二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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やはり

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 「駄目だ!」

 「オレも反対!」

 やはりというか何というか駆けつけたセインたちに事情を説明するが、反対される。

 「でももういいって言っちゃいましたし…」

 今更断れないと言うが駄目だの一点張りである。
 彼がしてきたことを思えば当然なのだが、捨てられるかと思ったのかルーが抱きつき離れない。

 「お前っ、縁から離れろ!」

 「やだ!」

 「離せつってんだろ!」

 「やだやだー!」

 ああもううるさい…

 「本当にいいのか?」

 「ん?何がですか?」

 それまで壁に寄りかかり黙って話しを聞いていたジーク。
 セインたちと一緒に騒ぐわけでもなく、ダメだと訴えてくるわけでもない。

 「本当にそいつでいいのか?俺も元々セインたちがいるのに番にしてもらった立場だから強くは言えんが、あんなに嫌ってただろう?」

 嫌いと言われルーの肩が揺れたが大丈夫だと撫でてやる。

 「まぁ正直いい感情はなかったですね。アズも怯えてましたし。けど私じゃないとイヤだイヤだと泣くんですよ。バカで可愛いでしょ?」

 以前のルーの態度は褒められたものではなかったが、蓋を開けてみれば愛情を求める小さな子どもだった。
 失くさないようにと強行手段に出たようだが、そんなことで縁が簡単に番になるわけなかったのだが。

 「バカってお前……」

 仮にも番にしたばかりだろうとジークが呆れていたが、言われた本人は気にしてないようで、むしろ離されたくないと言うように縁に張り付いている。

 「ほら、ちゃんとみんなに謝って下さい。じゃないと番だと認めてもらえませんよ。ここでバイバイです」

 「やだっ!ごめんなさい、ごめんなさい!もうしないから、ごめんなさいー!」

 泣きじゃくり謝る姿に、セインたちも弱い者いじめをしているような気になってしまったのか先程までの強い言葉はない。
 ごめんなさいと謝り続けるルーにジークも諦めがついたのかポンポンと頭を撫でてやっている。

 「分かった。分かったから男がそんな簡単に泣くな。けど約束しろ、縁を危険な目に合わすな。それだけは守れ」

 「…ぐずっ、はい」

 もう親子にしか見えない。
 
 「あとアズにも謝れよ。縁の番になるってことはアイツの父親にもなるってことだ。まぁ、その感じじゃ父親には見えねぇけどな」

 目を赤く腫らして泣く姿は明らかに子どもだ。
 むしろ滅多なことでは泣かないアズの方が大人かもしれない。

 「わかった。ごめんなさい」

 あまりの素直さにセインたちも毒気を抜かれたのか、溜め息をつくとルーの頭を撫でてやる。
 実際のところ誘拐はされたが縁たちに被害はなく、怪我をしたわけでもないのだ。
 アズとエルは安全のため隠れ家に置いてきたらしい。
 それでもエルには通信できる魔道具を以前渡してあったため無事なことと今から帰ることを伝えた。
 アズも泣いて心配してくれていたらしく、抱きつき離れないルーの泣き声とアズの泣き声でほとんど何を言っているか聞こえなかった。

 「それにしてもよくここが分かりましたね。結構距離があったと思うんですが」

 「ああ、それならに運ばせた」

 ドサリとアレンが目の前に差し出したのは……

 「兄貴だ。なんで寝てんの?」

 寝て……寝てるのか?
 どうにも気絶しているようにしか見えなかったが、両手両足を縛られており、さらには布で口まで覆われていた。

 「これでよく言うこと聞いてくれましたね」

 その姿を見てそう言う縁に、エルがいればきっと「え、そこなの?」とツッコミを入れていそうであった。

 「これはここに着いてからだしな。ちょうどよく現れたコイツに兄貴なら何とかしろって言って送らせたんだよ。で、バカな弟を庇われても厄介だからな、人型に戻ったところを3人でボコ……縛り上げた」

 ルーに気を使ったつもりかもしれないが、隠しきれていない。
 そもそも縛り上げたままにしているため意味がないのだが。

 「可哀想なので離してあげて下さい。ほら、ルーもお兄さんに謝らないと」

 「え?別にいいんじゃない?」

 兄の弟に対する想いとは裏腹に、弟はかなり自由人だった。

 「貴方のためにここまでしてくれたのにですか?兄弟だからと言ってしてもらえることが当たり前というわけではないんですよ?」

 世の中には血の繋がった実の兄弟でも殺し合うような事件だってあるのだ。
 
 「貴方みたいに我儘ばかり言っても受け入れてくれない兄弟だっているんです。むしろいないほうが楽と考える人もいるでしょう。なのに貴方を想い、これまで一緒にいてくれた優しいお兄さんにそれでいいんですか?」

 その優しい兄をボコったのは他ならぬ縁の番であるアレンたちなのだが。
 
 「……よくない」 

 それでも縁の言いたいことは伝わったようで、そろりと離れると縄を外してやり意識のないアヴァロンをベッドに寝かせてやっていた。

 「起きたらちゃんと謝って下さいね。今日はもう帰りますがーー」

 「え……帰っちゃうの?」

 「アズたちが心配してますからね。また明日ーーってまだ泣き足りないんですか?」

 再び潤み始めた瞳に苦笑いすると、離れがたそうにするルーに隠れ家近くまで送ってもらう。

 「いいですか?ちゃんと謝って、心配してくれてありがとうと伝えること。番になったこともです。これからは彼も私たちの家族なんですから。帰りも寄り道せず、怪我なんてしないようーー」

 長々と心配症な母親のように言い含める縁に、呆れたジークが止めに入るのだった。

 
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