二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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そうですよ

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 まさか3日も眠り続けるとは思わず、ジークたちは途方にくれていた。
 せめてもの救いは以前のようには痛みに苦しんでいないことだけだ。
 スヤスヤと眠り続け、夢でも見ているのか時々楽しそうに微笑んでいる。
 これが目が覚めなくなってから3日目と知らなければジークも笑っていられるのだが、その笑顔が見れても動くこともなければ、その声を聞くことも出来ない日が続き正直かなりまいっていた。

 「頼むから起きてくれ。もう待つのはたくさんだ」

 祈るようにそう呟けば、まるでそれが届いたのか握る手に僅かだが力がこもった気がした。
 慌てて俯いていた顔を上げ眠る縁を見上げれば、ピクピクと瞼が震えたのが分かった。

 「……縁?」

 「…………身体が、痛い」

 「寝過ぎだ、バカヤロウ」

 3日も動くことなく眠り続けていた身体は悲鳴を上げ、痛いと言いながらも起き上がろうとするのをジークも手伝ってやる。
 ふふふと笑いながら伸ばされた両手にジークも確かめるように抱きしめれば生きているのだと実感出来た。

 「心配かけてすいません。みんなは?」

 「寝てる。ずっと付いてたからな。倒れたらお前が悲しむつったらやっと寝やがった」

 起きるまで側にいると言うアレンたちに、なら起きたら縁に泣かれろと言ってようやく眠ったのだ。
 それでも離れ難いのか何かあればすぐ駆けつけられるよう隣にあるエルの部屋で雑魚寝しているらしい。

 「待ってろ。今呼んでーー」

 「その前に少し話したいことがあるんです」

 「話し?」

 アレンたちを呼びに離れようとするが、背中に回っていた手が離れることはなかった。
 甘えるように擦り寄ってくる縁に、心配しているだろうアレンたちには申し訳ないがギュッと抱きしめ縁を感じる。

 「お前はどれだけ心配かければ気が済むんだよ。アズも繋もそりゃ泣い、てーーーあ?」

 「気づきました?」

 ホッとし大きく息を吸い込んだ瞬間気づいた。
 さっきまでは起きた安心感でそんなことにも気がつかなかったが、こうして少し冷静になった今なら分かる。

 「あ?匂い、が、ちが……は?」

 「匂いが?」

 ふふと笑いながらそう言う縁にはジークが言いたいことが分かっているのだろう。
 むしろ答えを促すように胸に頭を擦り付けてくる。

 「匂いが変わってる。…………子どもか?」

 「はい。分かるでしょ?ジークの子ですよ」

 匂いが変わるのは妊娠しているから。
 しかしそれに気付くのは………番であり、子の親のみ。
 つまりその匂いに気が付いたジークが子の親であり、縁がジークの子を身籠っているということである。

 「………うそだろ?」

 「喜んでくれないんですか?」

 「バカヤロウ!嬉しいに決まってんだろ!」

 これ以上の喜びが、泣きたくなるぐらい嬉しい。
 どれだけ自分を幸せにする気だと意味が分からない八つ当たりをしてしまう。
 最高だと喜びのあまりキスすると熱く舌を絡める。
 あぁ俺のだ。俺の番だと心の中で叫ぶ。

 「ん、うん…ジー、ク」

 「最高だ。奇跡だ」

 期待してなかったわけじゃない。
 けれどほとんど諦めかけていた中での奇跡。

 「長生きして下さいね」

 「当たり前だろ。邪魔だって言われても長生きしてやんよ」

 数分でも、たとえ数秒でも長く、最期まで生きる。

 「……なんで分かったか、気になりませんか?」

 「そういやそうだな。なんで分かった?」

 匂いのことにしても縁に教えた覚えもなければ、誰かが教えているのを見たことがない。
 妊娠していることにしてもいつ気がついた?
 言われてみれば気になることばかりである。

 「教えてもらったんです。夢の中で」

 「夢の中?」

 まさかそんなと思いつつもこうして実際に気がつけたのであれば嘘だとも言いづらい。
 普通に生活していれば縁が気がつくことはなかっただろうはずで、長く眠りについていたことも考えれば納得はいく。

 「ええ。夢の中である人に会ったんですが、心配のあまり顔を出してしまったと」

 苦笑いしながらもそう言う縁は、とくに嫌がる素ぶりはなく、逆に心配かけて申し訳ないと思っているようだった。

 「心配?母親か?」

 「いえ、まぁ会えるならもう一度会ってみたいとは思いますが……ジークの知っている人ですよ。肩までの長さの黒髪で可愛らしい犬耳がーー」

 「エリーか?」

 正解だと微笑む縁に涙が溢れた。
 あぁ彼女が今も変わらず自分を見守ってくれているのだと。
 
 「エリーさんがジークはちゃんとやっているのかと、後は子どもがいるのだから無理をするなと注意されました」

 彼女らしい。
 生前も事あるごとに周りを心配し、危ないことをする奴がいれば引っ叩いてでも叱っていた。
 誰より度胸があり、ジークも何度怒られたか分からない。

 「そうか」

 懐かしさと、溢れる愛しさに涙を流しながらも笑ってしまうのだった。


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