二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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すごい、すごい!

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 その日は調理場でアズと一緒に昼食の準備を手伝っていた。
 もちろん力仕事は無理なため、サラダ用の野菜を切ったりなどの簡単な作業だけではあったが。
 水魔法が使えるようになったアズにはジュースを作ってもらった。

 「アズは魔法が上手に使えるようになりましたね」

 「アズすごい?」

 「とても凄いです」

 ただ水を出すだけでなく、縁がアドバイスしたように飲み水には冷えた水を出すようになった。
 冷蔵庫などないこの世界では基本常温のものしかなかったため、皆喜んでくれた。

 「慣れれば氷も作れるようになるかもしれませんね」

 「こーり?」

 見たことないのだろう。
 水を固めたものだと言ってみたが、想像できないのか首を傾げている。

 「午後からでも一緒にやってみましょうか。アズならきっと簡単にーーえ?」

 トンと腹に響く振動に驚く。

 「ママ?」

 どうしたのかとこちらを見てくるアズに大丈夫だと言い後を任せると、足早に調理場を出て行く。

 「ーーセイン、セイン!」

 「ん?縁どうーーバッ、バカ走るな!」

 走るというほど速さはなく、小走り程度なのだが慌てたセインが尋常ではない速さで駆け寄ってきた。

 「あんなに走るなっていーー」

 「お腹!お腹蹴られました!」

 「蹴っ、だ、誰だ!そんなことしたヤツ」

 あ、言い方が悪かった。
 というか足りなかった。

 「違います。赤ちゃん、赤ちゃんがお腹を蹴ったんです!」

 「え?」

 心配するセインの手を掴むと腹に添える。
 パパですよと声をかければ、それが伝わったのか返事をするようにドンドンと響く振動にセインの肩がビクリと揺れた。

 「凄いでしょ?」

 「………」

 とても元気な子だと喜んでいれば、セインは俯き縁の肩に額を乗せてくる。
 
 「セイン?」

 どうしたのか。
 
 「……すごいな。本当にここに、俺の子がいるんだな」

 どうやら感動していたらしい。
 確かに本来なら妊娠できない男性は子どもが出来たと言われてもあまり実感がわかないだろう。
 産まれるまで自身の身体の中で育て守り続ける女性と違い、こうして触れ実感しなければ分からない。
 縁も本当に自分の中に新しい命がいるのだと感動したものだ。
 だからこそあまりの嬉しさに仕事中のセインに会いに来てしまった。

 「すごいですよね。嬉しくて、一番最初にセインに教えたくて来ちゃいました」

 「分かってる、ありがとな」

 邪魔してすいませんと謝れば、教えてくれて嬉しかったと言われた。
 それからセインと別れ、途中出会ったジークにも報告すればすげぇなと喜ばれ抱き抱えられて運ばれた。
 一気に心配が増したらしい。

 「なんで俺には言いに来てくれないんだよ!」

 「……仕事中でしたし」

 「セインだってそうだろ!」

 食事を済ませた後アレンにも報告すれば、何故自分は最後なのかと怒り出した。

 「セインは、その、この子のパパですし……」

 「俺だってパパだ!」

 「ちゃんとアレンにも言おうと思ったんですよ?」

 「昼メシの後でな!」

 完全に拗ねてしまったようだ。
 どうしたものかと悩んだが、ジークは放っておけと言う。

 「でも……」

 「ガキなんだよ。なんでも一番じゃないと気がすまない」

 「ガキじゃねぇ!」

 「そういうとこがガキってんだよ」

 「うるせぇっ」

 余計に煽ってしまったようだ。
 そのまま食べ終えるとさっさと食堂を出て行くアレンに何と言っていいか分からなかった。

 「あんま気にすんな」

 「だな。アイツはもう少し大人になったほうがいい」

 ジークとセインがそう言ってくれたが縁は納得出来ず、どうしたらいいか考えこむのであった。
 
 「アレン」

 「……縁」

 どうにも良い案が浮かばず、しかし放っておくこともできなかった縁は仕事を終えるであろう時間にアレンを迎えに行った。
 名前を呼んでくれたはいいが、すぐに顔を逸らされてしまい落ち込む。

 「もう……いやになりましたか?」

 「あ?」

 「……私の…番でいるのがいやになーー」

 「なってない!」

 「………」

 即座に否定されたが、顔は逸らされたままで近づくのを躊躇ってしまう。

 「アレンの気持ちを考えなくてごめんなさい。セインにも言ったんだから、アレンにも言いに行くべきーー」

 「いや俺が悪かった。その…セインもジークも知ってるのに俺だけ知らなくてショックだったんだ」

 「それはーー」

 「分かってる。セインに教えたいと思うのは当たり前だし、ジークだってたまたまだったんだろ?分かってる。ただ……自分だけ知らなかったことに驚いて縁にあたったんだ。……ごめん」

 何度も謝るアレンに手を伸ばそうとしたが、その瞬間ピクリと揺れた肩に手を下ろそうとし、しかし下ろしきる前に掴まれた。

 「もう触るのもイヤ?」

 「え?ちが、ちがいます。アレンが触られるのがいやなのかと思って」

 触ってもいいかと聞けば頷かれたので両手で頰を挟むようにし、俯いていた顔を上げさせた。

 「これからも私の番でいてくれますか?」

 うんと頷いてくれることを祈りながらも聞く。

 「俺なんかでいいの?」

 「アレンが、いいんです」

 ぺちゃんと下がる耳がとても可愛いく、いつも元気に振られている尻尾も垂れ下がっている。
 縁より格段に大きい体躯なのに、落ち込み小さく丸々身体に愛しさを感じる。

 「俺も縁の番でいたい」

 ならばこれで仲直りだと笑って抱きつけば、アレンも笑って抱きしめてくれるのであった。


 
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