51 / 475
おかしい
しおりを挟む
その日も朝からアズが後ろを付いて回ってきていた。
まるで父親の後ろ姿を追う子どものようで気恥ずかしくも嬉しかった。
しかもその後ろからはエニシがアズを見守るように付いてくるのが可愛いく、エニシは気付いてないがその姿に見ていた住人たちが皆微笑ましそうな目線を送っていた。
「隔離部屋ってどこ?」
「縁と行ってくるからアズを頼めるか?」
休みということでエニシに文字通り張り付いて回っていたアレンとセインに発情期の時用の部屋を聞かれれば、何か胸の奥で嫌なものが渦巻く。
別に彼らとそういう話をするのは初めてではないが、何か気持ち悪いものが沸き起こる。
それが嫉妬だと確信したのはあの部屋から帰ってきてベッドに横たわるエニシの姿を見た時だった。
どこか気怠げな様子に、だかそういうことをしたせいかどことなく色気を感じさせるエニシに、そんな姿にしたアレンたちが憎たらしくなって仕方がなかった。
イラつく心を隠せず低くなる声にエニシは気付いていたようだが何も言ってこなかった。
「アズ、今日は俺と寝るか?」
いつまで経っても戻って来ないエニシたちにアズも必死に眠気と戦いながら待っていたが、結局その日はエニシたちが帰ってくることはなく仕方なく眠ってしまったアズを自身のベッドに一緒に寝かせたのであった。
「帰って来ないってことはそういうことなんだろな」
分かってた。
分かってはいたし、そういう意味でエニシをからかったこともあったが何か胸の奥でドロドロとしたものが沸き起こっては全身に回っていくようで落ち着かない。
その感情にもしかしてと何度も思ったがその度に死んだエリーの姿が頭に浮かび違うと自分に言い聞かせていた。
「あいつらアズにも何か言ってけっつーの」
いつママたちはもどってくるの?と聞かれるジークの身にもなってほしい。
なんでもどってこないの?アズはおいてかれたの?と涙目で質問責めされても本当の理由を言ってやれるはずもなく、何とかごまかしたのだ。
「どんな声で啼くんだろうな」
きっと可愛いんだろなと考えたところで、自分は何を言っているんだと慌てて頭を振り脳内の妄想を霧散させる。
普段からあれだけ可愛いのだ、きっとその時はもっと可愛いのだろうが自分がその姿を見ることはないだろうと戒める。
「初めてでアイツに無茶させてないといいがな」
日付けが変わっても戻ってこないエニシたちにそれは手遅れだとは思うが。
それから翌日の昼前まで戻ってこなかったエニシたちにどんな顔をしていいか分からず、ジークもわざわざ顔を合わせることもしなかった。
「頭!夕メシできやしたー」
「あぁ今行く」
もう夕方かと部屋を出て食堂に向かったがアズたちの姿が見えず、聞けばまだ来てないとのこと。
アレンたちも仕事上まだしばらくかかるようなので、アズの教育にもよくないだろうとよく分からない言い訳をしながら2人を呼びに部屋に向かうのだった。
「ジーク!」
「動けないんだろ?運んでやる。ほら行くぞアズ」
自身は動けずアズだけ頼むと言おうとするエニシを抱き上げれば、慌てたように暴れる様子に納得いかなかった。
せっかく運ぼうしているのに何故暴れようとするのか。
それでも諦めたのか胸にもたれかかる頭を見下ろせば、今は自分の腕の中にいるという現実に喜びそうになり、怪訝そうに名前を呼ぶエニシに反射的に不機嫌そうに返事をしてしまう。
そのまま食堂へ向かえば驚いたような顔をした面々とニヤニヤと嫌な笑い方をするサッズは無視し、エニシを抱いたまま席につけば、すかさずシンクがご飯を運んできてくれる。
「ほら食え」
「あの、こんなことしてくれなくても私1人でも……」
「嘘つけ。そんなふらふらな身体しやがって。ほら、アズも腹へってんだからさっさと食わせてやれ」
