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人の強さとは力だけではないと改めて実感した。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
だからお願い!と頭を下げてくるククル夫妻にどうしたものかとポリポリと頰をかく。
新たにカツサンドを作りギルド職員たちを大いに喜ばせていた縁たちであったが、いざ自分たちも食べようと手を伸ばしたところを何故かククルに掴まれたのだ。
突然のことに驚いたが、彼の隣りではククルの妻であるアリーも真剣な表情で縁を見つめている。
「……あの、どうされました?」
もしやカツサンドの味が気に入らなかったのかとも思ったが、見れば2人とも後一口ほどを残し、かなりのペースで食べ進めている。
ならば先程食べられなかった、から揚げの催促かなとも思ったがあまりに真剣な表情にそんなことはないだろうと考え直す。
「えーと、お話しがあるようでしたら食後にでもーー」
「「お願いしますっ!」」
え?何が?
夫妻揃って頭を下げられ、何がなんだか分からず焦る。
それなりの人数分の食事の準備に流石の縁も腹が減っていたのだが、聞いてくれるまで離さないとばかりに握られた手にどうしようかと考える。
「おかわりはいかがですか?」
「あっ、ありがとうございます」
「いただくわ」
にっこりと追加のカツサンドを差し出せば、あっさりと手を離された。
「ヨナちゃんはどうですか?美味しい?」
「うん」
子どものため一口は小さいが、少しずつ食べ進めていることから彼女のお気に召したようだ。
良かった良かったと頷く縁に、腹も満たされ落ち着いたのか先程よりは落ち着いた様子のククルたちが申し訳なかったと頭を下げてくる。
「大丈夫ですよ。ただお話しは食べながらでもいいですか?」
勿論だと頷く2人に今度こそカツサンドを頬張る。
簡易版ではあるがそれなりに上手く出来たと思う。
「私も初めて食べさせてもらったけどとても美味しいわ。このソースもお肉と、それにパンともとても合っていていいわね」
「ああ。美味しい上にこれなら持ち運ぶにも問題はない。実際冒険者の彼らにも試食してもらったが、素晴らしいと喜んでいた」
いつの間にやらコリンたちもカツサンドを食べていたらしく、情報収集に余念がないなと感心した。
「ーーーそこでなんですが、妻とも話し合って私たちの商会も少し手を広げようと思っているんです」
ほう、ほうほう。それは素晴らしい。
お肉ばかりでは辛いかなと、ククルの話しを聞きながらもヨナにジャムサンドを手渡す。
なにこれとばかりに見上げてくる顔に、甘いパンですよと言えば嬉しくそうに齧り付いていた。
「エニシくんにはそのお手伝いを頼みたいの」
ふんふん。……………ん?
完全に聞き流していたが、何か聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
「……手伝い?」
「ああ、難しく考えないで欲しいの。ただエニシくんは感じたこと、こうした方がいいなと思ったことがあれば言ってくれればいいの」
「………?」
意味が分からず詳しく説明を求めれば、どうやら最近では醤油も味噌も売れ行きがいいらしく、ならばそれを使って小さいながらも飲食店を展開しようと考えていたらしい。
へぇ、すごいですねと完全に他人事として聞いていた縁だったが、彼らは縁にその店のメニューを考えて欲しいなどと言い出した。
「え?いや、無理ですよ。私は料理人でもありませんし」
こちらの世界での飲食店がどのようやっているかは知らないが、凝った料理を作ることも、ましてやそれでお金を払ってもらうほどの料理の腕をもっていない自分に何が出来るというのか。
無理無理と首を振る縁に、しかし2人は頭を上げてくれない。
「エニシくんは今日みたいに知っているものを思い付いた時に教えてくれるだけでいいの。どんなものでもいいわ。商品になるかどうかは私たちで判断させてもらうし、自身がないようなら私たちも協力を惜しまないわ」
なんだか随分話しが大きくなっていっている気がするのは自分だけだろうか?
