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お迎えに
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数週間、アレンたちにも手伝ってもらいながら子育てに家事にと忙しくしていたが、育ててみて分かったことがある。
「この子はどちらかというと人間寄りかもしれませんね」
「だな。静かなのは助かるけど心配にもなるな」
成長速度から言えば間違いなく獣人なのだろうが、双子の時とは違い泣くことが少ない。
双子の時の記憶がまだ新しいため何とも新鮮である。
「これならカイを迎えに行けますね」
「……行くのか?」
どこか躊躇いがちなアレンに、もしかして嫌なのかと心配になる。
「本人に聞いてみないことには分かりませんが。もしアレンが嫌なら説得してみます」
迎えに行くことは約束しているため行かなければならないが、そこから先戻りたいというのを説得することは出来る。
彼を家族に迎えたいというのは縁の我儘に過ぎないのだから。
血の繋がった繋や真、愛依、翔とは違う上、皆に受け入れられているアズやエルともまたカイは立場が違うのだ。
「繋たちにもああだっただろ?玲に何かあったら俺はーー」
「分かってます。アレンが心配してくれているのは。けどまずは彼に会って彼がどう変わったか見てみませんか?あそこの子どもたちと過ごしたことで彼も何かしら感じたと思うんです。それが私やアレンが望むものかは分かりませんけど今のあの子を一緒に見に行きましょう?」
以前までのカイならかかりきりで玲の世話をする縁の手を煩わせていたかもしれない。
その対象である玲自身にも何かしたかもしれないが、ここ暫く子どもたちと過ごすことで彼の中で何か変化があったはずだと信じたい。
「もし玲に何かしようとするなら私だって黙ってません。そうなったら手を離すこともしますから。だから、ね?」
一緒に行ってほしいと手を伸ばせば、1つ大きな溜め息を吐いた後苦笑いしながらも握り返してくれるのだった。
「縁のお願いなら仕方ないな。けどどうせならご機嫌とりにキスの1つでもしてほしいんだが?」
「………しょうがないパパですね」
「これ以上ないほど愛してる大切な番だろ?」
ああ言えばこう言う。
昔より随分口が回るようになったようだ。
だが結局は許してしまうのだから縁が甘いだけなのだろうか?
お望み通り、しかし口ではなく頬にキスしてやれば次の瞬間頭を掴まれ口の中を舐め回される濃厚なキスをされるのだった。
迎えに行く前に体力を失くすつもりですか!
それから何とか準備を済ませカイが待つ家に行けば、目が合った瞬間挨拶もそこそこに体当たりする勢いで抱きつかれた。
「元気なようで何よりです。久しぶりですねカイ」
「うん!」
以前ならそれほど見ることが出来なかった満面の笑みに、やはりここへ連れて来て良かったと思えた。
「少し背が伸びましたか?」
「のびた!」
未だに彼を獣人だとはっきり言うことは出来ないが、たった数週間での成長振りに獣人のそれが見える。
全身で会えて嬉しいと伝えてくるカイに、縁もその場にしゃがみ込むと自分も嬉しいよと伝えるように抱きしめてやる。
「あらあら久しぶりね。元気そうで安心したわ」
アレンとカイを連れ家に入っていけば、笑顔で迎えてくれるお婆さんに縁も笑って挨拶を返した。
「長いことありがとうございました。無事産まれたのでご挨拶にと。娘の玲です」
「まぁまぁ!随分可愛らしい子だこと。パパさんに似たみたいね」
良かったわねと笑っているのは縁がアレンに似てほしいと思っていたのを彼女は知っていたからだ。
やりましたと頷けば、後ろでアレンが「俺は縁似がよかった」と呟いていたが聞こえないフリをしておく。
「それで、どうしますか?カイはどうしたい?」
「…………」
皆でお茶をし一息つくとカイにどうしたいか尋ねるが俯いたまま黙り込んでしまう。
てっきり帰る!と元気よく答えると思っていたため少し驚いた。
「何に迷っているか教えてくれますか?」
黙っているのは迷っているから。
帰りたくないなら嫌だと言えばいいだけなのにそれも言わないということは迷っているのだ。
「………みんなやさしい」
「そうですか。みんなと仲良く出来たみたいですね」
うんと頷くカイに、縁もよかったねと頷いてやる。
「ことばおしえてくれた」
以前より流暢に話せていたのはやはり子どもたちとの交流のおかげのようだ。
「いっしょにねてくれた」
これには意味が分からずお婆さんを見れば、寂しくて眠れないカイに子どもたちが手を繋いで一緒に寝てくれたらしい。
「ごはんつくった。おいしかった」
次々と思い出を口にしていくカイに、ここでの生活がどれだけ楽しかったのか分かり嬉しくなる。
「カイが楽しそうで良かったです。なら、このままここに残りますか?」
「…………」
しかし再び黙り込んでしまったカイに首を傾げる。
「………ない?」
「ん?」
「おれ…………じゃま、じゃない?」
まさかの言葉に驚きながらもアレンを見て微笑めば、仕方ないと言うように肩を竦ませるのだった。
ほら、やっぱり彼は変わった。
