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このガキ
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「ちょ、ちょっと待て!お前何やりやがった?」
「え?魔法で隊長さんの足を縛らせてもらいました。動けないでしょ?」
言われて足元を確認してみれば確かに両足を盛り上がった土が足を押さえつけていた。
転けたのはこのせいだろう。
まさか自分がこうも無様に負けるとは思ってもみなかった。
「予想を裏切る快勝に私も驚いてますが、エニシさんは魔法使いだったんですね。あんな使い方は初めて見ましたが見事でした」
と副隊長であるフレックがすごいと褒めているが、何を思ったかニヤニヤ笑いながら起き上がれないマルズスを上から見下ろしてくる。
嫌な予感しかしない。
「隊長ともあろう人がなんとも無様に負けたものですね。これに懲りたら少しは作戦会議にももっと参加してほしいものです」
ぐぅぅ。痛いところを突いてくる。
作戦会議が悪いというわけではないが、あれこれ考えるのは性に合わず男ならば敵につっこんでいけという方が自分には合っていた。
「俺だってな、コイツが魔法を使えると分かってたらーー」
「私にはそれでも結果は変わってなかったと思いますが?彼がどんな魔法を使えるのかなんて隊長は知らなかったでしょ?それをどこから、どんな魔法が来るかなんて貴方に予想出来たわけないんですよ」
「………」
何も言い返せない。
「罰として午後からの書類仕事は隊長がやって下さいね。元々貴方の仕事なんですから。そんなことよりエニシさん、他に何か面白い魔法使えますか?」
「面白い?」
そう言われてしまえば気になってしまい、負けたことも忘れて耳を傾けてしまう。
「というか、いい加減コレ解け。立てねぇじゃねぇか」
「ならそこから指を咥えて見ていて下さい。いい的です」
これが副隊長だというのだから不安半分、安心半分。
甘んじて罰は受けよう。
「先程の発想も素晴らしいですが、もし実戦で使えるようなものがあればぜひ」
マルズスが使えないと発言したにも関わらずこうもあっさり勝敗がついたことにフレックも魔法というものに興味を示したらしい。
「うーーん……あ!エリック」
何とも親しげに呼ぶ物だと思いながらも、やって来たエリックの剣を借りるとスッと刃を撫でた。
その瞬間ーー
「うわっ!?」
「「「「「え?」」」」
突如として発生した炎が刃を覆っている。
炎を纏う剣とは何と格好いいものかと感心していれば、これまた突如として炎が消えた。
あぁぁと周りの残念そうな声に、同じくもっと見て見たかったと声を上げる。
「魔力切れですか?」
フレックの言葉になるほどと思ったが、エニシは首を横に振っている。
「あのまま続けていれば剣が熱で変形していました。もって数分ですかね。雷は感電してしまいますし、あとは…風なら大丈夫ですかね」
「わっ!」
「これは……」
再び刃を撫でたかと思えば、刃を覆うように何か膜のようなものが張り付いている。
「斬れ味が良くなっていると思います。形を変えることも出来るので刃より大きくも出来ますよ。魔力がある方なら刃を飛ばしたりしても楽し……ごほごほ、戦闘に有利かもしれません」
今楽しいって言おうとしたか?
顔に似合わず意外に戦いが好きなのかもしれない。
興味を惹かれたのかフレックが剣を借り近くの丸太に振り下ろしてみればーー
スパン!
「「「「「………」」」」」
見事に真っ二つになった丸太に誰も何も言えなかった。
ノコギリでもここまで綺麗な断面にはならないだろう。
切った当人であるフレックも唖然としている。
「………軽く振り下ろしただけなんですけど」
「?、斬れ味がよくなってると言いましたよね?」
「ここまでだと誰が思いますか!」
驚き過ぎてフレックが若干キレていた。
「俺にもやらせろよ」
そこまで言われて興味がわかないわけがない。
足を解いてもらい剣を借りれば、なるほどこれはすごいものだと感心した。
「乗せているのは魔力なので剣が重くなるということはまずありません」
「あぁ、軽さに驚いた。これだと大剣持つのがバカらしくなってくんな」
マルズスが毎度戦闘で使うのは城から支給されている剣とは別に、自分用にと大剣を用いている。
その斬れ味と威力から気に入っていたのだが、それをはるかに上回る威力と軽さに交換してほしいと思うほどだ。
「つっても魔力がなきゃ意味がねぇがな。おい坊主ここに入る気ねぇか?」
「ないですね。そもそも私は人を傷つけることが好きではないので」
意味が分からん。
ならばどうしてこうも役立つものを考えつくのか。
「魔力のことに関しては魔石を使えばいいんじゃないですか?作り方は専門の方が詳しいと思いますが使う時にこう、魔石を嵌め込めるようにしてもらうとか、自分で流せるようにしてもらうとか…」
「お前すげぇな!」
「ちょっ、ごほごほ」
「何やってるんですか!貴方のバカ力で叩いたら怪我するでしょう!…大丈夫ですか?」
「こほ…大丈夫です」
いつもの調子でバンバンと褒めるつもりで背中を叩いたのだが、相手が自分より明らかに小さい子どもだと忘れていた。
咳き込む姿に周りも心配し、フレックにおいては優しく背中を撫でてやっていた。
珍しく気に入ったらしい。
「す、すまんな」
「大丈夫ですよ。少し驚きましたが」
