二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
167 / 475

反省

しおりを挟む
 「お願いだから…オレのものになってよ。もうペットになってなんて言わないから、もうアンタのガキ邪魔とか言わないから、もう怒鳴ったりしないから。もうワガママ言わないから、ねぇ……お願いだから嫌いにならないで……」 

 自分でも情けないと思ったが、離れていこうとする彼にもうなりふり構っていられなかった。
 恥ずかしいくらい泣きに泣き、それでも手を振りほどかれないことに最後の望みをかける。

 「お願いする前に私に言うことがあるでしょう?何故私なんですか?」

 なぜ?だって…だって彼しかいない。
 自分には彼しかいないのだ。
 なぜ彼なのか?
 見た目がいいから?
 見た目だけならば世界を探せばきっと他にもいるだろう。
 子どもが産めるから?
 確認したわけではないのではっきりとは分からないが、それだけならば産める可能性が高い女性を探せばいいだけだ。
 ならばなぜ?
 求める全てを持っていたから?
 しかしそんなもの見せかけだけで本当はそんなものなかった。
 でも彼がいい。
 もし番を持つなら彼しか考えられず、子を持っても持てなくても幸せになれると確信していた。
 彼が先に死ぬのは悲しいが、きっと彼の血を継ぐ子どもたちが側にいてくれる。
 家族とはそういうものだろう。

 「オレ、オレは……」

 「はい」

  優しく背を撫でるように滑る手が心地良い。

 「オレは……」

 理由?
 求めたのが彼だった。
 自分が求めていたはずのものとはちがうが、何がちがうのか理解できない。

 「私は貴方が求めるものを何一つ持っていないかもしれない。それでも私である必要は?」

 彼である必要?必要はーー

 「オレが好きだから。オレがアンタのこと好きだから」

 何も考えず出てきた言葉は本心だった。

 「アンタに嫌われたくたいのも、離れるのがイヤなのも全部アンタのことが好きだから」

 だから言って。
 お願いだから好きと言ってほしい。
 離れていかないで。
 祈るように俯いていた顔を上げ見えたのは、仕方ないですねと言わんばかりの甘く微笑む綺麗な顔。
 完全とは言わないが、自身を受け入れてくれたと分かるその微笑みに泣きそうになる。

 「あー、もうほら。これ以上泣くとーーってもう手遅れですね。好きなだけ泣けばいいです」

 熱を持つ瞼が重く、ぼやける視界にその表情をはっきり見えないのはイヤだが流れ出る涙を止めることができず泣き続けるのであった。





 さて、どうしたものか。
 彼の番になるのを了承したわいいが、セインたちにどう話せばいいか分からない。
 確実に怒られる。
 いや、怒られるだけならばいいのかもしれない。
 怒って部屋に閉じ込められ、最悪彼自身にも何か(考えたくない)されることになればどうしたらいいだろう。
 未だ泣き続ける男に今更「やっぱりなしで!」と言おうものなら今度こそ号泣どころか、どこかに閉じ込められるかもしれない。
 はっきり言うと縁もまだ少し彼を受け入れたことに戸惑っている。
 当たり前だが番になるなんて考えてもいなかった。
 それでも泣きながら嫌いにならないでと言う男を拒否できないのもまた事実。
 ジークともアレンとも違う、もちろんセインとも。
 オレを愛してと泣く姿に手を伸ばさずにはいられず、その手を掴んでもまた泣き続けるバカな子。
 愛し方が、想いの伝えた方が分からないのだろう。
 それでも考え、伝えてきた想いを断ることなど出来なかった。
 彼を愛せるか分からない。
 だが幸せにしてあげたいとも思う。
 これが本当に正解かは分からないが、泣き虫な彼が少しでも心から笑えたらいい。

 「そういえば名前を聞いてませんでしたね。お兄さんはルイと呼んでたと思いますが合ってますか?」

 「ぐすっ…本当はルイスって言うの。兄貴はアヴァロン」

 「すごく高貴な感じの名前ですね。私もルイでいいですか?」

 「やだ。他の、アンタだけの呼び方がいい」

 他の呼び方……イス…はダメですよね。

 「ルーかスーは?」

 「ルーでいい」

 安直だがお許しは出たのでいいだろう。

 「ではルー、私は縁と言います。ちゃんと覚えて下さいね」

 「覚えた!エニシ、エニシ!」

 若干うるさかったが喜んでいるようなのでよしとする。

 「言っておきますが、貴方の他に私にはすでに3人の番がいます。仲良く…は難しいかもしれませんが、出来るだけ穏便に。私も大切な番を失いたくありませんから」

 「わかった~」

 本当だろうか?
 いまいち信用できないが、態々縁の機嫌を損ねることはしないだろう。

 「子どもは2人。この子は…大丈夫そうですが、以前会った子にはかなり嫌われてますからね。気をつけて下さい」

 繋が泣いていないのは不思議としか言いようがない。
 誰に似たのか?あ、自分か。

 「あれって魔族だよね?奴隷なの?」

 「違います。以前はそうでしたが、もう私の子です。あの子が嫌がることをすればーー分かってますね?」

 「はい」

 いい返事だ。
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...