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得意不得意
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まだ眠そうなアズを抱っこしながら食堂へと向かえば、すでに大半のメンバーは食べ終わっていたようだった。
ポツリポツリと数人が座って朝食を食べている中、見知った顔を見つけそちらに向かう。
「ジーク、おはようございます」
「…あぁ、おはよう」
昨日泣いたのが気恥ずかしいのか視線を逸らしながらも挨拶してくれた。
縁は気にすることなく隣に座れば、セインに運んでもらった朝食をアズと分けながら食べる。
シンプルだが素材を活かした味付けに縁は満足だった。
アズと美味しいねと言いながら食べるが、隣を見ればスプーンを持ったまま動かないジークがいた。
何か言おうと口を開き、だが何を言っていいか分からず閉じるといったジークらしくない行動に笑ってしまった。
「ジーク」
「あ、あぁ?なんだーーんっ!」
こちらを向いた瞬間、事前に小さく千切っておいたパンをジークの口に突っ込んでやった。
「おい!何すんだ。おどろくじゃねぇーー」
「美味しいですね」
「は?」
「ご飯、美味しいですね?」
ゆっくり確認するように言ってやれば、一瞬泣きそうな顔をしながらも笑って美味いなと言ってくれた。
昨日言ったことを覚えてくれていたようだ。
羨ましいと顔に書いてある番たちにも口々に放り込んでやり、さて今日は何をしようかと考える。
ギルドの依頼は早くとも一週間は猶予があったはずなので急ぐことはないだろう。
アズの友達探しもしてやりたいが、昨日からここでお世話になりっぱなしの恩返しもしたい。
「私たちでも手伝える仕事はありますか?」
「あ?」
「昨日、今日と食事をいただいて、部屋まで貸してもらいました。なにか私たちでもできることがあるならそれで恩返しさせてほしいのですが」
「お前……本当に人間か?」
「え?」
人間か疑われてしまうとは。
もしかして気付かない内に獣耳でも生えたのかと頭を触って確かめてみるがそれらしいものはなかった。
残念である。
希望は狼の耳です。
「いや、耳があるとかじゃなくてな。恩返しなんて言い出す人間がいるなんて思わなかったんだよ」
恩返しどころか奴隷、物としか見てない人間が多い中、縁のような人間は初めて見たらしい。
「まぁ、気にすんな。巻き込んだのはこーー」
「いいですね!手伝ってもらいましょう!」
いつの間にいたのか縁たちの背後にはサッズと見知った猫の獣人がいた。
「サッズ、シンクお前らなに言っーー」
「恩返ししたいってんですからしてもらえばいいじゃないですか。というわけで、はい」
「はい…?」
渡されたのは綺麗に編み込まれて作られた木の籠。
中には何も入っておらず、どうすればと見上げれば猫の目でニコリと微笑まれた。
「近くに木苺がなってる場所があるんス。場所はお頭が知ってるんで一緒に行って摘んできてほしいっス」
女性陣の大好物である木苺を摘んでくることで恩返しとしてくれるらしい。
ならば行くかと、アレンたちを見ながら腰を上げれば、待ったがかかった。
「そっちの2人には違うことを頼みたいっス」
「は?」
「あ?」
アレン態度が悪いです。
縁から離れるのが嫌だったのか、睨みつけるようにシンクを見るのを頭を撫でて止めさせる。
「こらこら睨まない睨まない。昨日からお世話になりっぱなしなんですから2人も頑張ってお手伝いして下さい。アズは連れて行っていいですか?」
「うーん、そうっスね。その子も力なさそうだし3人で行ってきてほしいっス。……(お目付役にもなるだろうし)」
「?頑張ります」
最後の方なんと言ったか分からなかったが、力仕事に向かない縁たちは別仕事にしてくれたらしい。
幼いアズと同等の腕力とみなされたのは少なからずショックではあったが。
「さぁ行きましょうジーク。大丈夫、採取は得意です!」
「……あぁ」
そんな不安そうな顔しないで下さい。
これでも冒険者ですよ。Fランクですけどね!
