二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
334 / 475

気付いた時には

しおりを挟む
 日本にいた頃とは違い決まった時間に会社に行き、同僚と話しをしながら給料のため働くということがこちらの世界ではない。
 だからと言って毎日遊んで暮らせるというわけではなく、掃除に洗濯など当たり前にあった家電もなく全て手作業である。
 食事でさえ自分は与えられた鞄(マジックバック)があるため楽は出来ているが、野菜は自分たちで育て、魚も肉も自ら獲りに行かなければならない。
 自給自足生活というのもかなりの苦労があるものだ。
 そのため縁も朝早くから掃除洗濯食事の用意と時間を使い、午後からは畑を耕し花壇の整備、人数が多いため本日2度目の洗濯を終えると一息付く。

 「洗濯機を考えた人は偉大ですね」

 一人暮らしの時はそれほど頻繁に使うことはなかったが、今なら毎日2回は回しても足りないぐらいだろう。
 無理だとは分かっているが、洗濯機を考えた人もこちらに喚んで欲しかったと心から思うのだった。

 「そろそろ愛依たちのために何か作らないとーーっ」

 1つ息を吐くと立ち上がろとし、視界が歪んだ。
 すぐに治ったが、軽い立ち眩みに再び座り込んでしまう。
 貧血だろうか?熱射病?最近食欲も落ちていたためそのせいかもしれないと反省する。

 「今日は外にい過ぎましたかね?夏バテじゃないといいんですがーー」

 「…まんみゃ」

 ?
 小さいが呼ばれたような気がし回りを見る。

 「みゃ……まんみゃ」

 「?、どこから声がーーえ……翔?」

 振り向けば見覚えがある姿に目を見開いた。
 まだ慣れないのだろう手足を震わせながらもヨチヨチと歩いてくる我が子の姿に涙が出そうになった。

 「………その姿を見るのは久しぶり、ですかね」

 夢の中で見た姿はもう少し育った時のものだったが、彼に似たその姿は見間違えるはずがない可愛らしいものである。
 何がきっかけで出来るようになったかは分からないが、やはり愛しく感じるその姿に手を伸ばす。

 「人の姿では飛べないから不便でしょう?けどその姿もとても可愛いですよ」

 自身の足でしか動けない人の姿では空を駆けるドラゴンには不便でしかないだろうが、こうしてその姿を見ればこれは本当に自身の子なのだと実感する。
 よく頑張ったねと褒め、ご褒美にと少し魔力を流してやれば嬉しそうに笑い小さな手を伸ばし抱きついてくる。
 どれだけ子が増えようとその愛情が薄まることはない。
 大事な大事な愛しい子。

 「みゃ、まんみゃ」

 「はいはい、ここにいますよ。ほら、ちゃんとその可愛い顔をママに見せて?」

 ここまで早く人型をとれるようになるとは思っていなかったが、やはり初めて会った時に見た時の姿に愛しさが増す。
 
 「よく頑張りましたね。きっとパパも喜びますよ」

 驚かせに行っておいでと言えば、ポンと元の姿に戻ると行ってきますとばかりに一鳴きし空高く飛んでいくのだった。

 「ロンはまた驚くんじゃないかな。ルーは……泣いちゃうかな?」

 翔には夢の中での記憶がないようだったが、縁にしてもルーにしても初めて見た我が子の姿に忘れることなど出来るはずもなく、再び見ることが出来た姿に泣いて喜ぶことだろう。

 「さて、ルーが呼びに来るだろう前に愛依たちのオヤツをーー」

 「ミャー」

 「あらあら、お手伝いに来てくれたんですか?」

 もはや家族の一員になりつつある子猫は、十分な食事と愛情により元気に成長しつつあった。
 身体も以前より大きくなりもはや子猫とは言えないかもしれないが、未だ縁の後を追いかけてくるところは変わりなく可愛がっている。
 一時はリルやジークたちにより吠えられ怯えもしていたが、以前とは違い縁以外に威嚇するということもなくなり少しずつではあるが皆に慣れつつある。

 「なら君のオヤツも用意しましょうか。確かりんごが1つ余っていたはーーっ」

 足下まで来た猫を抱え立ち上がろうとした途端再び視界が揺れた。
 崩れた身体に膝をついたが、治まることなく暗くなる視界にそのまま意識を失うのだった。

 「ミャ、ミャミャッ!」

 咄嗟に腕から飛び降り起きてとばかりに鳴く猫に、しかし返事を出来ぬまま暗闇に意識を沈ませるのだった。

 

 




 

 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...