無理矢理スプーンを持たせ、アズのために早くしろと言えば慌てたようにアズの口にご飯を運んでいた。
逆にジークは食欲がないと遠慮するエニシの口にご飯を詰め込んでやる。
アズにもやってやったがエニシにしてやるとこんなにも嬉しいのはなぜだろう。
それをエニシが許してくれているということと、エニシに関われることができたという喜び。
ニヤけそうな口元に必死に力を入れれば、自然皺が寄る眉間に一見不機嫌そうに見えるがエニシならまだしも付き合いが長い仲間にはそれが嘘だとバレていることだろう。
「お前は細すぎんだよ。もっと食え。そんなんじゃ俺どころかいつかアズにもすぐ抜かれんぞ」
「え!それは……いやですね。やはりお肉を食べるしか?アズ、ムキムキな私はどうでしょう?」
「?」
意味が分からないのか、それともムキムキなエニシを想像できなかったのかアズが首を傾げている。
「やはりアズも頼もしいママがいいですよね。待ってて下さい。今にジークのようなムキムキの頼もしいママにーー」
「「「「「「いや、ムリでしょ」」」」」」
話しを聞いていた全員に否定されていた。
「というかアズもんなこと一言も言ってねぇだろ」
「いえ、アズも男の子です。その内筋肉の素晴らしさに目覚め、こんなヒョロヒョロなママなど嫌だと言い出すに決まってます」
自身がヒョロヒョロな自覚はあったようだ。
「アズね、ママだいすきだよ」
「あぁ!気を遣わなくていいんですよ。任せて下さい。すぐには無理ですが、きっと今にアズも自慢したくなるようなムキムキの素晴らしい筋肉にーー」
「「「「「「ムリだから!」」」」」」
やはりみんなに否定されてしまい、肩を落とすエニシにアズが頭を撫でて慰めているのを見て笑ってしまったジークであった。
なんでこんなに筋肉好きなんだよ。
まるで父親の後ろ姿を追う子どものようで気恥ずかしくも嬉しかった。
しかもその後ろからはエニシがアズを見守るように付いてくるのが可愛いく、エニシは気付いてないがその姿に見ていた住人たちが皆微笑ましそうな目線を送っていた。
「隔離部屋ってどこ?」
「縁と行ってくるからアズを頼めるか?」
休みということでエニシに文字通り張り付いて回っていたアレンとセインに発情期の時用の部屋を聞かれれば、何か胸の奥で嫌なものが渦巻く。
別に彼らとそういう話をするのは初めてではないが、何か気持ち悪いものが沸き起こる。
それが嫉妬だと確信したのはあの部屋から帰ってきてベッドに横たわるエニシの姿を見た時だった。
どこか気怠げな様子に、だかそういうことをしたせいかどことなく色気を感じさせるエニシに、そんな姿にしたアレンたちが憎たらしくなって仕方がなかった。
イラつく心を隠せず低くなる声にエニシは気付いていたようだが何も言ってこなかった。
「アズ、今日は俺と寝るか?」
いつまで経っても戻って来ないエニシたちにアズも必死に眠気と戦いながら待っていたが、結局その日はエニシたちが帰ってくることはなく仕方なく眠ってしまったアズを自身のベッドに一緒に寝かせたのであった。
「帰って来ないってことはそういうことなんだろな」
分かってた。
分かってはいたし、そういう意味でエニシをからかったこともあったが何か胸の奥でドロドロとしたものが沸き起こっては全身に回っていくようで落ち着かない。
その感情にもしかしてと何度も思ったがその度に死んだエリーの姿が頭に浮かび違うと自分に言い聞かせていた。
「あいつらアズにも何か言ってけっつーの」
いつママたちはもどってくるの?と聞かれるジークの身にもなってほしい。
なんでもどってこないの?アズはおいてかれたの?と涙目で質問責めされても本当の理由を言ってやれるはずもなく、何とかごまかしたのだ。
