二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
383 / 475

そういえば……

しおりを挟む
 スノーとも無事従魔契約を済ませ、ならばと向かったダンジョンはもはや家族旅行みたいなものだった。

 「にしても珍しいな。縁が採取以外の依頼を受けるなんて」

 そう言い隣りを歩くアレンが縁を見下ろしてくる。
 確かに縁がギルドで受ける依頼は薬草採取がほとんどであり、そもそもが他にどんな依頼があるのか理解していないというのもあった。
 だが今回ダンジョンを訪れるにあたり縁はギルドで事前に依頼を受けていた。
 何故かというと……

 「宰相様に言われたんです。君は冒険者だろ?と」

 先日再びレオナルドの手伝いに行った縁だったが、休憩中に明日は家族でダンジョンに行ってくるんですと何気なくと告げれば…

 「そういえば君は冒険者だったな。すっかり忘れていた。なんだ、このクソジジイに何か変な依頼でもされたか?」

 「何とも酷い言われようじゃのぅ。お主ならまだしも可愛い孫にそんなこと儂がするわけなかろうが」

 「このジジイ」

 この2人は仲良く話すということが出来ないのだろうか?
 そもそもアル爺の孫にまでなった覚えはないのだが。

 「いえ。偶にはみんなで外に出るのもいいだろうということになって」

 縁の体調も戻り、スノーも身体の大きさを変えられるようになったため行こうということなったのだ。

 「…………依頼もなくダンジョンに潜るのか?冒険者だろ?そこまでして欲しいものでもあるのか?」

 「…………」

 レオナルドの言いようにちょっとした観光感覚で行こうとしていた自分がおかしいのだと気付いた。
 アル爺まで不思議そうに見てくる。

 「不意打ちとは言え、あの筋肉馬鹿に勝つほどだ。君も魔法に長けているのだろうが、君が思っているほどダンジョンというものは安全ではないんだぞ」

 まるで危なかっしい子どもに言い聞かせるような口調に更に落ち込む。

 「そうじゃそうじゃ。そんな危ないことせんでも儂がいくらでも依頼を出してやるわい」

 自分はどれほどか弱く見えているのか。
 だが確かに彼らの言う通りかもしれない。

 「そうですね。先にギルドで依頼を受けてから行こうと思います」

 それまでランクというものを気にしていない縁だが、どうせ行くにしても依頼を受けていれば多少なりとも得られるものがあるだろう。

 「私が言いたいのはそういうことではないのだが……」

 「この子はこういう子じゃて。まぁ煩いあのジジババが何も言わんならば大丈夫じゃろ。気をつけて行ってこい。くれぐれも怪我などせんようにな」

 マーガレットとジンが何も言わないことから危険はないと判断したのか快く送り出してくれるアル爺だが、その優しい言葉を少しでいいからレオナルドにもかけてあげて欲しいと思うのだった。

 「で、いくつか私でも出来そうなものとアル爺からも何か珍しい薬草があれば引っこ抜いてこいと頼まれました」

 「……俺は会ったことねぇけどそこまで心配してくれてんならいい奴らなんだろ」

 アル爺に関してはちゃっかりと自分の希望を伝えてはきたが、心配してくれているのは確かだろう。
 
 「なので今回は私も頑張りますね」

 「頼むから縁はジッとしててくれ」

 頼むからと言われ、何故だと首を傾げれば話しを聞いていたのだろうジークに頭を撫でられた。

 「お前は張り切る時に限って何かやらかすからな。周りを気にしながら子どもたちでも見てろ」

 「…………私だって戦えます」

 身を守れない子どもでも、か弱い女性でもない。
 自分もやれると主張すれば、苦笑いしながら力強い腕に抱え上げられた。

 「分かってんよ。ただ俺たちが心配してるだけだ。ついこの前まで寝込んでたんだぞ?戻ったつっても心配なんだよ。だから今日は我慢してくれ。俺たちのために」

 そう言われてしまえば嫌だと言えるはずもなく仕方ないと頷く。

 「それにアズが張り切ってたぞ。エルと一緒に頑張ってたみたいだからな。その成果も見てやってくれ」

 「真と愛依もな。もう少ししたら何か持たせてやってもいいかもな。性格から言って弓は無理だろうから短剣でもいいか」

 セインとジークが嬉しそうに言ってくるが何とも複雑である。
 子どもたちが頑張ってくれているのに、ママとは言え男の自分がそれを後ろで見守るだけというのはどうなのだろう?

 「言ったろ。今日は、な?お前が弱いって言ってんじゃねぇよ。子どもたちもそんなこと思ってねぇ。ただ心配なんだ。お前に何かあったら俺は生きていけねぇんだよ」

 「分かりました」

 これまで何度か倒れたことがあるが、どうやら彼らには軽くトラウマになっていたらしい。
 自分が同じ立場でも心配しただろうからこれ以上無理を言うのはやめておこう。今日は。

 「気になんなら獲ってきた獲物で美味い飯でも作ってくれ。愛依なんて両手上げて喜ぶぞ」

 「俺もな!」

 肉大好き2人には何よりのご褒美だろう。

 「真には大きな魚をとって上げて下さい」

 「「「任せとけ!」」」

 力強い番らの言葉に笑ってありがとうと伝えるのだった。



 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...