二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
229 / 475

鍋とは?

しおりを挟む
 「調理用の鍋じゃと?」

 「はい」

 アルスたちと別れアル爺に鍋が売っている場所を聞こうと訪ねてきたのだが、調と言った途端一気に気落ちしていた。
 どうやら回復薬などの作り方に縁が興味を持ったと思い喜んでいたらしい。

 「お婆ちゃんに聞いたらアル爺の方が詳しいと言われて。出来れば浅めで大きいものがいいんですけど」

 「あるにはあるが……料理なぁ」

 そんなことよりちょっと手伝わんかと誘ってくるアル爺に笑ってしまう。
 
 「今度機会があれば。お仕事の邪魔をしても申し訳ないのでどこで売っているかだけでも教えてもらえればいいので」

 態々城に来いというからどうしたのかと思えば、アル爺はお城の薬学科なるところで働いていたらしい。
 どうりでしょっちゅうお城で会うなぁと思っていた。

 「なに?鍋が欲しくて来たんじゃないんか?」

 「?はい、そうです。なのでお店を教えて欲しいんです」

 不思議そうに見てくるアル爺を縁も不思議そうに見つめる。
 え?なんだろう?

 「貴方がアルバトロス様に鍋をもらいに来たと思ってたんですよ」

 「……ああ!なるほど、お店じゃなく鍋自体をもらいにきたと思っていたと……いや、そんなことしませんよ。お仕事に使うものでしょ?そんなホイホイ人にあげちゃ駄目ですよ。宰相様も頑張っているんですからアル爺も頑張って下さい」

 アル爺の私物ならば使うからこそ買ったわけであり、お城の物だとしたら尚更勝手に渡しては駄目だろう。
 そんなことしないと縁が言えば、2人はキョトンとしたあと突如笑い出した。
 なんだ?なんだ?というか貴方はどちら様?
 普通に会話していたが、途中から話しに参加してきたこの方は誰だろう?と縁が見つめていれば笑いを堪え男性が挨拶してきた。

 「申し遅れました。私、アルバトロス様の部下のフィール・ダレンと申します。どうぞダレンとお呼び下さい」

 「態々ありがとうございます。私は縁と申します。いつもアル爺、じゃないアルバトロス様にはお世話になって…」

 「お前さんはアル爺で構わんわい。そんなことより、欲しいものがあるなら持っていけばいい。そっちにあるのは城のじゃなく儂が趣味で作ってもらったもんじゃからな。使いづらくてほとんどが失敗作じゃが」

 調合ようにと色々試行錯誤したようだが、やはり元からある形が一番いいとなったらしい。
 ならばと積み上がる失敗作こと鍋を見せてもらう。

 「浅くて広めの……あ、エルこれなんてどうですか?」

 「どうですかって言われても…どんな料理作ろうとしてのかオレ分かんないんだけど」

 そりゃそうだ。
 それを教えるためにも作ろうとなったのにエルが答えられるわけがなかった。
 ごめんと謝ると丁度良さそうなものを探していく。

 「これ形はいいんですけど大きさがなぁ。こっちは持ち手がないし、これは深過ぎですね。みんなで食べるのに丁度いい大きさで……あ、これ、アル爺これがいいです!」

 これだ!と笑って鍋を掲げれば3人とも苦笑いしていた。
 鍋をもらって喜ぶ変な子だとでも思われてしまったらしい。

 「上手く出来るか分かりませんけど、出来たらアル爺も一緒に食べましょうね」

 「そうじゃな。お前さんの料理は美味いし楽しみに待っとるぞ」

 希望のものも手に入れ縁はご機嫌で城を後にするのであった。
 あとは具材探し!





 「随分変わったお孫さんですね」

 不要なものとはいえ、あそこまで喜んでくれるとは思っていなかった。

 「面白いじゃろ?例の飴もあの子が考えたもんじゃ」

 「っ!そう、ですか」

 さすがアルバトロスの孫だと感心していたダレンだが、実際は血も繋がっていない赤の他人であるということを知らないのであった。
 そもそもアル爺と親しげに呼ばれていたことと、孫と言ったのを否定しなかったアルバトロスが悪い。

 「あの宰相も気に入っておるくらいじゃ。その内また何かやらかしてくれるかもな」

 すでにやらかした後だということを知らない2人である。

 「最初来ると聞いた時はどんな常識がない子かと思ってましたが……」

 いくらアルバトロスの孫とはいえ、就業時間に遊びにくるなどどうなんだと嫌味の一つでも言ってやろうかと思っていたのだが、きちんと挨拶し逆にあのアルバトロスに仕事しろと言うとは思っていなかった。
 その上タダであげようと思っていたものをそんな簡単に渡しては駄目だと怒られる始末。
 なにより処分に困っていた鍋をあれほど嬉しそうに持っていくとは思わなかった。
 
 「あの子が持ってきてくれる薬草も随分質がよくてな。仕事がしやすくて助かるわい」

 そう機嫌よく言うアルバトロスには驚いた。
 普段から人を褒めることがそうそうないのもあるが、薬草のことになると少しのキズでも許さんとばかりに怒鳴る男が持ってきてくれて助かると言うとは。
 これは下手なことを言わずに済んでよかったと胸を撫で下ろすダレンであった。

 





 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...