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すごーい
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「こんにちは。そして初めましてエニシさん」
「ハジメマシテ」
ここは何処だとか、何故自分はここにいるのだろう、この人は?など疑問でいっぱいだった。
なんとなくだが眠りにつく前のことは覚えているのだが、何故ああも急激な眠りについたのかは分からなかった。
「急にごめんなさいね。驚いたでしょ?」
「ええ。あの、どこかでお会いしましたか?」
名前を知っているということは何処かで会っているのだと思うが、いかんせん記憶がない。
誰だろうと首をひねる縁に彼女は笑ってちがうと教えてくれた。
「ちがうわ。直接会ったことはないけど、間接的には知っているんじゃないかしら。名乗るのが遅れてごめんなさい、私の名前はエリー」
「エリー、さん?ってもしかして……」
まさかそんなと思いつつも、目の前にいることが信じられない。
「もしかして…私は死んでしまったのですか?」
ちょっと眠るだけのつもりが永遠の眠りについてしまったのだろうか?
新しい人生が早々に終わりを告げたのだろうか。
「え?ちがうちがう!ちがうから!ただ貴方と話してみたいと思っただけなの」
どうやら死んだわけではなく、眠る縁の夢の中に出てきたらしい。
「本当はもう行かなきゃいけないんだけど心配だったのよ」
心配?というか行かなきゃとは?
「私は死んでるからね。本当はここにいちゃいけないのよ。けどあとちょっと、あとちょっとって言って待っててもらったんだけどもうダメそうだったから……」
心残りがあり成仏できていないということなのかもしれない。
「……ジークは元気?まぁ、見てたから元気なことは分かってるんだけど貴方の口から聞きたくて」
やはりジークのことが気になっていたのだろう。
「元気ですよ。エリーさんとの約束通りみんなを守りながら私たちのことも面倒見てくれています」
あえて番になったことは言わなかった。
「そう……そっか。よかった。本当によかった。なら私の判断は何も間違ってなかったのね。ああは言ったけどやっぱり不安だったのよ。貴方がいてくれてよかった。ありがとう」
「私は何もしていませんよ。彼が自分でそう選んだんです」
ジーク自身が生きることを決め、そう生きてきたのだ。
エリーとの約束のため、それを守ろうとしていた。
そう言う縁にしかしエリーは首を振る。
「貴方がいたからよ。私が死んで生きる意味を失ってた。けど貴方のおかげで今はとても楽しそう。生き生きしてるわ」
そうだろうか?迷惑ばかりかける縁に呆れてはいないかと不安だったのだが。
「いいのよ。いーーっぱい迷惑かけてやって。私の分もいーーっぱい」
まさかそんなことを言われるとは思っておらず驚いた。
「死にたいなんて考える暇もないくらい忙しくしてやって。いいのよ。いつまでも死んだ私のことなんて考える必要なんてないんだから。知ってるでしょ?私はあの人の番失格だわ。そう……こんな、自分の子1人守れなかった私なんて………」
「ジークは貴方をとても愛していましたよ。いえ、今も愛してます」
「え?」
こうして話し合えるのはきっとこれが最後だろう。
ならば伝えておきたい。知っておいてほしい。
「お子さんのことは残念でした。けど彼は最後まで言っていたでしょう?貴方に生きてくれと」
「………ええ」
子を失う悲しみは親になった縁にもよく分かる。
