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見守る視線
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泣き駆けていく子どもたちの姿を見ながら、彼らと同じく安堵している自分がいる。
情けなくはあるが、自分と彼では信用も安心感もまだ雲泥の差がある。
「遅れてごめんね」
「少し休憩しましょうか」
優しく背を撫で子どもたちを落ち着かせる彼に、何も出来ない自分が情けなかった。
彼のように出来るなど初めから思ってはいない。
だが………
「これからでしょ?」
「え?」
「頑張ろうって言ってたじゃない。これからは私も一緒に頑張るから」
落ち込み俯く背を叩いたのは以前より顔色良く自らの足で歩く母だった。
隣りでは妹も大きく頷いている。
「貴方がエニシさんみたいになんてなれるわけないのよ。あの人もそんなこと望んでないわ」
「そうだよ。こんなヒョロヒョロで頼りないお兄ちゃんに頼んできたぐらいだよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんのままみんなを支えていけばいいんだよ」
言い方は悪いが勇気付けるようにバンバンと背を叩いてくる妹も、以前と比べ明るくなった気がする。
家事に母の世話といつも暗い表情ばかりだったのが、こちらに来てからよく笑うようになった。
「あんなに私が反対してもやりたいって言ったじゃない。そんな貴方がいいって彼も言ってくれてたでしょう?エニシさんがすごい人だって分かってるなら、そんな彼にそう言ってもらえた貴方自身も信じてやりなさい」
こんな情けなく何も出来ない自分が嫌だった。
だが彼は自分に頼みたいと言ってくれた。
あの時の言葉は今も忘れてはない。
「私のせいで貴方たちにはたくさん苦労をかけたわ。……辛かったでしょう?本当にごめんなさい。カールが自分に自信を持てないのも私のせいだわ」
ごめんねと泣きそうに顔を歪める母に必死に首を振る。
苦労がなかったと言えば嘘になる。
だが自分がこうなったのは母のせいではなく、母のために、妹のために何も出来ない自分が嫌いで情けなくなったからだ。
何度父に殴られ役立たずと罵られたか、母の力にもなれず、助けるには力もない自分が本当に大嫌いだった。
いつしか自分という存在が迷惑にしかならないのではと考えたこともあったが、逃げ出す勇気もない情けない男だ。
「そんな貴方が初めて自分からやりたいって言ってくれて本当に嬉しかったのよ。私たちのことを思って言ってくれたのかもしれないけど、ここに来てから2人ともよく笑うようになったでしょう?私はそれが本当に嬉しいのよ」
そう言い本当に嬉しそうに笑う母の姿に、自分では気付いていなかったが言われてみれば以前のような心の焦りみたいなものがなくなったかもしれない。
出来ないことに落ち込むことは未だにあるが、どうしようという不安や恐怖が今はあまりない。
「…………みんな笑ってくれるんだ」
「ええ」
「……失敗しても、怒らないで…兄ちゃん仕方ねぇなぁって」
「そうね」
「出来た時とは一緒に喜んでくれて…」
「そうなの」
それまで失敗する度に役立たず怒鳴られ、仕事はクビだと言われ冷たくあしらわれきたが、ここの子どもたちはそんなことしなかった。
失敗しても笑って許してくれた。
私が教えてあげる!と教えてくれる子すらいたほどだ。
ならこれなら出来るでしょと自分に合う仕事を任せてくれることもあった。
「私ね、前に子どもたちに聞いたんだ。お兄ちゃんが迷惑ばっかりかけてごめんねって謝ったんだけど、自分たちもエニシ兄ちゃんに教えてもらったからって」
「え?」
「自分たちも初めは上手く出来なかったけどエニシお兄ちゃんは怒らなかったし、ご飯もいっぱい食べさせてくれて、あったかい部屋で寝かせてくれたって」
失敗は誰にでもあることだから次また頑張りましょうと励ましてくれたと。
生きていくためにも出来ないからやらないでは済まされない。
やりたくなくともやらなければいけない時が必ずあり、そんな時彼がまた次頑張ればいいと教えてくれたらしい。
「出来たらすごく褒めてくれて、出来ないところは他の子たちとも手伝ってくれたって」
ここへ来てからというもの、いや、出会ってからというもの彼が自分に怒ったことは一度だってなかった。
オドオドした態度にも、出来ないかもしれないと落ち込んだ時も、お願いしますと笑って言ってくれた。
「エニシさんが子どもたちに教えてくれていたのね」
「だからってわけじゃないけどさ、お兄ちゃんも焦らなくていいと思うよ。むしろお兄ちゃんは焦った方が失敗するんだからゆっくりでいいんだよ。これからは私もお母さんもいるんだからさ。ーー一緒に頑張っていこう?」