アズを片手にジークを引っ張り外へ向かうのだった。
「それは毒キノコだっつってんだろ!そっちの禍々しい色の木の実も捨てろっ」
あれから数時間。
ジークと木苺採取に向かった縁とアズは説教されっぱなしだった。
主に縁だけが。
「その色見てなんで食おうなんて思えんだよ、お前は!」
「色とりどりでいいかと思って。では、こちらならーー」
赤、青、黄とカラフルなキノコはそれだけでお皿を綺麗に彩りそうだと思ったのだが、毒キノコだったらしい。
ならばと頭上になっていた柘榴のようなものを取ろうとすれば、その手をすごい勢いではたき落とされた。
「それには2度と触るんじゃねぇ。触っただけで被れて数日はそのままだ。いいか、ぜってぇ触んじゃねぇぞ」
紫色の柘榴擬きは触るだけで被れるらしい。恐ろしや。
木苺採取に向かったものの、縁が道々拾ったキノコたちは取ったはしからジークに怒られ、遠くへ放り投げられていた。
「美味しいかと思ったんですが…」
「お前はもう少し危機感を持て。色が綺麗だからって食って死んだんじゃ、恥ずかしいだろ」
「ママはずかしい?」
「ぐっ!」
恥ずかしいママでごめんね、アズ。
確かに縁だけならお腹壊しちゃいました、で済むかもしれないがアズもいるのだ。
綺麗だからと言って食べさせて死んでしまったら悔やんでも悔やみきれない。
アズのためにも頑張ろうと思った縁であった。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
そう、最初こそ物騒なものばかり取ってくる縁にジークが怒りそれを見たアズはジークを怖がっていた。
だがそれが縁のため、縁が危なくないようにだと伝えればアズなりにママにとっていい人だと思ったのか、ジークを怖がることなく今ではずっと左腕に抱っこされている。
ママの威厳が……あってなかったようなものだが。
まるで親子のようだなと思っていると、ジークもそう言われ嬉しかったのかぐりぐりとアズの頭を照れ隠しに撫でていた。
アズの首が無事なことを祈ろう。
「まだかかりそうですか?」
結構歩いたようだがまだ着かないのかと聞けば、ジークが前を指さす。
「ん?なにかある……わぁ、すごいですね」
目の前に広がる光景に縁は目が離せないのであった。
ポツリポツリと数人が座って朝食を食べている中、見知った顔を見つけそちらに向かう。
「ジーク、おはようございます」
「…あぁ、おはよう」
昨日泣いたのが気恥ずかしいのか視線を逸らしながらも挨拶してくれた。
縁は気にすることなく隣に座れば、セインに運んでもらった朝食をアズと分けながら食べる。
シンプルだが素材を活かした味付けに縁は満足だった。
アズと美味しいねと言いながら食べるが、隣を見ればスプーンを持ったまま動かないジークがいた。
何か言おうと口を開き、だが何を言っていいか分からず閉じるといったジークらしくない行動に笑ってしまった。
「ジーク」
「あ、あぁ?なんだーーんっ!」
こちらを向いた瞬間、事前に小さく千切っておいたパンをジークの口に突っ込んでやった。
「おい!何すんだ。おどろくじゃねぇーー」
「美味しいですね」
「は?」
「ご飯、美味しいですね?」
ゆっくり確認するように言ってやれば、一瞬泣きそうな顔をしながらも笑って美味いなと言ってくれた。
昨日言ったことを覚えてくれていたようだ。
羨ましいと顔に書いてある番たちにも口々に放り込んでやり、さて今日は何をしようかと考える。
ギルドの依頼は早くとも一週間は猶予があったはずなので急ぐことはないだろう。
アズの友達探しもしてやりたいが、昨日からここでお世話になりっぱなしの恩返しもしたい。
「私たちでも手伝える仕事はありますか?」
「あ?」
「昨日、今日と食事をいただいて、部屋まで貸してもらいました。なにか私たちでもできることがあるならそれで恩返しさせてほしいのですが」
「お前……本当に人間か?」
「え?」
人間か疑われてしまうとは。
もしかして気付かない内に獣耳でも生えたのかと頭を触って確かめてみるがそれらしいものはなかった。
残念である。
希望は狼の耳です。
