13 / 475
初めてのお泊り
しおりを挟む
「悪いけど奴隷は外に出しておくれ」
「奴隷は納屋だぜ」
「奴隷を一緒の部屋になんか泊められないよ」
ある程度の着替えなどを人数分揃えると今日の宿を探そうと思ったのだが、寄る宿寄る宿すべてに奴隷は外に出せと言われてしまう。
確かに建前上はアレンたちは奴隷だが縁にとっては大切な家族なのだ。
彼らを外で野宿させて自分だけ暖かいベッドで眠るなんてできるはずがない。
「あの、私たちは外でも構いません。外で寝るなんていつものことですし…」
「ダメです。それは私が嫌です。そうするくらいならみんなと一緒に野宿でもした方がマシです」
宿泊を断られ続ける縁たちにセインが気を遣ってくれるが、それでは建前上もなにも完全に奴隷として扱ってしまうことになる気がして絶対に嫌だ。
「あのっ、高くてもいいなら突き当たりにある宿なんですが、使用人の獣人も泊めてくれる宿、が、あります」
諦めて他の宿を探そうと外に出れば、とても言いづらそうにセインが教えてくれた。
なぜすぐに教えててくれなかったと問えば、奴隷が外で寝るなんて当たり前だったことと、自分たちのためにお金をかけさせることに躊躇いがあったためらしい。
それでも教えてくれたのは縁を野宿なんてさせられないと思ったのと、自分たちのために必死に宿を探している姿になんとか応えたかったらしい。
なんともいい子だ。
セインにありがとうと礼を述べると薦められた宿に行く。
「大きい宿ですね~」
「貴族たちも泊まるような宿なので、使用人でもある獣人たちでも一緒に泊まることができるんです」
成る程。
そもそもの宿探しの方法が間違っていたらしい。
奴隷が持てるのは貴族や商人である金持ち連中なのだ。
世話なしには何もできないお偉い連中が使用人を連れて泊まることが可能な宿。
奴隷を持たない一般の人間が泊まる町の安宿で探しても見つかるわけがないのだ。
無事に今日の宿もとれ部屋に案内してもらえば、なるほど貴族が泊まるのも納得の広さと豪華さだった。
日本で一人暮らしをしていた時の縁の部屋の何倍はあろうかという広さ、所々に置いてある装飾品も見ただけで高いとわかる。
部屋数もリビング、書斎、寝室、トイレ、お風呂に加え使用人のための部屋も別にすぐ隣にあり、根が庶民の縁にはなんとも落ち着かない。
それはセインたちも同じだったようで部屋についてからもずっと縁から離れようとはしなかった。
だが意外にもアレンは平気そうで、興味津々で部屋中を見て回っている。
縁が平気なのかと問えばーー
「何がだ?馴染みのない場所だが安全か見て回らなければならないだろう?とくに寝るところはもっとも油断する場所だからな。誰かに見られるはエニシもイヤだろう?」
「はい?…?」
見られる?なんのことだろう?
バキンッ!
これまたすごいが音がしたかと思うと、ツカツカと勢いよく近寄っていったセインがアレンを殴り飛ばしていた。
「きさまっ!汚いで目でこの人を見るなっ!」
怒鳴りつけたと思ったら再び縁の元に来て抱きしめられた。
なんだなんだ?
セインはどうしてしまったのだろうか。
見た目に反してどうも短気だったらしい。
少年も怒ったセインを見るのは初めてなのか驚いて縁の足にしがみついている。
ギュッと、だが力加減はきちんとされているようで苦しくはないがセインの気持ちが分からず戸惑う。
「この人は俺の番だ!お前なんかが触るな!」
俺?
つがい?
触るな?
