二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
366 / 475

小さな願い

しおりを挟む
 すでに7ヵ月は経っていた。
 しかし一向に産まれる様子のない我が子に不安が過ぎる。

 「あくまでそれぐらいっていうだけですからね。少しズレることもありますよ」

 そう縁は笑っていたが、何となく胸の中に湧く不安。

 「きっとまだ産まれたくないって駄々を捏ねているのかも。アレンみたいに」

 それのどこが俺似なのかと思ったが、確かに離れたくないと縁に張り付くように過ごす時が時たまある。
 しかし産まれてすらいない中そんなところ似るのかよと笑ってしまった。

 「私のお腹の中はそれほど快適なんですかね?」

 「ははっ、かもな」

 母親の腹の中にいた時の記憶などアレンには全くなかったが、縁ならそれもありえるのかもしれないと思えてしまう。
 
 「アレンの不安は分かります。けど何となくですが私はその理由が分かっているんです」

 「理由?」

 どういうことだと聞こうとすれば、伸ばされた腕を引き寄せ膝に乗せてやる。
 そのまま手を握られたかと思えば膨らむ腹にそっと添えられた。

 「この子は獣人です。けど人間でもある」

 それは最近聞いたばかりの言葉。

 「獣人は獣と人の中間地点。どちらでもあり、どちらでもない」

 その言葉を今持ち出す理由が分からなかったが、不思議とそれまで落ち着かなかった心がふと軽くなった気がした。

 「ねぇアレン。獣人と人間、何故どちらかに決まっていなければいけないんでしょう?」

 「…決まっていなければならない?」

 「真と愛依は間違いなく獣人と言えるでしょう。けど繋はどうですか?人間ではありますけどそれにしては運動神経がいいでしょう?」

 まだ幼い故はっきり言えるわけではないが、確かに繋は人間にしては動ける方だろう。
 獣人と比べてしまえば確実に劣る、しかし人間としては運動神経は高い。

 「ね?だからその逆があったとしても何も変なことではないと思いませんか?」

 「逆?」

 それはどういう意味か。
 ここまで長引く妊娠に何か繋がりがあるのだろうか。

 「獣人であるアレンの血、人間である私の血。両方の血を受け継ぎ産まれるこの子が獣人でありながら人間であり魔力持ちだとしても何も不思議はありませんーーでしょ?」

 「………」

 もはや頭がついていかなかった。
 獣人でありながら人間で魔力持ち?意味が分からない。
 混乱するアレンに落ち着けとばかりに縁がポンポンと腕を叩いてくれる。

 「エルにも念のため確認してもらったんです。微かではありますけどお腹から魔力を感じるって。意識して見なければ分からないほどですけどそれでも魔力を感じると言ってました」

 縁だけでなくエルもそう言うならばそうなのだろう。
 だが……本当に?獣人であるはずの俺の子が?
 今までの、獣人は魔力を持たないという常識が邪魔をし理解は出来るが受け入れられずにいた。

 「獣人でありながら人間である私の血も強く継いでいた。だから人間としての成長、妊娠期間も引っ張られているのかもしれない」

 それが未だ産まれぬ我が子の理由?本当に?
 繋のこともあるため有り得ないと断言も出来ないが、そうなのかと受け入れるのも難しい。

 「もしかしたらそのせいで獣人としてはあまり強くなれない可能性もあります。………それでもこの子を愛してくれますか?」

 震えるようなその声にハッと頭を上げる。
 
 「当たり前だろ!」

 考え込むあまり沈黙してしまっていた。
 もしかしてイヤになってしまったかと不安になる縁を抱きしめてやる。

 「いいんだ。どんな子でもいい。言ったろ?元気に産まれてくれさえすればそれでいいんだ」

 想像もしていなかったことに戸惑いはしたが縁との子であることに意味があるのだ。
 誰より愛している番である縁だからこそその証しである子が欲しいと、産んで欲しいと思った。
 それが獣人であろうが人間であろうが愛せる自信はある。
 
 「獣人としての力がなくてもいい。魔力持ちでもいい。縁と俺の子ならそれでいいんだ」

 「ありがとうアレン」

 縁がアレンと子のために頑張ってくれているのは分かっている。
 それこそ辛い悪阻に身体を壊しながらも弱音を吐かず、だがそれだけではダメだろうと思い身体を引きずりながらも体力をつけようと動き、子どもたちの相手をしながらもない食欲を堪え必死に食べる。
 縁の辛そうな姿を見る度にもういいと言いそうになりながらも、それを言わないのはその頑張る理由がアレンとの子ためだと分かっているからだ。
 彼も自分との子を望んでくれているのにそんなこと言えるはずがない。
 獣人でありながら魔力持ちであることなんて些細なことだ。
 
 「しっかり縁の血も入ってるってことだな。ママと一緒がいいって産まれる前から我儘言ってるみたいだ」

 「本当に微からしいので魔法を使えるかは分からないとは言ってましたけどね。でもパパの強さもママの魔力も欲しいなんて随分欲張りな子ですよね」

 「ああ。俺に似てくれたみたいで安心だ」

 俺の子ならば誰より欲張りになってくれなければと縁と笑うのだった。

 
 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...