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寄り添うように
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見送りを終え、泣き悲しむ子どもたちにご飯を食べさせると順に寝かしつけてやる。
泣き疲れ眠る子もいれば、中々寝付けない子には手を握り背を摩ってやったりもした。
「…………乗り越えてくれたらいいんですが…」
「大丈夫だろ。もしここまでして無理ってんならもう誰にもどうにもできねぇよ」
子どもたちを寝かしつける縁の隣り、背に手を回しながらジークが腰を下ろす。
温かい手の平に少しだけ肩の力を抜いた。
「……いつかは慣れるでしょう。けどそれは人それぞれで、周りが何かを言ったところでどうしようもない。失うとはそういうことです」
「…………そうだな」
握られた手は昔を思い出しているのか強かった。
今この瞬間も世界のどこかで誰かな亡くなっているかもしれない。
だが見知らぬその誰かではなく、身近で常に側で自分を見守ってくれていた存在が突如いなくなるのは辛く悲しい。
当たり前にいた場所にその人がいない喪失感。
なぜいないのか分かっていても心まではついていってくれず、その光景になれるまでは時間がかかる。
「…………………私は…子どもたちに酷なことをしてますね」
何が正しいのか分からない。
死を見せることが本当に子どもたちのためになったのか分からず、泣く彼らに別れを強要したのは縁の独断だ。
そのせいで心を病むことになるかもしれない子がいるかもしれない。
だが後で後悔するよりはと皆でお婆さんを見送った。
「人はいつか死ぬんだ、そこから目ぇ逸らすなんて出来ねぇんだよ。こんだけいい別れ方出来たガキたちは幸せもんだろ」
人はいつか死ぬ。ジークの言う通りだ。
命というものがある限り、人はいつまでも死から逃れることは出来ない。
「人間しては長生きだったんだろ?笑って逝けたんだろ?それはそんだけ満足した生き方が出来てたからじゃねぇのか?だったらガキたちにもその姿を最期まで見せてやって何が悪いんだよ」
何も間違ってはいないと背を撫でる手が温かい。
「………幸せ、だって」
「ああ」
「ありがとう、って」
「ああ」
縁が見てきた彼女はいつだって笑顔だった。
本当に嬉しそうに会う度笑って出迎えてくれた。
「ここのガキたち見てれば俺だって分かる。あんだけ泣いてもらえんだ、そんだけ愛されてたんだろ?そんだけ愛してやってたんだろ?ガキたちを」
そう……縁が思っていた以上に彼女は子どもたちに愛情を注いでくれた。
痛む身体で、鈍くなっていく身体で、それでも彼女は出来る限り子どもたちの側にいた。
頑張る子どもたちに声をかけ、楽しそうに笑うお婆さんに子どもたちもまた笑顔だった。
「…………忘れて欲しくなくて…」
「ああ」
「彼女という存在を」
「ああ」
縁にとって友人であり同志であった彼女を、子どもたちにとって母のであり、お婆ちゃんであり、何より家族であった。
そんな彼女を忘れて欲しくなかった。
悲しみは幸せによって隠れてしまうから、少しでも長く、少しでも彼女という存在を覚えていて欲しくて。
「悲しみを乗り越えれば、あとは幸せだった思い出が彼らを育ててくれる。幸せとは何かを彼女が教えてくれたはずだから」
だから子どもたちにはきちんと別れを告げさせた。
ありがとうと感謝を、なぜ寂しいと感じるのか教えるためにも。
「そうだな。俺にはお前が教えてくれた。お前がいたから……乗り越えられた」
縁が出会った頃彼もまた悲しみに押し潰されそうになっていた。
「情けねぇぐらい落ち込んでた俺にお前はずっと側にいてくれたろ。泣いても笑わねぇでずっと」
思い切り泣き、全てを吐き出したことでジークはやっと前を向けたと言う。
「教えてやる奴が必要なんだよ。だから縁がやったことは何も間違ってねぇ。むしろ感謝されていいほどだ」
アレンたちほどではないが、ジークもまだ人間を許してはいないだろう。
それでも子どもたちのためによくやったと褒めてくれる。
「…………愛依も、真もまだ子どもです」