「いいえ。言ったでしょう?カイのことが好きだから幸せになってほしいと。その言葉は今も変わっていませんよ」
「……かえりたい。おれ、そばにいたい」
願うようなその言葉に笑って頷いてやるのだった。
「この子はどちらかというと人間寄りかもしれませんね」
「だな。静かなのは助かるけど心配にもなるな」
成長速度から言えば間違いなく獣人なのだろうが、双子の時とは違い泣くことが少ない。
双子の時の記憶がまだ新しいため何とも新鮮である。
「これならカイを迎えに行けますね」
「……行くのか?」
どこか躊躇いがちなアレンに、もしかして嫌なのかと心配になる。
「本人に聞いてみないことには分かりませんが。もしアレンが嫌なら説得してみます」
迎えに行くことは約束しているため行かなければならないが、そこから先戻りたいというのを説得することは出来る。
彼を家族に迎えたいというのは縁の我儘に過ぎないのだから。
血の繋がった繋や真、愛依、翔とは違う上、皆に受け入れられているアズやエルともまたカイは立場が違うのだ。
「繋たちにもああだっただろ?玲に何かあったら俺はーー」
「分かってます。アレンが心配してくれているのは。けどまずは彼に会って彼がどう変わったか見てみませんか?あそこの子どもたちと過ごしたことで彼も何かしら感じたと思うんです。それが私やアレンが望むものかは分かりませんけど今のあの子を一緒に見に行きましょう?」
以前までのカイならかかりきりで玲の世話をする縁の手を煩わせていたかもしれない。
その対象である玲自身にも何かしたかもしれないが、ここ暫く子どもたちと過ごすことで彼の中で何か変化があったはずだと信じたい。
「もし玲に何かしようとするなら私だって黙ってません。そうなったら手を離すこともしますから。だから、ね?」
一緒に行ってほしいと手を伸ばせば、1つ大きな溜め息を吐いた後苦笑いしながらも握り返してくれるのだった。
「縁のお願いなら仕方ないな。けどどうせならご機嫌とりにキスの1つでもしてほしいんだが?」
「………しょうがないパパですね」
「これ以上ないほど愛してる大切な番だろ?」
ああ言えばこう言う。
昔より随分口が回るようになったようだ。
だが結局は許してしまうのだから縁が甘いだけなのだろうか?
お望み通り、しかし口ではなく頬にキスしてやれば次の瞬間頭を掴まれ口の中を舐め回される濃厚なキスをされるのだった。
迎えに行く前に体力を失くすつもりですか!
それから何とか準備を済ませカイが待つ家に行けば、目が合った瞬間挨拶もそこそこに体当たりする勢いで抱きつかれた。
「元気なようで何よりです。久しぶりですねカイ」
「うん!」
以前ならそれほど見ることが出来なかった満面の笑みに、やはりここへ連れて来て良かったと思えた。
「少し背が伸びましたか?」
「のびた!」
未だに彼を獣人だとはっきり言うことは出来ないが、たった数週間での成長振りに獣人のそれが見える。
全身で会えて嬉しいと伝えてくるカイに、縁もその場にしゃがみ込むと自分も嬉しいよと伝えるように抱きしめてやる。
「あらあら久しぶりね。元気そうで安心したわ」
アレンとカイを連れ家に入っていけば、笑顔で迎えてくれるお婆さんに縁も笑って挨拶を返した。
「長いことありがとうございました。無事産まれたのでご挨拶にと。娘の玲です」
「まぁまぁ!随分可愛らしい子だこと。パパさんに似たみたいね」
良かったわねと笑っているのは縁がアレンに似てほしいと思っていたのを彼女は知っていたからだ。
やりましたと頷けば、後ろでアレンが「俺は縁似がよかった」と呟いていたが聞こえないフリをしておく。
「それで、どうしますか?カイはどうしたい?」
「…………」
皆でお茶をし一息つくとカイにどうしたいか尋ねるが俯いたまま黙り込んでしまう。
てっきり帰る!と元気よく答えると思っていたため少し驚いた。
「何に迷っているか教えてくれますか?」
黙っているのは迷っているから。
帰りたくないなら嫌だと言えばいいだけなのにそれも言わないということは迷っているのだ。
「………みんなやさしい」
「そうですか。みんなと仲良く出来たみたいですね」
うんと頷くカイに、縁もよかったねと頷いてやる。
「ことばおしえてくれた」
以前より流暢に話せていたのはやはり子どもたちとの交流のおかげのようだ。
「いっしょにねてくれた」
これには意味が分からずお婆さんを見れば、寂しくて眠れないカイに子どもたちが手を繋いで一緒に寝てくれたらしい。
「ごはんつくった。おいしかった」
次々と思い出を口にしていくカイに、ここでの生活がどれだけ楽しかったのか分かり嬉しくなる。
「カイが楽しそうで良かったです。なら、このままここに残りますか?」
「…………」
しかし再び黙り込んでしまったカイに首を傾げる。
「………ない?」
「ん?」
「おれ…………じゃま、じゃない?」
まさかの言葉に驚きながらもアレンを見て微笑めば、仕方ないと言うように肩を竦ませるのだった。
ほら、やっぱり彼は変わった。
「いいえ。言ったでしょう?カイのことが好きだから幸せになってほしいと。その言葉は今も変わっていませんよ」
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