「いや、耳があるとかじゃなくてな。恩返しなんて言い出す人間がいるなんて思わなかったんだよ」
恩返しどころか奴隷、物としか見てない人間が多い中、縁のような人間は初めて見たらしい。
「まぁ、気にすんな。巻き込んだのはこーー」
「いいですね!手伝ってもらいましょう!」
いつの間にいたのか縁たちの背後にはサッズと見知った猫の獣人がいた。
「サッズ、シンクお前らなに言っーー」
「恩返ししたいってんですからしてもらえばいいじゃないですか。というわけで、はい」
「はい…?」
渡されたのは綺麗に編み込まれて作られた木の籠。
中には何も入っておらず、どうすればと見上げれば猫の目でニコリと微笑まれた。
「近くに木苺がなってる場所があるんス。場所はお頭が知ってるんで一緒に行って摘んできてほしいっス」
女性陣の大好物である木苺を摘んでくることで恩返しとしてくれるらしい。
ならば行くかと、アレンたちを見ながら腰を上げれば、待ったがかかった。
「そっちの2人には違うことを頼みたいっス」
「は?」
「あ?」
アレン態度が悪いです。
縁から離れるのが嫌だったのか、睨みつけるようにシンクを見るのを頭を撫でて止めさせる。
「こらこら睨まない睨まない。昨日からお世話になりっぱなしなんですから2人も頑張ってお手伝いして下さい。アズは連れて行っていいですか?」
「うーん、そうっスね。その子も力なさそうだし3人で行ってきてほしいっス。……(お目付役にもなるだろうし)」
「?頑張ります」
最後の方なんと言ったか分からなかったが、力仕事に向かない縁たちは別仕事にしてくれたらしい。
幼いアズと同等の腕力とみなされたのは少なからずショックではあったが。
「さぁ行きましょうジーク。大丈夫、採取は得意です!」
「……あぁ」
そんな不安そうな顔しないで下さい。
これでも冒険者ですよ。Fランクですけどね!
アズを片手にジークを引っ張り外へ向かうのだった。
「それは毒キノコだっつってんだろ!そっちの禍々しい色の木の実も捨てろっ」
あれから数時間。
ジークと木苺採取に向かった縁とアズは説教されっぱなしだった。
主に縁だけが。
「その色見てなんで食おうなんて思えんだよ、お前は!」
「色とりどりでいいかと思って。では、こちらならーー」
赤、青、黄とカラフルなキノコはそれだけでお皿を綺麗に彩りそうだと思ったのだが、毒キノコだったらしい。
ならばと頭上になっていた柘榴のようなものを取ろうとすれば、その手をすごい勢いではたき落とされた。
「それには2度と触るんじゃねぇ。触っただけで被れて数日はそのままだ。いいか、ぜってぇ触んじゃねぇぞ」
紫色の柘榴擬きは触るだけで被れるらしい。恐ろしや。
木苺採取に向かったものの、縁が道々拾ったキノコたちは取ったはしからジークに怒られ、遠くへ放り投げられていた。
「美味しいかと思ったんですが…」
「お前はもう少し危機感を持て。色が綺麗だからって食って死んだんじゃ、恥ずかしいだろ」
「ママはずかしい?」
「ぐっ!」
恥ずかしいママでごめんね、アズ。
確かに縁だけならお腹壊しちゃいました、で済むかもしれないがアズもいるのだ。
綺麗だからと言って食べさせて死んでしまったら悔やんでも悔やみきれない。
アズのためにも頑張ろうと思った縁であった。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
そう、最初こそ物騒なものばかり取ってくる縁にジークが怒りそれを見たアズはジークを怖がっていた。
だがそれが縁のため、縁が危なくないようにだと伝えればアズなりにママにとっていい人だと思ったのか、ジークを怖がることなく今ではずっと左腕に抱っこされている。
ママの威厳が……あってなかったようなものだが。
まるで親子のようだなと思っていると、ジークもそう言われ嬉しかったのかぐりぐりとアズの頭を照れ隠しに撫でていた。
アズの首が無事なことを祈ろう。
「まだかかりそうですか?」
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