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襲いくる熱に目を閉じ必死に堪えると、震える手を伸ばし子狼に優しく触れる。
「………………大丈夫。ね?」
「くぅーん、くぅーん」
止血し怪我が治るとむくりと起き上がった子狼がありがとうと言うように手を舐めてきた。
肩から流れ続ける血が地面を赤く染めていく。
「もう大丈夫ですよ。子どもを助けようとしていたんですよね?」
元気に鳴く子の姿に噛みつく力が緩んだが、未だ離れないのはエルたちが攻撃しようと構えているからだろう。
縁まで巻き込んでしまうと隙を狙っているのだ。
「真、愛依」
「「……ママ」」
「エルとアズと一緒に離れていなさい。出来ますね?」
「「できる!」」
いい返事だ。
エルたちに直接言ったところであの2人は聞きはしないだろう。
引きずられるように下がっていく4人を確認すると、朦朧とする意識を必死につなぎとめ親狼を見上げる。
「驚かせてごめんなさい。痛かったですよね」
赤く染まる手を何とか持ち上げると先程アズによって傷ついた足を治してやった。
治ったことに驚いたのか突如離れた牙に支えを失った縁の身体がどさりと地面に崩れ落ちる。
「…………いい子」
力なく倒れる縁に親狼がペロペロと血だらけの手を舐めてくる。
まるで犬みたいだと状況も忘れ笑ってしまう。
ヤバいなぁと思いつつ縁は自分なら治せると確信があった。
「愛依、こっちに来れますか?」
パタパタと駆け寄ってきた愛依に手を貸してもらうと噛まれた怪我を治していく。
途中何度か意識を失いそうだったが、その度に愛依と狼たちが起こしてくれた。
「ママいたくない?」
「えぇ、もう大丈夫ですよ。助けてくれてありがとう」
完全に塞がりもう大丈夫だと立ち上がろうとするが、傷は治せても流れ出た血は元には戻っておらず足元がふらついた。
「エニシっ!」
「ママっ!」
再び倒れそうになった縁に、しかし地面に激突する瞬間モフモフとした何かが地面と縁の間に滑り込んできた。
「ふふ、ありがとう」
指先に触れる鼻先を撫でてやれば、もっとというようにさらに擦り付けてくる。
可愛い。
可愛いのだが……
「私の血ですごいことになってますね」
元々の汚れもあるのだろうが、噛み付いていた口元も撫でていた鼻先も縁の血で染まっており、見るものが見ればかなりのホラーだ。
何を噛み殺した後なのかと言われても仕方ない。
「洗い流したほうがいいですね。どこか水辺にーーわっ」
襟首を咥えられたかと思えばいつの間にかその背に乗せられていた。
「ルーよりいい乗り心地」
ドラゴンであるルーの表面は当たり前だが鱗でありかなりゴツゴツしている。
それに引き換え狼である彼らは全身毛で覆われているため乗っていても辛くない。
「水辺まで連れて行ってくれますか?」
もしかしたら通じるかもとダメ元で言ってみれば、ガウゥとひと鳴きし勢いよく走り出した。
エルたちはと慌てて背後を見れば後ろからついてきているのが見え安心した。
「愛依と……君は大丈夫ですか?」
「うん」
「ワウ!」
縁の前には愛依と子狼が落ちる様子もなく座っている。
むしろ縁の方が振り落とさそうな速さであり、申し訳ないがその長い毛先を掴み何とか持ち堪える。
それから十分ほど揺られれば小さいが湖らしきものが見えてきたため、そこで下ろしてもらった。
「昔一度乗馬体験をしましたけどここまで辛くはなかった……」
プルプルと震える太ももに笑ってしまう。
「みんな少し休みましょう。エル、アズ着替えを手伝ってくれますか?真と愛依は狼さんたちを洗ってあげて下さい」
「「はーい」」
双子がバチャバチャと勢いよく湖に入っていくのを確認すると、エルたちの方を振り返りーー
パチン。
力は殆ど入っていなかったが、エルに頰を叩かれ驚いた。
「やめて!ほんと…あんな、あんなこと……オレ…お願いだからあんなこと2度としないで!」
エルが泣きそうな顔で両手を伸ばしてくる。
アズも無言で抱きついてくると、痛いくらいに抱きしめられた。
「ごめんね。ごめんなさい。心配かけちゃいましたね」
「死ぬかと!死んだかと思った!」
「ママ死んじゃやだ」
これはかなり心配かけてしまったなぁと自分の行動を反省する。
「ごめんなさい。あの狼の子を助けてあげたかったんです。そのためには近づくしかなかった」
噛まれる覚悟もしていた。
魔法で防ごうとも思ったが、それではすぐに距離をとられる可能性もあり、たとえ子どもだけ治せても再び襲いかかってくる心配もあったのだ。
せっかく治しても殺しては意味がない。
自分は敵ではないと教えるにはああする方法しか縁には思いつかなかった。
「だからって!話しが通じるかも分かんないし下手すりゃ食い殺されてた!」
「そうですね。本当にごめんなさい。………でもかけたかった。もしかしたらって……あんなにボロボロになりながらもあの子は親を守ろうとしていたから」
ヨロヨロになりながらもそれでも傷ついた親狼を守ろうと出てきた。
そんな子に親狼も傷ついた体で必死に戦おうとしていたから。