「………うん…うん」
もう1人ではないと、一緒に頑張っていこうと言ってくれる家族に涙が溢れるのだった。
情けなくはあるが、自分と彼では信用も安心感もまだ雲泥の差がある。
「遅れてごめんね」
「少し休憩しましょうか」
優しく背を撫で子どもたちを落ち着かせる彼に、何も出来ない自分が情けなかった。
彼のように出来るなど初めから思ってはいない。
だが………
「これからでしょ?」
「え?」
「頑張ろうって言ってたじゃない。これからは私も一緒に頑張るから」
落ち込み俯く背を叩いたのは以前より顔色良く自らの足で歩く母だった。
隣りでは妹も大きく頷いている。
「貴方がエニシさんみたいになんてなれるわけないのよ。あの人もそんなこと望んでないわ」
「そうだよ。こんなヒョロヒョロで頼りないお兄ちゃんに頼んできたぐらいだよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんのままみんなを支えていけばいいんだよ」
言い方は悪いが勇気付けるようにバンバンと背を叩いてくる妹も、以前と比べ明るくなった気がする。
家事に母の世話といつも暗い表情ばかりだったのが、こちらに来てからよく笑うようになった。
「あんなに私が反対してもやりたいって言ったじゃない。そんな貴方がいいって彼も言ってくれてたでしょう?エニシさんがすごい人だって分かってるなら、そんな彼にそう言ってもらえた貴方自身も信じてやりなさい」
こんな情けなく何も出来ない自分が嫌だった。
だが彼は自分に頼みたいと言ってくれた。
あの時の言葉は今も忘れてはない。
「私のせいで貴方たちにはたくさん苦労をかけたわ。……辛かったでしょう?本当にごめんなさい。カールが自分に自信を持てないのも私のせいだわ」
ごめんねと泣きそうに顔を歪める母に必死に首を振る。
苦労がなかったと言えば嘘になる。
だが自分がこうなったのは母のせいではなく、母のために、妹のために何も出来ない自分が嫌いで情けなくなったからだ。
何度父に殴られ役立たずと罵られたか、母の力にもなれず、助けるには力もない自分が本当に大嫌いだった。
いつしか自分という存在が迷惑にしかならないのではと考えたこともあったが、逃げ出す勇気もない情けない男だ。
「そんな貴方が初めて自分からやりたいって言ってくれて本当に嬉しかったのよ。私たちのことを思って言ってくれたのかもしれないけど、ここに来てから2人ともよく笑うようになったでしょう?私はそれが本当に嬉しいのよ」
そう言い本当に嬉しそうに笑う母の姿に、自分では気付いていなかったが言われてみれば以前のような心の焦りみたいなものがなくなったかもしれない。
出来ないことに落ち込むことは未だにあるが、どうしようという不安や恐怖が今はあまりない。
「…………みんな笑ってくれるんだ」
「ええ」
「……失敗しても、怒らないで…兄ちゃん仕方ねぇなぁって」
「そうね」
「出来た時とは一緒に喜んでくれて…」
「そうなの」
それまで失敗する度に役立たず怒鳴られ、仕事はクビだと言われ冷たくあしらわれきたが、ここの子どもたちはそんなことしなかった。
失敗しても笑って許してくれた。
私が教えてあげる!と教えてくれる子すらいたほどだ。
ならこれなら出来るでしょと自分に合う仕事を任せてくれることもあった。
「私ね、前に子どもたちに聞いたんだ。お兄ちゃんが迷惑ばっかりかけてごめんねって謝ったんだけど、自分たちもエニシ兄ちゃんに教えてもらったからって」
「え?」
「自分たちも初めは上手く出来なかったけどエニシお兄ちゃんは怒らなかったし、ご飯もいっぱい食べさせてくれて、あったかい部屋で寝かせてくれたって」
失敗は誰にでもあることだから次また頑張りましょうと励ましてくれたと。
生きていくためにも出来ないからやらないでは済まされない。
やりたくなくともやらなければいけない時が必ずあり、そんな時彼がまた次頑張ればいいと教えてくれたらしい。
「出来たらすごく褒めてくれて、出来ないところは他の子たちとも手伝ってくれたって」
ここへ来てからというもの、いや、出会ってからというもの彼が自分に怒ったことは一度だってなかった。
オドオドした態度にも、出来ないかもしれないと落ち込んだ時も、お願いしますと笑って言ってくれた。
「エニシさんが子どもたちに教えてくれていたのね」
「だからってわけじゃないけどさ、お兄ちゃんも焦らなくていいと思うよ。むしろお兄ちゃんは焦った方が失敗するんだからゆっくりでいいんだよ。これからは私もお母さんもいるんだからさ。ーー一緒に頑張っていこう?」
「………うん…うん」
もう1人ではないと、一緒に頑張っていこうと言ってくれる家族に涙が溢れるのだった。
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