二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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初めてのお泊り

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 「悪いけど奴隷は外に出しておくれ」
 「奴隷は納屋だぜ」
 「奴隷を一緒の部屋になんか泊められないよ」

 ある程度の着替えなどを人数分揃えると今日の宿を探そうと思ったのだが、寄る宿寄る宿すべてに奴隷は外に出せと言われてしまう。
 確かに建前上はアレンたちは奴隷だが縁にとっては大切な家族なのだ。
 彼らを外で野宿させて自分だけ暖かいベッドで眠るなんてできるはずがない。

 「あの、私たちは外でも構いません。外で寝るなんていつものことですし…」

 「ダメです。それは私が嫌です。そうするくらいならみんなと一緒に野宿でもした方がマシです」

 宿泊を断られ続ける縁たちにセインが気を遣ってくれるが、それでは建前上もなにも完全に奴隷として扱ってしまうことになる気がして絶対に嫌だ。

 「あのっ、高くてもいいなら突き当たりにある宿なんですが、使用人の獣人も泊めてくれる宿、が、あります」

 諦めて他の宿を探そうと外に出れば、とても言いづらそうにセインが教えてくれた。
 なぜすぐに教えててくれなかったと問えば、奴隷が外で寝るなんて当たり前だったことと、自分たちのためにお金をかけさせることに躊躇いがあったためらしい。
 それでも教えてくれたのは縁を野宿なんてさせられないと思ったのと、自分たちのために必死に宿を探している姿になんとか応えたかったらしい。
 なんともいい子だ。
 セインにありがとうと礼を述べると薦められた宿に行く。

 「大きい宿ですね~」

 「貴族たちも泊まるような宿なので、使用人でもある獣人たちでも一緒に泊まることができるんです」

 成る程。
 そもそもの宿探しの方法が間違っていたらしい。
 奴隷が持てるのは貴族や商人である金持ち連中なのだ。
 世話なしには何もできないお偉い連中が使用人を連れて泊まることが可能な宿。
 奴隷を持たない一般の人間が泊まる町の安宿で探しても見つかるわけがないのだ。
 無事に今日の宿もとれ部屋に案内してもらえば、なるほど貴族が泊まるのも納得の広さと豪華さだった。
 日本で一人暮らしをしていた時の縁の部屋の何倍はあろうかという広さ、所々に置いてある装飾品も見ただけで高いとわかる。
 部屋数もリビング、書斎、寝室、トイレ、お風呂に加え使用人のための部屋も別にすぐ隣にあり、根が庶民の縁にはなんとも落ち着かない。
 それはセインたちも同じだったようで部屋についてからもずっと縁から離れようとはしなかった。
 だが意外にもアレンは平気そうで、興味津々で部屋中を見て回っている。
 縁が平気なのかと問えばーー

 「何がだ?馴染みのない場所だが安全か見て回らなければならないだろう?とくに寝るところはもっとも油断する場所だからな。誰かに見られるはエニシもイヤだろう?」

 「はい?…?」

 見られる?なんのことだろう?
 
 バキンッ!

 これまたすごいが音がしたかと思うと、ツカツカと勢いよく近寄っていったセインがアレンを殴り飛ばしていた。

 「きさまっ!汚いで目でこの人を見るなっ!」

 怒鳴りつけたと思ったら再び縁の元に来て抱きしめられた。
 なんだなんだ?
 セインはどうしてしまったのだろうか。
 見た目に反してどうも短気だったらしい。
 少年も怒ったセインを見るのは初めてなのか驚いて縁の足にしがみついている。
 ギュッと、だが力加減はきちんとされているようで苦しくはないがセインの気持ちが分からず戸惑う。

 「この人はだ!お前なんかが触るな!」

 俺?
 つがい?
 触るな?
 情報が多すぎる。いや多くはないか。
 もしかしてセインはこれが素なのだろうか。

 「ふざけんなっ!エニシは俺の番だ!」

 おぉ、もう復活してる。
 かなりの力で殴られたと思ったがすでに起き上がり、縁からセインを引き剥がそうとしている。
 さすが獣人。細身に見えるセインだがアレンに負けず劣らず縁を抱く腕の力は揺らがない。

 「まぁまぁ、とりあえず2人とも落ち着いてください。この子も怖がって…そういえば名前を聞き忘れてました。君のお名前は?」

 「…アズ、アズライト」

 「アズライト…ではアズと呼びますね。私は縁です」

 「エニ、シ、エニシ…エニシ」

 ニコニコと名前を呼ぶアズによくできましたと頭を撫でてやれば、セインに引き剥がされた。
 
 「セイン?」
 
 なんで?と見上げればセインも自分で大人気ないと思ったのか、バツが悪そうに顔をそらした。

 「そのガキもお前もエニシから離れろ!とくにお前っ!」

 「いやだ」

 そんなオモチャを取り合う子どもみたいな…
 明らかに今の縁より2人の方が年上に見える。
 あぁ、アズの首がしまっちゃいます。離してあげてアレン。
 首根っこを掴まれてぶらんぶらんとぶら下げられたアズは可哀想だが可愛いとも思ってしまった。
 
 「ほら、さっさと離して説明しないと2人とも部屋別にしますよ」

 「ごめんなさい」
 「ごめんなさい」

 土下座で謝罪する2人。
 あまりの変わりようにアズがキョトンとした顔でそんな2人を見ていた。
 この世界でも土下座ってあるんだなぁと縁は変なところに感心するのだった。
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