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きらいなバカ
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「君は一人でいたくてそうしているんですか?」
ふざけるなと思った。
こいつはバカだと、こんなヤツ大嫌いだと思うだけでなく言葉でも言ったが、そいつは笑うだけで怒ることなく抱きしめてきた。
離せと暴れたけど離してもらえず、何度か顔に手が当たっていたが離してもらえなかった。
「ごめんね。嫌なことを聞いてごめんなさい。頑張ってたんですよね。頑張って、頑張って生きてきたんですよね。嫌な聞き方をしてごめんね」
謝るぐらいなら聞いてくんじゃねぇよと、お前に何が分かるだよと怒りが湧きながらも自分を認めてくれたことが嬉しいと思ってしまった。
自分という存在を。
自分のような境遇の人間など探せばいくらでもいるだろう。
それでも、頑張ってきたんだなと言われ抱きしめられられることで彼は自分を見てくれているんだと実感出来た。
母さんも最後に自分の名前を呼んでくれてはいたが、その目には自分など写っておらず、早く楽になりたいと思っているようにしか見えなかった。
きらいだと泣いて暴れたが、離さず優しく背を撫でてくる手に更に泣いた。
その内泣き疲れて眠ってしまったようだが、起きてもまだその手が離れていることはなく、少し身動きした自分にまだ寝てていいよと言うようにポンポンと背を叩かれ再び眠りについた。
「目が覚めたみたいですね。ご飯が出来てるので一緒に食べましょう」
そのまま暫く眠りにつき起きると、はいと皿を渡されたが見たこともない泥色の汁にこれは食べ物かと警戒した。だが周りにいた大人たちが躊躇いなく口をつけていることと、食欲を誘うようないい匂いに躊躇しながらも恐る恐る一口食べてみる。
「ーーあ、うまい」
「それはよかった。たくさんあるので一杯食べなさい」
久しぶりのまともな食事にまだ警戒しながらも食べ進める。
次またいつこうして食べられるか分からないのだ。
食べられる時に食べておかなければ。
「まだお腹は大丈夫ですか?最後にご飯を入れたので食べられそうならどうぞ」
再び渡された皿には先程までの謎の汁に浸されたご飯で、すでにお腹は一杯だったが食べてみればさらさらと流れていくご飯にとても美味しいと思えた。
完食し、さて自分はこれからどうなるのかと様子を伺っていればーー
「お腹一杯でしょ?少し休憩して、それからこれからのことを話し合いましょう」
と言い、ソファーに連れていかれたと思えば寝かしつけられた。
まるで赤ん坊のような扱いだったが、確かに腹も満たされ体もポカポカと温まり眠気が襲ってくる。
だがこれはダメだと起きようとすれば優しく頭を撫でられ動きが止まる。
「大丈夫。ここまで来て衛兵に突き出すなんてことしませんよ。今はゆっくり休んで身体を癒しなさい」
「そういって売りとばすつもりだろ。おれはバカじゃない」
そんなのに騙されるかと無理矢理身体を起こそうとすれば、男がすぐ隣に越しかけまたもや膝に乗せられた。
「これなら離れたらすぐ分かるでしょ?まぁ無理に寝なくても構いませんよ。ちょっとお腹を休めてあげないと苦しくなっちゃうのでそのための休憩です」
「おれはそんなガキじゃねぇ」
「なら尚更ですよ。自分の体調管理が出来てこそ大人です」
先程から何を言っても言い返され、それも間違っていると言えないことが悔しい。
その上自分もそれなりの年のためそう簡単に膝に乗せられるのも恥ずかしくもある。
「バカなおじさんに少し付き合って下さい。私も少し食べ過ぎてしまってお腹が苦しいんですよ」
そんなの嘘だ。
食べている間ずっとこの男は自分の世話ばかりしていた。
これは?それも食べなさいと差し出してくる皿に出されるまま食べていたのは自分なのだが。
そんな男が腹一杯食べていたはずもなく、おじさんと言うにもその見た目からそう歳ではないことが分かる。
「お前バカだな」
「そうですね。可哀想でしょ?なので付き合って下さい」
考えるのがバカらしくなってきた。
ここまで嘘が下手な男が自分を騙すことなど出来ないだろうと全身の力を抜くとその肩に頭を傾ける。
「売ったりなんかしたら一生ゆるさねぇからな」
「しませんよ。それこそ君がそう望んだとしてもね」
「そんなことぜってぇ言わねぇ」
なら大丈夫ですねと男の笑い声を聞きながらそっと目を閉じるのだった。
ここまでゆっくり眠ることが出来たのはいつぶりだろうかと考えながら。
「お昼寝って気持ちいいですよね」
「エニシ好きだよね。そこらへん子どもっぽい」
「寝る子は育つって言うでしょ?」
