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また新たな
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それまでの経験から産まれるのは深夜から早朝にかけてだと勝手に思い込んでいた。
それが間違いだと知ったのは妊娠から8ヶ月を少し過ぎた頃だった。
ガシャン。
足下に落ちた皿に拾わなければと手を伸ばそうとした瞬間、何か漏らしたような下半身の感覚に嘘でしょと心の中で呟いた。
それが破水なんだと気付くと、だんだと襲いくる痛みにこれは自分の足で部屋へは向かえなさそうだと早々にエルに連絡しアレンたちを呼んできてもらう。
「「「縁っ!」」」
そう待たずして駆けつけてくれたアレンたちにごめんなさいと謝ると破水したことを伝え部屋に運んでもらった。
ドクドクと心臓が飛び出してしまうのではないかというぐらい鼓動している。
繋たちを産んだ時も思ったが、出産は本当に毎度命がけだなと思う。
「ここに、ここにいるからな。ごめんな。代わってやれなくてごめんな」
泣きそうな顔でそう言ってきたのもアレンで3人目で、セインもジークもいつもの凛々しい姿はどこへやらこの時ばかりは不安そうに顔を歪めていた。
「ジーク……子どもたちを」
「分かってる。心配すんな」
「セイン、繋と待っていて、下さい」
「?、分かった」
何より心配だったのはジッと待つしかない子どもたちだった。
真たちはジークに任せ、繋にはセインと扉の前で待っていてもらうことにした。
あまりの痛みに握られた手に強く力を込めてしまったが、アレンは怒ることなく大丈夫だと言い横になる縁の背から腰をさすってくれる。
「アレン……」
「分かってる。分かってるから」
ずっと不安はあった。
それはアレンが感じていた産まれないことへの不安ではなく、子どもが産まれた後のこと……
「きっと大丈夫だ、な?」
「はい」
それから何時間と痛みとの闘いに縁だけでなく、それを見守る周りの皆が疲れ始めていた。
それでも無事産ぶ声を上げた赤ちゃんはアレン似の女の子らしく、力無く倒れる縁にアレンが抱えて見せてくれるが何故か視界がボヤけその顔を見ることができない。
「縁の言ってた通りだな。けど女の子なのは俺も嬉し……縁?」
「………」
見たいのに、どれほど可愛いのか見たいと思うのに声が出ず口が開かない。
気付いたアレンが呼びかけてくるのがどこか遠くで聞こえる。
「(リ、ル)」
薄れゆく意識の中助けを呼べば、何か扉を破壊するような音がしそこで意識が途切れた。
大丈夫。みんながいるから。
「縁っ!縁っ!」
力無く瞳を閉じた目蓋に何度も呼びかけるが声は返ってこなかった。
最悪なことに縁の予感が的中したのだ。
「もしかしたらですけど出血が多かったら注意して下さい。止まらないようならこれを」
そう言い事前に渡されていた回復薬を口に含むと縁に飲ませてやった瞬間、部屋の戸を蹴り破らんばかりの派手な音と共に口に繋を咥えたリルの姿が現れた。
「繋、頼む」
「うん!」
何事かと驚くセインたちに説明する余裕もなく繋を呼び寄せれば、パタパタと駆けてきて縁の手を握る。
「ママげんきなって。いたいいたいのどっかいって」
すぐに回復薬を飲ませたため大丈夫だとは思うが、消えない不安に繋の存在が何よりありがたかった。
それからやっと出血も止まり呼吸も落ち着いてきた縁に皆が肩の力を抜く。
「こうなることが分かってたのか?」
「縁がもしかしたらってな。そうならないでくれとは思ってたけど」
眠る縁の乱れた髪を優しく手で梳き直してやっていれば、大体のことを察したのだろうセインが声をかけてきた。
腹にいる時から酷い目眩に何かしら縁自身感じていたのだろう。
その上でアレンに回復薬を預けておき、繋にも説明するとどうして欲しいか伝えていた。
本当に縁には敵わない。
「……俺に言わなかったのもわざとか?」
青い顔で俯くジークはきっとエリーのことを思い出していたのだろう。
「言ったら使い物にならなかっただろ。最悪産むの反対されかねないしな。それに克服するためにも見せた方が早いだろって」
「そうかよ。心臓に悪過ぎんだろ」
以前ジークの番が出産時に死んだという話しを聞いたのを縁は覚えていて、それを何とかしようと思っていたらしい。
これからまた同じことがあった時悲しみと後悔で押し潰されるのではなく、こんなことあったなと思い出の1つにして欲しかったと。
エリーのことは仕方がなかったとしか言いようがなかったが、その経験を生かし縁は事前にそれを想定し準備をしていた。
ジークとエリーの思い出を悲しみだけで終わらせなかった。
