二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
362 / 475

着実に

しおりを挟む
 「繋……アレンを呼んできてくれますか?」

 「うん、わかった。アーパパ~」

 ふらつく足元にこれは少しマズいなとアレンを呼んできてもらう。
 洗濯の途中ではあったが、手を止めるとその場に手を付き座り込んでしまった。

 「縁っ!」

 そう時間もかからず駆け寄ってきてくれたアレンに手を借りると部屋まで運んでもらった。

 「すいません。ちょっとふらつい……」

 最後まで言い終える前に込み上げてきた吐き気に口を押さえると、慌ててトイレに向かおうとしアレンに抱え上げられた。

 「いいから。気持ち悪いなら全部吐いちまえ」

 「ーーオェ」

 背を撫でてくれるアレンにこんなこと手伝わせて申し訳ないと思ったが、続く気持ち悪さに不安になり甘えることにした。
 握られた右手が嬉しく心強かった。
 はっきりとは分からないがアレンの子を孕ってもう6ヶ月、それまでこれと言って悪阻などの症状はなかったのだが、突如きた吐き気に戸惑い不安になった。

 「代わってやれなくてごめんな」

 そんなことないと返事をしようにも口に出来ず、それは後にすることにし治まるまで吐き続けた。
 それから数分なのか数時間なのか分からないまま吐き続ければ、漸く治まった吐き気に力なく崩れ落ちる。
 気分は幾分スッキリしたが手を持ち上げるのさえ億劫になっていれば、水で口をすすがれ部屋まで運んでくれるとあっという間に汚れた服まで着替えさせてくれた。
 何とも出来た旦那様である。

 「アレン……」

 「大丈夫だ。ここにいるから何でも言え」

 「はい。ありがとう」

 未だ力強く握られた手が嬉しく頬を擦り寄せれば、少しは安心したのかホッとしたように優しく撫でられた。

 「びっくりしましたね」

 「ああ。けどよく考えたら今まで何もなさ過ぎたんだ。油断してた」

 軽い立ち眩みはあれど双子の時のような酷い悪阻もなかったため普段とそう変わらず過ごしてしまっていた。
 アレンが悪いのではない。縁の自覚がなさ過ぎたのだ。

 「それだけ子どもが元気だという証拠ですよ。きっとアレンに似たんですね」

 「そうか?これだけ心配かけるんだから縁に似たのかもしれないぞ」

 「それは嫌です。私はアレンに似た子がいい」

 選べないと分かってはいても願うことは自由である。

 「……そうか。俺は……もうどっちでもいいよ」

 その言葉に父親になるのが嫌になってしまったのかと不安になったが、そんな縁の顔色に気付いたのか違うと首を振られた。

 「いやになったとかそんな意味じゃない。無事に産まれてくれさえすれば、縁が無事ならそれでいいんだ。男でも女でも2人が無事ならそれでいい」

 辛い吐き気に弱る縁の姿に男だ女だというのは些細なことだとアレンは言う。

 「どっちでも俺の子だ。俺と縁の大切な子だ。可愛くないわけがないだろ」

 「そう、ですね。でも……私はアレン似がいい」

 「頑固だなぁ」

 譲らない縁にアレンが苦笑いする。

 「だってアレンのその青い瞳が大好きなんです。綺麗な黒髪も、大きくて力強いその身体もその優しいところも大好きだから…だからそんな大好きなアレンに私は似てほしい」
 
 「………バカだなぁ」
 
 そんな理由かよと泣きそうになりながらも笑うアレンに手を伸ばせば身体を起こされギュッと抱きしめてくれた。
 この力強い腕が羨ましくもあるが、それとは別に安心もする。
 決して揺るがないだろうその手が、離しはしないというその力強さが凄く嬉しいのだ。

 「好きな人に似て欲しいというのは何もおかしなことじゃないでしょう?アレンだってそう変わらないと思いますけど」

 「まぁな。でもそう言ってもらえるのは嬉しいな。縁がどれだけ俺を愛してくれているのか伝わってきた」

 嬉しいと縁の頭に頬を擦り寄せてくるアレンに縁もギュッと抱きつく。
 今はもういい歳ではあるがこうして誰かに甘えられるというのは本当に嬉しいものだ。

 「アレン、ねぇキスして」

 「いくらでも」

 言ってから、そういえばさっき吐いたばかりだったと慌てて離れようとしたが何してるんだとばかりに腰を掴まれ口付けられた。
 すすぎはしたが気にはならないのだろうかと何とか抵抗しようとするが、許さないとばかりに舌を絡められ自然身体から力が抜けていく。

 「全部俺のだろ?」

 「………途中で嫌になっても知りませんからね」

 「ならねぇよ。縁が死ぬその日までずっと一緒だ」

 アレンが縁との約束を忘れることはない。破ることも決してない。
 そう分かっているからこそ彼の言葉が何より嬉しい。

 「愛してます、アレン」

 「俺も愛してる。縁だけをずっと愛してる」

 なら子どもは?と笑いながらも聞いてみれば……

 「縁の次に大好きだ!」

 ならば問題なし!と2人で笑い合うのだった。

しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...