繋が命を落とすことがあればきっと縁は一生自分を許せはしないだろう。
でも分かってほしい。それだけではないことを。
「子がいなくなるのも悲しいですが、ジークは何より貴方を失うことが辛かった。愛している貴方が」
「………そう。そうだといいな」
「だからあまり責任を感じないで下さい。彼はきっと忘れません。一生貴方のことを忘れるなんてありません」
「……ぐす…うん、うん、ありがとう。本当にありがとう。よかった…彼が選んだのが貴方で本当によかった」
愛する人に忘れられのは辛いだろう。
だが愛しているからこそ忘れて幸せになってほしいと言えるエリーは誰より強く、誰より優しい。
だからこそ彼女にも後悔してほしくなかった。
「貴方みたいな人が番になってくれるなんてジークも幸せ者ね。ずるいわ~、私と代わってくれないかしら」
冗談めかしながらそう言うエリーに2人一緒に笑い合う。
「彼のことよろしくね。幸せに…はなってるだろうけど、もっともっと幸せにしてやって。それは貴方にしか出来ないことだから」
「頑張ります」
具体的にどうするべきかは分からないが、これから死ぬまで一緒にいるのだ。
きっと何か方法があるだろうと思いたい。
「大丈夫。心配しなくていいわ」
「?」
自信満々のエリーにどういうことか聞こうとすればーー
「私のためにも元気な子を産んでやって。あと、無理しちゃだめよ。貴方は人間なんだから。私たち獣人と比べてはダメ。貴方は貴方のままでいいの。その子たちはきっと彼の希望になるわ」
「……え?」
何を言われたか分からなかった。
それでも子がいることだけは理解でき、自然手が腹に触れる。
「ふふ、やっぱり気づいてなかったみたいね。ジークもそこんとこ鈍いところがあったわ。大丈夫、彼の子で間違いないわ。信じられないなら匂いを嗅いでもらいなさい。獣人は妊娠すると匂いが変わるの。もちろん気付くのはその子の父親だけ」
妊娠、子ども、ジークの子と入ってくる単語にしかし頭が混乱し、考えがまとまらない。
「私が教えられるのはそれだけ。ジークもだけど、貴方も絶対に幸せになってね。私はもう行かなきゃ。もう会うことは出来ないけど1つだけお願い。ジークに、彼に伝えて。こんな私を愛してくれてありがとうって」
「伝えます。絶対に」
最後にギュッと縁を抱きしめるとエリーはそのままスッと姿を消したのであった。
「ハジメマシテ」
ここは何処だとか、何故自分はここにいるのだろう、この人は?など疑問でいっぱいだった。
なんとなくだが眠りにつく前のことは覚えているのだが、何故ああも急激な眠りについたのかは分からなかった。
「急にごめんなさいね。驚いたでしょ?」
「ええ。あの、どこかでお会いしましたか?」
名前を知っているということは何処かで会っているのだと思うが、いかんせん記憶がない。
誰だろうと首をひねる縁に彼女は笑ってちがうと教えてくれた。
「ちがうわ。直接会ったことはないけど、間接的には知っているんじゃないかしら。名乗るのが遅れてごめんなさい、私の名前はエリー」
「エリー、さん?ってもしかして……」
まさかそんなと思いつつも、目の前にいることが信じられない。
「もしかして…私は死んでしまったのですか?」
ちょっと眠るだけのつもりが永遠の眠りについてしまったのだろうか?
新しい人生が早々に終わりを告げたのだろうか。
「え?ちがうちがう!ちがうから!ただ貴方と話してみたいと思っただけなの」
どうやら死んだわけではなく、眠る縁の夢の中に出てきたらしい。
「本当はもう行かなきゃいけないんだけど心配だったのよ」
心配?というか行かなきゃとは?