彼女の存在が今日の縁を救った。
「頑張ってくれてありがとな」
眠る縁の額にキスすると彼に出会えたことを心から感謝するのだった。
それが間違いだと知ったのは妊娠から8ヶ月を少し過ぎた頃だった。
ガシャン。
足下に落ちた皿に拾わなければと手を伸ばそうとした瞬間、何か漏らしたような下半身の感覚に嘘でしょと心の中で呟いた。
それが破水なんだと気付くと、だんだと襲いくる痛みにこれは自分の足で部屋へは向かえなさそうだと早々にエルに連絡しアレンたちを呼んできてもらう。
「「「縁っ!」」」
そう待たずして駆けつけてくれたアレンたちにごめんなさいと謝ると破水したことを伝え部屋に運んでもらった。
ドクドクと心臓が飛び出してしまうのではないかというぐらい鼓動している。
繋たちを産んだ時も思ったが、出産は本当に毎度命がけだなと思う。
「ここに、ここにいるからな。ごめんな。代わってやれなくてごめんな」
泣きそうな顔でそう言ってきたのもアレンで3人目で、セインもジークもいつもの凛々しい姿はどこへやらこの時ばかりは不安そうに顔を歪めていた。
「ジーク……子どもたちを」
「分かってる。心配すんな」
「セイン、繋と待っていて、下さい」
「?、分かった」
何より心配だったのはジッと待つしかない子どもたちだった。
真たちはジークに任せ、繋にはセインと扉の前で待っていてもらうことにした。
あまりの痛みに握られた手に強く力を込めてしまったが、アレンは怒ることなく大丈夫だと言い横になる縁の背から腰をさすってくれる。
「アレン……」
「分かってる。分かってるから」
ずっと不安はあった。
それはアレンが感じていた産まれないことへの不安ではなく、子どもが産まれた後のこと……
「きっと大丈夫だ、な?」
「はい」
それから何時間と痛みとの闘いに縁だけでなく、それを見守る周りの皆が疲れ始めていた。
それでも無事産ぶ声を上げた赤ちゃんはアレン似の女の子らしく、力無く倒れる縁にアレンが抱えて見せてくれるが何故か視界がボヤけその顔を見ることができない。
「縁の言ってた通りだな。けど女の子なのは俺も嬉し……縁?」
「………」
見たいのに、どれほど可愛いのか見たいと思うのに声が出ず口が開かない。
気付いたアレンが呼びかけてくるのがどこか遠くで聞こえる。
「(リ、ル)」
薄れゆく意識の中助けを呼べば、何か扉を破壊するような音がしそこで意識が途切れた。
大丈夫。みんながいるから。
「縁っ!縁っ!」
力無く瞳を閉じた目蓋に何度も呼びかけるが声は返ってこなかった。
最悪なことに縁の予感が的中したのだ。
「もしかしたらですけど出血が多かったら注意して下さい。止まらないようならこれを」
そう言い事前に渡されていた回復薬を口に含むと縁に飲ませてやった瞬間、部屋の戸を蹴り破らんばかりの派手な音と共に口に繋を咥えたリルの姿が現れた。
「繋、頼む」
「うん!」
何事かと驚くセインたちに説明する余裕もなく繋を呼び寄せれば、パタパタと駆けてきて縁の手を握る。
「ママげんきなって。いたいいたいのどっかいって」
すぐに回復薬を飲ませたため大丈夫だとは思うが、消えない不安に繋の存在が何よりありがたかった。
それからやっと出血も止まり呼吸も落ち着いてきた縁に皆が肩の力を抜く。
「こうなることが分かってたのか?」
「縁がもしかしたらってな。そうならないでくれとは思ってたけど」
眠る縁の乱れた髪を優しく手で梳き直してやっていれば、大体のことを察したのだろうセインが声をかけてきた。
腹にいる時から酷い目眩に何かしら縁自身感じていたのだろう。
その上でアレンに回復薬を預けておき、繋にも説明するとどうして欲しいか伝えていた。
本当に縁には敵わない。
「……俺に言わなかったのもわざとか?」
青い顔で俯くジークはきっとエリーのことを思い出していたのだろう。
「言ったら使い物にならなかっただろ。最悪産むの反対されかねないしな。それに克服するためにも見せた方が早いだろって」
「そうかよ。心臓に悪過ぎんだろ」
以前ジークの番が出産時に死んだという話しを聞いたのを縁は覚えていて、それを何とかしようと思っていたらしい。
これからまた同じことがあった時悲しみと後悔で押し潰されるのではなく、こんなことあったなと思い出の1つにして欲しかったと。
エリーのことは仕方がなかったとしか言いようがなかったが、その経験を生かし縁は事前にそれを想定し準備をしていた。
ジークとエリーの思い出を悲しみだけで終わらせなかった。
彼女の存在が今日の縁を救った。
「頑張ってくれてありがとな」
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