310 / 475
そこまで?
しおりを挟む
静まり返る室内に何故誰も話し出さないのかと首を傾げる。
縁からすれば話すことは山ほどあるだろうと思うのだが、片方はどうしてこうなったのかよく分かっておらず、もう片方は緊張と恐怖のあまり冷や汗を流し震えている。
「以前コリンさんに女性らしくするにはどうすればいいのかと聞かれたんです」
「エッ、エニシくん!?あ、あのこ、ここここれはですね……」
きっかけが必要かと縁がマーガレットたちに説明しようとすれば、コリンが慌てたように首を振っている。
………どうしたのだろうか?
「ですけど私は男なのでそこまで知識がありません。なので女性同士お婆ちゃんから何か教えて上げてくれたらなと」
「なんで私なんだい?」
確かにギルドには他にも女性がいる。
冒険者然り、職員にも数名いる中何故自分なのだとマーガレットも思っているのだろう。
「ん~~。たぶんですけどコリンさんやギースさんの求める女性らしさというのがお婆ちゃんみたいな女性なんじゃないかと」
「「「?」」
コリンもギースも女性として美しさや可愛さを求めているだろうが、それ以前に自分たちが冒険者だということを自覚している。
「普通の女性らしさというものより冒険者でありながらも綺麗で美しくありたいということだと思ったんです」
冒険者であれど髪の手入れも髪型も普通の女性らしく自分好みに弄れるだろうが、では手や爪、肌などともなれば普通の女性とは異なってくるだろう。
武器を使い、魔法を使い、時には仲間の盾になり、戦う女性としての美しさが彼女たちが求めているものだと思ったのだ。
「もう引退したって言ってましたけどそれで戦えなくなったというわけではないですよね?その綺麗な髪も肌も体型に姿勢、2人が目指しているのはお婆ちゃんみたいな人なんじゃないかと」
「「「……………」」」
黙り込む3人に、しかし何故か隣で話しの成り行きを見守っていたジンに頭を撫でられた。
しかも物凄くいい笑顔で。
反対隣ではそれを見たエルが震えていた。
「そっ、そんなわーーわ、私は別にアンタが言う綺麗さなんてーー」
怒っているような声だが、その顔は真っ赤であり照れ隠しからのものだろう。
そんなマーガレットを初めて見たのだろうコリンたちは驚きに目を見張っている。
「コリンさんたちにしても今のままではいざという時に緊張して話せなくては困るでしょう?何かあった時にギルマスだからと何でも聞くのではなく、こうした方がいい、ああした方がいいと案を出して最善の策を言い合えることが大切だと思います」
まさかなことなどあってほしくはないが、絶対にないとは言い切れない。
もしその時にマーガレットの手があいていなければ?
マーガレットが怪我を負い指示出来なければ?
いないからと何もしないわけにはいかない。
いないから出来ないとも言えない。
彼らも冒険者故いつまでこの町にいるかは分からないが、しておいて損はきっとないはずだ。
「とまぁ、それはついででただ単にみんなが仲良くしてくれたら嬉しいなというだけです」
これは縁の勝手な想いであり一つの意見だ。
そんなものどうでもいい、バカバカしいと言われてしまえばそれだけであり縁も強要しようとも思わない。
欲を言えばマーガレットの負担が少しでも軽くなればいいなというだけ。
「そもそもコリンさんたちがお婆ちゃんたちをそんなに怖がってる理由って何ですか?」
大方誰かを成敗していたところを見たとか、見るに耐えない相手をしつけているところを見たとかだと思うが。
聞けば案の定な理由で、同じ冒険者なのだからそこまで怖がらなくていいのでは?と思ったが戦い慣れている彼ら故、縁には分からないことがあるのかもしれないと納得しておく。
「本当はとても可愛い人ですよ。それにいつも凝った髪型ですし、姿勢がいいのも見ていて気持ちがいいです。歳をとると筋肉をつけるのは難しいと言いますけどお婆ちゃんは綺麗です」
太りやすいなど女性には言えず、筋肉と言い換えた。
恥ずかしさに再び赤くなるマーガレットにジンの笑みが深くなっていく。
自分が褒められるよりマーガレットが褒められる方が嬉しいらしい。
「あ、あの……私たちずっと勘違いしてたみたいで………その、私にもその結い方教えてもらえますか?」
「しょ、しょうがないね!教えてやるさ」
勇気を出し話しかけたコリンに未だ戸惑いながらも頷くマーガレットが可愛い。
なら自分もとギースも混ざり、ぎこちないがらも話し始めた3人を見守る。
「ありがとう」
そう言い撫でられた頭に何のことかと首を傾げる。
「マーガレットのためにそこまで考えてくれて。それに彼女の良さを知ってくれる人が増えることはやはり嬉しいものだよ」
ギルドを作り上げるため多少は手荒なことも時にはして来ただろう。
女だからと舐められないように相手を力で捻じ伏せたこともあったはすだ。
そのせいで周りに恐れられる結果になってしまったかもしれないが、それももういいのではと思う。
彼女の、2人の頑張りでここまで作り上げたギルドはとても立派なものだ。
「お婆ちゃんも、お爺ちゃんも私は大好きです」
だからこそ自分が言える言葉でそれが伝わればいいなと微笑むのだった。
縁からすれば話すことは山ほどあるだろうと思うのだが、片方はどうしてこうなったのかよく分かっておらず、もう片方は緊張と恐怖のあまり冷や汗を流し震えている。
「以前コリンさんに女性らしくするにはどうすればいいのかと聞かれたんです」
「エッ、エニシくん!?あ、あのこ、ここここれはですね……」
きっかけが必要かと縁がマーガレットたちに説明しようとすれば、コリンが慌てたように首を振っている。
………どうしたのだろうか?
