二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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つられて

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 「……ククルさん、この時間奥様はご自宅でしょうか?」

 「はい?あ、いえ、妻でしたら店の方にいると思います」

 どうやら夫婦揃って商人魂が激しいらしい。

 「もし可能性でしたら呼んできてもらっていいですか?勿論忙しいようならそれで構いませんので」

 「え?あのそれは構いませんがなーー」

 「呼んできて下さい」

 「はいっ!すぐに!」

 笑顔で促す縁に何かを感じ取ったのか言葉通りすぐ様部屋を出て行くとバタバタと駆けていく音が聞こえるのだった。

 「まさかあれほど張り切って来ておいて料理が出来ないなんて……」

 誰に言うでもなくボソリと溢した呟きに、どうやら聞こえていたらしい少女が首を傾げている。

 「これじゃあ食べられないでしょ?」

 苦笑いしながはも先程までククルが切ってくれていた鶏肉を見せれば、切っていたはずなのに繋がっている。
 見れば他にも一口大でと頼んだものが何故か拳一つ分になっていたり、大きさは均等にと言ったのに大小様々な大きさになってしまっていたりする。
 そしてこれはダメだと開始数分で気が付いた縁は、手助けしてくれる人物を呼んできてもらうことにしたのだった。

 「ヨナちゃんには美味しく出来たのを食べてほしいんです。なのでククルさんが戻ってくるまで他のものを作って待ってましょう」
 
 元々は彼女のために作ろうと思ったものなので、出来れば美味しく作って喜んでもらいたい。
 コクリと頷いた少女に微笑むとジュース作りに励むのだった。
 それからどれだけ経ったのか、息を切らし入ってきた2人に少々呆れた。

 「呼んできて欲しいとは言いましたけど急いでとは言いませんでしたよね。女性に無理をさせるのはどうかと思いますよ」

 「げほっ、ごほっ、す、すいま、せんっ!」

 苦しそうに肩で息をする夫婦に、これ以上言うのは可哀想かと出来たばかりのジュースを渡すと落ち着くまで待ってやる。
 何故この人はここまで極端なのか。
 人が増えたことで怯えた少女を腕に抱き上げてやり、お手伝いありがとうと頭を撫でてやる。

 「急なお願いですいませんでした。随分無理をさせてしまったようで申し訳ありません」

 意味もなく女性を走らせるなんて申し訳なかったと謝れば、逆に申し訳ないと謝られた。

 「どうせこの人が何かやらかしたんでしょう?」

 まさかの夫への批判に苦笑いしてしまう。
 
 「エニシさんには夫含めうちの商会はかなりお世話になっているもの。本当ならもっと色々要求してきてもおかしくないのに、貴方は言わないどころか面倒なんて言って受け取ってくれないでしょう?それにさっきも私のために怒ってくれて、そんな人が何かするなんて思ってないわ」

 しっかりとした女性だなと感心する。
 これならお願いしても大丈夫そうだと先程までのククルの所業を伝えれば、役立たずな旦那でごめんなさいと頭を下げられるのだった。

 「何よこの大きさは!こんなバラバラの大きさじゃ火が通らないでしょ!そもそも切れてもないじゃない!」

 「す、すまん」

 怒る妻と謝る夫、どこの夫婦もやはり妻が強いんだなと考えるのだった。
 ……うちの家族はどうなんだろうか?
 
 「貴方はそこでこれの作り方でも書いてなさい!……エニシさん構わないかしら?」

 夫を叱りつけたかと思えば、次の瞬間には笑って縁に話しかけてくることに少々恐怖を感じた。
 特に秘匿しているわけでもないため慌てて頷けば、さっさとやれとばかりにククルを睨みつけており同情してしまう。
 商人の妻ともなればこれほど気が強くなければやっていけないのだろう。

 「じゃ、じゃあヨナちゃんもやってみましょうか。おじさんが混ぜ混ぜしていくので、ヨナちゃんはこれに粉を付けて下さいね」

 醤油やニンニクなどで味をつけると、少女には片栗粉をお願いする。
 最初こそ不思議な感触に困った顔をしていたが、慣れてくると楽しくなってきたのか次々と完成させていった。

 「よし、ではククルさんお仕事です」

 「はい!何でしょう!」

 やっと自分にも出来ると目を輝かせるククルに、縁も微笑み返すと鍋を指差す。

 「揚げるのをお願いします。力の限り」

 「力の限り……?」

 意味が分からないと顔をするククルに、やれば分かるとだけ言い任せることに。
 監督官として奥さんを隣りに配置。
 案の定すぐ様お叱りを受けているのを横目に、出来立てを味見として少女の口に入れてやる。

 「美味しい?」

 コクコクと頷く姿に、どうやら上手くいったようだと胸を撫で下ろす。

 「ヨナちゃんが頑張ってくれたおかげですね。ありがとう」

 味付けにも問題ないと分かったため後はククルに頑張ってもらうとして、これらをどうやって食べてもらおうかと考えるのだった。
 早い者勝ちとはあまりに可哀想なので。
 
 
 
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