二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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思い付きは突然に

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 「ーーアイツはまた!」

 水を飲みたいという縁のお願いに少し目を離しただけなのだが、まさかそのたった数分に姿を消すなど誰が思っただろうか。
 縁のことだ、それほど遠くへは行ってないだろうと匂いを辿れば一先ず安全だったことに安堵した。

 「出歩くなら何か言ってからにしろよ」

 「そう言いながら部屋から出るのを許してくれなかったのはどこの誰ですか?」

 チッ、痛いところを突いてくる。

 「………だからって黙って出て行かれる身にもなれよ」

 戻ったら誰もいない部屋にどれほど慌てたことか。
 八つ当たりだと分かっていても言わずにはいられなかった。

 「そう言われると思って優秀な護衛をお願いしておきました」

 ね?と笑って見下す縁の足元からひょっこりと双子が顔を出す。

 「シン、まもるの」

 「アイも!アイね、おねえちゃんだから!」

 「そうか。それは頼もしいな」

 やはり同じ獣人の妹だからなのか、それともママである縁と離れがたいだけなのか赤ん坊が生まれてからというもの2人は側にいることが増えた。

 「それにスノーにこの子を紹介しようと思っただけなので危ないことなんてありませんよ」

 心配し過ぎだと分かってはいるがやはり心配せずにはいられない。
 それなりに戦えると分かっていても時々何かしらやらかす縁だけでも不安なのに、その腕にはまだ生まれて間もない自身の子もいるのだ。
 心配しない方がおかしい。

 「分かった。俺も付き合う」

 ここまで来てダメだ帰れというほどアレンも非情ではない。
 良かったと笑う縁から赤ん坊を預かると縁は双子と手を繋ぎスノーに会いに行くのだった。

 「スノー、妹のレイです。これからよろしくね」

 「シャアー」

 驚かせないようにと思ったのかスノーは翔の時のように咥えることはしなかったが、ペロペロと舌先で玲の頬を舐めていた。
 
 「?、何かスノー元気がない気がしませんか?」

 いつもなら縁がくればすぐに擦り寄ってくるスノーだが、何故か今日はそんなことはなくどことなく元気がないように見える。

 「最近暑いからな。スノーにはかなり辛いだろう」

 簡単にではあるがスノーのために小屋を作ってはあるが、やはり洞窟や森の中にいた時に比べ暑さを抑えることが難しい。
 体温調節が苦手なスノーには堪えるだろう。

 「そう、ですよね。気付いてあげられなくてごめんなさい。ちょっと待ってて下さいね」

 何をするつもりなのかと思って見ていれば、エルとアズ、繋を呼び出しあれこれと指示している。
 エルたちがいることから魔法を使うつもりなのだということは分かったが、何故かアレンは深目の皿とシロップを持ってきてほしいと頼まれた。
 意味が分からなかったが必要だと言われれば断わることなど出来るはずもなく言われるがまま家に取りにいけば、戻ってきて見た光景に開いた口が塞がらなかった。

 「………なんでこんなとこに氷像が立ってんだよ」

 「涼しいでしょ?それにとても綺麗です」

 「…………」

 自分が言いたいことはそんなことではないのだが……
 目の前に立つスノーを模しているのか巨大な蛇の氷像に何をどうしたらこんなもの作ろうと思えたのか謎でしかない。
 スノーも嬉しいのか涼みながらも周りをぐるぐると見て回っている。

 「アズと繋が氷を作ってくれて、エルがスノーの形に削ってくれたんですよ」

 「スノーの形にする意味はあったのか?」

 涼むだけなら形などどうでもよかったのではというアレンに……

 「それじゃあつまらないでしょ?」

 という、結果そんなに意味がないのだということが分かった。
 
 「ではアズにもう1つお願いしてもいいですか?この氷を細かく削って欲しいんです」

 「けずる?」

 また何やら意味が分からないことを言い出したぞと呆れながらも見守っていれば、どうやったのかアレンが持ってくるよう言われた皿にアズが魔法を使い次々と削られた氷の山を築き上げていた。

 「ケイも!ケイもする!」

 「ありがとう。なら繋にはシロップをかけるお手伝いをしてもらいましょうかね」

 自分も何かしたいという繋には更にその氷の山にシロップをかけるようお願いしていた。
 どうぞと渡された皿に戸惑いながらも一口食べてみれば、あまりの冷たさと柔らかさに驚いた。

 「なんだこれ」

 「かき氷です。暑い日にはいいでしょ?味を変えても面白いですよ」

 アイスと同じで冷たいが、こちらは純粋に氷を削っただけなのであっさりとしており、上にかけたシロップにより色々な味を楽しめるのもいい。

 「「おいしい!」」

 同じく木苺のシロップをかけたものを食べた双子も美味しそうに頬張っていた。
 当たり前のように出されたが、縁はどうしてこうも次々と人が思い付かないものばかり考えつくのだろうか。

 「ママあ~ん」

 「ん、とっても美味しいです。ありがとう繋」

 「へへへ。アズにぃもあ~ん」

 色々疑問は浮かぶが今この幸せは何より彼が与えてくれたものだ。
 その思い付きに幸せを感じても不愉快などと感じたことはなく、それを迷うことなく自分たちに与えてくれることに彼の愛情を感じるのだった。

 
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