二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
325 / 475

発見

しおりを挟む
 にこにこと楽しそうに歩く娘の姿に笑みが溢れる。
 ママも早くと言われ後ろを追いかけながら、これまた嬉しそうに繋に手を引かれていくマーガレットの姿に良かったと微笑んだ。
 調子が戻らず1度は来ることを断念したが、漸く元の生活にも戻りつつある毎日にやっと町まで来ることが出来た。
 マーガレットたちにはかなり迷惑と心配をかけてしまったが、アンタが無事ならそれでいいよと笑って抱きしめてくれた。
 ジンには何も力になれずごめんねと謝られたが、そんなことない、来てくれて嬉しかったと縁から抱きつき礼を言った。
 そのため今日は以前約束した通りマーガレットと繋と買い物に来たのだがーー

 「………ねぇ、怖いんだけど。いい加減何とかしてよ」

 「まったく。仕事を任されていたはずなのにこんなとこまで付いてきて……」

 マーガレットの代わりに仕事を任されたジンだが、仕事をするのが嫌だったのか、はたまた仲間ハズレが嫌だったのかコソコソと隠れながらも縁たちの後をついて回ってきていた。
 しかもジンのことだから気配を消して付けてこようと思えば付けてこれるはずだ。
 しかしそれをせず、縁にでさえ気付いてしまうような動きをしていることから気付いてほしくてそうしているのだろう。
 少々ウザい。
 まだ堂々と一緒に行きたいと言われた方が潔い。

 「どうしましょうかねぇ。お婆ちゃんはきっと放っておけと言いそうですし」

 「絶対言うね」

 縁たちが気付いているのだ、マーガレットが気付いていないはずがない。
 だが何も言わないということはそういうことなのだろう。

 「というか仕事は大丈夫なんですかね?きっと職員さんたち慌ててるんじゃな、い…か、と……」

 「エニシ?」

 突如足を止めた縁にエルが首を傾げたが、それに返すことなく振り向く。

 「お爺ちゃん。1つお願いを聞いてくれるなら後でみんなとお茶してもいいですよ」

 「のった!なんだい?」

 それほど離れていなかったとはいえ一瞬で距離を縮めてきたジンにエルが怯え縁の背後に隠れた。
 歳をとると耳が遠くなると言うが彼に関しては心配ないらしい。
 むしろ異常なほど良い。羨ましい限りだ。

 「あの子。助けてきてあげてくれますか?」

 「ん?あの子?……ああ、なるほど。分かったよ」

 それを見、縁の言いたいことが分かったのか嫌がることなく行ってくれた。
 ジンが戻ってくるのを待つ間、繋たちには近くの店を見て回ってもらっている。

 「いってぇ!おいこら、俺はお前を助けてやったんだぞ!なんで噛むんだよ。って、こら待て逃げんなっ!」

 数分して帰ってきたジンは顔と言わず手や腕にまで引っ掻き傷を作り戻ってきた。
 何も知らなかったエルはその姿を見てなるほどと頷いている。

 「ありがとうございます。すいませんがもう少しそうして抑えておいてもらえますか?」

 「分かったよ。けどこの猫すごい暴れようーーってだから動くんじゃねぇ!」

 そう、縁が助けてあげてほしいと頼んだのは道の隅で子どもたちにより虐められていた子猫だった。
 わーわーと騒ぐ子どもたちに何をしているだと思って見ただけなのだが、何かを蹴っている姿にボール遊びかと微笑もうとし、しかしその黒いボールと思ったものが動いたように見え驚いた。
 明らかに生きているだろうに、蹴り叩く子どもたちに咄嗟にジンに助けを求めたのだ。

 「ごめんね。もう大丈夫ですよ。私たちは君を傷付けたりしませんからね」

 よしよしと子どもたちにするように優しく撫でてやると傷付いた身体を治してやる。
 それまでジンの腕の中で暴れていた子猫は驚いたのか動きを止めるとこちらを見上げてくる。

 「痛かったでしょう?もう大丈夫ですよ」

 治癒もしたためジンに下ろしてもらうと鞄から皿を出し水を与えてみた。
 側にいては警戒するかなと数歩距離をとってみる。

 「喉が渇いているでしょう?本当はミルクをあげたいんですが生憎子猫用のはもってないので水で我慢してくれまーーあ、飲んだ」

 チラチラとこちらを窺い警戒しながらも、ペロペロと飲み始めた子猫にホッとする。
 相当喉が渇いていたのだろう。
 
 「子猫って何を食べるんですかね?」

 「うーん、私も飼ったことがないからなぁ」

 「オレも知らない」

 これには困った。
 明らかに食事に困り痩せている子猫に何か食べさせてやりたいが、何を食べさせていいのかが分からない。
 動物によっては与えてはいけないものもあるため下手に与えて何かあっては怖い。

 「うーーーーーん。…………君はどちらがいいですか?」

 悩みに悩み、もう分からんと鞄からお握りとりんごを出すと子猫の前に置いてみる。
 無難なものを選んではみてみたが、ダメならば次を考えることにする。
 差し出されたものが食べ物と分かったのか子猫はスンスンと匂いを嗅ぐとりんごの周りをぐるぐるし始めた。
 決まったようだと微笑むと食べやすいようすり下ろしてやるのだった。

 「……………ねぇ、なんでおろし器なんて持ってんの?」

 「何故ですかね?私にも分かりません」

 言われて初めて気付いたが、何故自分は鞄におろし器を入れていたのか?
 謎は深まるばかりである。

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...