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反省
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「お願いだから…オレのものになってよ。もうペットになってなんて言わないから、もうアンタのガキ邪魔とか言わないから、もう怒鳴ったりしないから。もうワガママ言わないから、ねぇ……お願いだから嫌いにならないで……」
自分でも情けないと思ったが、離れていこうとする彼にもうなりふり構っていられなかった。
恥ずかしいくらい泣きに泣き、それでも手を振りほどかれないことに最後の望みをかける。
「お願いする前に私に言うことがあるでしょう?何故私なんですか?」
なぜ?だって…だって彼しかいない。
自分には彼しかいないのだ。
なぜ彼なのか?
見た目がいいから?
見た目だけならば世界を探せばきっと他にもいるだろう。
子どもが産めるから?
確認したわけではないのではっきりとは分からないが、それだけならば産める可能性が高い女性を探せばいいだけだ。
ならばなぜ?
求める全てを持っていたから?
しかしそんなもの見せかけだけで本当はそんなものなかった。
でも彼がいい。
もし番を持つなら彼しか考えられず、子を持っても持てなくても幸せになれると確信していた。
彼が先に死ぬのは悲しいが、きっと彼の血を継ぐ子どもたちが側にいてくれる。
家族とはそういうものだろう。
「オレ、オレは……」
「はい」
優しく背を撫でるように滑る手が心地良い。
「オレは……」
彼でなければならない理由?
求めたのが彼だった。
自分が求めていたはずのものとはちがうが、何がちがうのか理解できない。
「私は貴方が求めるものを何一つ持っていないかもしれない。それでも私である必要は?」
彼である必要?必要はーー
「オレが好きだから。オレがアンタのこと好きだから」
何も考えず出てきた言葉は本心だった。
「アンタに嫌われたくたいのも、離れるのがイヤなのも全部アンタのことが好きだから」
だから言って。
お願いだから好きと言ってほしい。
離れていかないで。
祈るように俯いていた顔を上げ見えたのは、仕方ないですねと言わんばかりの甘く微笑む綺麗な顔。
完全とは言わないが、自身を受け入れてくれたと分かるその微笑みに泣きそうになる。
「あー、もうほら。これ以上泣くとーーってもう手遅れですね。好きなだけ泣けばいいです」
熱を持つ瞼が重く、ぼやける視界にその表情をはっきり見えないのはイヤだが流れ出る涙を止めることができず泣き続けるのであった。
さて、どうしたものか。
彼の番になるのを了承したわいいが、セインたちにどう話せばいいか分からない。
確実に怒られる。
いや、怒られるだけならばいいのかもしれない。
怒って部屋に閉じ込められ、最悪彼自身にも何か(考えたくない)されることになればどうしたらいいだろう。
未だ泣き続ける男に今更「やっぱりなしで!」と言おうものなら今度こそ号泣どころか、どこかに閉じ込められるかもしれない。
はっきり言うと縁もまだ少し彼を受け入れたことに戸惑っている。
当たり前だが番になるなんて考えてもいなかった。
それでも泣きながら嫌いにならないでと言う男を拒否できないのもまた事実。
ジークともアレンとも違う、もちろんセインとも。
オレを愛してと泣く姿に手を伸ばさずにはいられず、その手を掴んでもまた泣き続けるバカな子。
愛し方が、想いの伝えた方が分からないのだろう。
それでも考え、伝えてきた想いを断ることなど出来なかった。
彼を愛せるか分からない。
だが幸せにしてあげたいとも思う。
これが本当に正解かは分からないが、泣き虫な彼が少しでも心から笑えたらいい。
「そういえば名前を聞いてませんでしたね。お兄さんはルイと呼んでたと思いますが合ってますか?」
「ぐすっ…本当はルイスって言うの。兄貴はアヴァロン」
「すごく高貴な感じの名前ですね。私もルイでいいですか?」
「やだ。他の、アンタだけの呼び方がいい」
他の呼び方……イス…はダメですよね。
「ルーかスーは?」
「ルーでいい」
安直だがお許しは出たのでいいだろう。
「ではルー、私は縁と言います。ちゃんと覚えて下さいね」
「覚えた!エニシ、エニシ!」
若干うるさかったが喜んでいるようなのでよしとする。
「言っておきますが、貴方の他に私にはすでに3人の番がいます。仲良く…は難しいかもしれませんが、出来るだけ穏便に。私も大切な番を失いたくありませんから」
「わかった~」
本当だろうか?