「どんな声で啼くんだろうな」
きっと可愛いんだろなと考えたところで、自分は何を言っているんだと慌てて頭を振り脳内の妄想を霧散させる。
普段からあれだけ可愛いのだ、きっとその時はもっと可愛いのだろうが自分がその姿を見ることはないだろうと戒める。
「初めてでアイツに無茶させてないといいがな」
日付けが変わっても戻ってこないエニシたちにそれは手遅れだとは思うが。
それから翌日の昼前まで戻ってこなかったエニシたちにどんな顔をしていいか分からず、ジークもわざわざ顔を合わせることもしなかった。
「頭!夕メシできやしたー」
「あぁ今行く」
もう夕方かと部屋を出て食堂に向かったがアズたちの姿が見えず、聞けばまだ来てないとのこと。
アレンたちも仕事上まだしばらくかかるようなので、アズの教育にもよくないだろうとよく分からない言い訳をしながら2人を呼びに部屋に向かうのだった。
「ジーク!」
「動けないんだろ?運んでやる。ほら行くぞアズ」
自身は動けずアズだけ頼むと言おうとするエニシを抱き上げれば、慌てたように暴れる様子に納得いかなかった。
せっかく運ぼうしているのに何故暴れようとするのか。
それでも諦めたのか胸にもたれかかる頭を見下ろせば、今は自分の腕の中にいるという現実に喜びそうになり、怪訝そうに名前を呼ぶエニシに反射的に不機嫌そうに返事をしてしまう。
そのまま食堂へ向かえば驚いたような顔をした面々とニヤニヤと嫌な笑い方をするサッズは無視し、エニシを抱いたまま席につけば、すかさずシンクがご飯を運んできてくれる。
「ほら食え」
「あの、こんなことしてくれなくても私1人でも……」
「嘘つけ。そんなふらふらな身体しやがって。ほら、アズも腹へってんだからさっさと食わせてやれ」
無理矢理スプーンを持たせ、アズのために早くしろと言えば慌てたようにアズの口にご飯を運んでいた。
逆にジークは食欲がないと遠慮するエニシの口にご飯を詰め込んでやる。
アズにもやってやったがエニシにしてやるとこんなにも嬉しいのはなぜだろう。
それをエニシが許してくれているということと、エニシに関われることができたという喜び。
ニヤけそうな口元に必死に力を入れれば、自然皺が寄る眉間に一見不機嫌そうに見えるがエニシならまだしも付き合いが長い仲間にはそれが嘘だとバレていることだろう。
「お前は細すぎんだよ。もっと食え。そんなんじゃ俺どころかいつかアズにもすぐ抜かれんぞ」
「え!それは……いやですね。やはりお肉を食べるしか?アズ、ムキムキな私はどうでしょう?」
「?」
意味が分からないのか、それともムキムキなエニシを想像できなかったのかアズが首を傾げている。
「やはりアズも頼もしいママがいいですよね。待ってて下さい。今にジークのようなムキムキの頼もしいママにーー」
「「「「「「いや、ムリでしょ」」」」」」
話しを聞いていた全員に否定されていた。
「というかアズもんなこと一言も言ってねぇだろ」
「いえ、アズも男の子です。その内筋肉の素晴らしさに目覚め、こんなヒョロヒョロなママなど嫌だと言い出すに決まってます」
自身がヒョロヒョロな自覚はあったようだ。
「アズね、ママだいすきだよ」
「あぁ!気を遣わなくていいんですよ。任せて下さい。すぐには無理ですが、きっと今にアズも自慢したくなるようなムキムキの素晴らしい筋肉にーー」
「「「「「「ムリだから!」」」」」」
やはりみんなに否定されてしまい、肩を落とすエニシにアズが頭を撫でて慰めているのを見て笑ってしまったジークであった。
なんでこんなに筋肉好きなんだよ。
101
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる