二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
391 / 475

笑っちゃう

しおりを挟む
 「………意外、ですよね」

 「意外だね」

 家族とダンジョン観光(攻略?)中、時間も遅いためエニシと2人見張りをしていたエルだが、以外なその姿に肩をすくめた。

 「ロンがこんなに寝相が悪いなんて」
 「あいつがこんなに寝相いいなんて」

 見張り中、みんなを起こさないよう声を抑えながらもエニシと話していたのだが、その途中「ギャブゥ」と変な声が聞こえ振り向き見たのがそれだった。

 「翔つぶされちゃってんじゃん」

 ぐっすりと眠るルーのすぐ隣り、並んで寝ていた翔の上に大の字で寝ているロンの腕がのしかかってしまっていた。
 どうやら寝返りをうった時にあたってしまったらしい。

 「私も何度か一緒に寝たことありましたけど、その時も顔面にロンの腕が降ってきて驚きました」

 あまりの衝撃に飛び起きたと笑っている。

 「性格からいって逆じゃない?こいつの方が寝相悪そうなのに」

 言いながら仲良く並んで眠るルーを指差すのは、まるで棺桶にでも入っているかのように指を組み綺麗な姿勢で眠っているからだ。
 普段の2人の姿から想像出来ない真逆の姿だ。

 「ですよね。なので面白半分で万歳させてみたことがあったたんですけど、数分後には元に戻ってました」

 「なにしてんの」

 そんなことをされて起きなかったルーもルーだが、ぐっすり眠っている相手にそんなことしようと思ったエニシもエニシである。

 「にしても翔可哀想じゃん。腕どかしてやーー」

 「しーーっ」

 静かにと言い近寄っていったかと思えば、ロンの腕に潰されている翔を救出し何を思ったかそのままルーの顔面に翔を乗せた。
 エニシの突然の行動に呆れること数分……

 「…………………~~~~っ、ぶはっ!なっ、なに!?」

 息苦しさに飛び起きたルーにエニシが肩を震わせていた。

 「ど、どうしました?ふ、ふふ。ああ、翔がパパとくっついて寝たかったみたいですね。ふふ、抱っこしてあげて下さい」

 「え?そ、そうなの?翔ごめんね。パパと一緒に寝ようね」

 いや、エニシそれ笑ってるのバレバレだから。
 いくら寝起きっつってもこいつもなんで気付かねぇんだよ。
 ハイと渡された翔を受け取ると再び眠りついたルーに呆れてしまう。

 「ふふ、ふふふ」

 「なにやっての。すっげぇ驚いてたじゃん。まぁ、オレも何も気付かないこいつに驚きはしたけど」

 イタズラが成功した子どものように笑うエニシに苦笑いする。
 普段しっかりと子どもたちのママをしているエニシだが、時々こうして小さな子どものようなことをする時がある。

 「これで朝まで大丈夫でしょ」

 しっかりと翔を抱きしめ眠るルーの姿にうんうんと頷いている。
 
 「楽しかった?けどもう止めてあげなよ」

 「ふふ。はーい」

 笑いながら戻ってくると再びリルを膝に乗せ腰を下ろした。
 これほどフェンリルを気軽に抱き抱えられるのはきっと彼だけだろう。
 子どもたちにもそれほど抵抗はしないようだが、自分やジークたちともなると完全に避けられる。
 あくまで選ばれたのはエニシだけということだ。

 「翔は以外にパパっ子なんですよ。ロンのことも好きですけど何かする時はルーの手を初めにとりますし、遊ぶのもルーとが一番多いです」

 「へぇ。意外にちゃんとパパやってんじゃん」

 自分から見るルーの姿はへなへなとエニシに縋り付く情けない姿ばかりだが、彼も彼なりに成長しているらしい。

 「…………にしてもさ、ダンジョンでこんな風に布団ひいて寝るなんてきっとオレたちだけだよ」

 「みたいですね。フレックさんたちと来た時もそのまま床にごろ寝でしたからね。あれはかなり辛かった」

 当時を思い出しているのかエニシが遠い目をしている。
 だが言わせてもらうならばあれが普通であり、今が異常なのだ。
 誰がダンジョンで呑気に布団を引き寝ようなどと思うものか。

 「急だって言ってもよく持ってたね」

 子どもたちが言い出したとは言え、泊まりとなった時鞄から布団を出してきたとは皆が驚き呆れたものだ。
 
 「途中子どもたちがお昼寝したくなった時のためにと思って念のために」

 どこをどうすれば念のため布団を持っていこうと考えられるのか分からない。
 
 「流石に私も荷物になるから止めようかなとは思ったんですけど………そういえばこの鞄なら関係ないなと気付いて」

 で、入れたわけね。布団を。もう分からん。
 そもそも持っていこうという思考がおかしいのだとツッコミたい!

 「エニシって大雑把なのか繊細なのかよく分かんないわ」

 「私ですか?大雑把ですよ。大雑把の、かなりの気分屋だと自分では思ってます」

 大体の自分の行動に自覚はあるようだ。
 
 「エルは見た目大雑把なのに結構繊細ですよね。おかげで助かってます」

 確かに器用そうに見えて不器用なエニシに代わり色々手伝ってはいるが、それを素直に喜んでいいのか複雑なエルであった。
 ただエニシの力になれているというならそれでいいかと開き直る自分も多少彼に影響を受けていのだろう。

 「エニシはきっと何があってもエニシなんだろうね」

 「はい?」

 きっとそれが真理なのだと1人納得するのだった。

 


 

 

 
 

しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...