358 / 475
迫る時
しおりを挟む
「……ママ」
「いいですよ。おいで」
あれからアズの体調も少しずつ回復しつつあった。
だがまだ手に震えは残っているようで、その時は縁がこうして手を包み込み優しく撫でてやる。
それまで見ていた悪夢も、アズが見たと言えばそっと抱きしめ朝まで一緒に眠りにつく。
乱れた魔力はエルと一緒に宥める方法を模索していた。
縁がしてやれることは少ないが、それでアズが落ち着くならばいくらでもしてあげたい。
「今日はアズの大好きなドリアにしましょうか。作るの手伝ってくれますか?」
もう大丈夫ですよと握る手を撫でながらそう言えば、とても嬉しそうに笑い頷いてくれるのだった。
「ケイもおてつだいするもん!」
だから自分も混ぜてと抱き付いてきた小さな身体にアズも一緒にしようと頷いている。
繋は兄弟の中では一番アズに懐いている。
それは腹にいた頃から何を感じ取り大丈夫だよと伝え続けていたせいかは分からないが、彼らの中で何か通ずるものがあったからかもしれない。
はっきりとした理由は分からないが、アズが何かをする時は自分もしたいと繋は強請ることが多かった。
「なら繋にはアズと一緒にチーズを上にいっぱいかけてもらいましょうかね」
「する!アズにぃいこう!」
アズを真ん中に3人手を繋ぎキッチンへ向かう。
大好きなママと兄と一緒で繋もかなりご機嫌のようだ。
「ケイね、ママのごはんだいすき!」
「ボクも」
一緒だねと笑い合う我が子たちが可愛い過ぎる。
「パパたちのご飯は美味しくなかったですか?」
数日ではあるが縁が家を離れていた間、代わりに作ってくれていただろうセインたちのご飯はどうだったかと聞けば、悩みに悩み美味しかったと答えた。
「パパね、おにくしかたべないの」
「やさい食べたかった」
「うーん」
それは何とも気になる案件だ。
あれほど肉ばかりではなく野菜も一緒に食べて下さいねと言っておいたのに。主にセインに。
獣人である彼らはそれでもいいかもしれないが、アズは魔族であり、繋は人間なのだ。
顎の強さから言ってもそれほど強いわけではなく、肉料理ばかりでは飽きてしまうだろう。
「それは勿体ないですね。繋はもうちゃんとお野菜食べられるようになってきたのに」
かなりの偏食だった繋だが、最近は少しずつだが苦手な野菜たちも食べられるようになってきていた。
「ボク、トマト好き」
エルとは違いアズはトマトが大好きだ。
「ケイはとうもしころすき!」
「とうもろこし、ね。私も大好きですよ。いつも茹でてばかりなので今度食べる時は焼いてみましょうか」
焼く!?と繋は驚いているが、醤油を塗って焼いて食べるのも美味しいですよと教えてやれば目を輝かせていた。
人によっては茹でただけの方が美味しいと言う人もいるが、縁はどちらもあり派である。
ある意味こだわりがないとも言える。
「ほぐしてご飯と一緒に炊くのもいいですね。トマトはお肉と煮込んでも美味しいですから今度一緒に作って食べてみましょう」
「「たべる!」」
まだまだ食べ盛りの育ち盛り。
双子ほどではないが食べることが大好きな2人も食欲は旺盛だ。
「オレ……はトマトはいいかな」
道中捕獲したエルはトマトと聞き頬を引きつらせていた。
「頑張れば生でも食べられるんですから煮込んだらもっと食べられると思いますよ」
「そうかなぁ?だって……トマトだよ?」
基本出されたものはきちんと食べきるエル。
勿論トマトが苦手なことを知っているためみんなのものより格段に量を減らして出している。
それを知っているからこそエルも文句も言わず食べているのだ。
「ピザに使っているトマトソースだって平気だったでしょ?」
「まぁ、あれは美味しいけどさー」
嫌いだとは言ってはいるが、そのまま生で食べるのが苦手なだけで調理さえすれば食べられると気付いたのは最近。
それまで手を加えるという考えがなかったこともあり、調理し出したものは美味しそうに食べていた。
「ならきっと大丈夫ですよ。鶏肉とかハーバーグと一緒に煮込んでも美味しいですよ」
「「たべたーい!」」
未だ渋るエルに、しかしアズと繋の2人は食べたいと目を輝かせている。
なら今度作ってみようと約束し、今日のところはドリアを作っていくことに。
「ママ、ケイのおみそがいい!」
「え……ドリアに?」
それは縁も食べたことがないため味の保証が出来なかったが、食べたいときかないため繋の分には味噌を投入しておいた。
なら自分はトマトがいいと言うアズにはトマトを、エルはどうするかと聞けば肉!と即答された。
他にも真のために魚入りや、縁はたっぷりキノコに、アレンには肉増し増しのものを作る。
「色々味があって面白いね。エニシのも後で一口ちょうだい」
「いいですよ。みんなで色々食べてみましょう」
こうして家族で食卓を囲み分け合って食べるというのは本当に楽しく、懐かしかった。
「セインには野菜たっぷりにしておいてあげましょう」
「うわぁ~」
数日食べなかった分の野菜を縁の愛情と共にたっぷり詰め込んでおくのだった。
「いいですよ。おいで」
