二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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快適

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 「ふふふふふ~ん、ふん、ふん、ふ~ん」

 鼻歌まじりに魔法でガッツンガッツン岩を削っていく。
 時々砕かれた岩が飛んでくるが、予め自身の前に風魔法で壁を作っておいたため安心安全。
 のんびり作業していれば、縁の鼻歌に合わせているのか今日は一段と腹を蹴られることが多く元気な様子に微笑む。

 「会えるまでもう少しですね。ふふ、貴方は女の子ですかね?男の子ですかね?どちらでも嬉しいですが無事産まれて下さいね。あと、あまり痛くないと嬉しいです」

 お腹にいる赤ちゃんに無茶な相談ではあるが、聞いたことある話しでは出産時の痛みは鼻からスイカを出すほどと聞いたことがある。
 耐えられるか?というのが素直な本音。
 本当に世の女性とはすごいものだと感心するばかりだ。

 「……こんなものですかね。いや広すぎ、たかな?まぁ、狭いよりいいでしょう。無駄にみんな大きいですからね」

 少しは分けて欲しいものだが、おもちゃとは違い切って自分につけるとはいかない。
 なので身長は諦めた。
 ……そう、身長は。

 「親としてはセインに似て欲しいですが、男としては…」

 我が子に抜かれる未来しか見えず泣きそうになった。

 「終わったー。こっちは?」

 罠を張り終わったらしくエルが帰ってきた。

 「広さはこれぐらいでいいと思うので、あとは寝る場所と…風呂ですかね」

 元日本人としてそこは譲れない。

 「いいね」

 こちらへ来て暫くして分かったことだが、こちらの世界の住人は風呂へ入ることが少ないらしい。
 それこそ金持ちか、生活に余裕がある者、隠れ家では当たり前にあったのはジークの趣味と発情期がある獣人であるからだろう。
 でなければ色々出し終わった後の部屋はかなり…匂いが濃く、子どもたちにもあれなのだ。
 普通なら軽く水浴びするぐらいのものらしいが、縁的には毎日きちんと入りたい。
 エルにしてもそんな習慣なかったようだ、しかし隠れ家に来てからは毎日入っていることからやはり気持ちいいと思ってくれているのだと思う。
 賛成意見をもらったことから2人で風呂場建設に勤しむ。

 「これはかなり……でっかいね。大人4、5人は入れるんじゃない?」

 「大は小を兼ねると言います。小さいより……いいはずです」

 「よく分かんないけどいいんじゃない?アズライトなら泳げそう」

 「あ、そういえばアズって泳げるんですか?」

 「え、教えてないの?」

 「……私、泳げないんです」

 「……そう」

 教えてあげたいのはやまやまだが、泳げない者が何を教えてやれるというのだろう。
 すごく憐れみの表情で見られたため、腹いせに脇腹をつついておいた。

 「今度一緒に近くの川でも行きましょうか。言い出しっぺのエルがアズに教えてあげて下さいね」

 どうせ私には出来ないのでと拗ねたように言えば、エルも悪いと思ったのかごめんと謝られた。

 「ではお風呂はいいとして、寝床はまた今度にしましょう。布団はさすがに持ってきてないので。ではアレンたちが戻ってくるまで暇なので……何しましょう?」

 「出来れば動かないでいてくれるのが一番なんだけど?」

 「では話し相手になって下さい。それぐらいならいいでしょう?」

 のんびりすることも嫌いではないので、焚き火の前にエルと2人並んで腰を下ろす。
 
 「エルは弟と妹どっちがいいですか?」

 「どっちでもいいけど、弟はアズライトがいるから妹の方がいいかな」

 楽しみだと笑うエルの手を掴むとそっと腹に手を当てる。
 元気に腹を蹴る振動に一瞬驚いたようだが、本当にそこに赤ちゃんがいるのだと感動していた。

 「すっご。今からこれなら産まれたら大変だろうね。アレンたちが走り回ってるのが眼に浮かぶ」

 「随分他人事のように言ってますけど、私にはエルも一緒に走り回ってる姿が見えますよ」

 「あー、否定は出来ないかも。甘やかしちゃいそう」

 「あらあら。なら私は厳しくしなければいけませんね」

 子育てとは大変だと笑えば、エルもそうだねと笑う。

 「エルは……魔族は寿命が長いと聞きました。きっと私より長く生きるでしょう。なら、いえ、だからこそお願いしたい。この子を見守ってあげて下さい」

 人間の寿命など他の種族からすれば短いものだ。
 縁もきっとみんなをおいていく。
 その時任せられるのは誰か。
 後追いするというアレンたちではなく、同じ人間であるマーガレットたちでもない。
 長く生き、家族として誰より近くにいてくれる存在。

 「この先他にも子は増えるでしょう。でも私は最後までこの子たちを見てあげることはきっと出来ない。面倒を見てやってくれと言っているわけではありません。ただ見てあげていて欲しいんです。何をするでもなく、ただ側に。何があっても側にいると教えてあげて欲しいんです」

 「……そんなことオレに頼んでいいの?」

 面倒なことを頼んでいるという自覚はある。

 「エルがいい。いえ、エルしかいないんです」

 それでも、頼めるのはきっとエルしかいない。

 「私が信頼している中で、安心して後を任せられるのはエルしかいません」

 「その言い方ずるくない?頷くしかなくなるじゃん」

 苦笑いしながらも頷いてくれるエルは、やはり頼んで正解だったようだ。

 
 
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