二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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もういいよ

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 暫くエルとアズに泣きつかれた後、血だらけの身体を洗うため湖に入ると血を落としていく。

 「本当は灰色だったんですね」

 泥や血で汚れていた2匹だが洗って落としてみれば灰色狼だった。

 「ねぇ、これってさ………フェンリルじゃない?」

 「ふぇんりる?それが名前なんですか?」

 「いや名前じゃなくて名称。巨大な狼で魔獣だよ」

 魔獣?

 「うん?普通の狼とは違うんですか?」

 「そもそもこんなデカい狼いないでしょ。このデカさで灰色っていったらフェンリルしかないよ。しかもエニシのの言葉も理解してたみたいだし。フェンリルはその強さと賢さでも有名なんだよ」

 かなりの大物だったらしい。
 何も知らず助けたが、こちらを見て大きく尻尾を振る姿は大きな犬にしか見えない。
 
 「可愛い可愛い」

 「………ダメだわこの人」

 いい子いい子と狼たちを撫でる縁にエルが呆れていた。
 血を全て洗い落とし、お腹も空いたことからご飯にしようということになったが、まだふらつく縁にエルとアズが自分たちがやるからと出来るまで休ませてもらうことにした。

 「真、愛依おいで」

 駆け寄ってきた2人を膝に抱き抱えるとバスタオルで覆い隠してやる。

 「よく頑張りましたね。ありがとう、もう大丈夫ですよ」

 そう言いタオル越しに2人の背を撫でてやればーー

 「「ゔぇーーーんっ」」

 次の瞬間大声を上げて泣き出した。
 エルたちが驚き振り返っていたが、大丈夫だと頷くと作業に戻っていく。
 この2人は変なところで意地っ張りというか、我慢強いというか素直に泣くことをしない時がたまにある。
 すんなり泣く時もあるのに、時々何故か堪えるのだ。
 その基準は縁には分からなかったが、大体そういう時は縁がもういいよと背を撫でてやれば糸が切れたように泣き出す。

 「怖かったですよね。ごめんね」

 「ママ、いな、いない、やだ」

 「アイ、も、ママ、い、いない、いっしょ」

 「そうですね。心配かけてごめんね。大丈夫、もう痛いのもなくなったから真と愛依をギュウって出来ますよ」

 繋と比べ成長が早い2人だが、中身はやはり幼い。
 いくら早く走れようが、いくらたくさん喋れるようになろうが怖かったと泣き、ママと言いながら縋り付いてくる。

 「真はちゃんとお兄ちゃんたちをとめてくれてましたね」

 「……ぐす、うん」

 「愛依はママが起きるのを手伝ってくれましたね」

 「…う、ん」

 「ありがとう。頑張ってくれて。真と愛依がいてくれてよかった。ママの子に生まれてきてくれてありがとう。2人とも大好きですよ」

 「「ゔわーーん」」

 ごめんね、ありがとうと背を撫で続けてやれば少しずつ落ちついてくる。
 本来なら真っ先に泣くだろう2人が頑張ってくれたおかげであの狼にたちを助けられた。
 いつも縁を心配してくれる2人があんなことになり泣かないわけがないのだ。
 それでも我慢し、縁の言う通り動いてくれて感謝しかない。

 「助けてくれてありがとう。2人ともママの宝物です」

 この子たちが無事で良かった。
 あの狼たちを助けたいというのは縁の我儘であり、縁が傷付くことを良しとしないエルたちが反対するのは当たり前だ。
 それでもこの2人は手伝ってくれた。
 縁を止めることなく手伝ってくれた。
 可愛い可愛い我が子。
 泣き疲れ眠りについた2人を抱えていると、元の色を取り戻した2匹の狼が近寄ってくる。

 「今ご飯の準備をしてくれてますからね。出来たら貴方たちも一緒に食べましょう」

 お腹空いているでしょ?と言えばベロリとその長い舌で顔面を舐められた。
 ヨダレまみれである。
 餌と間違われていないことを願う。

 「ふわ~」

 いい天気だなぁと欠伸をすれば寄り添うように横になった狼にそっと寄りかかってみる。

 「ふふ、ふわふわ。気持ちいい」

 嫌がらないため安心して全身の力を抜いた。

 「分かってくれてありがとう。貴方たちを助けることが出来てよかった」

 彼らが縁の気持ちを分かってくれたから今こうして寄り添えている。
 治してあげたからと言って、エルが言っていた通り彼らが縁を殺さない保証などなかったのだ。

 「お互い子どもに助けられましたね」

 あの時ボロボロな身体で立ち塞がる子狼に、縁を守ろうとしたアズの姿が重なった。

 「貴方の子もとても勇敢で優しい子ですね」

 「ガウッ」

 そうだろと言わんばかりに鳴く姿はとても誇らしげだ。
 
 「うちの子もすごいでしょ?パパに似てとても勇敢でとても優しい」

 自慢の子ですと言えば、分かるというように頷いてくれるのだった。
 どの世界でも親バカはどこにでもいるものだ。
 

 
 
 


 

 

 
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