あれからアズの体調も少しずつ回復しつつあった。
だがまだ手に震えは残っているようで、その時は縁がこうして手を包み込み優しく撫でてやる。
それまで見ていた悪夢も、アズが見たと言えばそっと抱きしめ朝まで一緒に眠りにつく。
乱れた魔力はエルと一緒に宥める方法を模索していた。
縁がしてやれることは少ないが、それでアズが落ち着くならばいくらでもしてあげたい。
「今日はアズの大好きなドリアにしましょうか。作るの手伝ってくれますか?」
もう大丈夫ですよと握る手を撫でながらそう言えば、とても嬉しそうに笑い頷いてくれるのだった。
「ケイもおてつだいするもん!」
だから自分も混ぜてと抱き付いてきた小さな身体にアズも一緒にしようと頷いている。
繋は兄弟の中では一番アズに懐いている。
それは腹にいた頃から何を感じ取り大丈夫だよと伝え続けていたせいかは分からないが、彼らの中で何か通ずるものがあったからかもしれない。
はっきりとした理由は分からないが、アズが何かをする時は自分もしたいと繋は強請ることが多かった。
「なら繋にはアズと一緒にチーズを上にいっぱいかけてもらいましょうかね」
「する!アズにぃいこう!」
アズを真ん中に3人手を繋ぎキッチンへ向かう。
大好きなママと兄と一緒で繋もかなりご機嫌のようだ。
「ケイね、ママのごはんだいすき!」
「ボクも」
一緒だねと笑い合う我が子たちが可愛い過ぎる。
「パパたちのご飯は美味しくなかったですか?」
数日ではあるが縁が家を離れていた間、代わりに作ってくれていただろうセインたちのご飯はどうだったかと聞けば、悩みに悩み美味しかったと答えた。
「パパね、おにくしかたべないの」
「やさい食べたかった」
「うーん」
それは何とも気になる案件だ。
あれほど肉ばかりではなく野菜も一緒に食べて下さいねと言っておいたのに。主にセインに。
獣人である彼らはそれでもいいかもしれないが、アズは魔族であり、繋は人間なのだ。
顎の強さから言ってもそれほど強いわけではなく、肉料理ばかりでは飽きてしまうだろう。
「それは勿体ないですね。繋はもうちゃんとお野菜食べられるようになってきたのに」
かなりの偏食だった繋だが、最近は少しずつだが苦手な野菜たちも食べられるようになってきていた。
「ボク、トマト好き」
エルとは違いアズはトマトが大好きだ。
「ケイはとうもしころすき!」
「とうもろこし、ね。私も大好きですよ。いつも茹でてばかりなので今度食べる時は焼いてみましょうか」
焼く!?と繋は驚いているが、醤油を塗って焼いて食べるのも美味しいですよと教えてやれば目を輝かせていた。
人によっては茹でただけの方が美味しいと言う人もいるが、縁はどちらもあり派である。
ある意味こだわりがないとも言える。
「ほぐしてご飯と一緒に炊くのもいいですね。トマトはお肉と煮込んでも美味しいですから今度一緒に作って食べてみましょう」
「「たべる!」」
まだまだ食べ盛りの育ち盛り。
双子ほどではないが食べることが大好きな2人も食欲は旺盛だ。
「オレ……はトマトはいいかな」
道中捕獲したエルはトマトと聞き頬を引きつらせていた。
「頑張れば生でも食べられるんですから煮込んだらもっと食べられると思いますよ」
「そうかなぁ?だって……トマトだよ?」
基本出されたものはきちんと食べきるエル。
勿論トマトが苦手なことを知っているためみんなのものより格段に量を減らして出している。
それを知っているからこそエルも文句も言わず食べているのだ。
「ピザに使っているトマトソースだって平気だったでしょ?」
「まぁ、あれは美味しいけどさー」
嫌いだとは言ってはいるが、そのまま生で食べるのが苦手なだけで調理さえすれば食べられると気付いたのは最近。
それまで手を加えるという考えがなかったこともあり、調理し出したものは美味しそうに食べていた。
「ならきっと大丈夫ですよ。鶏肉とかハーバーグと一緒に煮込んでも美味しいですよ」
「「たべたーい!」」
未だ渋るエルに、しかしアズと繋の2人は食べたいと目を輝かせている。
なら今度作ってみようと約束し、今日のところはドリアを作っていくことに。
「ママ、ケイのおみそがいい!」
「え……ドリアに?」
それは縁も食べたことがないため味の保証が出来なかったが、食べたいときかないため繋の分には味噌を投入しておいた。
なら自分はトマトがいいと言うアズにはトマトを、エルはどうするかと聞けば肉!と即答された。
他にも真のために魚入りや、縁はたっぷりキノコに、アレンには肉増し増しのものを作る。
「色々味があって面白いね。エニシのも後で一口ちょうだい」
「いいですよ。みんなで色々食べてみましょう」
こうして家族で食卓を囲み分け合って食べるというのは本当に楽しく、懐かしかった。
「セインには野菜たっぷりにしておいてあげましょう」
「うわぁ~」
数日食べなかった分の野菜を縁の愛情と共にたっぷり詰め込んでおくのだった。
52
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる