二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
165 / 475

ちがう

しおりを挟む
 「どいて下さい」

 「やだ!」

 「どきなさい」

 「や、やだ……」

 「離しなさい」

 「やだやだやだ!」

 あ~あ~あ~もうやだこの駄々っ子!
 出て行こうとする縁にダメだと扉の前で通せんぼする駄々っ子こと赤男。
 すでに30分ほどこの攻防を繰り広げており、離れたくないとうるさい駄々っ子に疲れ切っていた。

 「ああ~もう、うるさい!やだやだばっかり行ってないで貴方はお風呂に入ってきなさい!」

 「うぅ、やだ…ハッ、クション!」

 あああぁぁぁっ!
 苛立ちが頂点に達した縁は自身に身体強化の魔法をかけると、目の前で顔も服もグズグズな男の襟首を掴み風呂場に引きずっていく。
 途中何かを叫んでいたが無視する。
 いや、うるさかったので一発チョップをかましておいた。

 「いいですか?私を襲おうなどとすれば問答無用で貴方の股間を蹴り飛ばし、ここからすぐにでも出ていきます。いいですね?」

 「うぇ?な、なにーー」

 「分かりましたね?分かったら返事!」

 「は、はい!」

 服を脱ぐよう言うと、縁も手早く脱ぎ腰にタオルを巻くと同じく裸にした繋を抱っこする。
 一瞬自分は何をしてるんだろう?と思ったが、深く考えるのはやめようと浴室に向かう。

 「広い……」

 大人5、6人は入れるんじゃないかという広さの円形型の浴槽はちょっと……いや、かなりテンションが上がった。
 やはり大きい風呂はいい。

 「ほら座って。暴れると目に入りますよ」

 「う、うん」

 繋はバスタオルの上に寝かせておき、男の頭を洗ってやる。
 あれほどうるさかったはずが、大人しく頭を洗われていることに不思議で仕方なかったが、無駄に苛立つよりはいいだろうと思うことにした。

 「意外に固いんですね。しかも長い」

 あまり長いのを好まない自分とは違い、後ろで一つに括られていた赤毛の腰辺りまである長い髪は触れてみれば意外にも固かった。

 「だ、だめ?長いの嫌い?」

 「とくには。私は動き辛くなるので邪魔で切りますが、好きで伸ばしているならいいんじゃないですか?似合ってますし」

 人それぞれ、個性だ!というわけではなく、まぁ髪くらい好きにすればいいんじゃない?と思っている。
 サラリーマンなどの会社勤めでもなく、職場にそぐわないと貶す上司がいるわけでもないのだから。
 昔、緑色の髪色にツンツンとしたネギみたいな頭をして鼻や口、耳に額辺りにもピアスにつけている男性を見た時は流石に驚いたが。
 あまりの凄さに痛くないのか聞いてみれば、笑って大丈夫だと言っていた。
 あれに比べれば赤い瞳に、赤い長い髪くらい気にするほどではない。
 似合ってもいるので問題もないだろう。

 「へへ、そっか」

 「ほら終わりましたよ。身体は自分で洗って下さい」

 「は~い」

 機嫌が直ったらしいので後は自分でやらせ、繋を抱えると一足先にお湯に浸かる。
 きゃっきゃっきゃっきゃっと楽しそうに笑う繋に癒された。

 「繋もお風呂が大好きですねぇ」

 「きゃー、んま、ま、んま」

 可愛い。親バカと言われようとやはり我が子は可愛いものだ。
 ぷくぷくの頰も、セインと同じさらさらの髪も、揃いの金色の瞳も全てが愛しい。

 「オ、オレは!?」

 「……は?」

 可愛い可愛いと頭を撫で、頰を擦りよせ合う縁たちにまたもや意味不明なことを言い出した。
 脳への影響はかなりものだったらしい。
 
 「オレ、オレは可愛い…くない」

 ……はい。
 自分以上に身長が高く、自分以上に体格がよく、自分以上に筋肉がある男に可愛いとは言えない。
 アレンたちの耳や尻尾は別だが。
 感情によってピクピク動き、落ち込んだ時のあのショボンと垂れた耳はとても可愛いかった。

 「オレ可愛いくないからダメ?嫌い?」

 先程から何度も嫌いか?と聞いてくるが……流行りなのだろうか?
 子どもは何を思ってか、時々よく分からない言葉や言葉使いをしたりしてくるものだ。
 
 「可愛いく
なりたいんですか?」

 女装趣味などあったらどうしよう。
 応援するべきか?
 
 「ちがう!そうじゃなくて、可愛いくなったら一緒にいてくれる?」

 「いいえ?」

 何故そうなるのだろう?
 そもそも彼に可愛いさは求めていないので、可愛くなる努力をしても、可愛くなったとしてもそれはどうでもいい。

 「そんなことより肩までちゃんと浸かって。温まらないと一緒に入った意味がないでしょう」

 何故か落ち込み項垂れる男を湯に浸からせる。

 「オレ一緒がいい」

 「何がですか?」

 「一緒がいい」

 「………」

 会話って難しいなぁ。
 いくらこちらが理解しようと努力しても、相手がそれに応えてくれなければ結局は意味がないのだ。
 面倒くさい。
 もう知らんと再び繋と戯れていれば、遠慮がちにだが腕を掴まれた。
 まるで力が入っておらず簡単に振り払えるほどだ。

 「……オレ…一人になるのが怖いんだ」

 「そうですか。でも貴方にはお兄さんがいるでしょう?」

 「うん。けどそれっていつまで?死ぬまでずっとなんて言えないでしょ?親父たちみたいにいつ殺されて終わるかもしれないのに」

 確かに彼らが子を残さなければいつかはそうなるだろう。

 「そんなのやだ。オレは仲間が…家族がほしい」

 やはりか。
 血を遺したいというのもあるのだろうが、いつか一人になるかもしれないという恐怖があるのだろう。
 いやというほど分かってしまう気持ちに、ボロボロと子どものように泣く男を抱きしめてやるのだった。
 
 
 


 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...