そもそも何故縁にそれを求めるのかが分からない。
意味が分からないと首を傾げる縁に2人も分かったのか、苦笑いしながらもカツサンドを指差す。
「このカツサンドというのもそうだけど、始めに作ったから揚げというのも皆取り合うほどに美味しいものだったわ。以前、この人が食べさせてもらったって言う鍋もそう。味噌も醤油も、お肉につけるタレも、全てエニシくんが教えてくれたわ。だからこそ私たちは貴方にお願いしたいの」
そう言い縁を見る彼女の目はとても真っ直ぐだ。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
縁の性格を知った上での提案であり、きっとこういう手腕にククルは惚れたのだろうなと頷くのであった。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
だからお願い!と頭を下げてくるククル夫妻にどうしたものかとポリポリと頰をかく。
新たにカツサンドを作りギルド職員たちを大いに喜ばせていた縁たちであったが、いざ自分たちも食べようと手を伸ばしたところを何故かククルに掴まれたのだ。
突然のことに驚いたが、彼の隣りではククルの妻であるアリーも真剣な表情で縁を見つめている。
「……あの、どうされました?」
もしやカツサンドの味が気に入らなかったのかとも思ったが、見れば2人とも後一口ほどを残し、かなりのペースで食べ進めている。
ならば先程食べられなかった、から揚げの催促かなとも思ったがあまりに真剣な表情にそんなことはないだろうと考え直す。
「えーと、お話しがあるようでしたら食後にでもーー」
「「お願いしますっ!」」
え?何が?
夫妻揃って頭を下げられ、何がなんだか分からず焦る。
それなりの人数分の食事の準備に流石の縁も腹が減っていたのだが、聞いてくれるまで離さないとばかりに握られた手にどうしようかと考える。
「おかわりはいかがですか?」
「あっ、ありがとうございます」
「いただくわ」
にっこりと追加のカツサンドを差し出せば、あっさりと手を離された。
「ヨナちゃんはどうですか?美味しい?」
「うん」
子どものため一口は小さいが、少しずつ食べ進めていることから彼女のお気に召したようだ。
良かった良かったと頷く縁に、腹も満たされ落ち着いたのか先程よりは落ち着いた様子のククルたちが申し訳なかったと頭を下げてくる。
「大丈夫ですよ。ただお話しは食べながらでもいいですか?」
勿論だと頷く2人に今度こそカツサンドを頬張る。
簡易版ではあるがそれなりに上手く出来たと思う。
「私も初めて食べさせてもらったけどとても美味しいわ。このソースもお肉と、それにパンともとても合っていていいわね」
「ああ。美味しい上にこれなら持ち運ぶにも問題はない。実際冒険者の彼らにも試食してもらったが、素晴らしいと喜んでいた」
いつの間にやらコリンたちもカツサンドを食べていたらしく、情報収集に余念がないなと感心した。
「ーーーそこでなんですが、妻とも話し合って私たちの商会も少し手を広げようと思っているんです」
ほう、ほうほう。それは素晴らしい。
お肉ばかりでは辛いかなと、ククルの話しを聞きながらもヨナにジャムサンドを手渡す。
なにこれとばかりに見上げてくる顔に、甘いパンですよと言えば嬉しくそうに齧り付いていた。
「エニシくんにはそのお手伝いを頼みたいの」
ふんふん。……………ん?
完全に聞き流していたが、何か聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
「……手伝い?」
「ああ、難しく考えないで欲しいの。ただエニシくんは感じたこと、こうした方がいいなと思ったことがあれば言ってくれればいいの」
「………?」
意味が分からず詳しく説明を求めれば、どうやら最近では醤油も味噌も売れ行きがいいらしく、ならばそれを使って小さいながらも飲食店を展開しようと考えていたらしい。
へぇ、すごいですねと完全に他人事として聞いていた縁だったが、彼らは縁にその店のメニューを考えて欲しいなどと言い出した。
「え?いや、無理ですよ。私は料理人でもありませんし」
こちらの世界での飲食店がどのようやっているかは知らないが、凝った料理を作ることも、ましてやそれでお金を払ってもらうほどの料理の腕をもっていない自分に何が出来るというのか。
無理無理と首を振る縁に、しかし2人は頭を上げてくれない。
「エニシくんは今日みたいに知っているものを思い付いた時に教えてくれるだけでいいの。どんなものでもいいわ。商品になるかどうかは私たちで判断させてもらうし、自身がないようなら私たちも協力を惜しまないわ」
なんだか随分話しが大きくなっていっている気がするのは自分だけだろうか?
そもそも何故縁にそれを求めるのかが分からない。
意味が分からないと首を傾げる縁に2人も分かったのか、苦笑いしながらもカツサンドを指差す。
「このカツサンドというのもそうだけど、始めに作ったから揚げというのも皆取り合うほどに美味しいものだったわ。以前、この人が食べさせてもらったって言う鍋もそう。味噌も醤油も、お肉につけるタレも、全てエニシくんが教えてくれたわ。だからこそ私たちは貴方にお願いしたいの」
そう言い縁を見る彼女の目はとても真っ直ぐだ。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
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