二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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ちがう

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 「どいて下さい」

 「やだ!」

 「どきなさい」

 「や、やだ……」

 「離しなさい」

 「やだやだやだ!」

 あ~あ~あ~もうやだこの駄々っ子!
 出て行こうとする縁にダメだと扉の前で通せんぼする駄々っ子こと赤男。
 すでに30分ほどこの攻防を繰り広げており、離れたくないとうるさい駄々っ子に疲れ切っていた。

 「ああ~もう、うるさい!やだやだばっかり行ってないで貴方はお風呂に入ってきなさい!」

 「うぅ、やだ…ハッ、クション!」

 あああぁぁぁっ!
 苛立ちが頂点に達した縁は自身に身体強化の魔法をかけると、目の前で顔も服もグズグズな男の襟首を掴み風呂場に引きずっていく。
 途中何かを叫んでいたが無視する。
 いや、うるさかったので一発チョップをかましておいた。

 「いいですか?私を襲おうなどとすれば問答無用で貴方の股間を蹴り飛ばし、ここからすぐにでも出ていきます。いいですね?」

 「うぇ?な、なにーー」

 「分かりましたね?分かったら返事!」

 「は、はい!」

 服を脱ぐよう言うと、縁も手早く脱ぎ腰にタオルを巻くと同じく裸にした繋を抱っこする。
 一瞬自分は何をしてるんだろう?と思ったが、深く考えるのはやめようと浴室に向かう。

 「広い……」

 大人5、6人は入れるんじゃないかという広さの円形型の浴槽はちょっと……いや、かなりテンションが上がった。
 やはり大きい風呂はいい。

 「ほら座って。暴れると目に入りますよ」

 「う、うん」

 繋はバスタオルの上に寝かせておき、男の頭を洗ってやる。
 あれほどうるさかったはずが、大人しく頭を洗われていることに不思議で仕方なかったが、無駄に苛立つよりはいいだろうと思うことにした。

 「意外に固いんですね。しかも長い」

 あまり長いのを好まない自分とは違い、後ろで一つに括られていた赤毛の腰辺りまである長い髪は触れてみれば意外にも固かった。

 「だ、だめ?長いの嫌い?」

 「とくには。私は動き辛くなるので邪魔で切りますが、好きで伸ばしているならいいんじゃないですか?似合ってますし」

 人それぞれ、個性だ!というわけではなく、まぁ髪くらい好きにすればいいんじゃない?と思っている。
 サラリーマンなどの会社勤めでもなく、職場にそぐわないと貶す上司がいるわけでもないのだから。
 昔、緑色の髪色にツンツンとしたネギみたいな頭をして鼻や口、耳に額辺りにもピアスにつけている男性を見た時は流石に驚いたが。
 あまりの凄さに痛くないのか聞いてみれば、笑って大丈夫だと言っていた。
 あれに比べれば赤い瞳に、赤い長い髪くらい気にするほどではない。
 似合ってもいるので問題もないだろう。

 「へへ、そっか」

 「ほら終わりましたよ。身体は自分で洗って下さい」

 「は~い」

 機嫌が直ったらしいので後は自分でやらせ、繋を抱えると一足先にお湯に浸かる。
 きゃっきゃっきゃっきゃっと楽しそうに笑う繋に癒された。

 「繋もお風呂が大好きですねぇ」

 「きゃー、んま、ま、んま」

 可愛い。親バカと言われようとやはり我が子は可愛いものだ。
 ぷくぷくの頰も、セインと同じさらさらの髪も、揃いの金色の瞳も全てが愛しい。

 「オ、オレは!?」

 「……は?」

 可愛い可愛いと頭を撫で、頰を擦りよせ合う縁たちにまたもや意味不明なことを言い出した。
 脳への影響はかなりものだったらしい。
 
 「オレ、オレは可愛い…くない」

 ……はい。
 自分以上に身長が高く、自分以上に体格がよく、自分以上に筋肉がある男に可愛いとは言えない。
 アレンたちの耳や尻尾は別だが。
 感情によってピクピク動き、落ち込んだ時のあのショボンと垂れた耳はとても可愛いかった。

 「オレ可愛いくないからダメ?嫌い?」

 先程から何度も嫌いか?と聞いてくるが……流行りなのだろうか?
 子どもは何を思ってか、時々よく分からない言葉や言葉使いをしたりしてくるものだ。
 
 「可愛いく
なりたいんですか?」

 女装趣味などあったらどうしよう。
 応援するべきか?
 
 「ちがう!そうじゃなくて、可愛いくなったら一緒にいてくれる?」

 「いいえ?」

 何故そうなるのだろう?
 そもそも彼に可愛いさは求めていないので、可愛くなる努力をしても、可愛くなったとしてもそれはどうでもいい。

 「そんなことより肩までちゃんと浸かって。温まらないと一緒に入った意味がないでしょう」

 何故か落ち込み項垂れる男を湯に浸からせる。

 「オレ一緒がいい」

 「何がですか?」

 「一緒がいい」

 「………」

 会話って難しいなぁ。
 いくらこちらが理解しようと努力しても、相手がそれに応えてくれなければ結局は意味がないのだ。
 面倒くさい。
 もう知らんと再び繋と戯れていれば、遠慮がちにだが腕を掴まれた。
 まるで力が入っておらず簡単に振り払えるほどだ。

 「……オレ…一人になるのが怖いんだ」

 「そうですか。でも貴方にはお兄さんがいるでしょう?」

 「うん。けどそれっていつまで?死ぬまでずっとなんて言えないでしょ?親父たちみたいにいつ殺されて終わるかもしれないのに」

 確かに彼らが子を残さなければいつかはそうなるだろう。

 「そんなのやだ。オレは仲間が…家族がほしい」

 やはりか。
 血を遺したいというのもあるのだろうが、いつか一人になるかもしれないという恐怖があるのだろう。
 いやというほど分かってしまう気持ちに、ボロボロと子どものように泣く男を抱きしめてやるのだった。
 
 
 


 
 
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