「いや知らない。誰だよそんなこと言ったやつ」
そんなアホらしいやりとりを聴きながら眠りにつくのだった。
ふざけるなと思った。
こいつはバカだと、こんなヤツ大嫌いだと思うだけでなく言葉でも言ったが、そいつは笑うだけで怒ることなく抱きしめてきた。
離せと暴れたけど離してもらえず、何度か顔に手が当たっていたが離してもらえなかった。
「ごめんね。嫌なことを聞いてごめんなさい。頑張ってたんですよね。頑張って、頑張って生きてきたんですよね。嫌な聞き方をしてごめんね」
謝るぐらいなら聞いてくんじゃねぇよと、お前に何が分かるだよと怒りが湧きながらも自分を認めてくれたことが嬉しいと思ってしまった。
自分という存在を。
自分のような境遇の人間など探せばいくらでもいるだろう。
それでも、頑張ってきたんだなと言われ抱きしめられられることで彼は自分を見てくれているんだと実感出来た。
母さんも最後に自分の名前を呼んでくれてはいたが、その目には自分など写っておらず、早く楽になりたいと思っているようにしか見えなかった。
きらいだと泣いて暴れたが、離さず優しく背を撫でてくる手に更に泣いた。
その内泣き疲れて眠ってしまったようだが、起きてもまだその手が離れていることはなく、少し身動きした自分にまだ寝てていいよと言うようにポンポンと背を叩かれ再び眠りについた。
「目が覚めたみたいですね。ご飯が出来てるので一緒に食べましょう」
そのまま暫く眠りにつき起きると、はいと皿を渡されたが見たこともない泥色の汁にこれは食べ物かと警戒した。だが周りにいた大人たちが躊躇いなく口をつけていることと、食欲を誘うようないい匂いに躊躇しながらも恐る恐る一口食べてみる。
「ーーあ、うまい」
「それはよかった。たくさんあるので一杯食べなさい」
久しぶりのまともな食事にまだ警戒しながらも食べ進める。
次またいつこうして食べられるか分からないのだ。
食べられる時に食べておかなければ。
「まだお腹は大丈夫ですか?最後にご飯を入れたので食べられそうならどうぞ」
再び渡された皿には先程までの謎の汁に浸されたご飯で、すでにお腹は一杯だったが食べてみればさらさらと流れていくご飯にとても美味しいと思えた。
完食し、さて自分はこれからどうなるのかと様子を伺っていればーー
「お腹一杯でしょ?少し休憩して、それからこれからのことを話し合いましょう」
と言い、ソファーに連れていかれたと思えば寝かしつけられた。
まるで赤ん坊のような扱いだったが、確かに腹も満たされ体もポカポカと温まり眠気が襲ってくる。
だがこれはダメだと起きようとすれば優しく頭を撫でられ動きが止まる。
「大丈夫。ここまで来て衛兵に突き出すなんてことしませんよ。今はゆっくり休んで身体を癒しなさい」
「そういって売りとばすつもりだろ。おれはバカじゃない」
そんなのに騙されるかと無理矢理身体を起こそうとすれば、男がすぐ隣に越しかけまたもや膝に乗せられた。
「これなら離れたらすぐ分かるでしょ?まぁ無理に寝なくても構いませんよ。ちょっとお腹を休めてあげないと苦しくなっちゃうのでそのための休憩です」
「おれはそんなガキじゃねぇ」
「なら尚更ですよ。自分の体調管理が出来てこそ大人です」
先程から何を言っても言い返され、それも間違っていると言えないことが悔しい。
その上自分もそれなりの年のためそう簡単に膝に乗せられるのも恥ずかしくもある。
「バカなおじさんに少し付き合って下さい。私も少し食べ過ぎてしまってお腹が苦しいんですよ」
そんなの嘘だ。
食べている間ずっとこの男は自分の世話ばかりしていた。
これは?それも食べなさいと差し出してくる皿に出されるまま食べていたのは自分なのだが。
そんな男が腹一杯食べていたはずもなく、おじさんと言うにもその見た目からそう歳ではないことが分かる。
「お前バカだな」
「そうですね。可哀想でしょ?なので付き合って下さい」
考えるのがバカらしくなってきた。
ここまで嘘が下手な男が自分を騙すことなど出来ないだろうと全身の力を抜くとその肩に頭を傾ける。
「売ったりなんかしたら一生ゆるさねぇからな」
「しませんよ。それこそ君がそう望んだとしてもね」
「そんなことぜってぇ言わねぇ」
なら大丈夫ですねと男の笑い声を聞きながらそっと目を閉じるのだった。
ここまでゆっくり眠ることが出来たのはいつぶりだろうかと考えながら。
「お昼寝って気持ちいいですよね」
「エニシ好きだよね。そこらへん子どもっぽい」
「寝る子は育つって言うでしょ?」
「いや知らない。誰だよそんなこと言ったやつ」
そんなアホらしいやりとりを聴きながら眠りにつくのだった。
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