二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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さぁ、行こう!

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アル爺の協力により無事鍋が確保でき、ならばと今度は食料調達に来ていた。

 「愛依は何のお肉がいいんですか?」

 「?おっきいおにく」

 それはいったい何肉なのだろうか?
 鹿?熊?狼?
 子どもの愛依からすれば大体のものは大きいだろう。
 そもそもどれが何の肉かまだ分かっていないと思うが。

 「ママ、シンのおさかなさん」

 「大丈夫忘れてませんよ。真のお魚さんは明日獲りにいきましょうね」

 「わかったー」

 双子と言ってもやはり少しずつだが好みが違っていたりする。
 常に一緒に行動してはいるし、好みもさほど変わりはしないのだが少なからず自分はこれだと主張してくる。

 「ねぇ、なんでエニシだとそんな聞き分けいいの?」

 すんなりと返事をする真にエルが首を傾げている。

 「ママですからね。お兄ちゃんなら多少我儘言ってもいいと思っているんじゃないですか?」

 「それは喜んでいいの?それとも怒ればいいの?」

 たぶん縁に対してあまり我儘を言わないのは怒らせると怖いというのが子どもながらに分かっているからじゃないと思っている。
 何も怒鳴り叱りつけるわけではない。
 基本放置する。
 泣きながらあーだこーだ言う2人を放置し、話しかけられても答えず知らんぷり。
 以前そのままアレンの発情期に入ってしまったことがあり、会えない日が続いてしまったのだが帰ってきた途端ごめんなさいと一日中泣きつかれたことがあった。
 もうママに会えないかもと泣きに泣いていたらしい。
 ジークとセインがかなり疲れた顔をしていたのを覚えている。

 「喜んでいいんじゃないですか?甘えられてるってことですからね」

 「そう、なのかなぁ?」

 縁やジークたちとはまた違い、エルに対してはそれなりに我儘を言っているのを知っている。
 我儘と言ってもあれしたい、これ欲しいというわけではなく、魔法が使えるのがすごいともっと見たいと言っているのだ。
 2人の中でエルの存在は魔法が使える優しいお兄ちゃんらしい。

 「まぁ、嫌なら嫌と言っていいですよ。それはダメだと叱ることも時には必要ですからね」

 「……それ、嫌われない?」

 結局嫌われるのが嫌だから怒れないというエルが可愛くて仕方ない。
 それぐらいで2人がエルを嫌うはずがないのに。

 「愛依、真、エルお兄ちゃんは好きですか?」

 「「すき!」」

 「ならお兄ちゃんがダメだということはしないこと。守れますか?」

 「「はーい」」

 いいお返事。
 
 「じゃあ真と愛依はお兄ちゃんに罠の仕掛け方を教えてもらって下さい。アズは私と一緒に近くに薬草でもないか探してみましょうか」

 「うん」

 双子をエルに託し近くで薬草を探す。
 一緒に罠を仕掛けてもいいのだが、鍋のお礼にとアル爺に渡す薬草が欲しかったのだ。
 見えないところへは行かないようにと子どものような注意をエルにされたが、心配かけるのは申し訳ないとさほど離れず薬草を探す。

 「ママこっち」

 暫くそうして探していれば、ふと顔を上げたアズが縁の手を引いてきた。
 どうしたのかと思っていれば突如目の前の草むらがガサガサと揺れる。
 何かいると慌ててアズの手を引き背に隠そうとするが、縁を守るように前に立つアズはそこから動こうとしない。

 「アズ危ないですから下がーー」

 「ダメ。ママはアズがまもるの」

 子どもにそんなことさせられないと前に出ようとすれば、ガサガサと揺れていた草むらから低い唸り声と共に黒い大きな塊が姿を現した。
 
 「狼!アズ下がりなさーー」

 「どっかいけ」

 そうアズが呟いたかと思えば目の前の狼に向かって水の刃がすごい勢いで飛んでいった。
 水の刃はそのまま狼の足に当たり血を流す。
 それなりに深いらしくかなりの出血量だが、足を引きずりながらも狼は引く様子がない。
 数的にも怪我の具合から言っても引いていいはずなのに。

 「ウゥー」

 「こないで」

 諦めずに飛びかかってこようとした狼にアズが再び刃を飛ばそうとすればーー

 「くぅーん、くぅーん」

 狼の背後から可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
 この狼の子なのだろう、ヨロヨロとした足取りで出てきたがそのままパタリと倒れてしまう。
 見れば腹辺りから血を流していた。

 「怪我しているみたいですね」

 「ママまもるもん」

 見れば親狼もかなり痩せ細っていることから餌を求めてやってきたのだろう。
 警戒しつつも魔法を使おうとするアズを止める。
 
 「なんで?」

 どうして止めるのだと驚くアズに微笑むと、ゆっくりと狼に近づいていく。
 目線は逸らさず、唸り声を上げるのを聞きつつゆっくりゆっくりと。
 いつ襲い掛かってくるか分からない。
 けれど少しの可能性にかけた。

 「子どもを助けたいんでしょう?」

 スノーのように人の言葉が通じるか分からないが、なるべく優しい声で語りかける。

 「大丈夫。少し触れるだけです。助けてあげたいんです」

 まだ息はあるようだが、それもかなり浅くギリギリなのだろう。
 出血も続いていることから早く止血したほうがいいと声をかけながら倒れる子ども狼に手を伸ばせばーー

 「くっ」

 「ママ!?」
 
 「ーーエニシっ!」

 親狼の鋭い牙が肩に突き刺さるのであった。


 

 

 
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