「私は死んでるからね。本当はここにいちゃいけないのよ。けどあとちょっと、あとちょっとって言って待っててもらったんだけどもうダメそうだったから……」
心残りがあり成仏できていないということなのかもしれない。
「……ジークは元気?まぁ、見てたから元気なことは分かってるんだけど貴方の口から聞きたくて」
やはりジークのことが気になっていたのだろう。
「元気ですよ。エリーさんとの約束通りみんなを守りながら私たちのことも面倒見てくれています」
あえて番になったことは言わなかった。
「そう……そっか。よかった。本当によかった。なら私の判断は何も間違ってなかったのね。ああは言ったけどやっぱり不安だったのよ。貴方がいてくれてよかった。ありがとう」
「私は何もしていませんよ。彼が自分でそう選んだんです」
ジーク自身が生きることを決め、そう生きてきたのだ。
エリーとの約束のため、それを守ろうとしていた。
そう言う縁にしかしエリーは首を振る。
「貴方がいたからよ。私が死んで生きる意味を失ってた。けど貴方のおかげで今はとても楽しそう。生き生きしてるわ」
そうだろうか?迷惑ばかりかける縁に呆れてはいないかと不安だったのだが。
「いいのよ。いーーっぱい迷惑かけてやって。私の分もいーーっぱい」
まさかそんなことを言われるとは思っておらず驚いた。
「死にたいなんて考える暇もないくらい忙しくしてやって。いいのよ。いつまでも死んだ私のことなんて考える必要なんてないんだから。知ってるでしょ?私はあの人の番失格だわ。そう……こんな、自分の子1人守れなかった私なんて………」
「ジークは貴方をとても愛していましたよ。いえ、今も愛してます」
「え?」
こうして話し合えるのはきっとこれが最後だろう。
ならば伝えておきたい。知っておいてほしい。
「お子さんのことは残念でした。けど彼は最後まで言っていたでしょう?貴方に生きてくれと」
「………ええ」
子を失う悲しみは親になった縁にもよく分かる。
繋が命を落とすことがあればきっと縁は一生自分を許せはしないだろう。
でも分かってほしい。それだけではないことを。
「子がいなくなるのも悲しいですが、ジークは何より貴方を失うことが辛かった。愛している貴方が」
「………そう。そうだといいな」
「だからあまり責任を感じないで下さい。彼はきっと忘れません。一生貴方のことを忘れるなんてありません」
「……ぐす…うん、うん、ありがとう。本当にありがとう。よかった…彼が選んだのが貴方で本当によかった」
愛する人に忘れられのは辛いだろう。
だが愛しているからこそ忘れて幸せになってほしいと言えるエリーは誰より強く、誰より優しい。
だからこそ彼女にも後悔してほしくなかった。
「貴方みたいな人が番になってくれるなんてジークも幸せ者ね。ずるいわ~、私と代わってくれないかしら」
冗談めかしながらそう言うエリーに2人一緒に笑い合う。
「彼のことよろしくね。幸せに…はなってるだろうけど、もっともっと幸せにしてやって。それは貴方にしか出来ないことだから」
「頑張ります」
具体的にどうするべきかは分からないが、これから死ぬまで一緒にいるのだ。
きっと何か方法があるだろうと思いたい。
「大丈夫。心配しなくていいわ」
「?」
自信満々のエリーにどういうことか聞こうとすればーー
「私のためにも元気な子を産んでやって。あと、無理しちゃだめよ。貴方は人間なんだから。私たち獣人と比べてはダメ。貴方は貴方のままでいいの。その子たちはきっと彼の希望になるわ」
「……え?」
何を言われたか分からなかった。
それでも子がいることだけは理解でき、自然手が腹に触れる。
「ふふ、やっぱり気づいてなかったみたいね。ジークもそこんとこ鈍いところがあったわ。大丈夫、彼の子で間違いないわ。信じられないなら匂いを嗅いでもらいなさい。獣人は妊娠すると匂いが変わるの。もちろん気付くのはその子の父親だけ」
妊娠、子ども、ジークの子と入ってくる単語にしかし頭が混乱し、考えがまとまらない。
「私が教えられるのはそれだけ。ジークもだけど、貴方も絶対に幸せになってね。私はもう行かなきゃ。もう会うことは出来ないけど1つだけお願い。ジークに、彼に伝えて。こんな私を愛してくれてありがとうって」
「伝えます。絶対に」
最後にギュッと縁を抱きしめるとエリーはそのままスッと姿を消したのであった。
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