男の腕は弛まず、逆に顎を掴まれ顔を上げさせられる。
無理やり合わせられた目線に、しかしどこか悲しみのようなものが感じられた。
「可哀想か?何も出来ず辛いか?ならコイツの最期の願いをきいてやってくれ」
もっと早く気づいてやれていれば、もっと早く手当て出来ていれば。
そんな縁の気持ちが分かっているかのようにそう言われ、頷けばやっと手を離された。
「本当に私でいいんですか?」
答えが分かっていても問わずにはいられなかった。
ただ子どもを取り返そうとしただけだ。
攫われた我が子を身を呈して守ろうとしただけだ。
これだけの大虐殺。なにも知らなければ…いや、訳を知ったとしても人間ならこれだけのことをした蛇を恐れ、殺そうとしてくるだろう。
悪いのは全て子どもを盗んだ盗賊たちなのに。
そんな盗賊たちと同じ人間である縁で本当にいいのか。
「あんたがいいって」
肯定するように頷いた蛇から卵を受け取る。
大切に優しく撫でてやれば、それを見た蛇は安心したように首を下ろした。
「お疲れ様でした。…疲れたでしよう?ゆっくり休んで下さい。この子は私が責任持って大切に育てますから安心して下さい」
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時として親の愛情というものはなにものにも変えがたいほどの大きな力がある。
必死に我が子を守ろうとする姿は人だろうが、動物だろうが関係ないだろう。
しばらくそうして撫でていれば、ポトリッと何かが目の前に落ちてきた。
「…えっ」
なんだろうと拾おうと手を離した途端、蛇の身体が砂のように崩れ風に飛ばされていく。
止めることなどできるわけもなく、風に舞い流れていく亡骸を見送ることしかできない。
何かを感じたのか腕の中の卵が一瞬震えたような気がし、大丈夫だと抱きしめてやる。
残されたのは手の平サイズの紅い丸い石と蛇から託された卵。
それは蛇の置き土産のようだった。
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