二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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悲しみ

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 ベッドには寝かせ、先程よりは幾分顔色が良くなったアズにホッと息を漏らした。
 慌てるエルを落ち着かせ何か問題がないか診てもらう。
 息が荒いようだが体調に問題はないらしく、少々魔力が乱れているらしい。
 暴走の危険はないか聞いたが大丈夫なようだ。

 「アズにぃまたいたいいたいした?」

 「また?繋、アズは前にもこうして倒れたことが?」

 エルの隣り、心配そうにアズの頭を撫でる繋の言葉にどういうことかと聞けば、以前にも部屋で痛みに蹲る姿を見たと言う。
 何故言ってくれなかったのかと言えばーー
 
 「ママないちゃうからシーよって」

 アズが言いそうなことだ。
 縁に心配かけまいと黙っているように言ったのだろう。
 
 「どこが痛いか言ってましたか?」

 「うんとね、こことてて」

 胸と手を指す繋にエルを見れば、分かったというように頷き詳しく診てくれる。
 だがエルも医者でもないため詳しくは分からないようだが、言われたような異常は見えないらしい。
 ならば精神的なものかもしれない。
 いつからと繋に聞いてみても、アズたちの父親との再会辺りからだ。
 こうなれば本人に確認するしかなく、アズの目が覚めるのをみんなで静かに待つ。

 「ーーふぅ」

 「エニシ?」

 1つ息を吐き椅子に腰を下ろした縁にエルが不思議そうな顔をする。

 「どうしました?」

 「いや、どうもしないけど……なんでそんな離れて座ーーあ」

 その時震えた目蓋に言葉を切ると心配そうに顔を覗き込むエルと繋の姿を離れた所から眺める。
 目覚めたことに安堵する。

 「アズ?アズ大丈夫?どこか痛いところない?」

 「アズにぃいたい?」

 「……………だいじょうぶ」

 まだ意識が朦朧としているようだが、思いの外はっきりと答えたアズにエルもホッとしたようだ。
 それから暫くボーッと寝転んだまま天井を見上げていたかと思えば、先程から一言も声を発しない縁にエルが再びどうしたのかと声をかけた瞬間ハッとしたように慌てて起き上がった。

 「ママーーっ」

 「アズ!急に起き上がると危ないから。ゆっくり、ゆっくりだからね」

 立ち眩みに頭を揺らしたアズにエルが手を貸し起き上がらせれば、今にも泣きそうな表情でこちらを見てくる。

 「ママ……」

 「痛いところは?」

 しかしそんなアズに駆け寄ることなく椅子に腰かけたまま静かに問いかける縁にアズは涙を堪え首を振る。

 「そうですか。…………私が言いたいことは分かりますか?」

 「ごめんなさい」

 耐えきれず涙を溢し謝るアズに、しかし縁は首を振った。

 「アズ………アズ…」

 訳が分からず戸惑うエルをそのまま、アズの名を何度も繰り返し呼ぶ。

 「ママ、しんぱい、すると思って…」

 「そうですね。倒れるアズの姿を見てとても心配しました」

 大切な我が子が倒れていたのだ、心配するに決まっている。

 「そんなにいたくなかーー」

 「アズ?」

 今更そんな嘘は許しはしないと名を呼べば溢れる涙が増した。
 だがまだ手は出さない。

 「で、できると、思っ…思ったの。がまんできる、から、だいじょう、ぶって」

 「いつから?」

 「す、すこし前。手がふる、ふるえて。でもそれだけで…ママもいたいっていってたから…」

 傷付けられたトラウマから手が震え、夜眠れなくなっていた縁に自分のことを言えなくなってしまっていたのだろう。
 最初は痛みもなく、手が震える程度だったため暫くすれば治まると思ったようだ。
 気付いてやれなかった自分に腹が立つ。
 確かにあの頃は縁も心の余裕がなかったが、そんなこと言い訳だ。

 「こわいゆめばっかり見るようになって。でもボクお兄ちゃんだから」

 元々の責任感の強さから誰にも言えなかったのだろう。
 どんな夢か聞いてみれば、やはりというか倒れ血を流す縁を何度も繰り返し見ていたらしい。
 その内追い詰められるように少しずつ体調を崩していったようだ。

 「アズ…アズ、おいで」

 「ごめんなさい」

 「もういいですよ。全部話してくれましたからね。だから……おいでアズ」

 もういいよと微笑んで腕を広げれば、飛び込んできた小さな身体をギュッと抱きしめてやる。

 「気付いてあげられなくてごめんなさい。ずっと辛かったでしょう?」

 「ううん。ボクもごめんなさい。ボクのせいでママいっぱいケガしーー」

 「違いますよ。アズのせいじゃありません。悪いのはあの男であってアズじゃありません。それにアズは助けに来てくれたでしょう?守ってくれたじゃないですか」

 すごく嬉しかったと言い背中を撫でてやる。
 実の父かもしれないが、アズがしたことは縁を守ったことであり何も悪くはない。

 「私はアズが何も言ってくれなかったことの方が悲しいです。何もしてあげられなかったかもしれませんけど、私のことを気遣って言わなかったのかもしれませんが、こうして倒れるまで言ってくれなかったことが私は何より悲しい。アズのママとして何もしてあげられなかったことが何より悲しい。ごめんね、ごめんねアズ」

 「ちがう、ちがうの。ボク……ごめんなさい。ごめんなさいママ」

 悪いのは自分なのだと言うアズにそんなことないと言い聞かせる。

 「何でも話せとは言いません。けど辛いことは、痛く悲しいことはママにも教えて下さい」

 人間1つや2つ人に言えないことぐらいあるだろう。
 頑張ろうと耐えようとしたアズを否定もしない。
 だが耐えきれず倒れるほどならばちゃんと言ってほしかった。

 「アズが苦しむ姿を私は見たくない。アズには笑っていてほしいんです。アズのことが大好きだから」

 「ボクもママ大すき。ごめんなさい」

 これからはちゃんと言うと約束してくれたアズにありがとうと微笑み抱きしめのだった。
 








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