二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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本格始動です

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 その日も朝起きると朝食をとりギルドに向かう。

 「すあませんが、初心者の冒険者が持っておくべきものがあれば教えてほしいのですが」

 「………」

 いつも通り薬草採取の依頼を受けるついでに受付で必要なものを聞いておく。
 なんだか憐れみの表情で見られた気がしたが、意外にもあっさり教えてくれた。
 優しい受付で良かった。
 そんなもの自分で調べろ!と言われるかも思っていたが、逆に丁寧にメモにまで書いてくれた。
 良かった良かったと笑顔で出て行く縁に、だがそれは縁だけへの対応だけだということに気付くことはない。
 容姿もよく、誰とでも丁寧に接する縁はギルドでも大切に、みんなの癒しとしてされていたのである。

 「今日は薬草の採取のあと、町で少し買い物しましょう」

 みんなのアイドル的存在になっていることなど知らない縁は、普段通りみんなで薬草採取に向かう。

 「そういえば、この薬草ってどうやって使うんですか?」

 ふと疑問になりセインに聞いてみるが、セインも詳しくは知らないらしい。
 薬草というぐらいだからアロエやヨモギみたいなものかと思っていたのだが違うらしく回復薬(ポーション)になるらしい。
 ではそのポーションとは何か、聞けば飲めば怪我が治るというなんとも胡散臭いものだった。
 飲んだだけで怪我が治る?
 ランクが高いものは千切れた手足でもくっつく?
 いやいやいや、それどんなお伽話ですか!
 そんなものあれば医者はいらないだろうと言えば、冒険に医者なんて連れて行けないだろと言われた。
 なるほど。納得した。
 その場で治療できるのはかなりの強みだろう。
 その上、ポーションは元々高価なものらしく庶民には手が出せないらしい。
 駆け出しの新人たちもほとんど所持しているものはいないらしく、抵ランクの依頼を受けながらお金と自身のランクを上げ、高ランクで必要な武器、防具、回復薬などを揃えていくらしい。
 冒険者とは大変だなぁと思った。
 自分もその冒険者なのだが。

 「……ん?ポーション?」

 何か引っかかる。
 聞いたことあるような、ないような。
 どこかで…聞い……いや、聞いてない?いや、聞いたはず。
 自問自答しながら記憶を辿れば、あの心配性な2人の姿が浮かんだ。

 「そういえば、そんなこと言ってたかも。…ポーション下さい」

 鞄に手を突っ込むと吸い付くようにポーションが現れた。

 「………」
 「………」

 それを見ていた年上2人は言葉もない。
 なんで持ってるんだとか、持ってるのになんで忘れてたんだとかもう色々呆れてしまう。
 
 「これがあればみんなが怪我してもすぐ治してあげられますね」

 笑顔で言われてしまえば何も言えず、高価だと教えたにも関わらず自分たちに当たり前に使ってくれる縁に嬉しくて顔がニヤけてしまうアレンたちであった。
 その後無事採取を終え、ギルドで報酬を貰った。
 予定通り買い物へ向かえば、なんとか目当ての店を見つけることができた。

 「すいません。この2人に会う武器が欲しいんですが」

 「縁っ!?」
 「はぁぁ!?」
 「………」

 店に入った途端告げた縁の言葉に、職人らしい額にタオルを巻いたおじさんも驚いたようにこちらを見ていた。

 「……お前さん、そいつらに武器持たせんのか」

 「はい」

 なぜそんなことを聞くのだろう。

 「危なくないんか」

 「ん?危ないから持たせるんですよね?」

 「は?」

 「え?」

 どうやら答えが違っていたらしい。
 こちらに来てからというもの度々話しが噛み合わないことがある。
 縁の中の常識とこちらの世界の一般常識はかなり違うからだろう。

 「あの、今冒険者をしてるんですが何か身を守るものがないと彼らも危ないでしょう?」

 なので何かアレンたちに武器を見繕ってやってほしいと頼めば、ジッと縁を見つめたあとおじさんは豪快に笑いはじめた。

 「がっはは、はっ、ははっ、お前さんバカじゃろ。儂は奴隷に武器持たすなんて危なくないか聞いたんだじゃ。それをお前、身を守らせために持たせるとは、とんだバカじゃな。はははははっ」

 そもそも質問の意味が違っていたらしい。
 縁にとってもう家族であるアレンたちが危ないという考えがなかった。
 危なくないよう持たせようと思っていただけだ。

 「ははっ、はぁ~久しぶりにこんなに笑ったわい。いいぞ、笑っちまった礼に好きなもん持ってきな」

 「え、いや、そんな申し訳ないですよ。お金はちゃんと払いますので」

 客を笑ったからと言ってタダにしていたら、赤字だらけになってしまう。
 遠慮する縁に、しかしおじさんは笑ってどんなのがいいか聞いてくる。

 「お前さんは細身だからこっちのレイピアなんてどうじゃ。これ自体はそんなに威力は高くないが、軽い分手数が多くなるし、一点集中すればかなりの攻撃力じゃぞ」

 渡された剣を軽々振るセインにおじさんも満足そうに頷いている。
 慣れれば空いたに手にボーガンや盾、ダガーを持つのもいいらしい。

 「お前さんは随分ガタイがいいな。ならロングソードでいいじゃろ。慣れるまでかかるじゃろうが、その分威力はかなりのもんじゃ」

 アレンには縁の腕何本分あるんだという太さの大剣で、なるほどアレンぐらいじゃないと持てないだろう重さだ。
 これまた嬉しそうにおじさんが剣を持つアレンを見ている。
 はっきり言って剣の良さなど全く分からない縁は、2人が気にいるものがあってよかったなぁぐらいである。
 自分に見合った武器を持つなら獣人でも奴隷でも構わないというおじさんはとても優しく、アレンたちにも普通に接してくれる。
 なんとかお金を払おうとする縁に、しかしおじさんは受け取ってくれず高ランクになったら珍しい材料でも持ってこいと追いだ…送り出された。
 しかもこの後防具屋にも行くといえば、兄弟がやっているらしい店を教えてくれた。
 なんとも素晴らしい。
 その後も無事店に着けば、おじさんの弟だという男性も事情を聞き大笑いされ、全てタダにしてくれた。
 この兄弟はどこまでいい人なのだろう。
 一生頭が上がらない。
 それもこれも縁の人の良さのおかげなのだが知らぬは当人ばかりである。

 「人間でもあんな変なオヤジいるんだな」

 ポツリと溢したアレンの言葉に、セインも同意するように頷いている。
 昔であれば考えられなかっただろう、おじさんたちの態度に戸惑っているのだろう。
 人間でもあんな人たちもいるんだと分かって縁も嬉しい。
 新しい武器に、新しい防具。
 少しでも彼らが守ることができるなら嬉しい限りだった。
 しかし、こんなにしっかりとした武器で戦わなければいけないとは高ランクの依頼はどんなに危険なんだと少し不安になる縁であった。
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