「ですけど私は男なのでそこまで知識がありません。なので女性同士お婆ちゃんから何か教えて上げてくれたらなと」
「なんで私なんだい?」
確かにギルドには他にも女性がいる。
冒険者然り、職員にも数名いる中何故自分なのだとマーガレットも思っているのだろう。
「ん~~。たぶんですけどコリンさんやギースさんの求める女性らしさというのがお婆ちゃんみたいな女性なんじゃないかと」
「「「?」」
コリンもギースも女性として美しさや可愛さを求めているだろうが、それ以前に自分たちが冒険者だということを自覚している。
「普通の女性らしさというものより冒険者でありながらも綺麗で美しくありたいということだと思ったんです」
冒険者であれど髪の手入れも髪型も普通の女性らしく自分好みに弄れるだろうが、では手や爪、肌などともなれば普通の女性とは異なってくるだろう。
武器を使い、魔法を使い、時には仲間の盾になり、戦う女性としての美しさが彼女たちが求めているものだと思ったのだ。
「もう引退したって言ってましたけどそれで戦えなくなったというわけではないですよね?その綺麗な髪も肌も体型に姿勢、2人が目指しているのはお婆ちゃんみたいな人なんじゃないかと」
「「「……………」」」
黙り込む3人に、しかし何故か隣で話しの成り行きを見守っていたジンに頭を撫でられた。
しかも物凄くいい笑顔で。
反対隣ではそれを見たエルが震えていた。
「そっ、そんなわーーわ、私は別にアンタが言う綺麗さなんてーー」
怒っているような声だが、その顔は真っ赤であり照れ隠しからのものだろう。
そんなマーガレットを初めて見たのだろうコリンたちは驚きに目を見張っている。
「コリンさんたちにしても今のままではいざという時に緊張して話せなくては困るでしょう?何かあった時にギルマスだからと何でも聞くのではなく、こうした方がいい、ああした方がいいと案を出して最善の策を言い合えることが大切だと思います」
まさかなことなどあってほしくはないが、絶対にないとは言い切れない。
もしその時にマーガレットの手があいていなければ?
マーガレットが怪我を負い指示出来なければ?
いないからと何もしないわけにはいかない。
いないから出来ないとも言えない。
彼らも冒険者故いつまでこの町にいるかは分からないが、しておいて損はきっとないはずだ。
「とまぁ、それはついででただ単にみんなが仲良くしてくれたら嬉しいなというだけです」
これは縁の勝手な想いであり一つの意見だ。
そんなものどうでもいい、バカバカしいと言われてしまえばそれだけであり縁も強要しようとも思わない。
欲を言えばマーガレットの負担が少しでも軽くなればいいなというだけ。
「そもそもコリンさんたちがお婆ちゃんたちをそんなに怖がってる理由って何ですか?」
大方誰かを成敗していたところを見たとか、見るに耐えない相手をしつけているところを見たとかだと思うが。
聞けば案の定な理由で、同じ冒険者なのだからそこまで怖がらなくていいのでは?と思ったが戦い慣れている彼ら故、縁には分からないことがあるのかもしれないと納得しておく。
「本当はとても可愛い人ですよ。それにいつも凝った髪型ですし、姿勢がいいのも見ていて気持ちがいいです。歳をとると筋肉をつけるのは難しいと言いますけどお婆ちゃんは綺麗です」
太りやすいなど女性には言えず、筋肉と言い換えた。
恥ずかしさに再び赤くなるマーガレットにジンの笑みが深くなっていく。
自分が褒められるよりマーガレットが褒められる方が嬉しいらしい。
「あ、あの……私たちずっと勘違いしてたみたいで………その、私にもその結い方教えてもらえますか?」
「しょ、しょうがないね!教えてやるさ」
勇気を出し話しかけたコリンに未だ戸惑いながらも頷くマーガレットが可愛い。
なら自分もとギースも混ざり、ぎこちないがらも話し始めた3人を見守る。
「ありがとう」
そう言い撫でられた頭に何のことかと首を傾げる。
「マーガレットのためにそこまで考えてくれて。それに彼女の良さを知ってくれる人が増えることはやはり嬉しいものだよ」
ギルドを作り上げるため多少は手荒なことも時にはして来ただろう。
女だからと舐められないように相手を力で捻じ伏せたこともあったはすだ。
そのせいで周りに恐れられる結果になってしまったかもしれないが、それももういいのではと思う。
彼女の、2人の頑張りでここまで作り上げたギルドはとても立派なものだ。
「お婆ちゃんも、お爺ちゃんも私は大好きです」
だからこそ自分が言える言葉でそれが伝わればいいなと微笑むのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
3,609
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる