二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
346 / 475

本当は……

しおりを挟む
 「貴方が獣人である彼らに優っているのはどこですか?」

 そう言われ咄嗟に何も言い返せなかったことが答えだったのだろう。
 自分の無力さを思い知り、だが今までの常識をなかったことにするのも難しい。

 「私は……」

 「貴方はその常識で私からこの子たちを取り上げるつもりですか?」

 「ちがっーー」

 違う!そんなことするつもりはないと訴えようとしたが、ジッとこちらを見据える瞳に最後まで言えなかった。

 「この子たちは獣人です。生まれながらに獣人です。人間ですが私がお腹を痛めて産んだ大切な大切な我が子です。けど貴方は獣人だというだけでこの子たちを私から取り上げ奴隷商人に売りこき使われ死ぬのをただ見てろと言うんですか?それが貴方の言う当たり前ですか?」

 お前の言っていることはそういうことだと言われ、改めて自分が何と酷いことを言っているのかと理解した。
 こうも愚かなことを考えていた自分のことも知らず、スヤスヤと母親の腕の中で眠る幼子。

 「この子たちは物じゃない。血の通った人です。獣の血が入っていようが私たちと同じ人で、私たちと同じく生きている。この子たちは生まれてきただけで罪だと?ならそんな汚らわしい獣人を産んだ愚かな人間だと私のことも思っているんですか?」

 何故分かってくれないのだという怒りと、大切な人たちを否定される悲しみを訴えてくる瞳に涙が出そうだった。
 自分はどこまで愚かだったのか。

 「……………………ごめんなさい。……すいませんでした」

 「全ての獣人を受けいれろと、助けてあげてくれと言っているわけではないんです。けど………お願いですから私の大切な人たちを否定しないで。私には彼らだった。私には彼らが必要なんです。彼らがいたから今の私がある。ーー彼らを愛しているんです」

 何より大切なのだと愛おしそうに我が子を抱きしめる彼の姿に自身の母の姿が重なった。
 今更あの時のマルズスの言葉が甦る。

 「誰だって大事な家族をバカにされたら怒りもすんだろ」

 自分が両親を大切に想うように、父が母を愛したように、彼もまた獣人である彼らを想い愛した。
 そんな彼らを見下され怒りを抱かないわけがない。
 獣人は生まれながらに奴隷である。
 それが当たり前として生きてきたが、まだ幼く母親を求める彼らに何の罪があるというのだろう。
 ありもしない罪で鎖に繋がれ、死ぬまでこき使われる。
 どれほどの苦痛に泣き、血を流し、自由を求めただろう。

 「私が愚かでした。本当にすいません」

 涙を堪え必死に頭を下げれば、ふと頬に感じた温もりに顔を上げる。

 「手を」

 言われるがまま右手を差し出せば、掴まれ触れた幼子の温かい頬の温もりに涙が溢れた。

 「温かいでしょう?生きているんです。私や、貴方と同じく大切な、かけがえのない命なんです」

 「っ……」

 獣の耳と尾を持ちながらも、その寝顔は人の子と何ら変わりない。
 この子たちを愚かにも奴隷だと言おうとした自分は何とバカだったのだろう。

 「助けてあげてなんて言いません。けど必死に生きている彼らという存在を、誰が言い出したかも分からない理由で否定しないであげて下さい」

 優しく、まるで諭すかのような声音に何度も頷く。
 自分の勝手な思い込みでどれだけ彼を、彼らを傷付けただろう。
 大切な人たちを否定され、しかし彼はそれでも自分のことを許してくれた。

 「……ママ…」

 触れる手の感触で起きたのか、目を擦りながら開いた目蓋に手が震えた。

 「起きましたか。おはよう愛依」

 「おはよう。…………おにいちゃんなんでないてるの?」

 話しを聞かれてはなかったとは思うが、もしかしたら怯え泣かれるのではないかと考えていたため逆にどうしたのかと心配されて驚いてしまった。

 「ママが少し怒ったからですよ。愛依と一緒ですね」

 どう答えていいか分からず固まっていたフレックに助け舟を出してくれたのだろうが、それすら予想外の言葉で混乱する。

 「おにいちゃんママにおこられたの?」

 「いえ、あの……あ………はい」

 そんな感じでもあり、しかし子どものように怒られて泣いたと言っていいものか悩んだ結果とりあえず話しを合わせておこうと頷いておいた。

 「ごめんなさいした?ママおこるとおはなししてくれなくなるの。ちゃんとごめんなさいするまでアイのおはなしきいてくれないの」

 彼の子どもへの反省のさせ方を理解した。
 大好きなママが何も話さず無視をされては子どもは泣いてしまいもするだろう。

 「大丈夫。ちゃんとごめんなさいしてくれましたよ。なので今日はこのお兄ちゃんも一緒にご飯を食べましょう。真の好きなお魚と、愛依とカイの好きなりんごをね」

 「たべる!」

 りんごが好物なのか、早く食べようとまだ隣で眠っていたはずの兄弟を起こしにかかっていた。
 
 「ーーうぇーん!」

 しかしまだ眠い中無理やり揺り動かし起こされ泣いてしまう。
 
 「愛依……りんごはお預けですね」

 「やーー!アイのりんご!」

 泣き続ける男の子を抱え立ち上がると家へ入って行こうとするのを少女が泣きながら追いかけていく。

 「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ママごめんなさーい!」

 たった数分で色んなことがあり過ぎて頭がついていかない。

 「……はぁ。ならもうしないと約束出来ますね?早く食べたいという気持ちも分かりますが、真はまだ寝ていたでしょう?約束出来るなら愛依のりんごも用意しますから」

 「する!」

 「じゃああのお兄ちゃんも引っ張ってきて下さい。働かず物食うべからずと言いますからね。食べるならしっかり手伝ってもらわないと」

 話しの展開が早過ぎてついていけなかったが、おにいちゃんいこうと差し出された小さな手を戸惑いがちに握り返せば力強く引かれ彼の背を一緒に追いかけるのだった。
 
 



 

 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...