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すでに7ヵ月は経っていた。
しかし一向に産まれる様子のない我が子に不安が過ぎる。
「あくまでそれぐらいっていうだけですからね。少しズレることもありますよ」
そう縁は笑っていたが、何となく胸の中に湧く不安。
「きっとまだ産まれたくないって駄々を捏ねているのかも。アレンみたいに」
それのどこが俺似なのかと思ったが、確かに離れたくないと縁に張り付くように過ごす時が時たまある。
しかし産まれてすらいない中そんなところ似るのかよと笑ってしまった。
「私のお腹の中はそれほど快適なんですかね?」
「ははっ、かもな」
母親の腹の中にいた時の記憶などアレンには全くなかったが、縁ならそれもありえるのかもしれないと思えてしまう。
「アレンの不安は分かります。けど何となくですが私はその理由が分かっているんです」
「理由?」
どういうことだと聞こうとすれば、伸ばされた腕を引き寄せ膝に乗せてやる。
そのまま手を握られたかと思えば膨らむ腹にそっと添えられた。
「この子は獣人です。けど人間でもある」
それは最近聞いたばかりの言葉。
「獣人は獣と人の中間地点。どちらでもあり、どちらでもない」
その言葉を今持ち出す理由が分からなかったが、不思議とそれまで落ち着かなかった心がふと軽くなった気がした。
「ねぇアレン。獣人と人間、何故どちらかに決まっていなければいけないんでしょう?」
「…決まっていなければならない?」
「真と愛依は間違いなく獣人と言えるでしょう。けど繋はどうですか?人間ではありますけどそれにしては運動神経がいいでしょう?」
まだ幼い故はっきり言えるわけではないが、確かに繋は人間にしては動ける方だろう。
獣人と比べてしまえば確実に劣る、しかし人間としては運動神経は高い。
「ね?だからその逆があったとしても何も変なことではないと思いませんか?」
「逆?」
それはどういう意味か。
ここまで長引く妊娠に何か繋がりがあるのだろうか。
「獣人であるアレンの血、人間である私の血。両方の血を受け継ぎ産まれるこの子が獣人でありながら人間であり魔力持ちだとしても何も不思議はありませんーーでしょ?」
「………」
もはや頭がついていかなかった。
獣人でありながら人間で魔力持ち?意味が分からない。
混乱するアレンに落ち着けとばかりに縁がポンポンと腕を叩いてくれる。
「エルにも念のため確認してもらったんです。微かではありますけどお腹から魔力を感じるって。意識して見なければ分からないほどですけどそれでも魔力を感じると言ってました」
縁だけでなくエルもそう言うならばそうなのだろう。
だが……本当に?獣人であるはずの俺の子が?
今までの、獣人は魔力を持たないという常識が邪魔をし理解は出来るが受け入れられずにいた。
「獣人でありながら人間である私の血も強く継いでいた。だから人間としての成長、妊娠期間も引っ張られているのかもしれない」
それが未だ産まれぬ我が子の理由?本当に?
繋のこともあるため有り得ないと断言も出来ないが、そうなのかと受け入れるのも難しい。
「もしかしたらそのせいで獣人としてはあまり強くなれない可能性もあります。………それでもこの子を愛してくれますか?」
震えるようなその声にハッと頭を上げる。
「当たり前だろ!」
考え込むあまり沈黙してしまっていた。
もしかしてイヤになってしまったかと不安になる縁を抱きしめてやる。
「いいんだ。どんな子でもいい。言ったろ?元気に産まれてくれさえすればそれでいいんだ」
想像もしていなかったことに戸惑いはしたが縁との子であることに意味があるのだ。
誰より愛している番である縁だからこそその証しである子が欲しいと、産んで欲しいと思った。
それが獣人であろうが人間であろうが愛せる自信はある。
「獣人としての力がなくてもいい。魔力持ちでもいい。縁と俺の子ならそれでいいんだ」
「ありがとうアレン」
縁がアレンと子のために頑張ってくれているのは分かっている。
それこそ辛い悪阻に身体を壊しながらも弱音を吐かず、だがそれだけではダメだろうと思い身体を引きずりながらも体力をつけようと動き、子どもたちの相手をしながらもない食欲を堪え必死に食べる。
縁の辛そうな姿を見る度にもういいと言いそうになりながらも、それを言わないのはその頑張る理由がアレンとの子ためだと分かっているからだ。
彼も自分との子を望んでくれているのにそんなこと言えるはずがない。
獣人でありながら魔力持ちであることなんて些細なことだ。
「しっかり縁の血も入ってるってことだな。ママと一緒がいいって産まれる前から我儘言ってるみたいだ」
「本当に微からしいので魔法を使えるかは分からないとは言ってましたけどね。でもパパの強さもママの魔力も欲しいなんて随分欲張りな子ですよね」
「ああ。俺に似てくれたみたいで安心だ」