「ごめんね。本当にごめんなさい。2人とも心配してくれてありがとう。怒ってくれてありがとうエル」
そう言い縋り付く2人を縁もギュッと抱きしめ返すのだった。
「………………大丈夫。ね?」
「くぅーん、くぅーん」
止血し怪我が治るとむくりと起き上がった子狼がありがとうと言うように手を舐めてきた。
肩から流れ続ける血が地面を赤く染めていく。
「もう大丈夫ですよ。子どもを助けようとしていたんですよね?」
元気に鳴く子の姿に噛みつく力が緩んだが、未だ離れないのはエルたちが攻撃しようと構えているからだろう。
縁まで巻き込んでしまうと隙を狙っているのだ。
「真、愛依」
「「……ママ」」
「エルとアズと一緒に離れていなさい。出来ますね?」
「「できる!」」
いい返事だ。
エルたちに直接言ったところであの2人は聞きはしないだろう。
引きずられるように下がっていく4人を確認すると、朦朧とする意識を必死につなぎとめ親狼を見上げる。
「驚かせてごめんなさい。痛かったですよね」
赤く染まる手を何とか持ち上げると先程アズによって傷ついた足を治してやった。
治ったことに驚いたのか突如離れた牙に支えを失った縁の身体がどさりと地面に崩れ落ちる。
「…………いい子」
力なく倒れる縁に親狼がペロペロと血だらけの手を舐めてくる。
まるで犬みたいだと状況も忘れ笑ってしまう。
ヤバいなぁと思いつつ縁は自分なら治せると確信があった。
「愛依、こっちに来れますか?」
パタパタと駆け寄ってきた愛依に手を貸してもらうと噛まれた怪我を治していく。
途中何度か意識を失いそうだったが、その度に愛依と狼たちが起こしてくれた。
「ママいたくない?」
「えぇ、もう大丈夫ですよ。助けてくれてありがとう」
完全に塞がりもう大丈夫だと立ち上がろうとするが、傷は治せても流れ出た血は元には戻っておらず足元がふらついた。
「エニシっ!」
「ママっ!」
再び倒れそうになった縁に、しかし地面に激突する瞬間モフモフとした何かが地面と縁の間に滑り込んできた。
「ふふ、ありがとう」
指先に触れる鼻先を撫でてやれば、もっとというようにさらに擦り付けてくる。
可愛い。
可愛いのだが……
「私の血ですごいことになってますね」
元々の汚れもあるのだろうが、噛み付いていた口元も撫でていた鼻先も縁の血で染まっており、見るものが見ればかなりのホラーだ。
何を噛み殺した後なのかと言われても仕方ない。
「洗い流したほうがいいですね。どこか水辺にーーわっ」
襟首を咥えられたかと思えばいつの間にかその背に乗せられていた。
「ルーよりいい乗り心地」
ドラゴンであるルーの表面は当たり前だが鱗でありかなりゴツゴツしている。
それに引き換え狼である彼らは全身毛で覆われているため乗っていても辛くない。
「水辺まで連れて行ってくれますか?」
もしかしたら通じるかもとダメ元で言ってみれば、ガウゥとひと鳴きし勢いよく走り出した。
エルたちはと慌てて背後を見れば後ろからついてきているのが見え安心した。
「愛依と……君は大丈夫ですか?」
「うん」
「ワウ!」
縁の前には愛依と子狼が落ちる様子もなく座っている。
むしろ縁の方が振り落とさそうな速さであり、申し訳ないがその長い毛先を掴み何とか持ち堪える。
それから十分ほど揺られれば小さいが湖らしきものが見えてきたため、そこで下ろしてもらった。
「昔一度乗馬体験をしましたけどここまで辛くはなかった……」
プルプルと震える太ももに笑ってしまう。
「みんな少し休みましょう。エル、アズ着替えを手伝ってくれますか?真と愛依は狼さんたちを洗ってあげて下さい」
「「はーい」」
双子がバチャバチャと勢いよく湖に入っていくのを確認すると、エルたちの方を振り返りーー
パチン。
力は殆ど入っていなかったが、エルに頰を叩かれ驚いた。
「やめて!ほんと…あんな、あんなこと……オレ…お願いだからあんなこと2度としないで!」
エルが泣きそうな顔で両手を伸ばしてくる。
アズも無言で抱きついてくると、痛いくらいに抱きしめられた。
「ごめんね。ごめんなさい。心配かけちゃいましたね」
「死ぬかと!死んだかと思った!」
「ママ死んじゃやだ」
これはかなり心配かけてしまったなぁと自分の行動を反省する。
「ごめんなさい。あの狼の子を助けてあげたかったんです。そのためには近づくしかなかった」
噛まれる覚悟もしていた。
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せっかく治しても殺しては意味がない。
自分は敵ではないと教えるにはああする方法しか縁には思いつかなかった。
「だからって!話しが通じるかも分かんないし下手すりゃ食い殺されてた!」
「そうですね。本当にごめんなさい。………でもかけたかった。もしかしたらって……あんなにボロボロになりながらもあの子は親を守ろうとしていたから」
ヨロヨロになりながらもそれでも傷ついた親狼を守ろうと出てきた。
そんな子に親狼も傷ついた体で必死に戦おうとしていたから。
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