二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
460 / 475

時には大事

しおりを挟む
 「………コリンさん」

 「え、えっと、その………ごめんなさい」

 素直に頭を下げ謝る彼女に苦笑いする。
 彼女だけを責めるつもりはないが、明らかに自分に否があると分かっているのか言い訳もしなかった。
 あれからヨナを寝かせ調理場に戻った縁だったが、やはりと言うか案の定と言ったらいいのか見事にから揚げは完売していた。
 それだけならば縁も喜んでもらえて良かったと頷くのだが、その隣りでは自分の分がないと嘆く数人の大人たちの姿に全てを悟った。
 コリンが彼らの分まで食べてしまったのだと。

 「すまない」
 「わ、わりぃ」
 「ついね。ごめんなさい」

 コリンと並び床に正座し謝るAランク冒険者たち。
 未だFランクである縁に、しかし彼らは怒ることなく素直に頭を下げている。

 「まぁ、食べてしまったものは仕方ありませんね。けどまだ食べられなくて悲しんでいる方もいるので何か他に作りましょうか」

 「「「「っ!!」」」」

 縁の言葉にそれまで床で嘆き悲しんでいた大人たちが瞬時に立ち上げる。
 ありがとうと涙を流し握手を求められ、流石の縁も引いた。
 ぎこちないながらも笑い返し、もう少し待っていて欲しいと頼めば物凄い勢いで頷き仕事に戻っていくのだった。

 「……アンタいつの間にアイツらを手懐けたんだい?」

 「いや、そんな犬猫みたいな。………でも本当に何ででしょうかね?」

 彼らとは以前も一緒に食事をとったことはあったが、まさかそれだけでああなるとは思えない。

 「みなさんお疲れなんですかね?」

 最早疲れからくる異常事態としか考えられない縁であった。

 「さぁさぁ、そうと決まれば私も手伝うわ。あ、貴方は呼ばれるまでそこで待機よ」

 「はい」

 「ククルさん……」

 こちらはこちらで上下関係が激しい夫婦である。
 自分たち夫婦も外から見ればこんか感じなのかと少々心配になってくるのであった。

 「では揚げ物ついでに豚カツにしましょうか」

 ここまできて肉ではなく魚と言えば皆残念がるだろうと豚カツを提案すれば、これまた顔を輝かせた奥様にククルが叩かれていた。
 とっととメモしろということらしい。
 愛情が激しい。
 大体の作り方を教えながら一緒に作っていけば、やはり普段からしているだけあり手際がいい彼女はあっさりと完成させていた。

 「では後はこちらに挟んでもらって……」

 「はさむ?」

 事前に切っておいたキャベツの千切りに、出来立てのカツを挟みソースをかける。
 他にもトマトを挟んだものや、チーズを挟んだものなど数種類作りつつ数もあるため皆に手伝ってもらう。

 「後はこれをーー」

 「ぐすぐす」

 ふと鼻を啜るような音が聞こえた気がし振り向く。

 「あっ、起きちゃいましたか」

 見れば人形片手にトボトボ歩いてくるヨナの姿があった。
 意外に時間が経っていたようで、起きても誰もいなかったことに不安になったのか少し涙目である。

 「おはよう、ヨナちゃん」

 調理中で手が離せないため声だけかけてみれば、足早に近寄って来て縁の足に張り付いてきた。

 「ヨナちゃん、もう少しで出来るのであっちで座って待っててくれませんか?」

 この状態では抱き抱えてやるのこともできないため待っていて欲しいと頼むが、イヤだとばかりに首を振り頭を擦り付けてくる。
 どうしようかと困っていれば、先に作業を終えたらしいククルの奥様がにっこりと笑いヨナの頭を撫でていた。

 「ヨナちゃん、おはよう。おばさんのこと覚えてるかしら?おばさん暇だから、エニシくんが終わるまで一緒にお茶でもしてくれたら嬉しいんだけどダメかしら?」

 「いいですね。ヨナちゃんが作ってくれたジュースもあるので味見してくれたらとても助かります」

 手伝ってくれたら嬉しいなとお願いすれば、少し悩みながらも素直に椅子に腰かけてくれたのだった。

 「ククルさんのところは確か息子さんがお2人でしたっけ?」

 「そうです。もう成人しているんですが、どうにも妻に似たらしく何でも自分たちでしてしまう子たちでして、あまり父親らしいことをしてやれませんでした」

 手がかからないのは嬉しいが、親として可愛い我が子に何かしてやりたいというのが親心だろう。
 
 「あっ、そういえばその息子たちなんですが1度エニシくんに会いたいと。会ってもらえますか?」

 「それは構いませんが…」

 会ってどうするというのだろうか?
 もしや、よくもうちの両親をこき使いやがってと文句の一つでも言いたいということか?
 ククル自身は嬉々としてやってくれているが、子から見れば見知らぬ男が父親をこき使っているようにしか見えないのかもしれない。

 「ぜひ会ってやって下さい。長男はエニシくんが考案した調理器具に興味があるようで、次男は醤油がかなり気に入ったらしく他にも珍しい調味料があれば教えてほしいと」

 菓子折りでも持って謝罪に行かねばと考えていたのだが、まさかの教えを乞いたいという言葉に何故と首を傾げるしかないのであった。


 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...