「あ?」
いきなり話しが逸れたことにジークが訝しげに見てくる。
「だから生きて。生きて下さい。少しでも長く、少しでも側にいて。ジークがいないと私は私でいられなくなる」
「ああ、任せろ」
ここまでやってこれたのは不安になる度彼が縁の背を押してくれたからだ。
間違ってはいないと背を撫でてくれたからやってこれた。
だからこそどうか少しでも長く一緒に生きていたい。
「ありがとう、ジーク」
泣き疲れ眠る子もいれば、中々寝付けない子には手を握り背を摩ってやったりもした。
「…………乗り越えてくれたらいいんですが…」
「大丈夫だろ。もしここまでして無理ってんならもう誰にもどうにもできねぇよ」
子どもたちを寝かしつける縁の隣り、背に手を回しながらジークが腰を下ろす。
温かい手の平に少しだけ肩の力を抜いた。
「……いつかは慣れるでしょう。けどそれは人それぞれで、周りが何かを言ったところでどうしようもない。失うとはそういうことです」
「…………そうだな」
握られた手は昔を思い出しているのか強かった。
今この瞬間も世界のどこかで誰かな亡くなっているかもしれない。
だが見知らぬその誰かではなく、身近で常に側で自分を見守ってくれていた存在が突如いなくなるのは辛く悲しい。
当たり前にいた場所にその人がいない喪失感。
なぜいないのか分かっていても心まではついていってくれず、その光景になれるまでは時間がかかる。
「…………………私は…子どもたちに酷なことをしてますね」
何が正しいのか分からない。
死を見せることが本当に子どもたちのためになったのか分からず、泣く彼らに別れを強要したのは縁の独断だ。
そのせいで心を病むことになるかもしれない子がいるかもしれない。
だが後で後悔するよりはと皆でお婆さんを見送った。
「人はいつか死ぬんだ、そこから目ぇ逸らすなんて出来ねぇんだよ。こんだけいい別れ方出来たガキたちは幸せもんだろ」
人はいつか死ぬ。ジークの言う通りだ。
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「人間しては長生きだったんだろ?笑って逝けたんだろ?それはそんだけ満足した生き方が出来てたからじゃねぇのか?だったらガキたちにもその姿を最期まで見せてやって何が悪いんだよ」
何も間違ってはいないと背を撫でる手が温かい。
「………幸せ、だって」
「ああ」
「ありがとう、って」
「ああ」
縁が見てきた彼女はいつだって笑顔だった。
本当に嬉しそうに会う度笑って出迎えてくれた。
「ここのガキたち見てれば俺だって分かる。あんだけ泣いてもらえんだ、そんだけ愛されてたんだろ?そんだけ愛してやってたんだろ?ガキたちを」
そう……縁が思っていた以上に彼女は子どもたちに愛情を注いでくれた。
痛む身体で、鈍くなっていく身体で、それでも彼女は出来る限り子どもたちの側にいた。
頑張る子どもたちに声をかけ、楽しそうに笑うお婆さんに子どもたちもまた笑顔だった。
「…………忘れて欲しくなくて…」
「ああ」
「彼女という存在を」
「ああ」
縁にとって友人であり同志であった彼女を、子どもたちにとって母のであり、お婆ちゃんであり、何より家族であった。
そんな彼女を忘れて欲しくなかった。
悲しみは幸せによって隠れてしまうから、少しでも長く、少しでも彼女という存在を覚えていて欲しくて。
「悲しみを乗り越えれば、あとは幸せだった思い出が彼らを育ててくれる。幸せとは何かを彼女が教えてくれたはずだから」
だから子どもたちにはきちんと別れを告げさせた。
ありがとうと感謝を、なぜ寂しいと感じるのか教えるためにも。
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「ああ、任せろ」
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だからこそどうか少しでも長く一緒に生きていたい。
「ありがとう、ジーク」
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