文句を言うわけでもなく、怒鳴り返すこともなく笑顔で大丈夫だと言う姿に本当に申し訳なくなった。
「え?魔法で隊長さんの足を縛らせてもらいました。動けないでしょ?」
言われて足元を確認してみれば確かに両足を盛り上がった土が足を押さえつけていた。
転けたのはこのせいだろう。
まさか自分がこうも無様に負けるとは思ってもみなかった。
「予想を裏切る快勝に私も驚いてますが、エニシさんは魔法使いだったんですね。あんな使い方は初めて見ましたが見事でした」
と副隊長であるフレックがすごいと褒めているが、何を思ったかニヤニヤ笑いながら起き上がれないマルズスを上から見下ろしてくる。
嫌な予感しかしない。
「隊長ともあろう人がなんとも無様に負けたものですね。これに懲りたら少しは作戦会議にももっと参加してほしいものです」
ぐぅぅ。痛いところを突いてくる。
作戦会議が悪いというわけではないが、あれこれ考えるのは性に合わず男ならば敵につっこんでいけという方が自分には合っていた。
「俺だってな、コイツが魔法を使えると分かってたらーー」
「私にはそれでも結果は変わってなかったと思いますが?彼がどんな魔法を使えるのかなんて隊長は知らなかったでしょ?それをどこから、どんな魔法が来るかなんて貴方に予想出来たわけないんですよ」
「………」
何も言い返せない。
「罰として午後からの書類仕事は隊長がやって下さいね。元々貴方の仕事なんですから。そんなことよりエニシさん、他に何か面白い魔法使えますか?」
「面白い?」
そう言われてしまえば気になってしまい、負けたことも忘れて耳を傾けてしまう。
「というか、いい加減コレ解け。立てねぇじゃねぇか」
「ならそこから指を咥えて見ていて下さい。いい的です」
これが副隊長だというのだから不安半分、安心半分。
甘んじて罰は受けよう。
「先程の発想も素晴らしいですが、もし実戦で使えるようなものがあればぜひ」
マルズスが使えないと発言したにも関わらずこうもあっさり勝敗がついたことにフレックも魔法というものに興味を示したらしい。
「うーーん……あ!エリック」
何とも親しげに呼ぶ物だと思いながらも、やって来たエリックの剣を借りるとスッと刃を撫でた。
その瞬間ーー
「うわっ!?」
「「「「「え?」」」」
突如として発生した炎が刃を覆っている。
炎を纏う剣とは何と格好いいものかと感心していれば、これまた突如として炎が消えた。
あぁぁと周りの残念そうな声に、同じくもっと見て見たかったと声を上げる。
「魔力切れですか?」
フレックの言葉になるほどと思ったが、エニシは首を横に振っている。
「あのまま続けていれば剣が熱で変形していました。もって数分ですかね。雷は感電してしまいますし、あとは…風なら大丈夫ですかね」
「わっ!」
「これは……」
再び刃を撫でたかと思えば、刃を覆うように何か膜のようなものが張り付いている。
「斬れ味が良くなっていると思います。形を変えることも出来るので刃より大きくも出来ますよ。魔力がある方なら刃を飛ばしたりしても楽し……ごほごほ、戦闘に有利かもしれません」
今楽しいって言おうとしたか?
顔に似合わず意外に戦いが好きなのかもしれない。
興味を惹かれたのかフレックが剣を借り近くの丸太に振り下ろしてみればーー
スパン!
「「「「「………」」」」」
見事に真っ二つになった丸太に誰も何も言えなかった。
ノコギリでもここまで綺麗な断面にはならないだろう。
切った当人であるフレックも唖然としている。
「………軽く振り下ろしただけなんですけど」
「?、斬れ味がよくなってると言いましたよね?」
「ここまでだと誰が思いますか!」
驚き過ぎてフレックが若干キレていた。
「俺にもやらせろよ」
そこまで言われて興味がわかないわけがない。
足を解いてもらい剣を借りれば、なるほどこれはすごいものだと感心した。
「乗せているのは魔力なので剣が重くなるということはまずありません」
「あぁ、軽さに驚いた。これだと大剣持つのがバカらしくなってくんな」
マルズスが毎度戦闘で使うのは城から支給されている剣とは別に、自分用にと大剣を用いている。
その斬れ味と威力から気に入っていたのだが、それをはるかに上回る威力と軽さに交換してほしいと思うほどだ。
「つっても魔力がなきゃ意味がねぇがな。おい坊主ここに入る気ねぇか?」
「ないですね。そもそも私は人を傷つけることが好きではないので」
意味が分からん。
ならばどうしてこうも役立つものを考えつくのか。
「魔力のことに関しては魔石を使えばいいんじゃないですか?作り方は専門の方が詳しいと思いますが使う時にこう、魔石を嵌め込めるようにしてもらうとか、自分で流せるようにしてもらうとか…」
「お前すげぇな!」
「ちょっ、ごほごほ」
「何やってるんですか!貴方のバカ力で叩いたら怪我するでしょう!…大丈夫ですか?」
「こほ…大丈夫です」
いつもの調子でバンバンと褒めるつもりで背中を叩いたのだが、相手が自分より明らかに小さい子どもだと忘れていた。
咳き込む姿に周りも心配し、フレックにおいては優しく背中を撫でてやっていた。
珍しく気に入ったらしい。
「す、すまんな」
「大丈夫ですよ。少し驚きましたが」
文句を言うわけでもなく、怒鳴り返すこともなく笑顔で大丈夫だと言う姿に本当に申し訳なくなった。
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