二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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なんなの、こいつ

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 耳元で聞こえてきた泣き声に飛び起きた。

 「シャイアっ!?な、なに?どうしたの?」

 「うぇーん…お、おねぇちゃん、ごめん、ね」

 涙に喉をつっかえながらも、いつの間に起きていたのか謝りながら抱き付いてきた妹を受け止める。

 「な、なに?どうしたのシャイア?ど、どっか痛い?何かされた?ケガは?」

 寝起きで回らない頭を必死に回転させつつ、怪我はないかと確認するが昔からの傷を除けばそれらしいものは見当たらなかった。

 「大丈夫。安心してちょっと泣いちゃっただけですよ」

 「っ!ア、アンタこの子に何したの!?」

 これまたいつの間に入って来ていたのか、近くに腰かけ苦笑いする男に妹に何したんだと声を上げる。
 まさか変なことしてないでしょうね!と胸ぐらを掴み上げようとしーー

 「ちっ、ちがっ、ちがうのおねぇちゃーー」

 「あーーーーーっ!」

 突如部屋中に響く赤ん坊の泣き声に手が止まった。

 「な、なに!?え?ってか、なんで赤ん坊がいんのよ!?」

 「あーーーっ!」

 男の腕の中で泣き続ける姿に、もしや自分のせいかと慌てる。
 
 「エニシっ!レイっ!」

 どうすればと戸惑っていれば、戸を壊さんばかりに更に見知らぬ男が部屋に駆け込んできた。
 よく見れば自分たちと同じ獣人としての耳があり、彼も奴隷仲間かと考えていればーー

 「てめぇ、レイに何しやがった」

 「え?あ、あの………」

 赤ん坊に関しては何もしていない。
 だが説明しようにも混乱する頭と、目の前の今にも飛びかかって来そうな鋭い瞳に声が出なかった。

 「アレン、大丈夫ですから落ち着いて」

 「んなわけないだろ!泣いてんじゃねぇか!」

 「赤ん坊は泣くのが仕事なんです。それにアレンのその声で余計に泣いてしまうでしょ。嫌われますよ」

 「ぐっ」

 それはイヤだと悔しそうに顔を歪めると、男は一度こちらを強く睨みつけ赤ん坊を抱えて部屋を出て行ってしまった。

 「驚かせてごめんなさい。シャイアさんには先程言いましたがあの人が私の番です。………2人もまだ混乱しているでしょうから私は一度部屋に戻りますね。シャイアさんは落ち着いたらイリスさんに先程の私との話しを聞かせてあげて下さい。終わったら一緒に朝食にしましょう」

 そう言い残し出て行った後ろ姿に力が抜けベッドに座り込む。
 同じく隣りに座り込んだ妹に本当に怪我はないのかと確認すればないと首を振られ安心した。

 「…………びっくり、したね」

 「そう、ねーー」

 「ああ!それからーー」

 「「っ!!」」

 再び戻ってきた男に驚き心臓が飛び出るかと思った。

 「驚かせちゃいましたね、すいません。これを渡し忘れていたので」

 どうぞと小さな小瓶を渡されたのだが……これをどうしろと?

 「塗り薬です。流石にシャイアさんの足を治せるほどではありませんけど、軽い擦り傷などは治るので試してみて下さい」

 「…………私たちが使って…いいの?」

 嬉しいが自分たち奴隷がそんなもの使っていいのかと不安になる。

 「勿論。そのために渡したんですから。ではまた後で」

 今度こそ本当に部屋へ戻っていったようで、隣りからパタンと戸が閉まる音が聞こえた。
 静まり返る室内に、隣りを見れば楽しそうに笑う妹がいる。

 「いいひと、でしょ?」

 「………………かもね」

 まだ全てを信じきることはできないが、もしかしたらと思いはする。
 それから先程まで何を話していたのか教えてもらったのだが……

 「…………あいつ本当に人間よね?」

 「う、うん」

 今まで自分たちが見てきた人間に、知っているはずだった人間とはあまりにもかけ離れたことを言う男に理解が追いつかなかった。
 だが妹があの男に泣かされたわけではないことが分かり、今さらながらにどうしようと手が震えた。
 
 「お、怒ってたらどうしよう……」

 彼は何もしていないのに怒りに胸ぐらを掴もうとしたなんて最低過ぎる。
 これまであり得ないほど優しくしてもらったのに自分はなんてことをしてしまったのだろう。
 最悪自分はどうなってもいい。けどせめて妹だけでもーー

 「だ、だいじょうぶだよ!お、おこってなかったもん。さ、さっき、も、おくすり、くれたもん。ご、ごはんも、いっしょにたべようって、いってくれたもん。だ、だから……だから、だいじょうぶだよ!」

 確かに怒っていたようには見えなかったが、相手は人間だ。
 いつ急に怒りだすか分からず、逆らうなと蹴り殴り飛ばされるか分かったものではない。

 「こめんねシャイア。こんなお姉ちゃんでごめんね」

 自分がもっと上手く立ち回れていれば……

 「ち、ちがう!」

 今まで聞いたことがないような強い声に驚く。

 「お、おねぇちゃんのおかげで、わ、わたし、いきてるもん。お、おねぇちゃんがいたから、わたし、いま、いきてるんだもん。い、いつも、わたしのせいで、おねぇちゃんおこ、おこられて……ご、ごめん、なさい。ごめんなさい、おねぇちゃん」

 殴られたことなど何度もある。吐くほど蹴られたことも数えきれない。
 そんな役立たず捨てていけと何度も言われた。だがしなかった。出来なかった。
 だって………だって妹だけが私の生きる意味だったから。
 
 「ちがう。ちがうの。私……ずっとシャイアに甘えてたの。1人になりたくなくて。1人になるのが怖くて。でもシャイアなら、シャイアだけはずっと側にいてくれるってーー」

 結局、妹を守るふりをして自分を守っていたのだ。自分の心を。自分のために。

 「いるよ!ずっと、ずっといるもん!ずっといっしょにいるから……だ、だから、がんばろ?わ、わたしもがんばるから。わ、わたしもいっしょに、がんばるから」

 ね?と泣き笑う妹の姿に、いつの間にこんなに大きくなっていたんだろうと思う。
 自分ばかりが成長していない。
 情けないが、ならばこれから頑張っていこうと決意する。

 「そうね。頑張ろう。頑張っていこう、一緒に」

 「うん。いっしょに」

 そうして久しぶりに姉妹で笑い合うのだった。
 

 

 

 


 
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