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本当は……
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「貴方が獣人である彼らに優っているのはどこですか?」
そう言われ咄嗟に何も言い返せなかったことが答えだったのだろう。
自分の無力さを思い知り、だが今までの常識をなかったことにするのも難しい。
「私は……」
「貴方はその常識で私からこの子たちを取り上げるつもりですか?」
「ちがっーー」
違う!そんなことするつもりはないと訴えようとしたが、ジッとこちらを見据える瞳に最後まで言えなかった。
「この子たちは獣人です。生まれながらに獣人です。人間ですが私がお腹を痛めて産んだ大切な大切な我が子です。けど貴方は獣人だというだけでこの子たちを私から取り上げ奴隷商人に売りこき使われ死ぬのをただ見てろと言うんですか?それが貴方の言う当たり前ですか?」
お前の言っていることはそういうことだと言われ、改めて自分が何と酷いことを言っているのかと理解した。
こうも愚かなことを考えていた自分のことも知らず、スヤスヤと母親の腕の中で眠る幼子。
「この子たちは物じゃない。血の通った人です。獣の血が入っていようが私たちと同じ人で、私たちと同じく生きている。この子たちは生まれてきただけで罪だと?ならそんな汚らわしい獣人を産んだ愚かな人間だと私のことも思っているんですか?」
何故分かってくれないのだという怒りと、大切な人たちを否定される悲しみを訴えてくる瞳に涙が出そうだった。
自分はどこまで愚かだったのか。
「……………………ごめんなさい。……すいませんでした」
「全ての獣人を受けいれろと、助けてあげてくれと言っているわけではないんです。けど………お願いですから私の大切な人たちを否定しないで。私には彼らだった。私には彼らが必要なんです。彼らがいたから今の私がある。ーー彼らを愛しているんです」
何より大切なのだと愛おしそうに我が子を抱きしめる彼の姿に自身の母の姿が重なった。
今更あの時のマルズスの言葉が甦る。
「誰だって大事な家族をバカにされたら怒りもすんだろ」
自分が両親を大切に想うように、父が母を愛したように、彼もまた獣人である彼らを想い愛した。
そんな彼らを見下され怒りを抱かないわけがない。
獣人は生まれながらに奴隷である。
それが当たり前として生きてきたが、まだ幼く母親を求める彼らに何の罪があるというのだろう。
ありもしない罪で鎖に繋がれ、死ぬまでこき使われる。
どれほどの苦痛に泣き、血を流し、自由を求めただろう。
「私が愚かでした。本当にすいません」
涙を堪え必死に頭を下げれば、ふと頬に感じた温もりに顔を上げる。
「手を」
言われるがまま右手を差し出せば、掴まれ触れた幼子の温かい頬の温もりに涙が溢れた。
「温かいでしょう?生きているんです。私や、貴方と同じく大切な、かけがえのない命なんです」
「っ……」
獣の耳と尾を持ちながらも、その寝顔は人の子と何ら変わりない。
この子たちを愚かにも奴隷だと言おうとした自分は何とバカだったのだろう。
「助けてあげてなんて言いません。けど必死に生きている彼らという存在を、誰が言い出したかも分からない理由で否定しないであげて下さい」
優しく、まるで諭すかのような声音に何度も頷く。
自分の勝手な思い込みでどれだけ彼を、彼らを傷付けただろう。
大切な人たちを否定され、しかし彼はそれでも自分のことを許してくれた。
「……ママ…」
触れる手の感触で起きたのか、目を擦りながら開いた目蓋に手が震えた。
「起きましたか。おはよう愛依」
「おはよう。…………おにいちゃんなんでないてるの?」
話しを聞かれてはなかったとは思うが、もしかしたら怯え泣かれるのではないかと考えていたため逆にどうしたのかと心配されて驚いてしまった。
「ママが少し怒ったからですよ。愛依と一緒ですね」
どう答えていいか分からず固まっていたフレックに助け舟を出してくれたのだろうが、それすら予想外の言葉で混乱する。
「おにいちゃんママにおこられたの?」
「いえ、あの……あ………はい」
そんな感じでもあり、しかし子どものように怒られて泣いたと言っていいものか悩んだ結果とりあえず話しを合わせておこうと頷いておいた。
「ごめんなさいした?ママおこるとおはなししてくれなくなるの。ちゃんとごめんなさいするまでアイのおはなしきいてくれないの」
彼の子どもへの反省のさせ方を理解した。
大好きなママが何も話さず無視をされては子どもは泣いてしまいもするだろう。
「大丈夫。ちゃんとごめんなさいしてくれましたよ。なので今日はこのお兄ちゃんも一緒にご飯を食べましょう。真の好きなお魚と、愛依とカイの好きなりんごをね」
「たべる!」
りんごが好物なのか、早く食べようとまだ隣で眠っていたはずの兄弟を起こしにかかっていた。
「ーーうぇーん!」
しかしまだ眠い中無理やり揺り動かし起こされ泣いてしまう。
「愛依……りんごはお預けですね」
「やーー!アイのりんご!」
泣き続ける男の子を抱え立ち上がると家へ入って行こうとするのを少女が泣きながら追いかけていく。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ママごめんなさーい!」
たった数分で色んなことがあり過ぎて頭がついていかない。
「……はぁ。ならもうしないと約束出来ますね?早く食べたいという気持ちも分かりますが、真はまだ寝ていたでしょう?約束出来るなら愛依のりんごも用意しますから」
「する!」
「じゃああのお兄ちゃんも引っ張ってきて下さい。働かず物食うべからずと言いますからね。食べるならしっかり手伝ってもらわないと」