情報が多すぎる。いや多くはないか。
もしかしてセインはこれが素なのだろうか。
「ふざけんなっ!エニシは俺の番だ!」
おぉ、もう復活してる。
かなりの力で殴られたと思ったがすでに起き上がり、縁からセインを引き剥がそうとしている。
さすが獣人。細身に見えるセインだがアレンに負けず劣らず縁を抱く腕の力は揺らがない。
「まぁまぁ、とりあえず2人とも落ち着いてください。この子も怖がって…そういえば名前を聞き忘れてました。君のお名前は?」
「…アズ、アズライト」
「アズライト…ではアズと呼びますね。私は縁です」
「エニ、シ、エニシ…エニシ」
ニコニコと名前を呼ぶアズによくできましたと頭を撫でてやれば、セインに引き剥がされた。
「セイン?」
なんで?と見上げればセインも自分で大人気ないと思ったのか、バツが悪そうに顔をそらした。
「そのガキもお前もエニシから離れろ!とくにお前っ!」
「いやだ」
そんなオモチャを取り合う子どもみたいな…
明らかに今の縁より2人の方が年上に見える。
あぁ、アズの首がしまっちゃいます。離してあげてアレン。
首根っこを掴まれてぶらんぶらんとぶら下げられたアズは可哀想だが可愛いとも思ってしまった。
「ほら、さっさと離して説明しないと2人とも部屋別にしますよ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
土下座で謝罪する2人。
あまりの変わりようにアズがキョトンとした顔でそんな2人を見ていた。
この世界でも土下座ってあるんだなぁと縁は変なところに感心するのだった。
「奴隷は納屋だぜ」
「奴隷を一緒の部屋になんか泊められないよ」
ある程度の着替えなどを人数分揃えると今日の宿を探そうと思ったのだが、寄る宿寄る宿すべてに奴隷は外に出せと言われてしまう。
確かに建前上はアレンたちは奴隷だが縁にとっては大切な家族なのだ。
彼らを外で野宿させて自分だけ暖かいベッドで眠るなんてできるはずがない。
「あの、私たちは外でも構いません。外で寝るなんていつものことですし…」
「ダメです。それは私が嫌です。そうするくらいならみんなと一緒に野宿でもした方がマシです」
宿泊を断られ続ける縁たちにセインが気を遣ってくれるが、それでは建前上もなにも完全に奴隷として扱ってしまうことになる気がして絶対に嫌だ。
「あのっ、高くてもいいなら突き当たりにある宿なんですが、使用人の獣人も泊めてくれる宿、が、あります」
諦めて他の宿を探そうと外に出れば、とても言いづらそうにセインが教えてくれた。
なぜすぐに教えててくれなかったと問えば、奴隷が外で寝るなんて当たり前だったことと、自分たちのためにお金をかけさせることに躊躇いがあったためらしい。
それでも教えてくれたのは縁を野宿なんてさせられないと思ったのと、自分たちのために必死に宿を探している姿になんとか応えたかったらしい。
なんともいい子だ。
セインにありがとうと礼を述べると薦められた宿に行く。
「大きい宿ですね~」
「貴族たちも泊まるような宿なので、使用人でもある獣人たちでも一緒に泊まることができるんです」
成る程。
そもそもの宿探しの方法が間違っていたらしい。
奴隷が持てるのは貴族や商人である金持ち連中なのだ。
世話なしには何もできないお偉い連中が使用人を連れて泊まることが可能な宿。
奴隷を持たない一般の人間が泊まる町の安宿で探しても見つかるわけがないのだ。
無事に今日の宿もとれ部屋に案内してもらえば、なるほど貴族が泊まるのも納得の広さと豪華さだった。
日本で一人暮らしをしていた時の縁の部屋の何倍はあろうかという広さ、所々に置いてある装飾品も見ただけで高いとわかる。
部屋数もリビング、書斎、寝室、トイレ、お風呂に加え使用人のための部屋も別にすぐ隣にあり、根が庶民の縁にはなんとも落ち着かない。
それはセインたちも同じだったようで部屋についてからもずっと縁から離れようとはしなかった。
だが意外にもアレンは平気そうで、興味津々で部屋中を見て回っている。
縁が平気なのかと問えばーー
「何がだ?馴染みのない場所だが安全か見て回らなければならないだろう?とくに寝るところはもっとも油断する場所だからな。誰かに見られるはエニシもイヤだろう?」
「はい?…?」
見られる?なんのことだろう?
バキンッ!
これまたすごいが音がしたかと思うと、ツカツカと勢いよく近寄っていったセインがアレンを殴り飛ばしていた。
「きさまっ!汚いで目でこの人を見るなっ!」
怒鳴りつけたと思ったら再び縁の元に来て抱きしめられた。
なんだなんだ?
セインはどうしてしまったのだろうか。
見た目に反してどうも短気だったらしい。
少年も怒ったセインを見るのは初めてなのか驚いて縁の足にしがみついている。
ギュッと、だが力加減はきちんとされているようで苦しくはないがセインの気持ちが分からず戸惑う。
「この人は俺の番だ!お前なんかが触るな!」
俺?
つがい?
触るな?
情報が多すぎる。いや多くはないか。
もしかしてセインはこれが素なのだろうか。
「ふざけんなっ!エニシは俺の番だ!」
おぉ、もう復活してる。
かなりの力で殴られたと思ったがすでに起き上がり、縁からセインを引き剥がそうとしている。
さすが獣人。細身に見えるセインだがアレンに負けず劣らず縁を抱く腕の力は揺らがない。
「まぁまぁ、とりあえず2人とも落ち着いてください。この子も怖がって…そういえば名前を聞き忘れてました。君のお名前は?」
「…アズ、アズライト」
「アズライト…ではアズと呼びますね。私は縁です」
「エニ、シ、エニシ…エニシ」
ニコニコと名前を呼ぶアズによくできましたと頭を撫でてやれば、セインに引き剥がされた。
「セイン?」
なんで?と見上げればセインも自分で大人気ないと思ったのか、バツが悪そうに顔をそらした。
「そのガキもお前もエニシから離れろ!とくにお前っ!」
「いやだ」
そんなオモチャを取り合う子どもみたいな…
明らかに今の縁より2人の方が年上に見える。
あぁ、アズの首がしまっちゃいます。離してあげてアレン。
首根っこを掴まれてぶらんぶらんとぶら下げられたアズは可哀想だが可愛いとも思ってしまった。
「ほら、さっさと離して説明しないと2人とも部屋別にしますよ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
土下座で謝罪する2人。
あまりの変わりようにアズがキョトンとした顔でそんな2人を見ていた。
この世界でも土下座ってあるんだなぁと縁は変なところに感心するのだった。
131
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる