二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
125 / 475

遅れました

しおりを挟む
 「エニシくん!?」

 「……あ?」

 暫く会わない内にかなり変わってしまった縁の体型にランが叫ぶ。
 別に太ったわけじゃ……いや、太ってはいるか。

 「お久しぶりです。ちょっと遅れてしまいましたが報告に来ました」

 戻りつつあるが、つい最近まで食欲が落ちていたため立ち寄ることがなかったランの家に、叔父であるガンズとまとめて報告しようと思い訪れてみれば縁の姿を見た途端ランが悲鳴を上げた。

 「ど、どう、どうな、どう」

 「お前は落ち着け」

 混乱するランにガンズがツッコミを入れるが、やはりガンズも驚いているようで目を見開いていた。
 6ヵ月に入ったお腹は最初と比べかなり膨らんでおり、歩くのが大変になってきた縁にセインたちが率先して抱っこしてくるようになった。
 これでもまだ大きくなるのだから世の女性には尊敬しかない。
 これほど大きなお腹を抱え歩くのはどれほど大変なのか
、こうなって初めて理解できた。

 「驚かせてすいません。言っておきますが変な病気とかではないので安心して下さい。ただ妊娠中なだけです」

 「「………」」

 ガンズは大きな溜息をつき、ランは……後ろ向きにぶっ倒れた。
 慌てて駆け寄ろうとすれば逆にガンズが慌てて縁を止め、隣でぶっ倒れるランの頰をペチペチ叩く。

 「……う、ん?叔父さん?僕なんでーー」

 「気がついて良かった。どこも怪我してませんか?」

 かなり派手に倒れたランに頭など打ってないか確認すれば、お尻を少しぶつけたぐらいで大きい怪我はないようだ。
 
 「あの、えっと、その、エニシくんその……」

 「すごいでしょう?よければ触ってみますか?」

 抱えてくれていたセインに下ろしてもらい、おいでおいでと手招きすればキョロキョロと周りの様子を伺いながらも近寄ってきた。

 「人間ここまで膨らむんだと驚きましたが、この中に新しい命がいるのだと思うともっとすごいですよね」

 「わぁ、パンパンだ」

 針で刺せば割れるんじゃないかと思うほど膨らむお腹に、そっと触れたランも驚いている。

 「お前さん女だったか?」

 「あはははは、違いますよ。正真正銘男です。色々と事情はありますが」

 簡単にだがセインたちと番の話しをすれば、かなり驚いていたようだが理解はしたようで頷いていた。

 「すごい、ね。ぼっ、僕妊婦さんのお腹触ったの初めてだけど、なんか……感動した」

 「お前さんにはよく驚かされるな。まさかガキが出来るとは」

 「お騒がせしてすいません。もっと早く来るつもりだったんですけど、つわりやゴタゴタで来るのが遅れてしまいました」

 来るのが遅れてごめんねと言えば、ランは首がとれるんじゃないかというぐらい振り、そんなこと気にしなくていいと笑ってくれた。

 「言いにきてくれただけですごく嬉しい」

 「男か女か分かりませんが、産まれたら抱っこしてあげて下さいね」

 「うぇ!?ぼ、ぼくが?ぼく、なんかでいいの?」

 「友達であるランがいいんです。もちろんガンズさんもお願いします」

 「あぁ、なら無理すんじゃねぇぞ。お前も親父ならこいつをちゃんと見張ってろ」

 そこで向いたガンズの目にセインは驚いていたようだが、ぎこちないながらも頷いていた。
 
 「なんでみんなして私をそんな子ども扱いするんですかね?」

 何故か会う人会う人、目を離すなとまるで縁が子どもかのように言ってくる。
 これでも成人してるのに……
 頰を膨らませる縁にガンズは笑って小突いてくる。

 「お前さんは何しでかすか分かんねぇからな。止めれねぇんだから隣で誰かが見てるぐらいでいいんだよ」

 「日頃の行いだな」

 セインまでうんうんと頷き納得しているが、言われた本人は納得できない。
 縁には些細なことでも、人によっては捉え方が違うのだと分かっていても複雑である。

 「それならランだって同じじゃないですか。私ばかり言われるのはーー」

 「エニシくーーん!大丈夫かーー!」

 「ん?」
 「あ?」
 「え?」
 「……なんだ?」

 隣家にまで響くんじゃないかというくらいの大声は玄関の方から聞こえたようで、何事かと皆身構える。
 なんだか聞いたことがある声なんですが……

 「エニシくん!エニシくん!」

 「……おい、アレお前さんの知り合いか?」

 バンバンと戸を打ち鳴らす音にガンズが縁に尋ねるが、何とも嫌な予感がし答えるのを躊躇ってしまう。

 「あれ、サブギルドマスターじゃないか?」

 やはり耳がいいセインはいち早く気付いたようで、どうする?と縁を見てくる。
 何しにここまで来たんでしょうか……
 この状況で逃げるのは難しいだろうと諦めると溜息をつきつつ玄関に向かう。

 「大きな声で叫ぶのはやめて下さい。ご近所迷惑です」

 「エニシくん!!わっ」

 抱きつこうとしてきたため反射的に避ければ、見事に顔から地面にダイブしていた。
 痛む顔を撫でつつ立とうとしたため手を貸してやる。

 「お腹に響くので叫ぶのはやめて下さい。それと、いったい何事ですか?」

 あまりの大声にランたちに迷惑をかけてしまったではないかと怒れば、さすがにマズかったと思ったのか素直に謝ってくる。

 「ご、ごめんね。エニシくんがこの酒造に入っていったのを見たって人がいてね。妊娠中にお酒はダメでしょ?だから早く止めないと思ってね」

 それぐらい縁にだって分かっている。
 それ以前に全く飲めないのだが。
 ランとガンズに迷惑をかけてしまったのは申し訳ないが、それも縁を心配してゆえだと言われてしまえばもう何も言えないのであった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...