二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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番は番

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 2人がしていたケンカの理由を聞こうと思ったが、アズのお腹が元気に鳴ったのでちょうどいいからとみんなで夕飯にすることにした。
 当たり前だが、宿に食事を頼めば主人と使用人の食事は別で獣人と分かっていたからか縁以外の食事は酷いものだった。

 「固いパン1つに水って……」

 「食事を与えられるだけマシです。酷いと馬が飲むような桶に入った水が与えられるだけです」

 「それもう家畜じゃないですか」

 「それが普通なんです」

 嫌な常識だ。 
 幸いにも縁に用意された料理は何人分あるんだという量だったのでみんなで分けて食べることにした。
 我儘な貴族たちに合わせていくつもの種類の料理が常時用意されているらしい。
 食べたいものを食べたいだけ食べていればメタボになる危険性しかないと思うが。

 「ほら、遠慮しないで食べなさい」

 遠慮して一向に口を付けようとしない3人に言ってみるが手を出す様子はない。
 仕方ないと溜め息をつくと、隣に座っていたアズを抱き上げ膝の上に座らせた。

 「アズ、あ~ん」

 「!?」
 「!?」

 「……あっ、あ~ん。…っ、おいしい!」

 いきなり肉では胃に悪いかとスープにしたが、おいしいおいしいと喜ぶアズによかったと微笑み返す。
 
 「ほら2人もあ~ん」

 同じように2人にもスプーンを差し出せば照れながらも嬉しそうに食べてくれた。
 凝った料理は美味しいのだが味が濃く、そんなに量は食べられなかった縁だが人数はいるので問題ないだろう。
 それからお互い食べさせ合いながらも全てを完食できた。

 「では、先程の争いの問題を一つずつ解決していきましょうか」

 食事も終え、これまた豪華な大きめのソファにアズは膝、アレンとセインは両隣りに座らせる。
 最初はお互い別に座っていたのだが、体が小さいアズには1人は辛かろうと膝に乗せたのが悪かった。
 ズルいズルいとアレンとセインが縁の隣に座ろうとケンカを始め、アズの首をまた掴もうとしたため慌てて止めると大きめのソファにみんなで座り直したのだった。

 「セインに関しては無理に丁寧に喋る必要はありません。私は気にしないので元のしゃべり方でいいですよ。もちろんアズも」

 「俺は?」

 「アレンは最初からそのままじゃないですか。むしろできるんですか?」

 「………」

 無言が答えなのだろう。
 自滅したアレンは放っておき話しを進める。

 「2人が言っていたつがい?ってなんですか?」

 「つがいは番。人間でいえば…伴侶、か?一生を共にする相手。人間はその、相手が気にくわないとか嫌いになったとかで、あー、言い方は悪いがコロコロ相手を変えることがよくあるだろ?けど獣人はそうじゃない」

 こちらの常識はまだ分からないが、確かに日本にいた頃の若者たちの中では昔とは違い結婚,離婚は軽いものとして考えられていたかもしれない。
 お互いが納得さえすればどちらも簡単に…ではないかもしれないが結婚し離婚し、相手がいれば再婚というこもあった。
 セインの説明に人間って簡単だったんだなと思ってしまった。
 縁自身、結婚をしたことがないのでなんとも言えないが、どうせならケンカしながらも一生一人の人と一緒に幸せに暮らしていきたい。というのはあくまで理想だが。

 「獣人は基本的に一度番と決めたら一生をその番と添い遂げる。もちろん例外もあるが。で、その番の中でも特殊なのが

 「運命、の番?」

 何が特殊なのだろうか?
 話しの続きを待てば、急に顔を近づけてきたセインに首筋の匂いを嗅がれた。
 加齢臭!?と一瞬慌てたが、新しくもらった身体はピチピチの10代。16歳だ。
 それでも一日中歩き回った身体は汗だらけで、転んで所々汚れてもいるので嗅がれて嬉しいものじゃない。
 そっと離れようとしたが、腰を掴まれ動けなかった。

 「いい匂い」

 「いやいやいや、絶対汗くさいですよ。離れてください」

 うっとりと縁の匂いを嗅ぐセインに若干引いてしまう。

 「人間と違って獣人のほとんどは嗅覚,聴覚,視覚といった感覚が鋭いやつが多い」

 「なら尚更嗅がないでください」

 「俺も聞いことがあるだけだったんだが、運命の番は匂いでわかるんだそうだ。俺もすぐわかった。部屋の外からも匂ってきてて、そこに縁が現れた」

 なるほど。
 だから最初驚いたようにこちらを見ていたわけだ。

 「いい加減離れろ!黙って聞いてれば、運命の番だからって…縁はまだお前のものじゃない!」

 
 運命ということはもう決定事項なのではないのだろうか?
 どういことかとセインを見ればチッと舌打ちしアインを睨みつけている。
 こらこら君たちケンカはやめなさい。

 「確かにまだ、な」

 「どういうことです?」

 「番になるにはお互いの了承が必要なんだ。けど獣人と違って人間は伴侶といってもあまり相手に執着しない。獣人同士ならまだしも、獣人と人間だと人間には獣人の愛情が重過ぎるんだ。それに人間にとって獣人は道具であり奴隷なんだ。一緒になれるなんて夢のまた夢だ」

 俯くセインの頬にそっと手を伸ばし顔を上げさせれば、辛そうに眉を顰めていた。
 答えを聞くのが怖いのだろう。
 アレンとケンカしていた時の強気がなりを潜め、迷い子になった子犬のようだ。
 いや、あちらの歌では猫だったはず。犬はお巡りさん。

 「そういえばセインは何の獣人なんですか?」

 「……今更か?豹だが」
 
 では猫科だ。あの歌は正しかったらしい(?)
 アインにも聞いてみれば狼!と自慢気に教えてくれた。
 
 「アズは?」
 
 「………」

 「アズ?」

 俯いたまま答えず、もしかして寝てしまったかと顔を覗き込めば今にも泣き出さんばかりの表情だった。

 「アズっ!?なに、どうしたの?どこかいたい?お腹?目?どっかケガでもーー」

 「……く…の」

 「え?」

 「ぼく、まぞく、なの」

 まぞく?
 はて、まぞくとは?
 おじいちゃんには難しい。
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