話しの展開が早過ぎてついていけなかったが、おにいちゃんいこうと差し出された小さな手を戸惑いがちに握り返せば力強く引かれ彼の背を一緒に追いかけるのだった。
そう言われ咄嗟に何も言い返せなかったことが答えだったのだろう。
自分の無力さを思い知り、だが今までの常識をなかったことにするのも難しい。
「私は……」
「貴方はその常識で私からこの子たちを取り上げるつもりですか?」
「ちがっーー」
違う!そんなことするつもりはないと訴えようとしたが、ジッとこちらを見据える瞳に最後まで言えなかった。
「この子たちは獣人です。生まれながらに獣人です。人間ですが私がお腹を痛めて産んだ大切な大切な我が子です。けど貴方は獣人だというだけでこの子たちを私から取り上げ奴隷商人に売りこき使われ死ぬのをただ見てろと言うんですか?それが貴方の言う当たり前ですか?」
お前の言っていることはそういうことだと言われ、改めて自分が何と酷いことを言っているのかと理解した。
こうも愚かなことを考えていた自分のことも知らず、スヤスヤと母親の腕の中で眠る幼子。
「この子たちは物じゃない。血の通った人です。獣の血が入っていようが私たちと同じ人で、私たちと同じく生きている。この子たちは生まれてきただけで罪だと?ならそんな汚らわしい獣人を産んだ愚かな人間だと私のことも思っているんですか?」
何故分かってくれないのだという怒りと、大切な人たちを否定される悲しみを訴えてくる瞳に涙が出そうだった。
自分はどこまで愚かだったのか。
「……………………ごめんなさい。……すいませんでした」
「全ての獣人を受けいれろと、助けてあげてくれと言っているわけではないんです。けど………お願いですから私の大切な人たちを否定しないで。私には彼らだった。私には彼らが必要なんです。彼らがいたから今の私がある。ーー彼らを愛しているんです」
何より大切なのだと愛おしそうに我が子を抱きしめる彼の姿に自身の母の姿が重なった。
今更あの時のマルズスの言葉が甦る。
「誰だって大事な家族をバカにされたら怒りもすんだろ」
自分が両親を大切に想うように、父が母を愛したように、彼もまた獣人である彼らを想い愛した。
そんな彼らを見下され怒りを抱かないわけがない。
獣人は生まれながらに奴隷である。
それが当たり前として生きてきたが、まだ幼く母親を求める彼らに何の罪があるというのだろう。
ありもしない罪で鎖に繋がれ、死ぬまでこき使われる。
どれほどの苦痛に泣き、血を流し、自由を求めただろう。
「私が愚かでした。本当にすいません」
涙を堪え必死に頭を下げれば、ふと頬に感じた温もりに顔を上げる。
「手を」
言われるがまま右手を差し出せば、掴まれ触れた幼子の温かい頬の温もりに涙が溢れた。
「温かいでしょう?生きているんです。私や、貴方と同じく大切な、かけがえのない命なんです」
「っ……」
獣の耳と尾を持ちながらも、その寝顔は人の子と何ら変わりない。
この子たちを愚かにも奴隷だと言おうとした自分は何とバカだったのだろう。
「助けてあげてなんて言いません。けど必死に生きている彼らという存在を、誰が言い出したかも分からない理由で否定しないであげて下さい」
優しく、まるで諭すかのような声音に何度も頷く。
自分の勝手な思い込みでどれだけ彼を、彼らを傷付けただろう。
大切な人たちを否定され、しかし彼はそれでも自分のことを許してくれた。
「……ママ…」
触れる手の感触で起きたのか、目を擦りながら開いた目蓋に手が震えた。
「起きましたか。おはよう愛依」
「おはよう。…………おにいちゃんなんでないてるの?」
話しを聞かれてはなかったとは思うが、もしかしたら怯え泣かれるのではないかと考えていたため逆にどうしたのかと心配されて驚いてしまった。
「ママが少し怒ったからですよ。愛依と一緒ですね」
どう答えていいか分からず固まっていたフレックに助け舟を出してくれたのだろうが、それすら予想外の言葉で混乱する。
「おにいちゃんママにおこられたの?」
「いえ、あの……あ………はい」
そんな感じでもあり、しかし子どものように怒られて泣いたと言っていいものか悩んだ結果とりあえず話しを合わせておこうと頷いておいた。
「ごめんなさいした?ママおこるとおはなししてくれなくなるの。ちゃんとごめんなさいするまでアイのおはなしきいてくれないの」
彼の子どもへの反省のさせ方を理解した。
大好きなママが何も話さず無視をされては子どもは泣いてしまいもするだろう。
「大丈夫。ちゃんとごめんなさいしてくれましたよ。なので今日はこのお兄ちゃんも一緒にご飯を食べましょう。真の好きなお魚と、愛依とカイの好きなりんごをね」
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りんごが好物なのか、早く食べようとまだ隣で眠っていたはずの兄弟を起こしにかかっていた。
「ーーうぇーん!」
しかしまだ眠い中無理やり揺り動かし起こされ泣いてしまう。
「愛依……りんごはお預けですね」
「やーー!アイのりんご!」
泣き続ける男の子を抱え立ち上がると家へ入って行こうとするのを少女が泣きながら追いかけていく。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ママごめんなさーい!」
たった数分で色んなことがあり過ぎて頭がついていかない。
「……はぁ。ならもうしないと約束出来ますね?早く食べたいという気持ちも分かりますが、真はまだ寝ていたでしょう?約束出来るなら愛依のりんごも用意しますから」
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