契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

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狭間の濃霧

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 タカオは水を一気飲みすると、堪えきれず話題を変えることにした。

「そういえば、さっき何を言いかけてたの?お願いしたい事って」

 それは、シアがこの部屋を出る前に言いかけていたことだ。タカオを精霊だと思い、何かをお願いしようとしていた。

 タカオの質問に、シアはまるで手のひらを返したように冷たい声を響かせた。

「もういいよ。精霊様じゃないなら、意味ないから」

 シアは興味を失ったようにタカオから目を逸らした。

「え?!」

 あまりの変わりようにタカオは慌てて驚きの声をあげる。シアは呆れたようにため息をつくと、空になったグラスをタカオから受け取る。

「だって、精霊様じゃないなら絶対ムリだもん!言ったってムダでしょ?」

 先程まであんなに可愛らしかったのに、今はなんともクールだ。

「でも、言ってみるだけ言ってみたら?もしかしてって事もあるかもしれないし」

 あからさまに無理だと言われて、さすがにショックを隠せないタカオは遠回しにシアに話してくれるように促した。

 シアは少し考えると、しつこく聞くタカオに仕方がないと諦めたのか、話し始めた。

「あのね、精霊様にレッドキャップを追い払ってほしかったの」

 タカオはその瞬間、返事に困ってしまった。シアの言っている事が理解出来なかったために、何をお願いされているのかよく分からずにいた。

 どこかで聞いたような言葉だけれど、何を追い払えば良いのかタカオには分からない。けれど、小さな子どもが言うことだと深く考えてはいなかった。そのレッドキャップは畑を食い荒らす動物くらいにしか思っていなかったのだ。

 シアは諭すように続ける。

「ね、無理でしょ?」

 タカオは分からないまま、無理に笑って胸を張る。

「大丈夫だよ!助けてもらったお礼もしたいし。追い払ってあげるよ!」

 自信満々でそう言い放つと、シアは疑いの眼差しをタカオに向けた。

「あたしが子どもだと思って、適当なこと言ってるでしょ」

 シアは早口でそう言うとタカオの目を覗き込む。

「そっ、そんなことないよ」

 あっさりと心を見破られ、慌てて弁解する。それでも、シアの疑いの眼差しは変わらなかった。

「そ、それで、レッドキャップって、一体なに?」

 結局、自分から話を切り出すと、シアは呆れたように肩を落とした。

「レッドキャップを知らないなんて、どこから来たの?よっぽど平和な所から来たんだね」

 シアは肩をすくめて、ため息をこぼした。
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