二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
189 / 475

このガキ

しおりを挟む
 「ちょ、ちょっと待て!お前何やりやがった?」

 「え?魔法で隊長さんの足を縛らせてもらいました。動けないでしょ?」

 言われて足元を確認してみれば確かに両足を盛り上がった土が足を押さえつけていた。
 転けたのはこのせいだろう。
 まさか自分がこうも無様に負けるとは思ってもみなかった。
 
 「予想を裏切る快勝に私も驚いてますが、エニシさんは魔法使いだったんですね。あんな使い方は初めて見ましたが見事でした」

 と副隊長であるフレックがすごいと褒めているが、何を思ったかニヤニヤ笑いながら起き上がれないマルズスを上から見下ろしてくる。
 嫌な予感しかしない。

 「隊長ともあろう人がなんとも無様に負けたものですね。これに懲りたら少しは作戦会議にももっと参加してほしいものです」

 ぐぅぅ。痛いところを突いてくる。
 作戦会議が悪いというわけではないが、あれこれ考えるのは性に合わず男ならば敵につっこんでいけという方が自分には合っていた。

 「俺だってな、コイツが魔法を使えると分かってたらーー」

 「私にはそれでも結果は変わってなかったと思いますが?彼がどんな魔法を使えるのかなんて隊長は知らなかったでしょ?それをどこから、どんな魔法が来るかなんて貴方に予想出来たわけないんですよ」

 「………」

 何も言い返せない。

 「罰として午後からの書類仕事は隊長がやって下さいね。元々貴方の仕事なんですから。そんなことよりエニシさん、他に何か面白い魔法使えますか?」

 「面白い?」

 そう言われてしまえば気になってしまい、負けたことも忘れて耳を傾けてしまう。
 
 「というか、いい加減コレ解け。立てねぇじゃねぇか」

 「ならそこから指を咥えて見ていて下さい。です」

 これが副隊長だというのだから不安半分、安心半分。
 甘んじて罰は受けよう。 

 「先程の発想も素晴らしいですが、もし実戦で使えるようなものがあればぜひ」

 マルズスが使えないと発言したにも関わらずこうもあっさり勝敗がついたことにフレックも魔法というものに興味を示したらしい。

 「うーーん……あ!エリック」

 何とも親しげに呼ぶ物だと思いながらも、やって来たエリックの剣を借りるとスッと刃を撫でた。
 その瞬間ーー

 「うわっ!?」
 「「「「「え?」」」」 

 突如として発生した炎が刃を覆っている。
 炎を纏う剣とは何と格好いいものかと感心していれば、これまた突如として炎が消えた。
 あぁぁと周りの残念そうな声に、同じくもっと見て見たかったと声を上げる。

 「魔力切れですか?」

 フレックの言葉になるほどと思ったが、エニシは首を横に振っている。

 「あのまま続けていれば剣が熱で変形していました。もって数分ですかね。雷は感電してしまいますし、あとは…風なら大丈夫ですかね」

 「わっ!」
 「これは……」

 再び刃を撫でたかと思えば、刃を覆うように何か膜のようなものが張り付いている。

 「斬れ味が良くなっていると思います。形を変えることも出来るので刃より大きくも出来ますよ。魔力がある方なら刃を飛ばしたりしても楽し……ごほごほ、戦闘に有利かもしれません」

 今楽しいって言おうとしたか?
 顔に似合わず意外に戦いが好きなのかもしれない。
 興味を惹かれたのかフレックが剣を借り近くの丸太に振り下ろしてみればーー
 スパン!

 「「「「「………」」」」」

 見事に真っ二つになった丸太に誰も何も言えなかった。
 ノコギリでもここまで綺麗な断面にはならないだろう。
 切った当人であるフレックも唖然としている。

 「………軽く振り下ろしただけなんですけど」

 「?、斬れ味がよくなってると言いましたよね?」

 「ここまでだと誰が思いますか!」

 驚き過ぎてフレックが若干キレていた。

 「俺にもやらせろよ」

 そこまで言われて興味がわかないわけがない。
 足を解いてもらい剣を借りれば、なるほどこれはすごいものだと感心した。

 「乗せているのは魔力なので剣が重くなるということはまずありません」

 「あぁ、軽さに驚いた。これだと大剣持つのがバカらしくなってくんな」

 マルズスが毎度戦闘で使うのは城から支給されている剣とは別に、自分用にと大剣を用いている。
 その斬れ味と威力から気に入っていたのだが、それをはるかに上回る威力と軽さに交換してほしいと思うほどだ。
 
 「つっても魔力がなきゃ意味がねぇがな。おい坊主ここに入る気ねぇか?」

 「ないですね。そもそも私は人を傷つけることが好きではないので」

 意味が分からん。
 ならばどうしてこうも役立つものを考えつくのか。

 「魔力のことに関しては魔石を使えばいいんじゃないですか?作り方は専門の方が詳しいと思いますが使う時にこう、魔石を嵌め込めるようにしてもらうとか、自分で流せるようにしてもらうとか…」

 「お前すげぇな!」

 「ちょっ、ごほごほ」

 「何やってるんですか!貴方のバカ力で叩いたら怪我するでしょう!…大丈夫ですか?」

 「こほ…大丈夫です」

 いつもの調子でバンバンと褒めるつもりで背中を叩いたのだが、相手が自分より明らかに小さい子どもだと忘れていた。
 咳き込む姿に周りも心配し、フレックにおいては優しく背中を撫でてやっていた。
 珍しく気に入ったらしい。

 「す、すまんな」

 「大丈夫ですよ。少し驚きましたが」

 文句を言うわけでもなく、怒鳴り返すこともなく笑顔で大丈夫だと言う姿に本当に申し訳なくなった。

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...