いまいち信用できないが、態々縁の機嫌を損ねることはしないだろう。
「子どもは2人。この子は…大丈夫そうですが、以前会った子にはかなり嫌われてますからね。気をつけて下さい」
繋が泣いていないのは不思議としか言いようがない。
誰に似たのか?あ、自分か。
「あれって魔族だよね?奴隷なの?」
「違います。以前はそうでしたが、もう私の子です。あの子が嫌がることをすればーー分かってますね?」
「はい」
いい返事だ。
自分でも情けないと思ったが、離れていこうとする彼にもうなりふり構っていられなかった。
恥ずかしいくらい泣きに泣き、それでも手を振りほどかれないことに最後の望みをかける。
「お願いする前に私に言うことがあるでしょう?何故私なんですか?」
なぜ?だって…だって彼しかいない。
自分には彼しかいないのだ。
なぜ彼なのか?
見た目がいいから?
見た目だけならば世界を探せばきっと他にもいるだろう。
子どもが産めるから?
確認したわけではないのではっきりとは分からないが、それだけならば産める可能性が高い女性を探せばいいだけだ。
ならばなぜ?
求める全てを持っていたから?
しかしそんなもの見せかけだけで本当はそんなものなかった。
でも彼がいい。
もし番を持つなら彼しか考えられず、子を持っても持てなくても幸せになれると確信していた。
彼が先に死ぬのは悲しいが、きっと彼の血を継ぐ子どもたちが側にいてくれる。
家族とはそういうものだろう。
「オレ、オレは……」
「はい」
優しく背を撫でるように滑る手が心地良い。
「オレは……」
彼でなければならない理由?
求めたのが彼だった。
自分が求めていたはずのものとはちがうが、何がちがうのか理解できない。
「私は貴方が求めるものを何一つ持っていないかもしれない。それでも私である必要は?」
彼である必要?必要はーー
「オレが好きだから。オレがアンタのこと好きだから」
何も考えず出てきた言葉は本心だった。
「アンタに嫌われたくたいのも、離れるのがイヤなのも全部アンタのことが好きだから」
だから言って。
お願いだから好きと言ってほしい。
離れていかないで。
祈るように俯いていた顔を上げ見えたのは、仕方ないですねと言わんばかりの甘く微笑む綺麗な顔。
完全とは言わないが、自身を受け入れてくれたと分かるその微笑みに泣きそうになる。
「あー、もうほら。これ以上泣くとーーってもう手遅れですね。好きなだけ泣けばいいです」
熱を持つ瞼が重く、ぼやける視界にその表情をはっきり見えないのはイヤだが流れ出る涙を止めることができず泣き続けるのであった。
さて、どうしたものか。
彼の番になるのを了承したわいいが、セインたちにどう話せばいいか分からない。
確実に怒られる。
いや、怒られるだけならばいいのかもしれない。
怒って部屋に閉じ込められ、最悪彼自身にも何か(考えたくない)されることになればどうしたらいいだろう。
未だ泣き続ける男に今更「やっぱりなしで!」と言おうものなら今度こそ号泣どころか、どこかに閉じ込められるかもしれない。
はっきり言うと縁もまだ少し彼を受け入れたことに戸惑っている。
当たり前だが番になるなんて考えてもいなかった。
それでも泣きながら嫌いにならないでと言う男を拒否できないのもまた事実。
ジークともアレンとも違う、もちろんセインとも。
オレを愛してと泣く姿に手を伸ばさずにはいられず、その手を掴んでもまた泣き続けるバカな子。
愛し方が、想いの伝えた方が分からないのだろう。
それでも考え、伝えてきた想いを断ることなど出来なかった。
彼を愛せるか分からない。
だが幸せにしてあげたいとも思う。
これが本当に正解かは分からないが、泣き虫な彼が少しでも心から笑えたらいい。
「そういえば名前を聞いてませんでしたね。お兄さんはルイと呼んでたと思いますが合ってますか?」
「ぐすっ…本当はルイスって言うの。兄貴はアヴァロン」
「すごく高貴な感じの名前ですね。私もルイでいいですか?」
「やだ。他の、アンタだけの呼び方がいい」
他の呼び方……イス…はダメですよね。
「ルーかスーは?」
「ルーでいい」
安直だがお許しは出たのでいいだろう。
「ではルー、私は縁と言います。ちゃんと覚えて下さいね」
「覚えた!エニシ、エニシ!」
若干うるさかったが喜んでいるようなのでよしとする。
「言っておきますが、貴方の他に私にはすでに3人の番がいます。仲良く…は難しいかもしれませんが、出来るだけ穏便に。私も大切な番を失いたくありませんから」
「わかった~」
本当だろうか?
いまいち信用できないが、態々縁の機嫌を損ねることはしないだろう。
「子どもは2人。この子は…大丈夫そうですが、以前会った子にはかなり嫌われてますからね。気をつけて下さい」
繋が泣いていないのは不思議としか言いようがない。
誰に似たのか?あ、自分か。
「あれって魔族だよね?奴隷なの?」
「違います。以前はそうでしたが、もう私の子です。あの子が嫌がることをすればーー分かってますね?」
「はい」
いい返事だ。
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