二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
132 / 475

な、なにそれ!

しおりを挟む
 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!!

 「エルが嫌じゃないなら良かったです。いつも頼りきりで、なのにほとんど文句を言わないでしょ?何かしてあげたくとも何も言ってくれないので申し訳なく思ってたんです」

 「バ、バカじゃないの?そんな…オレ、別に何も出来てないし…ア、アンタがそんなこと思う必要ないし!オレはやりたいことしかやってないから!」

 なに言い出すんだよ!
 突然帰りたくないのかと聞かれた時は帰れと言われているのかとショックだったが、まさかそれが自分を心配して言ってくれたのだと分かるとホッとした。
 もうこの場所はエルにとっても帰るべき家で、家族なのだ。
 なので問題ないと言えば、今度はエルのために何かしてあげたいと言われ、そこまで想ってくれているのが嬉しいのと、自分がしたことでエニシが喜んでくれているのが嬉しく、しかし素直にそれを伝えることが出来ず恥ずかしさに変な喋り方になってしまった。
 実の家族にですらそんなこと言われたことはなく、自分でも親でもある両親に何かしてあげたいと思ったことなどない。
 なのにも関わらず、エニシに限っては出来ることがあれば何でもしてあげたいと思える。
 それはエニシがエルのことを本当の家族のように想ってくれているからで、それを隠すことなくちゃんと伝えてくれているからでもある。
 大事な弟であるアズライトを育ててくれているだけでなく、エルのことも家族だと言ってくれた。
 まだ完全に兄弟元通りとはいかないが、普通に接してくれるぐらいには進歩しているのもエニシのおかげだ。
 エルにとってエニシは友であり、兄弟であり、母であり、家族なのだ。
 身長で負けたと兄弟のように騒いだり、美味しいご飯を友達のように仲良く一緒に食べ、ツライことはないかと母のように心配してくれる。
 貰い過ぎるほど貰っているのはエルの方なのに、エニシは自分ばかり申し訳ないと、何か返したいのだと言ってくれる。
 アズライトを買ってくれたのがエニシで良かった。
 エニシに出会えて良かった。
 彼のおかげで自分は自分らしくいられ、毎日楽しく愉快に暮らせる。
 あの冷たい血の繋がった家族などより、血が繋がっていなくても温かいエニシのそばにいたい。

 「べ、べつに欲しいもの、はないけど、ア、アンタがそう思ってくれてる、のは、その……うれしい」

 「私もエルが私のことを想って色々してくれるのがとても嬉しいです。ありがとう」

 あー!あーー!あーーー!!
 なんでそう簡単に言えるかなぁ!?
 愛を伝えたことなど今までなかったエルには想いを伝えることがとても難しく、家族になってくれたエニシがエルのことを想ってくれているのに上手いこと伝えられない。
 恥ずかしさに真っ赤になりながらも、エルもありがとうと言えば嬉しそうに笑ってくれた。

 「また今度ケーキ作りますね。もちろんお酒を入れたものを」

 「……うん、楽しみにしてる」

 嬉しさにニヤつきそうになりながらも、しかしそれをバレるのが恥ずかしく俯けば優しく頭を撫でられる。
 こうして子どものように撫でられるのも、他のヤツがすればガキだとバカにしてんのかと手首を捻ってやるところだが、エニシにはしない。
 そんなことを思っていないのを分かっているし、彼にとってそれが大切な人にする愛情表現だと分かっているから。

 「それにしても未成年が飲んでいいんですか?」

 「酒に弱い魔族なんていないよ。まぁ、オレも自由に飲み始めたのはこっちに来てからだけど。その内アズライトも飲むようになるんじゃない?」

 「……ダメです!」
 「……ダメだわ」

 酒瓶片手に飲むアズライトの姿を想像し、これはないと自分で言って自分で否定した。
 
 「アズには成人するまで飲ませません。というかそんな姿見たくない」

 「だね」

 「……それに私は飲めないのに、アズが飲めるなんて悔しい上に悲しいです」

 「大人げなっ!」

 「またまたエルに裏切られましたからね。お酒が強いなんて反則です。私にもその才能半分ください」

 「ムリでしょ!」

 こうして戯れるのが楽しく、ズルいズルいと服を掴まれ揺さぶられてもケラケラと笑って許せてしまう。

 「ずーるーいー、私にだってもっと何かあってはいいはずです!」

 「あるある。きっとあるから」

 「言い方!私がこんなに真面目に考えているというのに!」

 「真面目にって…言ってることかなりガキっぽいよ」

 「身長は男にとって大事なことでしょう!……仕方ない、身長は諦めるので筋肉のつけ方を一緒に考えて下さい」

 切り替え早っ!!
 しかもその代わりが筋肉ってどうなの?
 確かに遺伝である身長より、頑張れば出来るかもしれない筋肉を考えた方がいいにはいいが……

 「そのお腹でなに言ってんの。そんなこと産んだ後で考えればいいじゃん」

 「そんなこと!?」

 またもや胸ぐらを掴まれたエルは、今度は身長の時の比ではないくらい激しく揺さぶられるのであった。
 エニシに筋肉の話しは禁句なのであった。
 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

処理中です...