俺の子ならば誰より欲張りになってくれなければと縁と笑うのだった。
しかし一向に産まれる様子のない我が子に不安が過ぎる。
「あくまでそれぐらいっていうだけですからね。少しズレることもありますよ」
そう縁は笑っていたが、何となく胸の中に湧く不安。
「きっとまだ産まれたくないって駄々を捏ねているのかも。アレンみたいに」
それのどこが俺似なのかと思ったが、確かに離れたくないと縁に張り付くように過ごす時が時たまある。
しかし産まれてすらいない中そんなところ似るのかよと笑ってしまった。
「私のお腹の中はそれほど快適なんですかね?」
「ははっ、かもな」
母親の腹の中にいた時の記憶などアレンには全くなかったが、縁ならそれもありえるのかもしれないと思えてしまう。
「アレンの不安は分かります。けど何となくですが私はその理由が分かっているんです」
「理由?」
どういうことだと聞こうとすれば、伸ばされた腕を引き寄せ膝に乗せてやる。
そのまま手を握られたかと思えば膨らむ腹にそっと添えられた。
「この子は獣人です。けど人間でもある」
それは最近聞いたばかりの言葉。
「獣人は獣と人の中間地点。どちらでもあり、どちらでもない」
その言葉を今持ち出す理由が分からなかったが、不思議とそれまで落ち着かなかった心がふと軽くなった気がした。
「ねぇアレン。獣人と人間、何故どちらかに決まっていなければいけないんでしょう?」
「…決まっていなければならない?」
「真と愛依は間違いなく獣人と言えるでしょう。けど繋はどうですか?人間ではありますけどそれにしては運動神経がいいでしょう?」
まだ幼い故はっきり言えるわけではないが、確かに繋は人間にしては動ける方だろう。
獣人と比べてしまえば確実に劣る、しかし人間としては運動神経は高い。
「ね?だからその逆があったとしても何も変なことではないと思いませんか?」
「逆?」
それはどういう意味か。
ここまで長引く妊娠に何か繋がりがあるのだろうか。
「獣人であるアレンの血、人間である私の血。両方の血を受け継ぎ産まれるこの子が獣人でありながら人間であり魔力持ちだとしても何も不思議はありませんーーでしょ?」
「………」
もはや頭がついていかなかった。
獣人でありながら人間で魔力持ち?意味が分からない。
混乱するアレンに落ち着けとばかりに縁がポンポンと腕を叩いてくれる。
「エルにも念のため確認してもらったんです。微かではありますけどお腹から魔力を感じるって。意識して見なければ分からないほどですけどそれでも魔力を感じると言ってました」
縁だけでなくエルもそう言うならばそうなのだろう。
だが……本当に?獣人であるはずの俺の子が?
今までの、獣人は魔力を持たないという常識が邪魔をし理解は出来るが受け入れられずにいた。
「獣人でありながら人間である私の血も強く継いでいた。だから人間としての成長、妊娠期間も引っ張られているのかもしれない」
それが未だ産まれぬ我が子の理由?本当に?
繋のこともあるため有り得ないと断言も出来ないが、そうなのかと受け入れるのも難しい。
「もしかしたらそのせいで獣人としてはあまり強くなれない可能性もあります。………それでもこの子を愛してくれますか?」
震えるようなその声にハッと頭を上げる。
「当たり前だろ!」
考え込むあまり沈黙してしまっていた。
もしかしてイヤになってしまったかと不安になる縁を抱きしめてやる。
「いいんだ。どんな子でもいい。言ったろ?元気に産まれてくれさえすればそれでいいんだ」
想像もしていなかったことに戸惑いはしたが縁との子であることに意味があるのだ。
誰より愛している番である縁だからこそその証しである子が欲しいと、産んで欲しいと思った。
それが獣人であろうが人間であろうが愛せる自信はある。
「獣人としての力がなくてもいい。魔力持ちでもいい。縁と俺の子ならそれでいいんだ」
「ありがとうアレン」
縁がアレンと子のために頑張ってくれているのは分かっている。
それこそ辛い悪阻に身体を壊しながらも弱音を吐かず、だがそれだけではダメだろうと思い身体を引きずりながらも体力をつけようと動き、子どもたちの相手をしながらもない食欲を堪え必死に食べる。
縁の辛そうな姿を見る度にもういいと言いそうになりながらも、それを言わないのはその頑張る理由がアレンとの子ためだと分かっているからだ。
彼も自分との子を望んでくれているのにそんなこと言えるはずがない。
獣人でありながら魔力持ちであることなんて些細なことだ。
「しっかり縁の血も入ってるってことだな。ママと一緒がいいって産まれる前から我儘言ってるみたいだ」
「本当に微からしいので魔法を使えるかは分からないとは言ってましたけどね。でもパパの強さもママの魔力も欲しいなんて随分欲張りな子ですよね」
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