二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 「バカだね。アンタは今どこで働いてるんだい?」

 ど、どこ?え?
 戸惑いながらも冒険者ギルドですと答えようとし、もしやギルドで働きながら子どもたちの面倒も見れと言うことかと焦った。
 自分はそこまで器用ではない。

 「か、掛け持ち出来るものでしょうか?」

 「違いますよ。私の説明が足りなかったようですみません」

 そう言い笑う青年は品があり、初めて話した時から思っていたがこちらを気遣うような落ち着いた話し方にホッとしてしまう。

 「頼んだ仕事以外の時間は、子どもたちが希望しない限りは貴方の好きに使ってもらって構いません。つまり、その時間で薬に使うかもしれない薬草を摘むことも、またはその薬草をギルドに売ることも可能です」

 「え…………」

 「仮にもギルドで働いてるんだい。アンタも少しなら薬草の区別がつくだろ?ギルド職員が冒険者になったところで誰も咎めやしないよ」

 自分が…………冒険者になる?
 想像もしてなかった提案に上手く頭が回らない。
 今まで碌に仕事も続かず辞めさせられていた自分が本当になれるのか?
 そもそもそもそれでは自分たちに利益が有りすぎるのではないか?

 「お、俺はーー」

 「行く!行きます!働かせて下さい!」

 言い終える前に飛び出してきたのは、今の時間裏で洗濯をしていたはずの妹の姿だった。
 
 「私もやります!兄が出来ないことは私も一緒にやりますから!畑でも家事でも何でもやりますからお願いします!」

 「サリー…………」

 お願いしますと何度も頭を下げる妹に、兄であるはずの自分が情けなくなってしまった。
 本当に出来るのか、本当にこんな自分を雇いたいと言ってくれているのかと不安にばかりかられ決断出来ないでいたのだ。
 今まで必死に働いてきた。
 それでも役立たずと言われ辞めさせられても歯を食いしばり、次こそはと縋り付いてきたのに今更何を迷う必要があったのか。
 自分にとっては破格の条件だ。
 今を逃せば次はないだろう。

 「あ、あのっ、俺ーー」

 「有り難いお話しですがやはり息子には向きません。私のせいとは言え昔から気が弱く、人と接することも苦手な未熟者です。その上今の私では手助けどころか足を引っ張ることしか出来ない。とても対価に見合った働きは出来ません」

 「母さんっ!?ど、どうして……」

 確かに仕事には不安はあれど、ここまで言ってくれたのは彼が初めてだ。
 出会い頭にあれほどの失態を犯したにもかかわらずこう言ってくれたのは最早奇跡でしかない。
 なのに…………

 「だからこそ、ですよ」

 「「「え?」」」

 何とか母を止めようとする自分に、しかし彼は申し訳ないと謝りながら微笑んでいた。

 「相手は子どもです。なので下手に気が強く手を上げるような方に子どもたちは任せられません。彼らも事情があり親の手を離れ、人と接することを学んでいる最中なんですよ。だからこそ共に学び、時には彼らに寄り添ってくれる彼のような相手が必要なんです」

 その言葉から彼が本当に子どもたちを案じていることが分かる。
 酷い父親とはいえ自分には母も妹もいたが、その子どもたちにはそれさえないと言う。
 その中で彼が自分に任せたいと言ってくれたことが嬉しかった。

 「それにお母様の今までの経験は何ものにも変え難い」

 「え?」

 「お恥ずかしい話し、あの家には子育ての経験がある人がいません。私も折を見て顔を出してはいますがずっと側にいて上げることは出来ない。その中でここまで立派に息子さんたちを育ててきたお母様の経験と知識は何よりも得難いものであり、だからこそ何よりも求めていたものです。ゆっくり身体を癒した後で構いません。どうかその愛情を少しでもいいのであの子たちに教えて上げてもらえませんか?」

 「……………」

 これほど頭を下げ頼みこんでくる彼の姿に涙が出そうだった。
 毎日というほど繰り返される父の怒鳴り声と暴力に、日に日に弱っていく母の姿に自分は何も出来なかった。
 存在を否定される中で、それでも必死に自分たち兄妹を守り続けてくれた母を彼は認め必要だと言ってくれた。
 自分に何が出来るか分からない、けどここまで言ってくれた彼に少しでも何かを返したいと思った。

 「…………母さん行こう?一緒に。俺頑張るから。少しでも役に立てるように頑張るから。本当に出来るかはまだ不安だけど、やってみたいんだ。母さんが今まで頑張ってきてくれてた分、俺も頑張るから」

 家族と話したいと言われた時は戸惑ったが、今は本当に感謝している。
 こうして母を安心させることも出来、これからの希望も見えてきた。
 静かに涙を流す母の背を撫で、隣りで同じく涙を流していた妹の肩を抱き寄せる。

 「俺なんかで本当によければよろしくお願いします」

 「「お願いします」」

 「ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」

 その日見た彼の笑顔を俺たちはきっと一生忘れないだろう。
 
 


 
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